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ワイヤレス給電技術入門

定価(税込)  2,376円

著者
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サイズ A5判
ページ数 176頁
ISBNコード 978-4-526-07691-6
コード C3054
発行月 2017年03月
ジャンル 電気・電子

内容

ワイヤレス給電への期待は、電気自動車の普及の起爆剤として、電子機器や家電の革新的なデザインの次の一手として、日々高まっている。次々と実用が進む中で、課題も見えている。本書は技術者が応用に活かすための、いくつかある給電方式の原理と応用の考え方、業界動向を中心に書かれた入門書。

クライソン トロンナムチャイ  著者プロフィール

(Kraisorn Throngnumchai)
1958年タイ・バンコク生まれ。1976年来日。1986年、東京大学大学院工学系研究科電子工学博士課程修了。博士(工学)。同年、日産自動車㈱入社。現在は同社総合研究所のシニア・リサーチ・エンジニア。技術士(電気電子部門、総合技術監理部門)他、第一級陸上無線技術士や第三種電気主任技術者などの国家資格を保有。
高周波技術とパワーエレクトロニクス分野の融合を目指して自動車電磁干渉問題根本対策の研究ならびに無線送電技術の研究に従事。自動車技術会ワイヤレス給電システム技術部門委員会の委員を務める。2013年、電気学会産業応用部門論文賞を受賞。

廣田 幸嗣  著者プロフィール

(ひろた ゆきつぐ)
1946年生まれ。1971年、東京大学工学系研究科電子工学修士課程修了。同年、日産自動車㈱入社。同社総合研究所でEMC、ミリ波レーダ、半導体デバイスなどの研究開発に従事。この間、商品開発本部ニューヨーク事務所に3年間駐在。2015年3月まで、日産自動車㈱で技術顧問、カルソニックカンセイ㈱でテクノロジオフィサ、放送大学非常勤講師。
人工知能学会理事、技能五輪シドニー大会電子組立エキスパート、東大大学院非常勤講師などを歴任。
主な著書
「電気自動車の制御システム」 (共著、東京電機大学出版局)
「電気自動車工学」 (共著、森北出版)
「パワーエレクトロニクス回路工学」 (共著、森北出版)
「バッテリマネジメント工学」 (共著、東京電機大学出版局)
「トコトンやさしい電気自動車の本 第2版」(日刊工業新聞社)

目次

目 次

まえがき

第1章 ワイヤレス給電とは何?
ワイヤレス給電とは何?
スマホのバッテリ切れ問題
クライアント=サーバ型システム
エネルギーサーバを実現するワイヤレス給電技術
ワイヤレス給電のエネルギー供給源としての位置付け
モバイルPCや電気自動車の例
全てがワイヤレスでインターネットにつながるIoT
ワイヤレス給電技術に期待できること
ワイヤレス通信の分類
距離とパワーによるワイヤレス給電の分類
利用形態によるワイヤレス給電の分類
ワイヤレス給電と通信・放送との違い
ワイヤレス給電技術の分類と本書の構成

第2章 電磁気学の基礎知識
電磁気学は難しい?
電気・磁気とは何?
電界に関するガウスの法則
電荷の保存則と電圧の意味
導体や誘電体、オームの法則とは何?
磁界に関するガウスの法則
小さなループ電流が作る磁界
コイルや磁性材料とは何?
ファラデーの電磁誘導の法則
コンデンサ、変位電流、電流連続の法則とは何?
アンペア周回積分の法則とマクスウェルによる拡張
インダクタ、変圧器とは何?
相互インダクタンスと結合係数の意味
電磁波とは何か?

第3章 交流電気回路理論と電磁波の基礎
交流電気回路理論と電磁波の基礎
電気回路を解析するためのキルヒホッフの法則
回路素子の直列接続と並列接続
電気回路素子の消費電力と蓄積エネルギー
変圧器の等価回路
直流送電 VS 交流送電
交流電気回路を解析するためのフェーザ
フェーザの足し算、引き算、掛け算、微分、積分
直交座標によるフェーザの表現とその演算
交流の有効電力の意味
交流の無効電力の意味
フェーザ図による交流回路の計算
直交座標による交流回路の計算
高い周波数での動作を解析するための分布定数回路
電磁波のフェーザ
電磁波が互いに干渉する現象の理解
電磁波が直進する現象の理解
電磁波が回折する現象の理解
電磁波が屈折したり反射したりする現象の理解
電界、磁界、電磁波それぞれが持っているエネルギー
送電線がどうやってエネルギーを運んでいるのか?

第4章 電磁誘導によるワイヤレス給電の基本原理
電磁誘導によるワイヤレス給電の基本原理
電磁誘導方式ワイヤレス給電の実験装置
実験装置の動作原理とフェーザ解析
送電効率の解析
実際のワイヤレス給電システムが満たすべき要件
効率改善その1
効率改善その2
効率改善その3
効率改善その4
効率改善その5
効率改善その6
長距離ワイヤレス給電の課題
送電電力が大きいときの課題その1
送電電力が大きいときの課題その2
“磁界共鳴”によるワイヤレス給電
本質はコイルの高い品質係数
結合係数κだけでなく品質係数Qとの積で理論効率ηが決まる
“磁界共鳴”実験装置のフェーザ解析
“磁界共鳴”実験成功の秘訣
“磁界共鳴”方式によるワイヤレス給電の物理的な意味
品質係数Qの限界
基本波近似

第5章 電界結合によるワイヤレス給電の基本原理
電界結合によるワイヤレス給電の基本原理
電界結合によるワイヤレス給電の実験装置
電界結合方式ワイヤレス給電実験装置の改良その1
電界結合方式ワイヤレス給電実験装置の改良その2
電界結合方式ワイヤレス給電実験装置の改良その3
距離の影響
位置ずれの影響
電極形状や配置の工夫

第6章 電磁波によるワイヤレス給電の基本原理
電磁波によるワイヤレス給電の基本原理
電波の周波数による分類
電波の窓
電波によるワイヤレス給電のシステム構成
高周波高電力用半導体材料
GaAs MESFETの構造と動作原理
電波を発生するための発振回路
電波を発生するために使われている真空管
半導体と真空管の比較
アンテナ
定在波型アンテナの動作原理
テーパードスロットアンテナの動作原理
パラボラアンテナの動作原理
アレイアンテナの動作原理
直流を出力するアンテナ=レクテナ
自由空間伝搬損失
光によるワイヤレス給電の基本原理
レーザの構造と動作原理
エバネッセント波によるワイヤレス給電の基本原理

第7章 ワイヤレス給電技術の応用
ワイヤレス給電技術の応用例
Qi規格
Qi規格におけるフリーポジションの実現
Qi規格の強みと弱み
AirFuel規格
SAE TIR J2954規格
アフターマーケットビジネス
置かずに充電
ウェアラブル端末へのワイヤレス給電
PCへのワイヤレス給電
電磁波を使ったサーフェイス通信・給電
Power over Wi-Fi
光の性質を巧みに利用するWi-Charge技術
IoTに使えそうな面白い技術
ワイヤレス給電技術の自動車応用
産業用機器や商用車へのワイヤレス給電
ドローンなどの飛行物体へのワイヤレス給電
医療用体内埋め込み電子機器へのワイヤレス給電

コラム
1 情報をエネルギーに変換するマクスウェルの悪魔
2 再び、磁界とは何か?
3 元素は何種類あるのか?
4 電気回路のアナロジー
5 パワーエレクトロニクス分野のインピーダンス整合
6 エネルギーハーベスティング
7 地球規模の電磁波共振現象
8 テスラ未完の夢「世界システム」
9 生体発電

あとがき ─ワイヤレス給電の価値と方向性─
索引

はじめに

まえがき


 無線やワイヤレスと聞いて皆さんが思い付くのはアマチュア無線や無線LAN、ワイヤレスイヤホンなどではないでしょうか? これらはスマホやゲーム機などがネットワークとワイヤレスで情報をやりとりすることで、それまで必要だった通信線を不要にしたものです。しかし、これらの装置を動かすには電源が必要です。電源コードをつなぐか、乾電池や充電可能な2次電池を搭載する必要があります。コードレス機器でも電池が切れると入れ替えたり電源線をコンセントに挿してバッテリを充電したりする手間がいります。
 もし、情報だけでなく電力もワイヤレスでやりとりすることができれば、電源ケーブルは不要になり、機器は煩わしいコードから完全に解放されるのです。このようなワイヤレス給電の技術は電磁波が発見された100年以上前からの人類の夢でした。近年その夢が現実になってきています。とくにスマートフォンやApple Watchに代表されるスマートウォッチなどを中心に「ワイヤレス充電器」が普及しつつあるので、Amazonなどの通販サイトや新聞などでこの言葉を耳にすることがあると思います。
 ワイヤレス給電はワイヤレス電力伝送や無線給電、無線送電、非接触給電、非接触送電などとも呼ばれています。最近では多くの家電メーカーや部品メーカー、自動車会社、新規参入を目指ざすベンチャー企業などがいろいろな応用を提案したり研究開発したりしています。そのため技術の進歩が目覚ましく、社会から大きな関心が寄せられています。
 この本の目的は、ワイヤレス給電技術とは何かを多くの人に紹介して分かってもらい、この分野のさらなる普及に貢献することです。電子技術者だけでなく、一般の人にも読んでもらえる入門書としてこの本では次のような独自な工夫をしてみました。
 1.ワイヤレス給電が何に使えるのかを分かりやすく紹介するために、認知度の高いワイヤレス通信と比較してその特徴を浮き彫りにしてみました。
 2.数式をできるだけ使わないようにして、とくに微分、積分、複素数を使わないことにしました。その代わり回路動作解析など、どうしても微積分が必要なところにはフェーザ図と呼ばれる方法を使うことにしました。この方法は数学的に厳密に定義されていないなどの欠点がありますが、方眼紙などに線を引いたり直角に回したりするなどで回路動作の解析を目に見える形で進めることができるという利点があります。
 3.フェーザ図を描くための手順を細かく分解して説明しました。実際に手を動かしてフェーザ図を描いてみると、その便利さを実感できると思います。電子技術者や電子技術に興味を持っている読者にはフェーザ図を実際に一度描いてみることをお勧めします。
 4.身近な話題やすぐにでも実現できそうなものについて、具体例や数字を示しながら紹介し、実現までに時間がかかりそうな話題などは避けることにしました。内容に偏りがあることをご賢察、ご容赦願います。
 5.ページをパラパラめくって興味のあるところだけを拾い読みできるように1ページまたは見開き構成で一話が完結する体裁にしました。
 6.正確さを重要視せずに皆さんがよく使われる用語を使うことにしました。
 なお、実際のワイヤレス給電技術には他の電子機器に影響を与えてしまう電波干渉問題や生体への影響などを避けるために各種電波法などの法規や規制を守る必要がありますが、内容が専門的になりすぎるので、この本ではその話題を省くことにしました。この本で技術の概要をつかんでから必要な各分野の専門書を参照いただけたら幸いです。

 この本を執筆する機会を与えてくださった日産自動車㈱ならびに日刊工業新聞社、とくに企画・編集を担当いただいた平川透さんに深い感謝の意を表します。
 また、日頃から公私ともに幅広くご指導頂いている東京大学大規模集積システム設計教育研究センター(VDEC)の浅田邦博教授、ワイヤレス給電に関する多方面の勉強の機会を与えてくださった東京大学大学院新領域創成科学研究科の堀洋一教授をはじめとする自動車技術会ワイヤレス給電システム技術部門委員会の各委員の皆さんにこの場を借りて感謝を申し上げます。
 この本で解説したフェーザ図を使ってワイヤレス給電を解析する方法は、日産自動車㈱の甲斐敏祐さんや毎川研吾さんをはじめとする多くの同僚と議論させていただいた中でまとまったものです。ここに深くお礼申し上げます。
 最後に、どうしても堅苦しくなってしまいがちな内容の印象を和らげるためのかわいらしいイラストを描いていただきました廣田みどりさんに感謝申し上げます。
クライソン トロンナムチャイ

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