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今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしいクロスカップリング反応の本

定価(税込)  1,620円

監修
著者
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サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-07715-9
コード C3034
発行月 2017年05月
ジャンル ビジネス 化学

内容

クロスカップリング反応は、日本の学術研究者が率先して発展させた反応技術で、2010年にノーベル賞に輝いた技術でもある。産業界での利用検討も活発化しており、有機ファイン製品(医薬、電子材料等)の合成手法として、急速に普及しており、現在、欠かせない技術となっている。本書では基礎と応用を分かり易く紹介。監修者はノーベル化学賞受賞者の鈴木章博士。

鈴木 章  著者プロフィール

(すずき・あきら) 理学博士

〈経歴〉
・1956年 北海道大学大学院理学研究科 修士課程修了
・1959年 北海道大学理学部 助手
・1960年 理学博士(北海道大学)
・1961年 北海道大学工学部合成化学工学科 助教授
・1973年 北海道大学工学部応用化学科 教授
・1979年 「鈴木・宮浦クロスカップリング反応」を開発・発表
・1994年 北海道大学定年退官 名誉教授
〈受賞歴〉
・2010年 ノーベル化学賞(クロスカップリング反応の開発)
・2010年 文化勲章・文化功労者

山本 靖典  著者プロフィール

(やまもと・やすのり) 博士(工学)

〈経歴〉
・1993年 北海道大学大学院応用化学専攻科 修士課程修了
・1993年 三菱化成株式会社 入社
・1995年 北海道大学大学院工学研究科 助手
・2003年 博士(工学)(北海道大学)
・2012年 北海道大学大学院工学研究院 特任准教授
〈受賞歴〉
・2007年 日本化学会北海道支部奨励賞(クロスカップリング反応の基礎研究)

江口 久雄  著者プロフィール

(えぐち・ひさお) 工学博士

〈経歴〉
・1988年 九州大学大学院総合理工学研究科 修士課程修了
・1988年 東ソー株式会社 入社
・1994年 工学博士(山口大学)
・1994年 東ソー株式会社 化学研究所 研究リーダー
・2010年 東ソー・ファインケム株式会社 事業企画室 室長
・2014年 東ソー株式会社 有機材料研究所 所長
〈受賞歴〉 
・2011年 有機合成化学協会賞(クロスカップリング反応の工業化)

宮崎 高則  著者プロフィール

(みやざき・たかのり)

〈経歴〉 
・2004年 九州大学大学院理学府 修士課程修了
・2004年 東ソー株式会社 入社
・2015年 東ソー株式会社 有機材料研究所 主任研究員

目次

目次

第1章 クロスカップリング反応ってなんだろう?
1 社会を支えるクロスカップリング反応 「有機合成の中で一番利用される反応」
2 クロスカップリング反応ってなんだろう? 「異なる分子も自由自在に結合」
3 反応開発の歴史 「日本人研究者が大活躍」
4 産業利用の歴史 「産業利用も日本企業が大活躍」
5 一番使われるクロスカップリング反応 「鈴木 ・ 宮浦反応が一番使われる」

第2章 クロスカップリング反応ってどうやって進むの
6 クロスカップリング反応の利点 「異なる化合物を狙い通りにつなげる」
7 クロスカップリング反応はどうやって進むの 「触媒サイクルで炭素をつなぐ」
8 触媒とは何だろう 「反応を起こす魔法の物質」
9 配位子とは何だろう 「配位子は触媒金属の鎧」
10 ハロゲン化合物の役割 「クロスカップリングに必要な化合物」
11 反応に使われる元素 「トランスメタル化の多様性」
12 鈴木 ・ 宮浦反応の塩基の役割 「ホウ素─炭素結合の性質を変える」
13 二重結合をつなげる 「共役ジエンの合成」
14 巨大天然物だってなんのその 「パリトキシンの全合成」
15 ベンゼン環をくっつける 「非対称ビアリールの合成」
16 どんな結合も思いのまま 「鈴木 ・ 宮浦反応でできる結合」

第3章 鈴木 ・ 宮浦反応が完成するまで
17 はじめてのクロスカップリング反応 「辻 ・ トロスト反応」
18 溝呂木さんは何をした人 「溝呂木 ・ ヘック反応」
19 触媒がまわった 「山本明夫博士の業績」
20 触媒サイクルの完成! 「熊田 ・ 玉尾・コリュー反応」
21 いろいろな金属を使ってみる 「村橋反応、根岸反応」
22 銅を使う 「薗頭 ・ 萩原反応」
23 スズを使う 「右田 ・ 小杉 ・ スティレ反応」
24 ホウ素を使う 「鈴木 ・ 宮浦反応」
25 ケイ素を使う 「檜山反応」

第4章 クロスカップリング反応の進化と応用
26 ボロン酸が必要だ! 「ボロン酸の合成の進歩」
27 進化し続けるボロン酸 「使い易いボロン酸の新しい形」
28 大事なホウ素を守ろう 「MIDA、DANによるホウ素原子の保護」
29 塩基は絶対必要か 「ボレートの利用」
30 ヘテロ原子も反応 「バックワルド ・ハートウィグ反応」
31 ハロゲンはもういらない 「擬ハロゲン化合物 ・ アルコキシ基の利用」
32 ハロゲンもホウ素も必要ない 「C─Hクロスカップリング」
33 貴金属はもったいない 「鉄触媒の利用」

第5章 暮らしを支えるクロスカップリング反応
34 毎日の暮らしを豊かにする反応 「電子機器類の普及に大きく貢献」
35 ノーベル賞ニュースも液晶ディスプレイから 「液晶ディスプレイの原理」
36 液晶にもかかせない反応 「液晶材料の種類と役割」
37 液晶材料の合成法 「ボロン酸原料のメリット」
38 紙のように薄い有機ELディスプレイ 「有機ELディスプレイの原理」
39 有機ELのメカニズム 「有機EL材料の種類と役割」
40 有機EL材料の合成法 「クロスカップリングが大活躍」
41 半導体は産業の米 「半導体の製造プロセス」
42 半導体製造で重要なレジスト材料 「レジスト材料もクロスカップリングで」
43 レジスト材料の合成法 「レジストモノマーが重要」
44 有機半導体の夜明け 「有機TFTの登場」
45 有機半導体にもクロスカップリング反応 「有機半導体材料の高性能化」
46 有機半導体材料の合成法 「有機半導体材料の高性能化に貢献」

第6章 健康を支えるクロスカップリング反応
47 毎日の健康にクロスカップリング反応 「医農薬の大量合成に貢献」
48 農薬の高性能化に貢献! 「農薬への利用例」
49 農薬の合成法 「鍵反応はクロスカップリング」
50 医薬品にもクロスカップリング反応 「世界中で使用される降圧剤」
51 医薬品(降圧剤)の合成法 「非対称ビフェニル合成の実用化例」
52 難病薬の開発にも使われる 「抗HIV剤、抗がん剤への貢献」
53 難病薬の合成法 「創薬化学にも大きく貢献」
54 診断薬にもクロスカップリング反応 「PET診断法の進展」
55 PET検査薬の合成法 「合成は時間との闘い!」
56 蛍光色素にもクロスカップリング反応 「生体分子の解析に蛍光色素が活躍」
57 蛍光色素の合成法 「高機能な蛍光色素開発に貢献」

第7章 クロスカップリング反応を支える企業群
58 どんな企業が支えているのかな? 「クロスカップリング反応の工業化」
59 ハロゲン化合物ならおまかせ! 「主役はハロゲン化合物」
60 有機金属化合物ならおまかせ! 「相手役は有機金属化合物」
61 各種ボロン酸ならおまかせ! 「ボロン酸は工業化原料の優等生」
62 特殊試薬ならおまかせ! 「ボロン酸の欠点は特殊試薬で解決」
63 クロスカップリング触媒ならおまかせ! 「工業的に使用されるパラジウム触媒」
64 クロスカップリング反応ならおまかせ! 「パラジウム代替触媒へのチャレンジ」
65 精製技術ならおまかせ! 「微量金属不純物の除去方法」

【コラム】
●ノーベル賞
●ノーベル化学賞
●ノーベル化学賞と有機合成化学
●役立つ触媒反応
●鈴木博士の毎日にもクロスカップリング反応
●クロスカップリング反応のスケールアップ
●触媒がなくてもできたと思ったら

参考文献
索引

はじめに

はじめに

 有機化合物とは炭素─炭素骨格を含む化合物で、私たちの暮らしを支える製品(電子材料、医農薬など)に広く使われています。もともと有機化合物は、生物体が作り出す化学物質の総称でしたが、現在では有機合成反応という技術により、多くの有機化合物が人工的に生産できるようになってきました。

 有機合成反応では、小さな有機分子を連結させながら、大きな有機化合物を作ることを目指します。この際に必要となるのが、異なる分子の炭素と炭素を自在に結合させる方法の開発でした。1972年に、京都大学の玉尾皓平博士らの研究グループは、有機マグネシウム化合物と有機ハロゲン化合物にニッケル触媒を用いて反応させると、効率的に炭素─炭素結合が形成することを見出しました。異なる分子の炭素と炭素を自在に結合させる「クロスカップリング反応」の誕生です。私たちの研究グループは、1976年に有機ホウ素化合物を用いるクロスカップリング反応を開発しました。有機ホウ素化合物は毒性が少なく、水や空気にも安定なため、工業化技術としての利用検討が大きく進展しました。現在では、クロスカップリング反応は、農薬(殺菌剤、除草剤)、医薬品(降圧剤、抗がん剤)、電子材料(液晶、有機EL)など様々な工業製品の製造に利用されています。

 今回、クロスカップリング反応の基礎(学術的解説)と応用(産業利用)を分かり易くまとめる書籍出版を企画しました。筆者は、私の最後の弟子である北海道大学の山本靖典博士(特任准教授)と、長年親交のある東ソー株式会社の江口久雄博士(有機材料研究所・所長)、宮崎高則氏(有機材料研究所・主任研究員)にお願いしました。
 
 本書は7章で構成されています。第1章では、クロスカップリング反応の概要をまとめました。第2章〜第4章では、クロスカップリング反応を学術的に解説しました。第5章〜第7章では、クロスカップリング反応の産業利用例を紹介しています。本書を読めば、クロスカップリング反応は、日本の学術研究者と企業研究者が先導して発展させた世界に誇るべき反応技術であることが良く理解できると思います。

 「資源のない我が国にとって、ユニークな技術と人材こそが資源である」と考えます。本書を通じて、クロスカップリング反応の面白さを理解し、化学(科学)に興味を持つ若者が増えることを強く願っております。

 最後に、本書の執筆にあたり、多くの方々に情報提供などのご協力をいただきました。また、日刊工業新聞社の阿部正章氏には、本書の企画から出版に至るまで、大変お世話になりました。ご協力いただいた全ての皆様に、心より御礼申し上げます。

平成29年5月 
北海道大学 名誉教授
(2010年度ノーベル化学賞)
鈴木 章

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