買い物かごへ

「自動運転」ビジネス 勝利の法則
レベル3をめぐる新たな攻防

定価(税込)  1,944円

編著
編著
サイズ A5判
ページ数 184頁
ISBNコード 978-4-526-07723-4
コード C3034
発行月 2017年06月
ジャンル ビジネス

内容

レーンや速度は規定されるが、コミュニティ内の移動を支える条件付自動運転に大きなニーズが見えてきた。5年後の自動運転市場の様子を客観的に展望することを中心に、完全自動運転への移行を前に、地域コミュニティで花開く自動運転ビジネスの成功条件を明快に綴る。

井熊 均  著者プロフィール

(いくま ひとし)
株式会社日本総合研究所
専務執行役員 創発戦略センター所長
1958年東京都生まれ。1981年早稲田大学理工学部機械工学科卒業、1983年同大学院理工学研究科を修了。1983年三菱重工業株式会社入社。1990年株式会社日本総合研究所入社。1995年株式会社アイエスブイ・ジャパン取締役。2003年株式会社イーキュービック取締役。2003年早稲田大学大学院公共経営研究科非常勤講師。2006年株式会社日本総合研究所執行役員。2017年専務執行役員。環境・エネルギー分野でのベンチャービジネス、公共分野におけるPFIなどの事業、中国・東南アジアにおけるスマートシティ事業の立ち上げなどに関わり、新たな事業スキームを提案。公共団体、民間企業に対するアドバイスを実施。公共政策、環境、エネルギー、農業などの分野で60冊以上の書籍を刊行するとともに政策提言を行う。

井上 岳一  著者プロフィール

(いのうえ たけかず)
株式会社日本総合研究所
創発戦略センター シニアマネジャー
1969年生まれ。1994年、東京大学農学部林学科卒業、2000年、米国Yale大学大学院卒業(経済学修士)。農林水産省林野庁、Cassina IXCを経て、2003年に日本総合研究所に入社。持続可能な地域社会をデザインするための水先案内人として、「次世代交通」「コミュニティ」「森」をテーマに活動。著書に「『自動運転』が拓く巨大市場」(共著、日刊工業新聞社)、「地球温暖化で伸びるビジネス」(共著、東洋経済新報社)、「ユビキタス時代のJA事業」(共著、全国協同出版)がある。

目次

目  次

はじめに

第1章 加熱する自動運転市場
1 IT企業の挑戦
注目浴びた半世紀前の自動運転/高度制御の基礎をつくった知能自動車/完全自動運転のトレンドをつくったグーグル/自動運転市場への参入相次ぐ中国のIT企業/日本でもIT企業が市場を先導/IT企業の狙い/進化する人工知能/自動車市場の覇権を狙うIT産業
2 スケジュールを前倒しした自動車会社
独自路線を堅持してきた自動車業界/電動化の影響/軌道修正を余儀なくされた自動車業界/相次ぐ自動運転車の市場投入表明/自動運転技術を搭載した車両の快走/業界の垣根を越えた合従連衡
3 自動車に傾倒する電機メーカー
自動運転の3機能/自動車を戦略市場に位置づける総合電機メーカー/車内空間という新たな市場/自動運転後を見据えた総合電機メーカー/プラットフォーム化を目論む精密系
4 下剋上を狙う部品サプライヤー
注目度上がるボッシュ/事業転換で飛躍したコンチネンタル/欧州勢に対抗するデンソー/メガサプライヤーに追随する大手総合部品サプライヤー/部品サプライヤーは自動運転市場の確実な勝者
5 群雄割拠のベンチャー企業
シリコンバレーが自動運転の中心地に/ベンチャーが集積するシリコンバレー/電気自動車と連動する自動運転/欧州、中東、アジアなどでも台頭する自動運転ベンチャー
6 自動運転市場が注目される理由
理由1:自動車という巨大市場が大転換期を迎えている/理由2:完成車メーカーの牙城が崩れる可能性が出てきた/理由3:センサーと制御システムが予想を超えて進化した/理由4:最もダイナミックで現実性のあるIoT、人工知能市場である/理由5:世界的に見れば成長市場である/理由6:技術的な要請が高く、価格が安定した市場である/理由7:解決したい課題が溜まっている

第2章 自動運転の実現性を問う
1 技術の完成度
自動運転の4つのレベル/あっという間に普及したレベル1・レベル2/ハードルの高さが見えたレベル3/実現性が危ぶまれるレベル4/尽きないハッキングの懸念
2 規制緩和の行方
自動運転に関わる法規制/時間がかかる条約改正/複雑な国内法体系/警察庁のガイドライン/米国の動向/欧州の動向/注目されるシンガポールの動向/日本における規制緩和/出方を探る中国/中国の“A NICE City”/世界統一市場が見えない完全自動運転
3 社会の許容度
過度の自動化に対する世界的なアレルギー/自動運転で信頼される企業/自動運転は受け入れられるか/事故防止など問題解決への期待/人間とITの協働をいかに高度にするかが当面の目標
4 2022年(5年後)の自動運転市場
技術革新によって普及したレベル1/レベル2の技術は一般車にも搭載される/限定的に実装されるレベル3/レベル4はデモンストレーションの場となる/特定条件の下での無人運転サービスが実現する
column  技術でどこまで解決できるか?

第3章 ローカル化する自動運転市場
1 3つに分かれる自動運転市場
自動車メーカーがリードするレベル1・2の市場/差別化要因にならない自動運転技術/自動車メーカーとIT企業が競合するレベル3の市場/限定されるレベル3のエリア/国や地域によって異なる切り替えポイント/中国新開発区の可能性/目が離せない中国市場/現実性高い定ルート型レベル4の市場/ハードウェアとサービスがシンクロしたビジネスモデル
2 自動運転を求めるローカル市場
継続が危ぶまれる地方交通/自動運転が解決するコミュニティの問題/約1,000カ所ある「かつてのニュータウン」の衰退/一層の便利さを求める「今時のニュータウン」/コミュニティ向けモビリティサービス/コミュニティ向け次世代交通システム
3 コミュニティモビリティサービスというビジネスモデル
ローカル市場は完全なレベル4を求めているわけではない/フランスの原発現場で活躍する自動送迎車/スイスやフランスで始まった無人バスの人気/米国で拡大するデマンドバスサービス/日本総研が行った「かつてのニュータウン」での実証/コミュニティモビリティに対する確かなニーズ
column  自動車のある生活は煩わしいのか?

第4章 日本と企業はどう対応するか
1 本当の敵はグーグルではない
自動運転市場の焦点/自家用車の本当の脅威/自動運転で魅力高める地域交通/自動運転で革新される地域の交通インフラ/車離れの理由/本当の競争相手はグーグルではなく革新された公共交通
2 戦略1:レベル1・2の自動車市場を拡大する
レベル1・2搭載車の市場をリードする/自動車ユーザーの負担を大幅削減する
3 戦略2:コミュニティモビリティ市場の拡大
豊富な定ルートサービスの対象/技術実証よりサービス実証を/自動車会社にとってのモビリティサービス
4 戦略3:自動運転タウンの創設
ビジネスの対象と技術検討の対象を線引きする/事業者主導の自動運転タウン整備
5 戦略4:海外先進事例への食い込み
ローカル化するレベル3・4市場への打ち手/シリコンバレー・プラス2の3極戦略/EVと人工知能バブルの崩壊に備えよ
column  信じた道を進もう

はじめに

はじめに

 われわれは4年前にも自動運転の本を書いた。自動運転は数年も注目され続けていることになるが、この間状況は大きく変化した。レベル1の技術が一般車まで普及し、レベル2の技術を搭載した自動車も商品化され、市場から高い評価を受けた。レベル3・4の技術の商品化はまだだが、定ルート低速度などの制約した条件下では、新しいモビリティサービスの実証が進んでいる。規制緩和の面でも、ジュネーブ条約のような国際的な規制、国内規制の緩和に向けた議論が進んでいる。政策面では、自動運転が技術開発の中心的なテーマとなった。企業活動では、自動運転のための巨額の技術開発投資が続き、自動車会社、部品サプライヤー、IT企業、電機メーカーなど業界を超えた合従連衡が進んでいる。自動運転が産業界の構造に影響を与えることは間違いなさそうだ。
 グローバルな勢力図が変わったのも重要な点だ。自動車、ITで先行していたはずの欧米や日本に対して、中国、シンガポールなどの第三勢力の位置づけが高まってきた。中国が世界最大のEV市場になることが明らかになったのもこの間だ。自動運転はグローバルな産業構造にも影響を与える可能性がある。
 一方で、自動運転の限界も見えてきたのがこの数年間ではないだろうか。すべての自動車が自動運転される世界は、できそうでできない、白昼夢のような目標かもしれない、と思える面が見えてきた。世界中で実際の都市を模したテストコースが開設されているが、テストコースでの実証は、どこまで行っても実際の都市になることのない漸近線のようなアプローチだ。
 自動運転は、巨大な可能性と虚実が渦巻く市場となっている。

 本書は、こうした理解に基づき、自動運転市場の現状と今後の方向を示すために著したものである。第1章では自動運転をめぐる自動車会社、IT企業、電機メーカー、部品サプライヤー、ベンチャー企業などの動きを概観し、多くの業界で自動運転が注目される背景をまとめた。第2章では、自動運転の市場を拓くために欠くことができない、規制緩和や技術開発の動向を整理した。第3章では、第1章と第2章の内容を受けて自動運転市場の近未来の構造を示し、その中で注目されるコミュニティモビリティの可能性を問うた。締めとなる第4章では、自動運転市場で日本の企業と政策が目指すべき方向性を提示した。本書が自動運転という半世紀に一度の革新的技術の市場で、日本が競争力を高めるための一助となり得ることを期待する。
 本書については、企画段階から日刊工業新聞社の矢島俊克氏にご支援いただいた。この場を借りて厚く御礼申し上げる。
 本書の執筆については、共編著者である株式会社日本総合研究所創発戦略センターの井上岳一君から市場状況などについて多くの示唆を得た。技術面については、同じく創発戦略センターの技術スペシャリストである木通秀樹君から助言をいただいた。武藤一浩君には前回の自動運転の著作以来、現場で培われた知見を披露いただいた。程塚正史君、石川智優君には調査、執筆に果敢に挑んでいただいた。本書は、自動運転に関わるこうした人たちの熱意の賜物である。多忙の中、執筆に当たっていただいたことに厚く御礼申し上げる。
 最後に、筆者らの日頃の活動に対してご指導ご鞭撻をいただいている株式会社日本総合研究所に厚く御礼申し上げる。
2017年 初夏
井熊 均

買い物かごへ