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図解CFRPによる自動車軽量化設計入門

定価(税込)  2,484円

著者
サイズ A5判
ページ数 208頁
ISBNコード 978-4-526-07659-6
コード C3053
発行月 2017年01月
ジャンル 機械

内容

本書は、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)による自動車の軽量化設計について紹介した入門書。「材料特性」や「成形加工」など設計に必要な基礎知識をはじめ、実際にこれらを使った設計の考え方や進め方を様々な採用事例を紐解きながら紹介する。現在、CFRPに関する書籍、専門誌、論文などは、素材や成形加工に関するテーマが主体で、設計・商品化に関しての紹介が少ない。本書では、これら素材や加工の特性を活かした設計はどうあるべきかを追求していく。

小松 隆  著者プロフィール

(こまつ たかし)
1976年 本田技術研究所入社
乗用車車体設計、プロジェクトリーダー、チーフエンジニア
1995年 ホンダ系車体部品メーカー
金属塑性加工、衝突試験設備による衝突安全、ホンダオデッセイ用ハイドロピラーなどの商品開発、常務取締役開発本部長
2010年 リンツリサーチエンジニアリング株式会社設立
2010年~2012年 慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科特別研究教授、特任教授(自動車車体)
2010年~2013年 SIM-Drive(シムドライブ)電気自動車先行開発試作車の車体設計開発統括業務を受託。電気自動車の特徴を生かした新しい車体構造とCFRPによる軽量ボディを開発
2012年~2015年 (財)石川県産業創出支援機構「自動車車体部品に対応した熱可塑性CFRP材のプレス成形技術の開発」研究開発委員会アドバイザー
2016年~ 石川県プレス工業協同組合 ものづくり中小企業・小規模事業者連携支援事業委員会(CFRP関連事業)委員
現在  リンツリサーチエンジニアリング株式会社 代表取締役
技術コンサルティング、技術支援、講演、執筆など

目次

第1章 自動車軽量化設計のあらまし
1.1 軽量化と設計
1.2 地球温暖化と自動車
1.3 自動車は年々重くなってきた
1.4 自動車はどのような部品でつくられているか
1.5 自動車はどのようにつくられているか
1.6 自動車のボディはどのようにつくられているか
1.7 モノコック構造とは何か
1.8 軽量高剛性ボディとは何か
1.9 衝突安全ボディとは何か
1.10 衝突安全の法規とアセスメント
1.11 衝突安全ボディの設計
1.12 自動車ボディの材料と成形法
1.スチール
2.アルミ
3.CFRP
1.13 自動車ボディ材料と軽量化設計
1.13.1 材料と目標重量
1.13.2 ボディのどの領域を材料置換するのか
1.14 軽量化へのアプローチ
1.14.1 材料置換の工夫による軽量化
(1)材料の薄板、薄肉化
(2)材料の強度化
(3)軽量材料への置換
1.14.2 成形加工法の工夫による軽量化
(1)冷間プレス加工
(2)熱間プレス加工(ホットスタンピング)
(3)ロールフォーミング
(4)ハイドロフォーミング
(5)熱間、温間ガスブロー
(6)アルミ押出し加工
1.14.3 構造設計の工夫による軽量化
(1)モノコックボディ構造設計の基本
(2)骨格を構成するフレームの剛性バランスを良くする
(3)フレーム結合部の剛性を高める
(4)断面性能の向上
1.15 CFRPによる軽量化設計がめざすもの

第2章 設計に必要なCFRPの基礎知識(材料編)
2.1 CFRPへの期待
2.2 CFRPの種類
2.3 熱硬化性CFRPと熱可塑性CFRP
(1)高い生産効率によるコスト低減への期待
(2)今まで投資してきた設備とノウハウを活用できる可能性が高い
(3)リサイクル性が良い
2.4 CFRPの機械的性質
2.5 金属と比べる
1.比重、弾性率
2.成形加工
3.接合
2.6 自動車のボディに使う.

第3章 設計に必要なCFRPの基礎知識(加工編)
3.1 CFRP成形加工法の要点
3.2 熱硬化性CFRP成形加工法
3.3 熱可塑性CFRPの成形加工法
3.4 接合
3.4.1 ボディ接合の考え方
3.4.2 CFRPの接合

第4章 軽量化設計の手順とそのポイント
4.1 ボディ材料にスチールが使われている理由
4.2 素材の選び方
4.2.1 強度からみた素材の選び方
4.2.2 剛性からみた素材の選び方
4.3 成形加工法の選び方
4.4 軽量化設計目標の考え方
4.5 製品のどこをCFRPにしていくのか
4.6 部分の場合は、他の部分とどのように接合していくのか
4.7 どういう場合に構造変更まで検討していくのか
4.8 熱硬化性と熱可塑性の選択の仕方
4.9 軽量化とコストのバランス
4.10 CFRP軽量化の優位性をどのように評価するか

第5章 軽量化設計の実際―自動車を例に
5.1 自動車の設計
5.2 自動車の開発フロー
5.3 ボディの役割と機能
5.4 ボディの要求特性
5.4.1 剛性
5.4.2 局部の強度
5.4.3 軽衝突と高速衝突
5.4.4 大変形
(1)シートベルトアンカレッジ試験
(2)ルーフ強度
5.4.5 耐久
(1)ホワイトボディのショック耐久
(2)完成車の悪路耐久
5.5 ボディの種類と構造
5.5.1 フロントボディ(機械系ゾーン)の構造と設計
5.5.2 居室ゾーンの構造と設計
(1)Aピラー
(2)Bピラー
(3)サイドシル
5.5.3 フロアボディの構造と設計
5.6 ボディのCFRP軽量化設計
5.6.1 シムドライブの誕生
5.6.2 シムドライブ1号車の開発
~電気自動車用スチール製モノコックボディ
5.6.3 CFRP部品を採用した電気自動車の開発
(1)CFRPを使った軽量化部品の考え方と製品開発
(2)デザイン外板部品
(3)骨格フレーム部品およびパネル類
(4)接着接合
5.7 BMWの採用事例

第6章 CFRPによる自動車軽量化設計の課題と将来展望
6.1 CFRP軽量化設計の課題
6.2 CFRPの将来展望

索引


はじめに

 18世紀の後半、イギリスから始まった産業革命以来、現在も加速して進んでいる地球の温暖化は、異常ともいえる気象現象をはじめ、多くの種が途絶えるのではないかという生物の存続に関わる危機的な状況までつくり出している。私たち人類も決して例外ではなく、大規模自然災害、異常な高温がもたらす人体への影響、多くの国や地域で水や食料が大量に不足するなどの深刻な被害が拡がっている。
 その主な原因が、人間のつくり出す大量のCO2であるとすれば、毎日膨大なCO2を排出している自動車を何とかすることが有効な対策の一つであるということになる。「何とかする」ということは、もちろん自動車の数を減らすことではなく、重量を減らすことである。重量を減らすことができれば徐々にではあるが確実にCO2を削減することができるし、温暖化を引き戻す大きな効果も生むことができるはずである。自動車の大幅な軽量化を急がなければならない背景はここにもある。
 軽量化は設計で決まる、といえよう。どういう材料を使い、どういう加工法でつくるのか。
 今まで自動車の車体はスチールを主体につくられてきたことにより、鋼板の材料技術や成形加工技術は著しい進化を遂げてきた。しかし、車体の構造は航空機の軽量化設計から由来しているといわれるモノコック構造を長く踏襲してきたために、新しい発想による車体構造が生み出されてこなかったのである(極めて少ない例としてアルミ押し出しスペースフレーム構造がある)。このことから、今後の軽量化材料として注目を集めているCFRPは今までのスチールと同じ車体構造で設計することが良いのかという疑問が出てきても不思議ではない。
 CFRPは金属とは全く性質の異なる炭素繊維と樹脂の複合材であり、非常に高い引張強度を保有している一方で、スチールやアルミに劣る特性も持っている。今までのようにモノコック構造を前提にした車体設計の考え方だけではCFRPが本来持っている軽量化の優位性を引き出すことは難しく、したがって、さらに新しい発想や設計の考え方を従来のものに加えていくことが求められるのである。
 しかし、今までCFRPに関連する技術情報、研究レポート、書籍などは、材料や成形加工法に関するものが殆どで、車体の軽量化にどのような使い方をしていくのか、どのような設計をしていくのかという軽量化設計の考え方や方向性を示したものは非常に少ない。
 本書は、これからCFRPによる自動車の軽量化を考えていく設計者だけではなく、スチールやアルミによる軽量化を考えている設計者も対象にした自動車軽量化設計の入門書である。CFRPによる軽量化設計は、スチールでつくられてきた設計の考え方と全く違うものであってはならない。むしろスチールによる軽量化設計を基本から学ぶことが何よりも大切なことであり、その上でスチールとは違う新しい構造と軽量化設計技術が育っていくものと考える。
 このような本書の趣旨から、自動車の最も重い部品であるボディに焦点を当て、乗用車の一般的な開発の流れも加えてできるだけわかりやすく解説するように努めた。すべてを読む時間が取れない方にも短い時間で全体のイメージを把握していただけるように、多くの図と表を入れることにした。また、自動車の開発に直接携わっている設計者、技術者の方々だけではなく、生産、営業、管理などの業務に携わっている方々、学生や研究者の方々にも気軽に読んでいただけるよう内容も工夫したつもりである。筆者の40年にわたる自動車車体設計の経験が本書を通じて読者の方々に少しでもお役に立つことができればこの上ない喜びである。
 本書の発行にあたり、日刊工業新聞社出版局書籍編集部の天野慶悟氏には貴重なアドバイスと多大なご尽力を頂いた。ここに心から感謝の意を表す。
2017年1月
小松 隆 

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