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最初に読む 光化学の本

定価(税込)  2,376円

編著
サイズ A5判
ページ数 156頁
ISBNコード 978-4-526-07667-1
コード C3043
発行月 2017年02月
ジャンル 化学

内容

「光化学」は、以前は「光によって引き起こされる化学反応」を扱う学問と定義され、有機化学の一分野といった捉え方があった。一方、最近では量子化学、光合成などの生化学、オゾン層崩壊などの環境化学などと関連づけられて語られることも多い。このように幅広い分野にまたがる光化学について、本書では初学者向けに、エッセンスだけを要領よくまとめ、1項目見開きでやさしく解説する。

前田秀一  著者プロフィール

(まえだ しゅういち)

1989年慶應義塾大学理工学研究科修士課程修了。同年王子製紙株式会社入社。同社研究所にて情報記録用紙、電子ペーパー、光学部材等の研究開発に従事。1992~1994年英国Sussex大学高分子科博士課程にて、導電性高分子のコロイド化の研究に従事。2010年より東海大学工学部光・画像工学科にて、電子ペーパー用表示材料、金属ナノ粒子薄膜、3Dスクリーンの研究を開始。技術士(化学部門、総合技術監理部門)。Ph.D.(Sussex大学)。

現在、東海大学工学部光・画像工学科教授。高分子学会(印刷・情報記録・表示研究会運営委員)、日本技術士会(化学部会幹事、広報委員)、International Display Workshop(実行委員)、日本画像学会(学会誌編集委員)。加飾技術研究会(理事、会長)。

【主な著書】
「トコトンやさしい色彩工学の本」、日刊工業新聞社(2016年)
「化学便覧 応用化学編 第7版」丸善、2014(共著)
「新商品開発における【高級・上質・本物】感を付与・演出する技術」技術情報協会、2012(共著)
「化学系JABEE修了者・修了予定者のためのキャリア形成ハンドブック」納諾相研究所、2011(共著)
「電子ペーパーの最新技術動向と応用展開」シーエムシー出版、2011(共著)
「デジタルプリンタ技術-電子ペーパー」東京電機大学出版局、2008(共著)
「適用事例にみる高分子材料の最先端技術」工業調査会、2007(共著)
「電子ペーパーの最新技術と動向」シーエムシー出版、2004(共著)等

目次

CONTENTS

第1章 光と電子の振る舞い
SECTION 1 光化学とは
光と物質の関わり合い
SECTION 2 光と物質の相互作用
物質に光を照射した時に起こる様々な現象
SECTION 3 光の正体は何か?
光の粒子性
SECTION 4 電子はとびとびの量のエネルギーしか持つことができない
ボーアの仮説と量子の導入
SECTION 5 電子は粒子か波か?
電子の波動性と定常波
SECTION 6 電子の軌道はシュレディンガー方程式により求まる
シュレディンガー方程式
SECTION 7 原子が持つ電子軌道
主量子数、方位量子数、磁気量子数
SECTION 8 原子軌道へ電子が入る時のルール
パウリの排他原理、フントの規則
SECTION 9 電子により原子核同士が結びつけられて分子ができる
原子価結合法、分子軌道法(LCAO-MO法)
SECTION 10 原子核同士を結びつける軌道と結びつけない軌道
結合性軌道と反結合性軌道
SECTION 11 分子中における結合の種類
σ結合とσ*結合、π結合とπ*結合、n軌道

第2章 分子による光エネルギーの吸収
SECTION 12 光の波長と光の持つエネルギー
光の波長とエネルギーの関係、結合解離エネルギー
SECTION 13 分子に紫外~可視光をあてると何が起こるか?
電子軌道の遷移、振動・回転準位の遷移
SECTION 14 電子遷移の種類
n-π*遷移、π-π*遷移
SECTION 15 励起によってできた電子状態の種類
一重項状態、三重項状態
SECTION 16 電子と光の相互作用
光はどのようにして電子を励起するのか?
SECTION 17 光の吸収の調べ方
吸光度、吸収スペクトル
SECTION 18 吸収スペクトルの意味
吸収スペクトルの振動構造
SECTION 19 溶液の吸収スペクトルと気体の吸収スペクトル
周囲の環境が吸収スペクトルに与える影響
SECTION 20 ランバート・ベールの法則
ランバート・ベールの法則、モル吸光係数

第3章 光エネルギーにより励起した分子の振る舞い
SECTION 21 基底状態から励起状態へ
ヤブロンスキーダイヤグラム
SECTION 22 一分子内で起こる変化と二分子間で起こる変化
光化学反応の分類
SECTION 23 無幅射失活・内部転換
無輻射遷移、内部転換、Kashaの原理
SECTION 24 項間交差
項間交差、スピン禁制、スピン軌道相互作用
SECTION 25 蛍光・りん光
輻射遷移、蛍光、りん光
SECTION 26 フランク・コンドン原理
フランク・コンドン原理、フランク・コンドン励起状態
SECTION 27 吸収スペクトルと蛍光スペクトルの関係
0→0遷移
SECTION 28 実際にどうやって発光スペクトルを測定しているのか?
蛍光分光光度計の仕組み
SECTION 29 蛍光分光光度計のもう一つの使い方
蛍光励起スペクトル
SECTION 30 励起状態の寿命
蛍光寿命、りん光寿命
SECTION 31 励起状態から進む反応の効率はどうやって表すのか
量子収率
SECTION 32 光を吸収しないのに発光している??
消光と増感
SECTION 33 励起エネルギーが他分子へ移動する現象
励起エネルギー移動
SECTION 34 光の吸収によって電子が他分子へと移る現象
光誘起電子移動、電荷分離状態、電荷再結合
SECTION 35 消光速度の求め方
シュテルン・ボルマーの式

第4章 励起した分子の化学反応
SECTION 36 励起状態から起こる化学反応
光開裂、光二量化、光異性化、エキシマー
SECTION 37 熱的な化学反応と光化学的な反応の違い
基底状態と励起状態のポテンシャル曲線
SECTION 38 光化学反応における基本条件
光化学の第一法則、光化学の第二法則 
SECTION 39 光によって結合が切れる反応
光開裂反応
SECTION 40 光により二つの分子が一つになる反応
光二量化反応
SECTION 41 光により異性体に形を変える反応
光異性化反応
SECTION 42 光により形成される励起状態の錯体
電荷移動励起錯体、エキシマー、エキシプレックス

第5章 自然と光化学
SECTION 43 光合成(1)
明反応と暗反応
SECTION 44 光合成(2)
光合成における光化学反応
SECTION 45 動物の光応答
走光性と視覚
SECTION 46 植物の光応答
屈光性と光発芽
SECTION 47 生物発光
ルシフェリン-ルフェラーゼ反応(L-L反応)
SECTION 48 発光タンパク質
オワンクラゲの発光
SECTION 49 成層圏のオゾン
生成と崩壊
SECTION 50 対流圏のオゾン
光化学スモッグとオゾンの利用
SECTION 51 紫外光の影響
DNAの光損傷と光回復

第6章 産業と光化学
SECTION 52 光(の吸収)で色を出す
染料、顔料
SECTION 53 光で色を変える
フォトクロミズム
SECTION 54 光で形を変える
フォトメカニカル効果
SECTION 55 光でかためる
光硬化性樹脂
SECTION 56 光で溶かす
フォトリソグラフィー(ポジ型)
SECTION 57 光で立体化する
3Dプリンター
SECTION 58 光で記録する
ヒートモード記録とフォトンモード記録
SECTION 59 光で(人工的に)育てる
LEDと植物工場
SECTION 60 光で合成する
光ニトロソ反応
SECTION 61 光でクリーニングする
酸化チタン光触媒
SECTION 62 化学発光
炎色反応とルミノール反応
SECTION 63 電界発光
有機EL
SECTION 64 光を電気エネルギーに変換する
太陽電池と電子写真
SECTION 65 光を化学エネルギーに変換する
人工光合成

参考文献

索引

はじめに

はじめに

 「生物に学び、物理で考え、化学で創る」といわれる時代です。学問に垣根を設けることなく、あらゆる分野の知識をネットワーク化するような力が必要ということでしょう。

 「光化学」は、以前は「光によって引き起こされる化学反応」を扱う学問と定義され、有機化学の一分野といった捉え方もあったようです。一方、最近の大学のシラバスをみると、シュレディンガー方程式中心の量子化学から、光合成中心の生化学から、あるいはオゾン層の崩壊や光化学スモッグなどの環境化学からといったように、光化学は教員ごとに別々な切り口で講義をしていることが伺えます。そして、こういった大変に広い範囲をカバーする、名著ともいえる本が複数出版されています(本書巻末でも参考文献として取り上げています)。しかし、完璧に近い本は、初学者にとってはハードルが高すぎる場合が多々あります。内容が豊富なだけにどこをどのように勉強してよいかわからない場合もあるでしょう。一方、有機化学、無機化学、物理化学などの分野では、初学者を対象にした、エッセンスだけを要領よくまとめた書籍が多数出版されています。光化学の分野でも、そういったエッセンスだけをわかりやすく解説した本が必要ではないかと考え、吉成技術士と共同で執筆したのが本書、「最初に読む 光化学の本」です。基礎編の1章から4章を吉成が、応用編の5章と6章を前田が担当致しました。
 
本書を執筆するにあたり、多くの方々のご協力を得ました。特にわかりやすさ重視の観点から、学生たちの意見を取り入れました。その中でも、長村君、成田さん、竹上君、亀田君、水野君、都野君、増山君には、この場をかりて感謝いたします。また、日刊工業新聞社の阿部正章氏には、本書の企画から出版に至るまで、大変お世話になりました。本当にありがとうございます。

2017年2月   

著者を代表して
前田秀一

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