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未来の科学者との対話15
第15回神奈川大学 全国高校生理科・科学論文大賞 受賞作品集

定価(税込)  1,728円

編者
サイズ A5判
ページ数 288頁
ISBNコード 978-4-526-07710-4
コード C3050
発行月 2017年05月
ジャンル その他

内容

学校教育では「理科離れ」が進み、理科教育のあり方が問われている今、学生には創造性のある「探求活動」「課題研究」が求められている。そんな中、高校生の理科・科学の研究発表の場として、モチベーションを高め、理科人材を育成するために設けられた論文大会の受賞作をまとめた本。

目次

目次

はじめに 上村 大輔

●審査委員講評
論文の香り 紀 一誠
巨人たちの肩に立って 齊藤 光實
学びの大切さ 庄司 正弘
“理科・科学論文大賞”とともに15年 内藤 周弌
“進化”する好奇心 松本 正勝

●大賞論文
食虫植物「ウサギゴケ」の巧妙な仕掛け
横浜サイエンスフロンティア高等学校

●優秀賞論文
美しい「黄金四面体」との出会い
滋賀県立彦根東高等学校 SS部 数学班
兵庫県南部カルデラの北限はここだ!
兵庫県立西脇高等学校 地学部 マグマ班
繭を鮮やかに色づけする色素
島根県立益田高等学校

●努力賞論文
揺れる木々の振動エネルギーを有効活用
茨城県立水戸第一高等学校 化学部
月の砂「レゴリス」の秘密
埼玉県立春日部女子高等学校 地球科学部
アブラムシはなぜ特定の葉に集まるのか
佼成学園高等学校 128
金属と水溶液でのアーク放電発光特性の違い
京都府立洛北高等学校 サイエンス部物理班
本当の溶解度積(Ksp)を求めて
兵庫県立柏原高等学校 理科部
大藤山だけが、なぜ土砂災害を発生させるのか
兵庫県立加古川東高等学校 自然科学部地学班真砂土チーム
ゴキブリはなぜ平滑で垂直な壁を自由に歩けるのか
兵庫県立西脇高等学校 生物部 ゴキブリ班
金のコロイドの色を決めるのは何か
仁川学院高等高校 科学部
「穴の空いたバケツ」(b-CD)と包接
仁川学院高等学校 科学部
風の力で山を越えるハッチョウトンボ
島根県立浜田高等学校 自然科学部
広島花崗岩類の謎に迫る
広島大学附属高等学校 科学研究班
「土壌蓄積リン」有効活用への道
広島県立西条農業高等学校 園芸科 野菜専攻
ニワトリで「産み分け」を可能にするには
広島県立西条農業高等学校 鶏の性決定班
イロハモミジの翼果形状と落下時間の関係
愛媛県立八幡浜高等学校 自然科学部物理班
沖縄本島の形成要因
沖縄県立西原高等学校 自然科学部

●第15回神奈川大学全国高校生理科・科学論文大賞
団体奨励賞受賞校、応募論文一覧
神奈川大学全国高校生理科・科学論文大賞の概要

おわりに 井上 和仁

はじめに

はじめに

審査委員長 上村 大輔
 本年「神奈川大学全国高校生理科・科学論文大賞」は第15回を迎えました。全国の高等学校のご協力のおかげであると同時に、本事業の発足時から携わられた長倉三郎名誉委員長をはじめ、高等学校の理科教育に強い関心を寄せられた関係諸氏のご尽力の賜物であり、まずもって敬意を表したいと思います。なお、今回から審査委員会が刷新され新しい体制となりました。高等学校における理科教育のさらなる飛躍と、「志」豊かな研究者の育成の一助となることを希望して、一同、心を新たに臨んでおります。
 今回は全国57校から総数94編の応募をいただきました。ご指導いただきました先生方をはじめ、関係諸氏に心より感謝を申し上げます。本大賞の審査は従来の選考方式に則って進められました。すなわち、まず学内教員による専門委員会が組織され、専門的な立場で応募論文を審査評価します。その結果を受けて審査委員会が、高校生らしい研究論文のあり方や研究の進め方などからの評価も含めた判断のもと、大賞1編、優秀賞3編、さらに努力賞15編と団体奨励賞5校を選びます。専門委員会委員長として、専門的な立場で応募論文の選考の基盤を提案していただきました井上和人(神奈川大学理学部教授)委員長をはじめとする専門委員の各位に心より御礼を申し上げます。
 大賞に選考された横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校の「地下で魅せる食虫植物ウサギゴケ(原題)」は3人の共同研究論文です。問題設定から始まり、科学研究でもっとも大切なわくわくするような進捗状況を、新鮮な、高校生らしい感性でまとめあげた研究内容で、高い評価を受けました。よく知られた水中に生息する食虫植物タヌキモとは異なり、土の中で生きるウサギゴケがどのように線虫等を捕まえるのかを、形態面および物質面から考察し実験を進め、実に興味ある研究結果を見出しています。将来に向けて学術論文として発表できる内容と評価されます。タヌキモは捕虫嚢内部を陰圧にして、水中の線虫の取り込み口を開閉することにより制御しています。一方、ウサギゴケは地中に生息する線虫を特異な物質で誘引して捕虫嚢の内部に取り込み、外へ逃れないような形態を持っていることを、見事なスケッチでまとめあげています。物質の特定には至っていませんが、今後の研究で解き明かされると期待がかかります。忍耐力と高い研究意欲が認められ、高校生にふさわしい新鮮味のある優秀な研究であると評価されました。
 優秀賞を受賞した3編の中で、滋賀県立彦根東高等学校SS部数学班による「頂点の対面への正射影が三角形の五心になる四面体の形状(原題)」は高校生にとって注目度の高い大学入試問題に着目し、課題として取り上げた研究です。正四面体の形状を論理的に解き明かした論文は研究展開の明確さ、証明の流れと構成、いずれも読者への配慮が十分になされたものであり、今後の活躍につながるとして特に高い評価を受けました。
 同じく優秀賞の兵庫県立西脇高等学校地学部マグマ班の「兵庫県南部にあるカルデラの北限がどこで、どのようなマグマ活動が起こったのか(原題)」はもっとも身近な問題である、地域の地盤がどのように形成されたかを、高校生の研究グループらしく、長年にわたり調査研究した内容であります。カルデラの北限特定のためにマグマ活動の詳細な情報を路頭観察や岩石試料収集を実行し、科学的な方法で正確な情報として昇華させ、無理のない結論に到達させています。論文としての取りまとめに十分な時間を割き推敲した様子がうかがえ、完成度も高いと評価されました。
 優秀賞のもう1編、島根県立益田高等学校の福満和さんによる「ローダミンBを使ってつくった赤い繭・青い繭、クワの葉を含まない人工飼料で繭に有効に色をつける方法(原題)」も高い評価を受けています。食品用の色素で、カイコの繭を染色する方法の開発で、長い研究時間と多くの研究機関の援助で完成させた意欲的な内容と評価できます。応用面での情報提供も進め、さらなる進展に期待がかかります。
 高校生活の中であぶり出されてきた研究課題に対応した研究成果をまとめあげた論文からは、いずれも課題に真剣に、しかも真摯に取り組んできた跡が読み取れました。努力賞および団体奨励賞のなかにも優れたものがあり、今後の活躍をおおいに楽しみにしております。今回、受賞には至らず、悔しく思われた全国の高校生諸君の今後の活躍努力を祈念します。
 2015年9月より良き将来を実現するために、国連加盟国により「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals, SDGs)」が計画されました。内容は極度の貧困、不平等・不正義をなくし、地球を守るために設定されたものです。17の目標からなり、もちろん、食料、感染症、医薬品、地球温暖化問題等を含んでいます。2030年を目途としていますので、ここにおられる高校生諸君の科学技術への貢献がなくてはなりません。高い志を持って人類の繁栄に寄与されることをおおいに期待します。

プロフィール
上村 大輔(うえむら だいすけ)
 1945年岐阜県生まれ。1973年名古屋大学大学院理学研究科博士課程単位取得満期退学。理学博士。静岡大学教授、名古屋大学教授、慶應義塾大学教授、神奈川大学教授、金沢大学監事、日本化学会「化学と工業」編集委員長、神奈川大学評議員を歴任。現在、名古屋大学名誉教授、神奈川大学特別招聘教授。専門は天然物有機化学、ケミカルバイオロジー。
 編著書に、“Bioorganic Marine Chemistry”(共著)(Springer-Verlag、1991)、『現代化学への入門15生命科学への展開』(共著)(岩波書店、2006)、『入門ケミカルバイオロジー』(共著)(オーム社、2008)、『科学のとびら60天然物の化学─魅力と展望─』(編集)(東京化学同人、2016)、『化学の要点シリーズ18 基礎から学ぶケミカルバイオロジー』(共著)(共立出版、2016)、ほか。
 紫綬褒章受賞(2009年)

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