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おもしろサイエンス
日本刀の科学

定価(税込)  1,728円

編著
サイズ A5判
ページ数 136頁
ISBNコード 978-4-526-07656-5
コード C3034
発行月 2017年01月
ジャンル ビジネス 機械

内容

日本古来の伝統技法で製作されてきた日本刀は、折れず、曲がらず、よく切れるという優れた特性をもつが、これらの特性は現代の工業技術を先取りしたさまざまなハイテクによるものである。これからの技術開発においても日本刀から学ぶことのできる点は多い。

井上達雄  著者プロフィール

(いのうえ たつお)
1939年生まれ。
京都大学工学部機械工学科、同大学院を経て、同大学助手、助教授、教授。
2003年退官後、福山大学教授、埼玉工業大学特任教授。
現在、NPO法人「変態・熱・力学研究協会」理事長として、態・熱・力学の理論の構築と有限会社アイデアマップと協同して熱処理シミュレーションソフトCOSMAPの改善に尽力。元日本材料学会会長、国際材料学会会長。
主な著書:「弾性力学の基礎」(日刊工業新聞社)

真鍋 純平(まなべ すみひら)
1953年生まれ。
西脇高等学校卒業後、長野県坂城町の人間国宝宮入行平刀匠に師事、同師逝去後は奈良県東吉野村の河内国平氏の元で修行を続け27才で独立。兵庫県多可町で鍛錬道場を開く。日本古来の「たたら」や「下げ」など中世の製鉄を研究、作刀を続ける。一貫して相州伝上位作を目指し、地景現われたよく沸づく作風で知られる。スキャナーで刀剣の画像撮影をするなど、刀匠としては科学、工学に造詣が深い。日本古来の「たたら」や「下げ」など中世の製鉄を研究、作刀を続ける。一貫して相州伝上位作を目指し、地景現われたよく沸づく作風で知られる。スキャナーで刀剣の画像撮影をするなど、科学、工学に造詣が深い。

目次

はじめに
推薦のことば

第1章 日本刀ことはじめ
1 日本刀の移り変わり
2 刀の種類
3 刀の部位の名称
4 日本刀と外国刀の違い

第2章 たたら製鉄と日本刀
5 日本刀の原料となる砂鉄
6 現代に復活したたたら製鉄
7 たたらの操業工程
8 玉鋼のいろいろ

第3章 日本刀を作る匠の技
9 古刀の再現への挑戦
10 水圧し・選鉱・積沸かし
11 折返し鍛錬
12 造込み・素延べ・火造り・生仕上げ
13 土置きと焼入れ

第4章 反りと刃文は焼入れによってできる
14 変態・熱・力学から日本刀を見る
15 鉄と鋼はどう違うか
16 反りの要因となる応力とは
17 焼入れで起きるひずみが反りを生む
18 焼入れ中の温度分布がひずみを生む
19 焼刃土のパラドックス
20 日本刀の焼入れをシミュレーションで見る
21 焼入れ過程で反りはどう変化するか
22 焼入れ過程で応力はどう変化するか
23 焼入れ過程で温度、反り、金属組織はどう変化するか
24 短刀の焼入れに及ぼす材料の影響

第5章 日本刀の完成
25 研ぎによって刀に命が宿る
26 刀の切れ味とは
27 日本刀のたどった道を振り返る① 平安・鎌倉・室町時代
28 日本刀のたどった道を振り返る② 安土桃山・江戸時代
29 日本刀のたどった道を振り返る③ 近代以降
30 スキャナを使って刀剣を高解像度撮影

Column
日本刀から出た言葉
連立方程式と変態・熱・力学的連成
匂いと錵

索 引

はじめに

 本書は日本刀についての一般的な「読み物」ではありません。日本刀特有の反りと刃文がどうやって生じるかを中心に科学を基盤にしたサイエンス(金属学、材料力学、伝熱学などの)の本です。名刀伝、美術的立場などは扱っていません。最後の一部以外は、すべてこのための論理です。したがって、理論や場合によっては数式が出てきます。これらはすべて日本刀の反りと刃文の生成には欠くべからざるものです。この分野に初めての読者には(特に第4章は)面倒だ、わかりにくいと思われるかもしれませんが、一度目は完全に理解できずとも読み進んでください。そして「あ、あのところはどうだったか」などと思われたら、そこをもう一度読み返してください。ほとんどの理論や得られる知見は、刀だけでなく一般の工業製品への応用へも可能なはずです。
 日本刀を科学的に、ないしは科学の立場から見ていただくために、難しいことを整然と、整然としたことをわかりやすく、わかりやすいことをやさしく、やさしいことを面白くをモットーに書いたつもりです。
 編著者は、単純な弾塑性材料の熱応力の解析を学生時代にやりました。普通は線膨脹係数は一定としますが、一定ではなく、温度や冷却速度に依存すること、これによって変態応力や組織変化が捉えられることに気付いたのが一連の研究の始まりです。その後、温度変化は力学的作用に影響されるという連続体熱力学に基づいて変態・熱・力学の分野を立ち上げ、コンピューターシミュレーションによって熱処理、溶接、鋳造などを扱いました。刀は長いので変形が目に見えて反りが生じることに気付いて、変態・熱・力学も最適な応用例として日本刀を扱ってきたわけです。
 この長い歩みのなかで多くの方々のお世話になりました。主な方を以下に記し、深甚の謝意を表します。
 まず、本書のいくつかの章、項を分担して執筆くださった長年の友人、真鍋純平刀匠には多くのことをご教示いただいています。同師なくしては本書は日の目を見なかったでしょう。
 編集を担当くださった日刊工業新聞社森山郁也氏には、時として喧嘩をしながらペースを作ってくださり、励ましをいただきました。
 ・刀匠など:月山貞一・貞利・貞伸師、河内国平師、隅谷正峯師、三上貞直師、久保善博師、高見国一刀匠、藤代興里研師、吉村滋太氏
 ・たたら:木原明村下、鈴木卓夫氏、香月節子氏、西坂正則氏
 ・総括全体:小笠原信夫氏、岡村一男氏はじめデータベース研究分科会の皆様
 ・変態・熱・力学の理論とシミュレーション:長岐滋教授、巨東英教授、上原拓也教授、金森英雄教授、向井竜二氏、伊藤博明氏、有本亨三氏、桐岡節男氏はじめMSTC―MTMの皆様
 また、多くの資料提供の便宜をくださった博物館、美術館、資料館、大学、寺院などの機関に厚くお礼申し上げます。
 パソコンゲームが火付け役になった日本刀ブームはおさまりそうにありません。「たたら」が深くかかわる映画ができたり、博物館、美術館には開場前から並ぶ人があったり、昨年も薬師寺の展示では数千人の行列(とくに刀剣女子の)ができました。
 日本刀が千数百年も伝承されてきたのは、そこに科学的合理性の裏付けがあるからです。ブームを楽しむだけでなく、日本刀の科学的考察に本書がわずかでも寄与できれば望外の幸せです。
平成29年1月
編著者・井上 達雄

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