買い物かごへ

今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしい高分子の本

定価(税込)  1,620円

著者
著者
著者
著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-07699-2
発行月 2017年03月
ジャンル ビジネス 化学

内容

幅広い分野の工業製品の材料として用いられる高分子材料には様々な特性と機能があり、目的や用途に応じた性質や形態をもつものを作り出すことができる。高分子の様々な特性を発揮する基礎となる化学構造、化学結合、高分子の様々な機能を解説する。

扇澤 敏明  著者プロフィール

(おうぎざわ としあき)


1983年東京工業大学卒業(工学部有機材料工学科)、1987年東京工業大学大学院博士後期課程修了(理工学研究科有機材料工学専攻)、1987年DuPont社Experimental Station客員研究員、1989年通産省工業技術院繊維高分子材料研究所研究員、1993年通産省工業技術院物質工学工業技術研究所主任研究官、1994年東京工業大学助教授(工学部有機材料工学科)、2011年東京工業大学大学院教授(理工学研究科物質科学専攻)。工学博士


著書:「高性能ポリマーアロイ」(共著)、「新高分子実験学1 高分子実験の基礎」(共著)、「ポリマー ABCハンドブック」(共著)、「光学用透明樹脂における材料設計と応用技術」(共著)、「高分子先端材料one point 高分子分析技術最前線」(共著)、「実践 高分子の構造・物性分析・測定」(共著)、「実用プラスチック分析」(共著)、「ここだけは押さえておきたい 高分子の基礎知識」(共著)、「身近なモノから理解する 高分子の科学」(共著)

柿本 雅明  著者プロフィール

(かきもと まさあき)


1975年山口大学卒業(工学部工業化学科)、1980年東京工業大学大学院博士後期課程修了(総合理工学研究科電子化学専攻)、1980年相模中央化学研究所研究員、1982年東京工業大学助手(工学部有機材料工学科)、1987年東京工業大学助教授(同上)、1997年東京工業大学教授(同上)、1998年東京工業大学大学院教授(理工学研究科有機・高分子物質専攻)、2017年同大学退職。理学博士


著書:「最新ポリイミド材料と応用技術」(監修)、「デンドリティック高分子 多分岐構造が拡げる高機能化の世界」(監修)、「エレクトロニクス実装用高機能性基板材料」(監修)、「ナノマテリアルハンドブック」(共著)、「機能性超分子」(共著)、「ここだけは押さえておきたい 高分子の基礎知識」(共著)、「身近なモノから理解する 高分子の科学」(共著)

鞠谷 雄士  著者プロフィール

(きくたに たけし)


1977年東京工業大学卒業(工学部有機材料工学科)、1982年東京工業大学大学院博士後期課程修了(理工学研究科繊維工学専攻)、1982年東京工業大学助手(工学部有機材料工学科)、1986年4月~1987年6月Visiting Scientist, The University of Akron, USA、1991年東京工業大学助教授(工学部有機材料工学科)、2001年東京工業大学大学院教授(理工学研究科有機・高分子物質専攻)。工学博士


著書:“High‒Speed Fiber Spinning”(共著)、「材料科学への招待」(共著)、“High-Performance and Specialty Fibers”(編著)、「成形加工におけるプラスチック材料」(共著)、「繊維の百科事典」(編著)、「やさしい繊維の基礎知識」(共著)、「プラスチック成形品の高次構造解析入門」(共著)、“Handbook of Textile Fibre Structure Vol.Ⅰ&Ⅱ”(編著)、「ここだけは押さえておきたい 高分子の基礎知識」(共著)、「身近なモノから理解する 高分子の科学」(共著)

塩谷 正俊  著者プロフィール

(しおや まさとし)


1982年東京工業大学卒業(工学部有機材料工学科)、1987年東京工業大学大学院博士後期課程修了(理工学研究科有機材料工学専攻)、1987年鶴岡工業高等専門学校助手(電気工学科)、1989年東京工業大学助手(工学部有機材料工学科)、1992年7月~1993年6月Guest scientist, National Instituteof Standards and Technology, U.S.A.、1997年東京工業大学助教授(工学部)、2007年東京工業大学准教授(大学院理工学研究科)。工学博士


著書:「第3版 繊維便覧」(共著)、「繊維の百科事典」(共著)、「材料科学への招待」(共著)、「炭素素原料科学の進歩Ⅲ」(共著)、「ここだけは押さえておきたい 高分子の基礎知識」(共著)、「身近なモノから理解する 高分子の科学」(共著)

目次

第1章 高分子とは
1 「高分子」という概念はいつ確立されたか 「素材は古くからあるが概念は意外に新しい」
2 身の回りの高分子 「私たちの体も工業製品も高分子」
3 高分子はどんなところで使われているか? 「利用のバリエーションは極めて多彩」
4 高分子は他の材料と比べてどこが優れているか 「高分子は無限の可能性を秘めている」
5 高分子製品が家庭に届くまで 「ナフサ→モノマー→高分子→成形品」
6 高分子材料から工業製品を作る 「重合した高分子をペレットにして成形機に投入が一般的」
7 熱可塑性高分子と熱可塑性高分子 「加熱すると軟らかくなる高分子、硬くなる高分子」
8 汎用プラスチックとエンジニアリングプラスチック 「多量に使われるプラスチック、特別な使われ方をするプラスチック」
9 ゴムはなぜ伸び縮みする? 「エントロピー弾性」
10 高温で流動性をもつゴム 「熱可塑性エラストマー」
11 結晶と流体の両方の性質をもつ高分子 「液晶高分子」
12 特殊な形状の高分子たち 「デンドリティック高分子、星形高分子、環状高分子」

第2章 高分子の合成
13 モノマーが重合してポリマーになる 「すべての高分子はモノマーの共有結合で構成される」
14 重合法のいろいろ 「合成する高分子によって重合法は使い分けられる」
15 連鎖重合と逐次重合 「重合反応には2種類の進み方がある」
16 モノマーが1つ1つ反応する連鎖重合 「活性種による3種類の反応形式」
17 ラジカルを活性種とするラジカル重合 「工業的に最も多用される重合法」
18 カチオンとアニオンを開始剤とするイオン重合 「カチオン重合とアニオン重合」
19 不活性モノマーを合成する配位重合 「高分子合成を助ける触媒技術」
20 重縮合と重付加 「逐次重合の2つのタイプ」
21 熱硬化性樹脂の合成法 「フェノール樹脂、エポキシ樹脂」

第3章 いろいろな形をとる高分子
22 高分子鎖の長さのばらつきで材料の性質は変わる 「分子量と分子量分布」
23 異種類のモノマーで構成される共重合体 「モノマーの配列や長さを利用して材料開発」
24 高分子1分子の形は糸まり状 「ランダムコイル」
25 構造式は同じでも性質の異なる高分子 「コンフィギュレーション」
26 高分子の特徴は絡み合いから生まれる 「高分子の分子鎖は長くて絡み合う」
27 分子鎖の配向状態で生まれる様々な特徴 「配向方向とその直交方向とで異なる性質」
28 結晶化できる高分子、結晶化できない高分子 「高分子の結晶構造は複雑な階層構造」
29 溶媒に溶ける高分子 「フィルムや膜の作製に利用される」
30 ガラスにもなる高分子 「新幹線や飛行機にも使われる高分子ガラス」
31 液体のような固体のような高分子 「高分子ゲル」

第4章 高分子のいろいろな性質と機能性
32 高分子の熱特性① 「冷却による2種類の固化」
33 高分子の熱特性② 「金属やセラミックスよりも熱を伝えにくい」
34 高分子の燃焼性 「燃えやすい高分子を燃えにくくさせる」
35 高分子の機械的特性① 「成形条件により強度・靱性は大きく異なる」
36 高分子の機械的特性② 「摩擦力 ・ 摩耗は必要な場合、減らしたい場合がある」
37 高分子のレオロジー特性 「弾性体にも流体にも見える粘弾性体」
38 高分子の光学特性① 「透明 ・ 散乱 ・ 屈折 ・ 偏光」
39 高分子の光学特性② 「分子鎖の方向によって屈折率は異なる」
40 紫外光に化学反応する感光性高分子 「UV効果塗料、フォトレジスト」
41 高分子の電気特性 「基本的に電気が流れにくく帯電しやすい」
42 高分子の表面特性 「フッ素樹脂になぜ食材がこびりつきにくいのか」
43 物をくっつける高分子 「接着剤と粘着剤」
44 酸化を防ぐガスバリア膜 「分子間の隙間を小さくし酸素を透過させない」
45 溶質と溶媒を分離する高分子膜 「RO膜 ・UF膜・MF膜」
46 光と酸素で高分子は劣化する 「電子部品や自動車部品は劣化しにくい高分子が使われる」
47 水を吸収する高分子 「高吸水性高分子(SAP)」

第5章 高分子製品の作り方
48 3次元形状の成形品の作り方 「最も一般的な射出成形」
49 中空成形品の作り方 「ブロー成形法のいろいろ」
50 合成繊維の作り方 「溶融紡糸法、溶液紡糸法」
51 炭素繊維の作り方 「ポリアクリルニトリル繊維を高温処理」
52 不織布の作り方 「織らずに作れる繊維製品」
53 フィルムの作り方 「フィルムブロー法、 テンター法」
54 3次元データを基に樹脂を3次元造形 「3Dプリンター」
55 違う種類の高分子をブレンド 「既存の材料を混ぜ合わせて弱点を克服」
56 強くて軽い高分子系複合材料 「航空機やスポーツ用品にCFRPの用途が拡大」

第6章 生体・環境に関連する高分子
57 人体を構成する高分子 「タンパク質」
58 人間が消化できる高分子、消化できない高分子 「でんぶんとセルロース」
59 遺伝情報を伝える高分子 「DNA、RNA」
60 医療に使われる高分子材料 「輸液パック・縫合糸・人工血管」
61 温度で性質が変化する高分子 「再生医療で注目される細胞シート作製で活躍」
62 微生物が分解してくれる高分子 「生分解性高分子」
63 土木・建築に用いられる繊維製品 「ジオテキスタイル」
64 生物資源から作られる高分子材料 「バイオマスプラスチック」
65 エネルギー分野への応用 「軽量化・風力発電・燃料電池・浸透圧発電」
66 プラスチックは再生・再利用しよう 「リサイクルの問題点」


【コラム】
●ノーベル賞を受賞した高分子の研究
●重合触媒の変遷
●高分子の大きさはどれくらいか
●ヤモリの秘密
●紙は繊維でできた多機能材料

索引

はじめに

はじめに

 巨大な直鎖状の分子としての高分子の概念が確立したのは1930年代です。動物や植物は高分子から出来ているので、もちろん、それよりずっと前から高分子は幅広く利用されていました。単に天然物というだけではなく、工業材料という観点から考えても、例えばセルロースという天然高分子からレーヨンを製造する技術も、天然ゴムの分子鎖を架橋して強靭なゴムを製造する加硫技術も、高分子の概念が確立する前の1800年代に発明されています。しかし、この巨大分子の存在が認知されるようになることで、高分子に関わる科学・技術は急速に発展しました。まず、化学合成により巨大分子を作り出そうとする動きが出てきます。その象徴的なものがデュポン社のカロザースの研究ですが、その後、極めて短期間に様々な高分子の合成法が確立しました。そして今、高分子の合成研究は、より精密に高分子を作ること(例えば、分子鎖の長さを揃える、構造欠陥をなくすなど)、様々な複雑な形状の高分子を作ることなどを目指して発展を続けています。ここで大事なことは、高分子の特性に関わる学問の発達と相俟って、必要とされる性質を発現する分子構造を予め設計し、合成技術を駆使してこれを現実のものとするというモノづくりの道筋が確立しつつある点です。

 巨大分子である高分子は、物理的な観点からも様々な興味深い特徴をもっています。その根源は、分子鎖が長すぎて自由に動けないため、落ち着くべきところに落ち着いた配置となることが実質的に難しい点にあります。自由に動けない状況を説明するのに分子鎖同士の絡み合いという概念が導入され、落ち着きどころに到達できないことから、結晶化した領域と結晶化できなかった領域が混ざり合った構造となることが高分子の構造の基本になります。一方、まったく結晶化していないのに固体のように固まっている高分子もあります。また、強い共有結合でつながった分子鎖には長さ方向という概念があることから、分子鎖の方向を揃えることにより材料の性質に強い方向依存性を生じさせることができます。ゴムやゲルのように極めて柔らかい材料から、様々な高強度・高弾性率繊維のように極めて固く強い材料まで作り出すことができるのも高分子の大きな特徴です。ただし、「分子鎖の配列状態を自在に制御して理想的な性質をもつ材料を作る」という課題の解決にはまだまだ時間がかかりそうです。

 一方、高分子は、巨大分子であるが故の様々な実用的な性質をもつことにも注目する必要があります。高分子の代名詞のように使われる「プラスチック」という言葉は、柔らかくなること(可塑化)を意味しています。比較的低温で柔らかくなり、しかし適度な粘り気があってさまざまな形の製品を容易に作りだすことができることが高分子の最大の特徴です。世界の繊維の生産量の6割以上を合成繊維が占めていますし、容器、家電、生活用品、自動車、航空機まで、私たちの身の回りは合成高分子を使った製品であふれています。プラスチックが環境問題の根源のような言い方をされる場合もありますが、実は、合成高分子なしに我々の現代の生活は成り立たなくなっています。さらに踏み込んで言えば、軽量、高強度、高生産性の高分子素材の存在が資源・エネルギー問題の緩和に大いに役立っています。

 本書では、このように物理的観点からも化学的観点からも興味深い「高分子」という素材について、単にサイエンスの観点ばかりでなく実用的な観点からもその真髄に触れていただけるように幅広い項目を選択し、それぞれの項目についてなるべく優しく解説するよう心がけました。この不思議な素材の魅力を少しでも感じ取っていただければ幸いです。

買い物かごへ