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日本のものづくりを救う!
最強の「すり合わせ技術」

定価(税込)  1,620円

著者
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サイズ 四六判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-07696-1
コード C3034
発行月 2017年03月
ジャンル ビジネス 機械

内容

ドイツが国策として推進する「インダストリー4.0」はじめ、国際的な条約や標準化の攻勢が続いている。そんな中、日本がものづくりで世界をリードし続けるためには、日本が得意とする「すり合わせ技術」(平等でオープンな社会だからこそできる製造現場と設計者の共同作業、階層を越えて知恵を出し合う、業界間の横の連携など)を継承し、いかに発展させるかにかかっている。本書では日本が得意としてきた「すり合わせ技術」について、あらためて見直し、どのように「すり合わせ技術」を活用すればいいのかなどに触れつつ、日本企業の生きる術を説く。

津曲 公二  著者プロフィール

(つまがり こうじ)
株式会社ロゴ 代表取締役社長 東京都市大学非常勤講師。日産自動車(株)で、鋳造工場技術員を振り出しに、本社技術部を経て財務部門で自動車ビジネスを学ぶ。開発部門ではパワートレインの商品企画を担当、新エンジン開発などのプロジェクトに参画。同社退職後、研修企業勤務を経て2003年5月に酒井昌昭とともに(株)ロゴを設立し現在に至る。著書に「仕事は半分の時間で終わる!」(ダイヤモンド社)、「坂の上の雲に学ぶ勝てるマネジメント」(総合法令出版)などがある。

酒井 昌昭  著者プロフィール

(さかい まさあき)
株式会社 ロゴ 代表取締役副社長、株式会社フォーキスト 技術・経営顧問。ソニー(株)で、主に製品開発、設計業務に従事。民生用製品から業務用システム製品開発など幅広い範囲で、多くの商品化プロジェクト、海外R&Dプロジェクトを経験。設計業務改革のプロジェクト活動中にプロジェクトマネジメントの真価と効用を体感、マネジメント研修講師の道に踏み出し現在に至る。著書に「仕事の9割は『段取り』で決まる!」(高橋書店)、「人生に役立つ『坂の上の雲』名言集」(総合法令出版)などがある。

ゆきち先生  著者プロフィール

1980年生まれ。立教大学社会学部卒。日刊スポーツ新聞などで4コマ漫画を連載。漫画を担当した書籍に「ちょこっと改善(日本経営合理化協会)」「みんなのおバカメ〜ル(ぶんか社)」などがある。フジテレビ『人志松本の○○な話』に出演し、すべらない話に認定された経験もある。

目次

目次

はじめに 

第1章 効率一辺倒はもうやめよう
~わが国は「見えない資産(無形の資源)」の宝庫
❶見せかけとほんものを見分ける…
労働生産性で最下位を続ける日本 
❷わが国の問題はもっと別なところにある 
❸見かけの効率とほんものの効率 
❹わが国のものづくり、最強の武器は「すり合わせ技術」 

第2章 国際標準に振りまわされる日本
❶自分に都合のよいルールづくりが得意な欧米 
❷戦略には都合のよいホンネがある 
❸欧米の発想は制覇、わが国は共存・共生

第3章 「すり合わせ技術」はニッポンの宝
~わが国にある独自の資源を活かす
❶天然資源はなくても技術大国になれたのは 
❷いまそこにある資源を活かす 
❸ものづくり再興・活性化のカギは身近にある 
❹自社技術を「すり合わせ技術」で効果的にみがく 
❺業際領域のマネジメントに「すり合わせ技術」は欠かせない 

第4章 戦略に強くなるカギも「すり合わせ技術」にある
❶戦うと決めたことが戦略のすべてだった 
❷国際情勢をしっかりつかんだ日露戦争の負けない戦略 
❸誰でもリーダーは務まる、そのカギは「たばねる力」 
❹おみこし経営と「すり合わせ技術」は相性がよい 
❺戦略よりも戦術にかたよる日本 
❻技法はその思想を学ぶと戦略に通じる 

第5章 チーム力をみがくための技術者の役割
❶技術の寿命とビジネスの寿命 
❷技術者が成長する4つのステージ 
❸技術者がリーダーシップを発揮する 
❹高いレベルのチームづくりを目指す 
❺全体観で技術者の器量を拡大する 
❻技術者倫理は頼りになる援軍 
❼技術者がもっと発信すれば社会のクオリティがあがる 

第6章 日本のビジネス道を世界に広める
❶わが国の資源をあらためて振り返る 
❷経済と道徳を融合させた渋沢栄一 
❸行き過ぎた儲け主義を否定した創業者の信念 
❹誠実で真摯な努力が世界で味方をふやす 

おわりに わが国の資源を活かす 
推薦文 「すり合わせ技術」は日本の技術者にとって最強の武器になる 
謝辞 

はじめに

はじめに

労働生産性で最下位を続ける日本は、ダメな国か?
 わが国は、平等でオープンな階層のない社会です。
 大きな災害があっても略奪や暴動がおこらない、よほどのことでもないかぎり公共サービスもマヒしない、きわめて安定している社会です。
 我われ日本人には当たり前ですが、世界的に見ると理想的で素晴らしい国といえます。しかも人口が1億をこえる先進国にもかかわらず、このような社会を実現しているのは日本だけです。
 ところで、わが国の労働生産性は、統計データのある1970年以降、主要先進7カ国の中でずっと最下位です。労働生産性は、効率の指標ですが、効率をくらべるなら、似たものどうしでなければ意味がありません。
 社会の安定を維持していること、想定外の事態で安定が破られたとしても早期に復帰できること、などの評価は労働生産性よりもはるかに大事なことではないでしょうか。そういう大事なことをそっちのけにしている国と日本を同じように比較しても、ほとんど意味がありません。安定した社会を評価する指標がなければ、本当の国際比較はできません。
 効率だけを評価する指標を追求することにしたら、日本を壊すことになるでしょう。

効率一辺倒をやめれば、わが国はもっと発展する
 我われ日本人が目ざす社会は、人を大切にし、人を重視する社会です。
 そのために必要なことは効率を上げることではなく、問題はもっと別なところにあります。
 日本のものづくりを一段と発展させるために、解決しておかなければならない課題があります。
 まず、著名人でない無名の人の話、新人の話を本気で聞く姿勢がないこと、はなはだしいときはまったく無視してしまっていること、です。
 つぎに、わが国には社会的な階層はありませんが、企業間には階層があり、協働活動の障害になっていることです。ここでいう企業間の階層とは、元請けと下請けの関係です。
 さらに、ほんとうの「安全」をごまかして、見せかけで「安心」を与えていることです。安全と安心の性質の違いについては、あとで述べます。
 これらの課題を解決する努力をすると、わが国をもっと発展させることにつながります。

『すり合わせ技術』は、わが国だけの武器
 すり合わせは、もともと「物ごとをうまく調整する」という意味で使われます。
 自動車産業では、自動車メーカーの要望に合わせて、部品メーカーが部品を独自に設計し、お互いに細かく調整しながら製品をつくりこんでいきます。そもそも自動車は、エンジン、サスペンションやボディなど、個々のモジュールごとに開発を進めても、全体として最適な性能は得られません。各部門がお互いに連携してモジュールを調整したり変更したりして、つまり、すり合わせをしながら開発を進めます。
 デジタル化の進展によって、すり合わせのあり方は変わろうとしています。改善コンサルタントの柿内幸夫氏は、素晴らしい提案をされています。
 “「もののすり合わせ」から「知のすり合わせ」へ”
 すり合わせの対象は、デジタル化によって「もの」のすり合わせから、「知(知識)」のすり合わせに転換できます。そのように考えると、従来のすり合わせ能力をいくらでも発展させることができます。
 この発展形を、「すり合わせ技術」と呼ぶことにしました。
 すり合わせ技術は日本だからこそできること、しかも、わが国だけの最強の武器になることを、これから述べていくことにします。
 本書では、すり合わせ技術を使いこなすだけにとどまらず、技術者の生き方や日本のビジネス道などを6つの章(観点)にして、述べています。
 第1章 効率一辺倒はやめる。わが国は「見えない資産(無形の資源)」の宝庫であり、社会の安定を維持していること、これはどこの国もなし得ない優れた特質です。すべてにおいて効率指標をもちこむことをやめれば、わが国はもっと発展できます。
 第2章 国際標準に振り回されない。国際標準にはホンネがある。物ごとには、もっともな建て前や美しいかけ声の裏に必ず都合のよいホンネがあります。これらを知り、自らが提案できるためにはどうすればよいか。筆者たちが企業で体験した事例を加えています。
 第3章 「すり合わせ技術」。わが国でなければできないことは、「見えない資産」を知り、他者がまねできないやり方を生み出すことです。いまそこにあるさまざまな資源の活用を考えます。
 第4章 戦略に強くなるカギも「すり合わせ技術」。わが国は戦略で負けています。マクロよりもミクロが気になり、手法に関心をよせるが、残念ながら、その背景にある思想(ベースにある考え方)はあまり気にしない傾向があります。すり合わせ技術を上手に使えば、戦略と戦術は同時進行できることをみていきます。
 第5章 チーム力をみがくために技術者がはたすべき役割。技術者はやりがいのある仕事です。とくに日本においてはそうだと思います。職場で仕事をしながら自分はどう成長するか、技術者のリーダーシップとは何か、いざというとき判断がぶれないための軸にしたいことなど、技術者の器量について述べます。
 第6章 日本のビジネス道。積極的に世界に向けて発信すべきことを提案しています。誠実で真摯な努力を基本にする日本のやり方は、世界の各国から信頼されています。いま世界中でカネ儲け第一のやり方が広まっています。日本のビジネス道がこれからも世界で信頼されつづけることを述べます。
 日本のように共存や共生に重きをおく国は、世界にもっとあったはずですが、いまではほとんど日本だけになりました。自分の企業の利益だけしか考えないやり方、市場を独占するのがベストという考え方などは、いずれは破綻してしまうことでしょう。
 日本のやり方は世界に広めるべきすばらしいもの、という認識を、技術者にかぎらず、すべての人たちに強くもってもらいたいと思っています。

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