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今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしい船舶工学の本

定価(税込)  1,620円

著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-07653-4
コード C3034
発行月 2017年01月
ジャンル ビジネス 機械

内容

船舶工学には、効率的で安全に航行するために波や浮力などについての物理学的知識と、船体設計のための機械工学の知識が必要となる。本書は、船のしくみ、種類、力学、推力、造船のプロセスなどについて、船舶工学研究の第一人者である著者が、随所に実際例を取り上げて、やさしく紹介、解説する。

池田良穂  著者プロフィール

●著者略歴
池田良穂(いけだ よしほ)
大阪府立大学名誉教授・特認教授、大阪経済法科大学客員教授
1950年 北海道生まれ
1973年 大阪府立大学工学部船舶工学科卒業
1989年 大阪府立大学工学部助教授(船舶工学科)
1995年 大阪府立大学工学部教授(海洋システム工学科)
博士(工学)
船舶工学、海洋工学、クルーズビジネスなどが専門。専門分野での学術研究だけでなく、船に関する啓蒙書を多数執筆し、雑誌などへの寄稿、テレビ出演も多く、わかりやすい解説で定評がある。
●主な著書
「船の最新知識(サイエンス・アイ新書)」(ソフトバンククリエイティブ)
「図解雑学 船のしくみ」(ナツメ社)
「図解・船の科学」(講談社)
など多数。

目次

第1章 船の基本を学ぼう
1 太古の時代から利用されてきた船 「船は水の浮力によって水面に浮かぶ構造物」
2 船の大きさを表すトン 「「トン」にはいろんな意味がある」
3 日本経済を支えている船の役割 「シーレーンが重要な理由」
4 船のスピードを表す「ノット」 「ノットの語源は英語の「結び目」」
5 飛行機と船の違い 「大きな船ができる理由」
6 船と他の輸送機関との違い 「各輸送機関には、そのスピードに得意領域がある」
7 モーダルシフトとは 「エネルギー効率の良い輸送機関への移行」

第2章 船の力学―水編―
8 重い船が浮かぶわけ 「水から受ける浮力の発生原理」
9 船を転覆から救う復原力 「GZカーブは船の安全性に大切な特性」
10 復原力を小さくする波もある!! 「後ろから波を受けると危険」
11 動くと抵抗が働くわけ 「形状をできるだけ流線型に近づける」
12 波をつくることによる抵抗 「船首からの八の字形の波が「ケルビン波」」
13 水の粘り気が起こす粘性抵抗 「摩擦抵抗と粘性圧力抵抗」
14 便利な抵抗係数や揚力係数 「模型船で得られた値が実船でもそのまま使える」
15 コンピュータが明かす複雑な流れ 「流体の動きや流線なども視覚的にとらえられる」
16 波の中での抵抗増加 「波の中ではどのくらい速力が落ちる?」
17 水面上の船体が大きい船の空気抵抗 「風も抵抗を増加させる」
18 旋回と直進 「舵の大切な2つの役割」
19 舵の効きを良くする工夫 「プロペラの流れが舵効きを良くする」
20 旋回性能と針路安定性 「曲がるだけでなく真っ直ぐ航行できるのも舵のおかげ」
21 怖い横揺れの同調 「同調横揺れで転覆するケースも」
22 6自由度の運動とは? 「波の中で船は6方向に運動をする」
23 波と船の運動の関係 「船を揺らす波の特性」
24 波の中での危険な現象 「船体の中と外に潜む危険な現象」
25 船酔いはなぜ起こる? 「船酔いが起こる体内メカニズムの研究」

第3章 船の力学―材料・構造編―
26 船を造る材料の歴史 「材料の進化に影響された船の発展」
27 強靭で使いやすい鋼とは 「鋼は安価で強度がある材料」
28 さらに進化する鋼 「船体を軽くするための努力」
29 小型高速船は軽いアルミニウムで 「軽さを求められる高速船で使われる」
30 プラスチックをガラス繊維で強固に 「同じ形の船の大量生産に向いている」
31 最先端材料の可能性 「多くの新しい材料が使われるようになった」
32 船の構造設計とは 「安全に航海のできる強度を求めるために」
33 波から受ける大きな力と縦強度 「船を折り曲げるような力に耐えられる強度」
34 横強度を支えるのはたくさんの肋骨 「縦通部材をしっかりと支える役割も」
35 腐食と金属疲労 「海水は鋼材の腐食を進ませる強敵」

第4章 船の種類
36 船の基本構造 「穴が開いても沈まない船体にしておく」
37 船の形による分類① 「船の形には意味がある」
38 船の形による分類② 「目的に沿って船の形が変わる」
39 浮力で浮かぶか、揚力で浮かぶか 「船の重さは水からの浮力と揚力で支持」
40 大事な水面下の船の形 「ひときわ大事な船型学という学問分野」
41 水面上船体に働く風圧抵抗を減らせ 「空気抵抗を減少させるための試み」

第5章 船の推進
42 人力ではオールが一般的 「櫂と櫓の原理」
43 風の利用 「帆によって風から船を走らせる推力を得る」
44 スクリュープロペラの登場 「プロペラが推進力を生む原理」
45 プロペラが船尾にあるのはなぜか? 「船体の周りに生じる境界層の利用」
46 怖いプロペラキャビテーション 「圧力が低下して、気泡が発生する現象」
47 いろいろなプロペラ 「特殊な働きをするプロペラ」

第6章 船を動かすエンジン
48 蒸気機関と実用船 「1807年、フルトンが建造した「クラーモント」が最初」
49 エネルギー効率が良いディーゼル機関 「船のエンジンとして広く使われている」
50 ハイブリッド機関で省エネルギーも 「船にも各種のハイブリッド機関が使われている」
51 船の燃料はどう変わる 「注目されている液化天然ガス(LNG)」
52 軽くて高出力のガスタービン機関 「高速船用のエンジンとして使われている」
53 水素燃料と燃料電池 「非常にクリーンな発電だが」

第7章 船を造るプロセス―建造から進水まで―
54 船を建造する造船所 「船台上やドックの中で船体を建造」
55 船の基本設計 「提示された仕様に従って見積り」
56 詳細設計と生産設計 「建造する工場の設計部門が担当」
57 部材をいろいろな手法で切断 「ガス、プラズマやレーザなどで鋼材を切断する」
58 材料の加工:厚い鋼板をどう曲げる? 「活きる熟練の匠の技」
59 部材をつなぐ溶接 「アークは約1万℃の高温で鋼鉄も溶かす」
60 活躍する溶接ロボット 「各組立工程で導入されている」
61 ブロックの製作 「小組立から大組立へ」
62 なぜブロック建造法なのか 「わが国を世界一の造船国にした手法」
63 機関据付とプロペラ装着 「船の建造の中でもっとも手間のかかる部分」
64 船を陸上から海上に移す準備 「技術的に難しい船台進水」
65 いよいよ進水 「もっとも緊張する一瞬」
66 岸壁で続く艤装工事 「船のすべての機能が完全に作動できるように」
67 最後のチェックは海上で 「船主に引き渡され、造船所から旅立ち」

【コラム】
●船を起原とする航空用語
●シップ ・ オブ ・ ザ ・ イヤー
●海難事故の80%はヒューマンエラー
●アンクルトリスは大の船好き
●世界の2大運河
●造船技師になるには
●シップウォッチングの楽しみ

参考文献
索引

はじめに

 船は、各種の交通機関の中でも、人間がもっとも古くから利用してきたもので、今でも世界の人々の生活を支える重要な存在になっています。資源のない日本は、原料を海外から輸入して、それを加工して輸出することでその経済が成り立っていますが、その貿易貨物の実に99・7%は船によって運ばれています。またたくさんの島からなっているため、その島との人の移動も、生活物資の輸送も船に依存しています。
 地球表面の約70%が海で、世界中が海でつながっています。今、世界中がつながり、人々が共に生きる時代になっています。必要な物資を必要な場所に届けるためには船はなくてはならない輸送機関なのです。また、地球は、温暖化などの自然の大きな変化に直面しており、その原因の1つが、人間が排出する二酸化炭素だといわれています。各種の輸送機関の中でもっとも少ないエネルギーで物資を運べるのが船なのです。そのため、飛行機に比べると約1/100〜1/1000、トラックに比べると約1/5〜1/20の二酸化炭素の排出量で荷物を運ぶことができます。まさに、船が地球を救うことになるのです。
 その船の歴史は、古くは水に浮く草や木材で作られた小船から始まりましたが、今では巨大なビルよりも大きな船が毎年たくさん建造され、時速30〜40㎞のスピードで大海原を航海しています。東京駅より大きなビルが海を走るのですから、そのダイナミックさを想像してみてください。しかも、海は時として荒々しい姿を見せます。10m以上の巨大な波が発生することもあります。そうした厳しい大自然の中で安全に航海できる船を、開発、設計、建造するための学問が船舶工学です。
 本書は、その船舶工学をわかりやすくお伝えするために書きました。かつて船舶工学は経験工学ともいわれ、古くから伝承されてきた技能がベースでしたが、今ではしっかりと科学に裏打ちされた高度な科学技術に基づいています。船舶工学の学会である日本船舶海洋工学会では、12分冊にのぼる船舶工学の教科書を出していますが、並べると20㎝近い幅になります。そのエッセンスをこの一冊にまとめてみました。
 本書を通じ、船に親しみを感じていただければ、著者としてこの上ない喜びです。
2017年1月
池田良穂

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