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IoTで変わるのは製造業だけじゃない
農業・医療・金融・サービス・教育分野で産まれる新ビジネス

定価(税込)  1,512円

編著
著者
サイズ 四六判
ページ数 216頁
ISBNコード 978-4-526-07717-3
コード C3034
発行月 2017年05月
ジャンル 経営 ビジネス 生産管理

内容

IoTは、製造業の効率化や最適化強化に役立つ技術であるだけでなく、いままでにない新しいビジネスを産み出すとともに新しい社会(スマート社会)を構築していく鍵を握る。本書では、IoTの理解を深め、IoT活用から考えられる農業、社会保障、雇用、エネルギー、教育における新しいビジネスの種を紹介していく。

吉川 良三  著者プロフィール

(よしかわ りょうぞう)
日韓IT経営協会会長。元サムスン電子常務、現在東京大学大学院経済学研究科ものづくり経営研究センター特任研究員。著書「日本型第4次ものづくり産業革命」「サムスンの決定はなぜ世界一速いのか」「ものづくり維新」他。

日韓IT経営協会  著者プロフィール

森田 良民(もりた よしたみ)
日韓IT経営協会諮問委員。都庁・自治省勤務を経て㈱オプティマ設立、現在同社相談役、地方自治経営学会理事、情報サービス産業協会理事などを歴任。1990年代はじめ「ネオダマ」を提唱。

菅谷 修(すがや しゅう)
日韓IT経営協会事務局長。㈱日立製作所コンピュータ事業部(現 情報通信システム社)にてコンピュータ教育や販売支援業務に従事。

奥出 昌男(おくで まさお)
日韓IT経営協会役員。損害保険会社で商品・サービス開発、拠点リーダー育成などの業務に従事、2010年に生活エンジン㈱を設立、現在同社取締役会長。

目次

目次


はじめに

第1章 産業の未来を変えるIoTとは何か
IoTと第4次産業革命は何が違うのか
ドイツのインダストリー4・0が目指しているもの
アメリカのインダストリアル・インターネットが目指しているもの
IoTを支える情報通信技術の変遷と融合
第4次産業革命時代の「ものづくり」と「モノつくり」はまったく異なる
第4次産業革命を支える基幹技術のコンセプトがIoT
■コーヒーブレーク
・コンテンツとコンテキスト
・IoTとM2Mは似て非なるもの
・CPSはIoTに匹敵する
・自我作古とは

第2章 IoTは製造業の最適化・効率化だけの概念なのか
IoTは製造業にとって全体最適化のキーワードになる
IoTという言葉は近い将来消えていく
IoTの真水とは何か
第4次産業革命のカギは情報通信速度
IoTは製造業だけでなく社会を変える
■コーヒーブレーク
・真水とは何でしょう
・スマート化

第3章 新たなビジネスの座標軸を考える
新しいビジネスを考える座標軸「BCGトライアングル」
エネルギー改革による取引関係の変化 ―公共インフラの民間開放の軸
農業改革による新しいビジネスの創造 ―地方創生の軸
3つの主体「BCG」を取り巻く環境の変化
「C2C」の新しい展開 ︱シェアリング・エコノミー
「クラウドファンディング」や「レンタル工房」の広がり
「ネオダマ」で環境変化を捉えて新しいビジネスを考える
マルチメディアで紡ぐ新しい仕組み
「地方創生」の要は「BCGトライアングル」の活性化
女性、高齢者を活用し、雇用を創り出す ︱雇用改革の軸
社会の構造改革は新規ビジネスの宝庫 ︱課題を見つけ出す
■コーヒーブレーク
・バイオマス
・6次産業化
・「スニーカーネット」と「ラストワンマイル」
・シェアリング・エコノミー
・蚤の市「Flea Market」と自由市場「Free Market」
・かつての流行り言葉「ネオダマ(新弾丸)」
・「六根」と「6CON」の話

第4章 農業、医療・健康・介護分野における新しいビジネスの創造
大規模化・農業の法人化、多角化の推進
IoT活用によるスマート農業の推進
IoTを活用した農業分野の新しいビジネス
植物工場と呼ばれる新しいビジネスの登場
バイオテクノロジーの技術を活用したビジネス
6次産業化による新しいビジネスの推進
食の安全・安心の追求に新しいビジネスの種が眠っている
医療・健康・介護分野における課題
医療・介護・健康データの収集とIoTの多面的活用(第1の視点)
医療・介護にAI・ロボット・ネットワークを活用する(第2の視点)
IoT活用による異分野との連携は新しいビジネスに不可欠(第3の視点)
医療の国際展開は新しいビジネス創造の最大の視軸(第4の視点)
■コーヒーブレーク
・デジタルヘルスケア

第5章 金融、生活・サービス分野における新しいビジネスの創造
金融分野でフィンテックが拓く新しいビジネス
フィンテックの中核技術「ブロックチェーン」が銀行を不要にするか
インターネット上の仮想通貨が決済手段を変える
フィンテックを利用した新たなサービスビジネス
金融分野におけるAI、ロボットの活用サービス
新規事業立ち上げの資金調達にクラウドファンディングを活用
生活・サービス分野における新しいビジネスの創造
スマート家電、コネクティッドホームが生活環境を変えるか
家庭用ロボット、ソーシャルロボットの活用サービス
高齢者・子どもに対する見守りサービス
民泊・ライドシェアが拓くビジネス
新しいビジネスを創造するにはオープンデータの活用が有効
■コーヒーブレーク
・ブロックチェーン

第6章 教育改革による新しいビジネスの創造
教育のグローバル化とデジタル化の波が押し寄せた
IoT技術は教育改革に必要不可欠な技術
プログラミング教育はIoTの原点
日本においても教育のデジタル化が急速に進展
インターネットによる遠隔教育がはじまった
遠隔教育にはVR技術の応用が効果的
教師の多忙を助ける校務支援システム
日本型教育を産業化の種にする
体系化された人財教育をグローバルに活用していこう
教育はわが国の産業界を救う切り札となる
IoT時代の人財育成教育はどうあるべきか
■コーヒーブレーク
・戦前の教育体系の復活
・タブレット
・VR

おわりに
用語解説
参考文献

はじめに

はじめに

 2015年7月に日韓IT経営協会の著作として『日本型第4次ものづくり産業革命』というタイトルの本を出版しました。
 ドイツでは、2010年に「ハイテク戦略2020」が発信され、2012年には国家をあげた製造業のスマート化に向けた「インダストリー4・0(Industrie 4.0)」が打ち出されました。またアメリカでは、ゼネラル・エレクトリック(GE)によって「インダストリアル・インターネット(Industrial Internet)」が発表されました。これらをきっかけに、わが国においても急速に「IoT(Internet of Things)」や「第4次産業革命」という言葉が飛び交うようになりました。それに伴い、ビッグデータ、クラウドなどの新しい技術的な言葉が「ものづくり」(この本では「ものづくり」は有形な人工物だけではないと定義しています)の世界で大きな話題を呼んでいます。
 ドイツのインダストリー4・0は製造業において、生産工場の競争力強化、工作機械、製造に必要なモジュールを世界へ輸出する拠点としての競争力強化を目的としています。しかし最近では、製造業だけでなく、健康管理や新エネルギーなど社会制度改革分野も対象としてきているようです。
 (IoT、ビッグデータ、クラウドなどの技術用語は、本書第1章「産業の未来を変えるIoTとは何か」で詳細に述べています。)
 一方、わが国の産業(特に製造業)においては、1991年にバブルが崩壊して以降、「失われた10年」と呼ばれる低成長時代がはじまり、小泉構造改革によりある程度景気が回復してきた2001年までそれは続きました。さらに2011年までは景気回復の実感がわかず、「失われた20年」とも呼ばれるようになりました。その間、多数の企業倒産や、従業員のリストラ、金融機関を筆頭とした企業の統廃合などが相次ぎ、わが国の経済は混沌とした時代を迎えていました。
 わが国が失われた10年とか20年と騒いでいる間、韓国や2000年以降急速に発展してきた新興国の台頭、それにつられてはじまったアメリカの国際的な勢力関係における弱体化などの外部環境の変化により、戦後、自動車産業に次いでわが国の経済を支えてきた家電産業(半導体も含む)が次々と失われていきました。
 特に韓国のサムスン電子の急速な発展や、中国産業の台頭には目覚ましい勢いがあります。わが国が直面している少子高齢化や地方の疲弊化など、早急に解決しなければならない問題が山積みになっている現状を考えると、果たして今後、わが国の産業はこのまま手をこまねいていて生き残れるのだろうかと心配です(吉川良三・畑村洋太郎『勝つための経営』講談社、2012)。
 そのような中で2014年頃から、ドイツのインダストリー4・0の影響でIoTが話題となっています。IoTは一般的には「モノのインターネット」と呼ばれています。しかし著者は「モノ」だけではなく、「ヒト」や「サービス」も含めたあらゆるものがインターネットを通じてつながることによって実現する、新しいビジネスモデルが創造可能になる概念であると解釈しています。
 経済産業省も2015年度の「ものづくり白書」で、「IoTとはネットワークの活用、ビッグデータの活用により設備の運用効率および顧客に提供するものづくりの変革であり、単に生産性を高めるだけでなくビジネスモデルを含む企業活動全体を再考し、再構築することである」と述べています。そのための技術として、ハードではセンサーやロボットおよび、身に付けられる新しい装置などが開発されてきているのです。
 またソフトの面ではAI(人工知能)、各種収集されたデータ(「ビッグデータ」と呼ばれています)を分析・解析する安価に利用可能なアプリケーションソフト群(クラウドサービス。「クラウドコンピューティング」と呼ばれています)などが開発されています。特に「深層学習※1」(ディープラーニング)と呼ばれるAIを活用したロボットの開発は、今までにない新しいビジネスを創造するのに役立つのではないかと思われます。
 IoTや第4次産業革命(通信革命)は、現在のわが国において2次産業に分類されている製造業をはじめ、農業や林業・漁業などの1次産業、3次産業に分類されているサービス業の垣根を越えた新しい産業が生まれてくるモメンタム(はずみ、勢い)になってくれることを期待しています。
 最近、巷のセミナーや講演会などで、IoTや第4次産業革命が、製造業の効率化や競争力の強化に役立つ技術であると強調されていますが、それらの技術や概念を今までにない新しいビジネスとともに新しい社会(スマート社会)を構築していくために活用すべきではないかと考えております。
 そこで本書では、現在わが国が直面している少子高齢化、地方創生、働き方改革を軸とした農業改革、社会保障改革、雇用改革、エネルギー改革、教育改革の新しいビジネスを創造するための軸、およびそのための創造の種について取り上げています。
 本書は、約1年半にわたって日韓IT経営協会の研究会で議論してきた内容を取りまとめたものです。
 また、第3章(新たなビジネスの座標軸を考える)、第4章(農業、医療・健康・介護分野における新しいビジネスの創造)、第5章(金融、生活・サービス分野における新しいビジネスの創造)、第6章(教育改革による新しいビジネスの創造)は、最初にそれぞれテーマについてのレジーム(過去の方策や制度)について述べています。それは、中国の宋史(1345年)に出てくる「我より古(いにしえ)を作(な)す(自我作古)」の故事にあるように、過去の方策や制度の背景を知ったうえで新しいビジネスを創造することが重要ではないかと考えたからです。
 第4次産業革命やIoTの新しい社会を迎えるにあたって、読者の皆様に本書が少しでもお役に立てば光栄です。
 なお執筆にあたって第1、2章は吉川、第3章は森田、第4、5章は菅谷、 第6章は奥出が担当しました。また、巻末に本書で使われた用語集、および参考文献を記載したので参考にしてもらえれば幸甚です。
 本文中に番号がついている用語は、巻末に用語解説を掲載しています。参考にしてください。
吉川 良三

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