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おもしろサイエンス
匠の技の科学 動作編

定価(税込)  1,728円

編者
サイズ A5判
ページ数 144頁
ISBNコード 978-4-526-07693-0
コード C3034
発行月 2017年03月
ジャンル ビジネス 機械

内容

匠と呼ばれる熟練者たちの作業動作は、素早い、疲れない合理的な動きを行っており、そこには美しさも感じられる。伝統産業だけでなく、機械化された現代工業の現場においても重要な役割を果たしている匠の作業動作を科学的に解説する。

京都工芸繊維大学 伝統みらい教育研究センター  著者プロフィール

執筆者

濱田 泰以   京都工芸繊維大学伝統みらい教育研究センター・センター長(⑦、⑨、⑩、㉜、㊱、第1章・第2章コラム)
浅田 昌久   浅田製瓦工場三代目/京都工芸繊維大学伝統みらい教育研究センター・特任教授(⑦)
飯  聡    京都調理専門学校・日本料理教授/ホスピタリティー産業振興センター・主任/京都工芸繊維大学伝統みらい教育研究センター・特任教授(⑬)
池坊 専好   華道池坊・次期家元(㉑)
池元 茂    BODY GARAGE IKEMOTO・代表/京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科博士後期課程(㉙、㉚)
今村 雅紀   京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科博士後期課程(㉛)
内田 敏一   ㈱UCHIDA・代表取締役社長(㉝)
太田 智子   ㈱中央ビジネスグループ・代表取締役(③)
大西 巧    ㈲大與・代表取締役(⑱)
岡  岩太郎  ㈱岡墨光堂・代表取締役(⑰)
小澤 修作   小澤産業㈱・取締役会長(㉛)
来田 宣幸   京都工芸繊維大学基盤科学系・准教授(㉔)
鬼頭 秀仁   京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科博士後期課程(㉗)
久米 雅    京都文教短期大学食物栄養学科・講師(⑤)
後藤 彰彦   大阪産業大学デザイン工学部情報システム学科・教授(第3章コラム)
佐藤 ひろゆき ㈲京壁 井筒屋佐藤・代表/京都工芸繊維大学伝統みらい教育研究センター・特任教授(①)
柴田 勘十郎  御弓師/京都工芸繊維大学伝統みらい教育研究センター・特任教授(第2章コラム)
下出 祐太郎  京都産業大学文化学部京都文化学科・教授/下出蒔絵司所三代目(⑧)
杉本 卓也   ㈱KOYO熱錬・専務取締役(㉘)
須田 真通   ㈱大興製作所・代表取締役社長(㉞)
須田 充訓   ㈱須田商店・代表取締役(㉟)
高井 由香   大阪産業大学デザイン工学部・専任講師(⑮、⑯)
武田 知也   ㈱テイスト・代表取締役(㉒、㉓)
辻  賢一   金網つじ・代表/京都工芸繊維大学伝統みらい教育研究センター・特任教授(②)
豊岡 麻由子  藤井製桶所(⑭)
中川 ひろみ  聖泉大学看護学部・准教授(④、⑳)
中谷 隼人   大阪市立大学大学院工学研究科・講師(⑫)
名波 則路   日本大学理工学部機械工学科・助手(㉝)
仁科 雅晴   ㈱仁科旗金具製作所・代表取締役(⑥)
風呂井 玲子  京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科博士後期課程/帝塚山大学文学部・非常勤講師(⑲)
森  充範   ㈱タンゴ技研製造部製造1課・課長(㉖)
横田 香世   京都府文化芸術振興課・専門幹(⑪)
吉川 貴志   新居浜工業高等専門学校機械工学科・教授(㉕)
芳田 哲也   京都工芸繊維大学基盤科学系・教授(⑤)

目次

目次

はじめに

第1章 疲れない動作
1  壁塗りは疲れない動作が決め手
2  手編みで金網を連続作製
3  お年寄りに安心してもらう介護とは自分が疲れないこと
4  介護者の腰痛を防ぐ上手な体位変換術
5  あれだけの迫力の相撲の立合いで、なぜけがをしないの?

第2章 素早い動作
6  旗頭の打刻は単純ゆえに難しい
7  京瓦の防水性は磨き工程がカギを握る
8  刷毛の通し方の差で漆塗りの作業効率は上がる
9  鼓の音の良し悪しを左右する調べ緒作り
10  京菓子の包餡作業は精密機械並み精度の一瞬の早業
11  パステルで「その瞬間」を速写する

第3章 人間にしかできない動作
12  総火造り鋏の形状は叩きだけで作られる
13  包丁研ぎのコツは、大きく動かすこと
14  丸竹を均等に2分割するのは難しい
15  京提灯の美しい仕上がりは見極めにあり
16  美しい京唐紙を生み出す作業手順の秘密
17  掛軸のしなやかさは打刷毛の叩打で生まれる
18  手でしごいて積層して和ロウソクの出来上がり
19  糸締めのパチンが京鹿の子絞りの命
20  入浴できない患者を気持ち良くさせる洗髪動作

第4章 美しさを感じる動作
21  いけばなの美しさはその振る舞いから生まれる
22  美しいお辞儀は誠実な気持ちの表れ
23  タイお辞儀の心は動作の細部に宿る
24  祇園囃子の叩き方のコツ

第5章 現代工業での匠の動作
25  普通旋盤工のチャッキングのコツ
26  見えないバリを取れば超精密部品完成
27  0・01㎜の精度を実現する鍛造型の磨き作業
28  金属試料の平坦な断面は指先に秘められた力加減から生まれる
29  均一な塗装は姿勢から生まれる
30  図面から板金加工でパーツをたたき出す
31  高品質な溶接に欠かせない鋼板端部の開先加工
32  ガラス繊維と樹脂の同時吹付けのコツは膝にある
33  炭素繊維の積層は隅々までに神経をとがらせる
34  真っ赤な石英ガラス管を一気に曲げ加工
35  オートメーションの紙管作りを支える手作業
36  機械で編むのに、なぜセーターの出来上がりが違うの?

column
良い製品を作り続けるには「間」が必要
弓作りのハイライト「弓打ち」は接着剤の固まる前に
丸台を用いて美しい組紐づくりに挑戦

はじめに

はじめに


 モノづくりの匠にはコツがあり、その動きには合理性があるといわれています。コツは体の中に浸み込んでおり、匠にとっては当たり前のことです。それゆえに説明ができず、他の人に理解してもらう説明が難しいのです。これが「暗黙知」であり、「親方の背中を見て」で表される修行方法の基になっています。しかし、何らかの方法で動きのデータを取り、匠に説明して「そうだ、これがコツだ!」というお墨付きをもらえれば、そのデータを基に他の人やお弟子さんに説明することができます。これが「形式知」です。
 京都工芸繊維大学伝統みらい教育研究センターでは匠たちの体の動きを数値化し、データとして集めています。その動きを本書では「疲れない動作」「素早い動作」「人間にしかできない動作」「美しさを感じる動作」「現代工業での匠の動作」に分けてみました。データを取得した分野は伝統的なモノづくりだけでなく、芸能、おもてなし、介護などの分野へと拡がっています。匠、ベテランさん、初心者など熟練度合いによって、いかに体の使い方が異なるかがお分かりいただけるでしょう。
 ここで基本に戻ってみましょう。人の体を使う行為においては疲れない方がいいですね。疲れると仮にその日は上手くいったとしても、次の日にも同じようにはできないかもしれません。つまり、「疲れないように配慮した動き」こそが、ベテランである匠の動きではないかと考えています。ならば、疲労を遠ざけるために匠たちの動作には何か共通点があるのでしょうか? まだはっきりとはわかりませんが、想定しているのは「間」です。作業の途中に上手く休んでいるのではないかという考えに基づいています。本書のデータから匠たちの「間」を一緒に探してみましょう。
 本書の発行に当たりましては、執筆者の皆様をはじめ研究やデータ採取にご協力いただきました方々に厚く御礼を申し上げます。さらに、類いなき忍耐力で上梓まで導いてくださった日刊工業新聞社出版局書籍編集部の森山郁也様、企画段階から多大なるご助力をいただいた大阪産業大学の後藤彰彦教授、見事な調整力と腕力で数多の原稿を揃えた帝塚山大学の風呂井玲子さんに心から感謝を申し上げます。皆様のご尽力のお陰で本書が発刊されました。
 今後も伝統を中心とした研究活動を続け、そして人の輪を広げていきたいと考えております。伝統産業工学の発展には、一つの学問分野にとどまらない学際的なアプローチが不可欠であると実感しています。より多くの研究者の参画によって、大きくこの分野が進歩し、そして「日本のものづくりと文化 」に貢献できることと信じております。

京都工芸繊維大学伝統みらい教育研究センター
センター長 濱田泰以

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