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今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしい人工知能の本

定価(税込)  1,620円

監修
編者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-07640-4
コード C3034
発行月 2016年12月
ジャンル ビジネス

内容

人工知能について基礎知識から応用技術までやさしく紹介した入門書。研究の歴史や要素技術、基盤となっている基礎理論なども丁寧に解説したことで、今のブームの火付け役となったディープラーニングをはじめとする先端技術を、本質的に理解することができる。

辻井潤一  著者プロフィール

(つじい・じゅんいち)
産業技術総合研究所人工知能研究センターセンター長。
1949年生まれ。1973年、京都大学大学院工学研究科修士課程修了。同大学助手、助教授として質問応答システム、機械翻訳、言語理解の研究に従事。この間、フランスCNRC上級研究員。1988年、英国マンチェスター科学技術大学教授。1995年、東京大学理学部教授同大学院情報理工学系研究科教授。1995年から2001年、2005年から2011年、英国マンチェスター大学教授を兼任。2011年、マイクロソフト研究所アジア首席研究員。2015年より現在に至る。2016年よりマンチェスター大学教授を兼任。
計算言語学会(ACL)、国際機械翻訳協会(IAMT)、アジア言語処理学会連合(AFNLP)、言語処理学会などの会長を歴任。2015年より国際計算言語学委員会(ICCL)会長。
主な受賞歴
日本IBM科学賞(1988年)、香港SEYF招聘教授賞(2000年)、大和エイドリアン賞(2004年)、IBM Faculty Award(2005年)、人工知能学会業績賞(2008年)、紫綬褒章(2010年)、情報処理学会フェロー(2010年)、情報処理学会功績賞(2013年)、船井業績賞(2014年)、ACLフェロー(2014年)、大川賞(2015年)

産業技術総合研究所 人工知能研究センター  著者プロフィール

2015年5月1日設立。人間と共栄する情報技術に取り組む「情報・人間工学領域」の研究センター。人間との親和性が高く、人間と相互に理解し合える人工知能の実現をめざす目的基礎研究と、成果をスピーディーに実社会の多様な課題に適用するための人工知能フレームワークの研究開発を行う。

目次

第1章 人工知能はこうして生まれた
1 人工知能ってなんだろう?「計算機の動作が人の考えをまねる」
2 知能は書き表わせる「アルゴリズムを使った知的活動の表現」
3 論理的な思考とは計算の一種である「ブール代数と電気による論理回路」
4 情報を扱う機械の登場「サイバネティクスと情報理論」
5 人工知能の学問分野が確立「ダートマス会議からはじまった」
6 現実の問題に挑みはじめた人工知能「推論・探索・知識工学の人工知能ブーム」
7 人工知能の冬の時代「人工知能の限界、失望、そして停滞期」
8 壁を突き破った技術革新「なぜ今、人工知能ブームが起きているのか」
9 人工知能ブームの立役者、ディープラーニング「写真の内容を見分けられるようになった」

第2章 人工知能を体感してみよう
10 探索木に沿って考える「人工知能が答えを探すメカニズム」
11 鉄道路線で一番の近道を探したい「経路探索の古典、ダイクストラ法」
12 ヒューリスティクスを使った探索「A*アルゴリズム」
13 最小値探索で文字列の類似性を見抜く「DPマッチング」
14 やりながら学ぶオンライン学習「Q学習で試行錯誤しながら学ぶ」
15 対戦的状況での戦略を選ぶゲーム理論「相手の出方を見越して勝つ手順を探し出す」
16 画素情報から画像認識への初歩「物の数よりオイラー数の方が簡単という不思議」
17 過学習の罠「誤差が少ないモデルがよいとは限らない」

第3章 人工知能を支える基礎技術
18 機械学習の3つの方式「試行錯誤を繰り返すことで、解法を見つける人工知能」
19 教師無し学習「クラスタリング」という知能「知能の第一歩は分類から」
20 人工知能用のプログラム言語「制御の指令から、知識の指示を書く言語へ」
21 ベイジアンネットが広げた推論の世界「確実ではない因果関係や相関関係を扱う技術」
22 類似度を可視化する樹形図「Fitch-Margoliash のアルゴリズム」
23 ネットワークの最重要要素を見つける中心性「つながりの中から構造を洗い出す」
24 サポートベクターマシン「近年注目を集めるデータ分類技術」
25 人間の知能をつかさどる大脳皮質「様々な機能を実現する50の領野」
26 大脳皮質を模倣した機械学習技術「ディープラーニングを超える技術の可能性」
27 脳全体を模倣した汎用人工知能の可能性「人間のような知能の実現へ」
28 機械学習と並列計算「機械学習を並列化するには?」
29 人工知能と計算機「人工知能に適した計算機とは?」
30 信号のデジタル処理「アルゴリズムが実世界データを処理する」
31 単純な近隣通信だけで生み出される複雑性「セルオートマトンの不思議な世界」
32 アリのように群衆が作り出す群知能「マルチエージェント型人工知能」

第4章 人工知能はどう応用されているのか?
33 自然言語処理は人工知能の大きな柱「人工知能が本領を発揮する発展著しい分野」
34 オントロジーによる概念の明示化「言葉の意味合いを踏まえた自然言語処理」
35 単語の意味をベクトルの形で把握する「「分散表現」で浮かび上がる単語間の関係性」
36 テンソルで関係性と知識を表現する「組み合わせ型のデータで関係を表す」
37 ノイズがあっても声を聞き取る技術「隠れマルコフモデルと音声認識」
38 自然言語処理の技術要素「今やフリーで使えるようになった高度な技術」
39 広がる自然言語処理技術の応用先「大量に読むことができる人工知能の新しい役割」
40 人工知能は画像をどうやって理解しているか?「膨大な画像群を記憶して利用する」
41 人工知能とサービスシステム設計「社会の中で活きる人工知能の実現のために」
42 人工知能が運動の質を理解し健康増進を支援「指導者の能力を倍増させる」
43 業務知識を学び従業員を支援する「人の能力を向上させる人工知能」
44 ロボットの行動規則を試行錯誤で学習する人工知能「大域的な試行錯誤から局所的な試行錯誤へ」

第5章 ディープラーニングは何がすごいのか?
45 ディープラーニングを支える自己符号化器「多層のニューラルネットを一層ごとに作る」
46 ディープラーニングと表現学習「人間が気付かない目の付け所を見つける人工知能」
47 ディープラーニングが変える世界「人工知能大競争開始の号砲が鳴った」
48 コンピュータが将棋で人に勝つ「ミニマックス法と評価関数」
49 コンピュータが囲碁で人に勝つ「モンテカルロ木探索と深層学習」
50 芸術を作る人工知能「人工知能が音楽、小説、絵画を作る」

第6章 人工知能の未解決問題と突破策
51 人工知能は自身の思考を変えられるか?「人間に与えられたアルゴリズムからの超越」
52 フレーム問題「言わずもがなの常識もルールに書くのは大変」
53 記号と対象物の間の大きなギャップ「実世界で働くには記号と実体との対応を知る必要がある」
54 人工知能の安全性をどう保証するか「命を預かる役目を果たす人工知能」
55 計算量の爆発「すべての場合を考えようとしても膨大な選択肢が」
56 汎用人工知能の夢「人間のようにどんな問題でも受け付ける人工知能」
57 人工知能から人工生命へ「自己複製し増殖するプログラム、そしてロボット」

第7章 人工知能が溶け込んだ社会の将来像
58 人工知能が変えるものづくり「第4次産業革命は何をもたらすか?」
59 自動運転車は現代の人工知能技術の中心命題「何が必要か?どう実現されるか?」
60 家電と人工知能「家庭内や職場で人工知能はどう使われるか?」
61 人工知能が医療を変える「隠れた情報をフルに活用する「精密医療」」
62 人工知能が金融を変える「利益追求からリスク管理へ」
63 人工知能が教育を変える「教育支援から入試突破プログラムまで」
64 アメリカの人工知能開発戦略「新たな産業革命をアメリカ政府はどう考えているか」
65 これからの日本と人工知能「ベンチャー精神とエコシステムに活路が見い出せるか」
66 人工知能が仕事を奪う? 既存影響と新規事業「人工知能ビジネスの動向」

コラム
①人工知能研究の歩みとこれから
②人工知能学の俯瞰図
③小中学生からのよくある質問
④人工知能研究者になるには?
⑤人工知能の研究現場
⑥人工知能時代の人材・組織論
⑦産業技術総合研究所人工知能研究センターについて

参考文献
索引
執筆者一覧

はじめに

 今、人工知能技術は大きな局面をむかえています。
 従来からの「知能とは何か? どのように定義し再現するか?」という研究に加え、近年急速に発達しつつあるビッグデータによる大規模で高精度な情報処理技術が組み合わさり、革新的で実用的な応用が次々と生まれている段階に来ています。人工知能の性能を上げていくことも重要ですが、同時に、現実の社会の中で人工知能をどのように活用してゆけばよいのか考え、実際に取り入れていくことが、人工知能を強くし、産業の成長や社会生活の向上につながるということです。人工知能技術は、今後あらゆる産業や日常に深く浸透していくことになります。様々な要素技術の研究や応用の動向を知れば、今後の日常生活がどのように変化していくのか、産業技術にどのような革新がもたらされるのかといったことを具体的にイメージできるようになるかもしれません。そうなれば、自らが変化の主体となることも可能です。
 研究の流れは大きく2つあって、1つは「知能」の再現です。人間はどのように世界を認識し、考え、行動しているかの探求です。人間としての理性的で合理的な思考を理論的に明らかにし、コンピュータで再現するのです。論理学や心理学、制御工学など様々なバックグラウンドを有し、機械学習や自然言語処理、画像認識といった要素技術があります。
 もう1つは、「ビッグデータ」です。この20年ほどで急速に発達した比較的新しい分野です。人間やコンピュータの能力では到底とらえきれない、世の中のありとあらゆる大量のデータを処理し、今まで見えていなかったパターンや事実を浮かび上がらせる技術です。さらに、それらのデータを「上手」に処理するディープラーニングの登場によって、従来の要素技術が飛躍的に発達したのです。
 本書は、人工知能を一から学ぶ方のための入門書です。どのような研究や技術があって、今何に応用されているのか、これから何ができるようになるのかという全体像を、やさしく解説しています。
 第1章では人工知能の世界の入り口を紹介します。改めて「知能とは何か?」を考えてみましょう。過去の賢人たちはその問いに対してどんな答えを提示し、今の技術にそれらがどうつながっているのでしょうか。
 第2章では人工知能を体感してみましょう。人工知能と言うと、コンピュータの中の複雑で見えない世界を想像してしまいますが、基本中の基本の考え方は、紙で書いたり日常生活に当てはめたりして学ぶことができます。
 第3章では基礎技術を学びます。知能をコンピュータ上で再現するための様々な要素技術や理論的なアプローチがあります。
 第4章では人工知能技術と現実社会とのつながりを見てみましょう。どのような技術で何をしているのか、具体的に紹介していきます。
 第5章では人間の能力を凌駕しはじめた人工知能技術のすごさを紹介します。ディープラーニング(深層学習)の仕組みと応用を中心に取り上げます。
 第6章では人工知能がまだまだ苦手なことを紹介します。また、今後の社会実装が進む上での懸念事項も取り上げます。「人工知能がこんなすごいことをできた!」といったポジティブな面だけでなく反対の側面からも見ることで、人工知能の本質がより理解できるでしょう。
 第7章ではこれからの社会と人工知能の関わりを考えてみましょう。人工知能は日常生活やものづくり、教育など社会のあらゆるところに大きな変化をもたらします。
 本書を読んで、人工知能の理論や技術への理解を深めるだけでなく、これからの社会のよりよい姿を構想するきっかけにもなれば、我々にとっても大きな喜びです。
2016年11月
辻井潤一

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