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今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしい元素の本

定価(税込)  1,620円

著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-07670-1
コード C3034
発行月 2017年02月
ジャンル ビジネス 化学

内容

新しい元素が「ニホニウム」と命名され、元素が改めて脚光を浴びている。すべての物質は元素から構成されているため、元素を知ることは物質の理解を深めることにもつながる。本書は、周期表をベースにした元素の解説はもちろん、私たちを取り巻く物質がいかに巧妙につくられており、それが元素の性質とどう関連するのかなどをわかりやすく解説する。

石原顕光  著者プロフィール

●著者略歴

石原顕光(いしはら あきみつ)


博士(工学)


1993年 横浜国立大学大学院工学研究科博士課程修了

1993〜2006年 横浜国立大学工学部、非常勤講師

1994年 有限会社テクノロジカルエンカレッジメントサービス取締役

2006〜2015年 横浜国立大学グリーン水素研究センター、産学連携研究員

2014〜2015年 横浜国立大学工学部、客員教授

2015年〜 横浜国立大学先端科学高等研究院、特任教員(教授)


●主な著書

「トコトンやさしい電気化学の本」日刊工業新聞社

「トコトンやさしいエントロピーの本」日刊工業新聞社

「トコトンやさしい再生可能エネルギーの本」監修・太田健一郎、日刊工業新聞社

「トコトンやさしい水素の本」共著、日刊工業新聞社

「原理からとらえる電気化学」共著、裳華房

「エネルギーの事典」共著、朝倉書店

「再生可能エネルギーと大規模電力貯蔵」共著、日刊工業新聞社

目次

目次

第1章 元素ってなんだろう
1 祝! ニホニウムNh 「日本が見つけた新しい113番目の元素」
2 400兆回の衝突で3個 「原子核同士をそっと接触させる」
3 元素は「もと(元)+もと(素)」 「森羅万象の元を知りたい!」
4 元素~それ以上分けられない化学的性質 「元素は機能的アプローチ」
5 元素の考え方も変わってきた 「古代ギリシャではモノは4元素を含んでいた」
6 元素と原子の違いはこれだ! 「元素は概念、原子は実在」
7 原子の中身を探ってみよう 「原子は原子核と電子でできている」
8 びっくり! 原子はスカスカ? 「東京ドームの中のパチンコ玉」
9 変わらない原子核ところころ変わる電子 「原子核の中身〜中性子が見つかった」
10 元素は陽子の数で区別される 「中性子は化学的性質にかかわらない」
11 元素記号に歴史の重みを感じよう 「元素記号に歴史あり」
12 原子の種類は何個ある? 「金の同位体はなんと41個も!」
13 私たちが扱う元素は同位体が混ざっている 「  炭素原子が基準」
14 「水素」といってもどの水素? 「「水素」には、3つある」
15 科学者の3タイプ~事実型・仮説型・ 体系型 「あなたはどのタイプ?」

第2章 元素と原子をめぐる化学の発展
16 元素の分類の試み 「原子量の順番で並べていた」
17 質量保存の法則 「精密な実験をして定量的に示したラヴォアジエ」
18 一 定組成の法則(定比例の法則) 「原子量の概念へつながっていく」
19 組成整数比の法則(倍数比例の法則) 「原子の存在を予感させる」
20 元素の性質を数値化しよう~当量 「一時は原子量よりも重要視された」
21 原子論の復活 「仮説型の典型~ドルトン」
22 アヴォガドロの仮説 「反応体積の法則の説明を試みた」
23 原子の予感と原子量の精密化 「ベルセリウスは原子量の精密化に貢献した」
24 有機化学の貢献 「原子価は有機化学が生み出した」
25 カールスルーエの国際化学会議 「化学ではじめての国際会議」

第3章「元素の謎」に挑戦した科学者たち
26 元素を分類してみよう~三つ組元素 「化学的性質と原子量の相関が見つかってきた」
27 はじめての周期性の発見~地の螺旋 「地質学者ならではの発想」
28 みんなが周期表を考えていた 「ニューランズ・オドリング・マイヤー~体系型」
29 メンデレーエフの周期表 「最初の周期表は縦と横が違っていた」
30 典型元素? 遷移元素? 「メンデレーエフが名付けた」
31 光で元素を分析 「新しい分析法~発光分析の威力」
32 エックス線の発見 「X線によって原子の構造が次第に解き明かされていく」
33 原子量から原子番号へ 「原子番号は整数しかとらない」
34 原子核反応を人工的に起こす 「錬金術の復活」
35 同位体の謎を解き明かせ 「周期表のすべての謎が解けた」

第4章「元素の地図」は周期表
36 長周期型周期表と118個の元素 「元素を原子番号の順に周期的に並べたもの」
37 原子の大きさを見てみよう 「固体の状態で比べてみる」
38 電子を1つ取ってみよう 「第一イオン化エネルギーの周期性」
39 典型元素に注目してみると 「典型元素は周期性を示す」
40 電子をもう1つ取ってみよう 「無理やりもう1つ電子を取って周期性をみる」
41 電子をくっつけてみよう 「中性原子は電子を取られたくないけど、もらうのは好き」
42 電子状態が安定な元素 「安定しているから余計な電子をもらわない」

第5章 量子力学によって解明された摩訶不思議なミクロの世界
43 身近なことが当たり前ではない 「モノがきれいに見えるのは本当は不思議」
44 真理はいたるところに~理事無碍法界 「電子はとびとびのエネルギーをもつ状態しかとれない」
45 原子の中の電子のエネルギー 「エネルギーを低くするように状態が変化する」
46 電子のエネルギーは何で決まるのか? 「ポテンシャルエネルギーと運動エネルギーで決まる」
47 電子は数えられるから粒子である 「電子を一発ずつ撃つことができる」
48 分割不可能な電子が2つの隙間を同時に通る?! 「奇妙奇天烈、正体不明の電子」
49 波の節の数に注目しよう 「電子の運動は定常状態になっている」
50 電子の位置は確率的にしか求まらない 「節をもたない1s 軌道」
51 節が1つのp軌道 「p軌道はx、y、z方向に3つある」
52 節を2つに増やすと軌道がもこもこできてくる 「d軌道は5つある」
53 電子は自転していた~スピンの発見 「やはりスピンも2つだけ」

第6章 電子を軌道に入れていく
54 電子はこの約束に従って軌道に入る 「実にシンプルな決まりごと」
55 同じ1s軌道でも大きさもエネルギーも全然違う 「内側の軌道の電子は取り出すのが大変」
56 各軌道のエネルギーを原子番号順に並べると 「内側の軌道はクーロン力の増加が半端ではない」
57 もし排他原理がなかったら 「大きさとエネルギーが似ている軌道を「電子殻」と呼んだ」
58 電子親和力も軌道で理解できる 「安定な電子配置は電子を受け取らない」
59 周期表と電子配置 「周期表は原子の軌道電子配置で理解できる」

第7章 もっと元素を知ろう~典型元素
60 元素の化学的性質 「軌道への電子配置で理解できる場合が多い」
61 水素原子の友好的戦略 「水素原子が1s軌道に電子を2個もつために」
62 共有結合の本質はこれだ 「ポテンシャルエネルギーと運動エネルギーの兼ね合い」
63 みんなで共有~金属結合 「陽イオンがつながった状態を作る」
64 つながる原子たち 「共有結合から金属結合へ」
65 17族元素の攻撃的戦略~イオン結合 「貴ガスの電子配置の安定性を鵜呑みにできない」
66 たくさんの陽イオンと陰イオンの相互作用が本質 「イオン結合の本質」
67 共有結合からイオン結合への連続性 「結合のイオン性が評価できる」
68 なぜ元素の性質は劇的に変わるの? 「同じ陽子・中性子・電子からできているのに」

【コラム】
●1および2族 アルカリ金属とアルカリ土類金属〜電子はs軌道に
●「13族ホウ素族」〜p軌道に電子1個
●私たちにとってきわめて重要な「CとSi 14族炭素族」
●結合の手が3つある「15族窒素族」
●p軌道に4個電子をもっている「16族酸素族」
●周期表の右端1つ手前にある「17族ハロゲン族」
●周期表の右端にある「18族貴ガス」 1

参考文献

はじめに

はじめに


 2016年11月30日、元素名を決める国際純正・応用化学連合(IUPAC)は、日本の理化学研究所が発見し、命名権を獲得していた113番元素の名称を「ニホニウム」(nihonium、元素記号は「Nh」)に正式に決定しました。新元素の認定・命名はアジアでは初めての快挙でした。これを機会に、改めて元素とは何かを考えることは、大きな意味があるでしょう。この本は、元素を理解するための基礎をトコトンやさしく解説してみました。

 われわれも含めて、この世の中のすべてのモノ(万物)は物質からできています。人間は古くから、世の中を構成する万物の最小単位を探してきました。その中で、元素という考え方が生まれ、育まれてきました。元素とは現在では、それ以上分けることのできない化学的性質のことを言います。元素は性質であって、実体ではありません。しかし実体的に万物の構成要素を追求した原子と密接に関わっています。本書では、元素と原子の関係についても丁寧に解説しました。
 
 元素や原子を探る営みは、化学の歴史そのものです。現在では、元素は周期表で整理され、その周期性の理由も明確になっていますが、そこまでの道のりは決して平坦ではありませんでした。多くの有名無名の化学者が実験し・悩み・考え・思いつき・論争し、なんとか新しい元素を取り出したい、あるいは本質を解明したいという熱い想いと強い執着によって少しずつ進んできたのです。本書の前半では、そのような先人たちの足跡をたどっていきたいと思います。
 
 後半では、量子力学によって解明された電子の性質の話をしています。ミクロな世界は、われわれの住んでいるマクロな世界と大きく異なっています。その摩訶不思議な様子も味わっていただきたいと思います。

 本書でも述べましたが、科学者には事実型・仮説型・体系型の3つのタイプがあります。筆者はかなり体系型の物理化学屋です。一方、元素は無機化学で取り扱われ、本質的に事実型の学問だと思います。体系型の筆者に、無機化学者の事実型のセンスを感じさせていただいたのは、鳥居泰男元横浜国立大学教授でした。無機化学者ももちろん、普遍的な原理や法則に興味があるのですが、それ以上に、豊饒なモノや生生流転する多様な現象そのものに価値があり、それらが存在すること自体に美しさを感じるセンス、それが無機化学ではないかと思っています。
 
 本書は物理化学屋の書いた元素の本であり、元素を理解するための原理・原則をやさしく解説したつもりです。個別の元素については、少しコラムで取り上げましたが、内容に電子の軌道を使っているので、本文を読んでからコラムを見るとわかりやすいと思います。個々の元素とそれらが組み合わさって織りなす豊饒の世界が、さらにこの先にあります。ぜひ本書で、電子の軌道という基礎的な考え方を理解していただいて、各元素の性質を知り、さらに類書に進んで、豊かなモノの世界を楽しんでいただけたらと思います。
 
 本書の刊行に際して、執筆の機会をいただいた日刊工業新聞社の奥村功出版局長、ほとんどの要点BOXの執筆など原稿をサポートしていただいたエム編集事務所の飯嶋光雄氏、また本文デザインをご担当いただき、今回はいつにも増して筆者が遅筆のために多大なご助力をいただいた志岐デザイン事務所の奥田陽子氏に謝意を表します。
 
 最後に、あれこれ25年以上にわたって物理化学勉強会で一緒に議論していただいている物理化学マニアの方々に深く感謝いたします。

 

平成29年2月

横浜国立大学 石原顕光

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