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ファインバブル入門

定価(税込)  2,808円

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サイズ A5判
ページ数 256頁
ISBNコード 978-4-526-07625-1
コード C3043
発行月 2016年11月
ジャンル 化学

内容

ファインバブルは微細な気泡の特性を生かした技術であり、環境や人体にやさしい日本発の技術として注目され、農業や水産業、洗浄分野などさまざまな分野で導入されている。本書では、ファインバブルの概要から特性、発生方法、応用までをまとめて紹介する。

寺坂宏一  著者プロフィール

(てらさか こういち)
1984 年慶應義塾大学卒業(工学部応用化学科)、1991 年慶應義塾大学大学院博士課程修了(理工学研究科応用化学専攻)、その間旭硝子(株)鹿島工場および鐘淵化学工業(株)生産技術研究所に勤務後、1992 年慶應義塾大学理工学部助手、1995 年同専任講師、2000 年同助教授、2001 年同准教授、2008 年より同教授。工学博士
専門:化学工学(ファインバブル)
主な所属学協会:ファインバブル学会連合、ファインバブル産業会、化学工学会、日本混相流学会、日本ソノケミストリー学会、日本食品工学会、分離技術会

氷室昭三  著者プロフィール

(ひむろ しょうぞう)
1978 年山口大学卒業(文理学部理学科化学専攻)、1980 年熊本大学大学院修士課程修了(理学研究科化学専攻)、その間持田製薬(株)東京研究所に勤務後、1983 年有明工業高等専門学校助手、1990 年同講師、1991 年同助教授、2000 年同教授。2016 年米子工業高等専門学校校長。博士(工学)
専門:物理化学(ファインバブル)
主な所属学協会:ファインバブル学会連合、日本混相流学会、日本化学会、高分子学会、日本高専学会、日本工学教育協会

安藤景太  著者プロフィール

(あんどう けいた)
2005 年慶應義塾大学卒業(理工学部機械工学科)、2010 年米国・カリフォルニア工科大学大学院博士課程修了(工学応用科学部門・機械工学専攻)、カリフォルニア工科大学およびシンガポール・ナンヤン工科大学ポスドク研究員として勤務後、2012 年より慶應義塾大学理工学部専任講師。Ph.D.
専門:流体工学(キャビテーション)
主な所属学協会:日本機械学会、日本混相流学会、化学工学会、日本流体力学会、米国物理学会

秦 隆志  著者プロフィール

(はた たかし)
1995 年徳島大学卒業(工学部生物工学科)、2000 年徳島大学大学院工学研究科博士後期課程修了、同年徳島大学サテライト・ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー中核的研究機関研究員、2001 年高知工業高等専門学校物質工学科助手、2007 年同准教授、2016 年学科改組により同ソーシャルデザイン工学科准教授。博士(工学)
専門:生物物理化学
主な所属学協会:ファインバブル産業会、日本化学会、日本生物物理学会、化学工学会、日本混相流学会、日本分析化学会、日本水環境学会、日本水処理生物学会

目次

はじめに
執筆者一覧
使用記号表

第1章 ファインバブルとは
 1.1 ファインバブルの歴史
  1.1.1 マイクロバブルの登場
  1.1.2 ナノバブルの登場
  1.1.3 国際標準化へむけたファインバブル産業会の設立
  1.1.4 ファインバブル地方創生協議会
  1.1.5 ファインバブル学会連合
  1.1.6 ファインバブルの将来
 1.2 ファインバブルの国際標準化
  1.2.1 ファインバブル技術の国際標準化の必要性
  1.2.2 ファインバブル技術の国際標準化の進捗
  1.2.3 ナノバブルからウルトラファインバブルへの改称
 1.3 ファインバブルの特徴と特性
  1.3.1 マイクロバブルの上昇速度
  1.3.2 マイクロバブル流の摩擦係数
  1.3.3 ファインバブルの比表面積
  1.3.4 マイクロバブルの自己加圧効果
  1.3.5 マイクロバブルの収縮
  1.3.6 マイクロバブルの表面電位特性

第2章 物理化学とファインバブル
 2.1 水の性質
  2.1.1 水分子の構造と水素結合
  2.1.2 水の一般的性質
 2.2 表面張力
 2.3 Young-Laplace の式
 2.4 ガス溶解度(Henry の法則)
 2.5 蒸気線図
 2.6 ゼータ電位
 2.7 水素イオン濃度
  2.7.1 酸と塩基
  2.7.2 水の電離
  2.7.3 水のイオン積
  2.7.4 pH(水素イオン指数)

第3章 音響工学とファインバブル
 3.1 音響工学とファインバブル
 3.2 超音波の基礎
  3.2.1 支配方程式
  3.2.2 線形理論
  3.2.3 音響インピーダンスと定在波
 3.3 超音波キャビテーションの初生
  3.3.1 飽和蒸気圧
  3.3.2 Blake の臨界圧
 3.4 キャビテーション気泡の動力学
  3.4.1 球形気泡の運動方程式
  3.4.2 気泡の共振現象
  3.4.3 整流物質拡散による気泡核の成長
  3.4.4 壁面近傍の気泡力学
 3.5 分散気泡流における音響現象
  3.5.1 均質気泡流モデル
  3.5.2 分散関係式
  3.5.3 準静的過程における音速
  3.5.4 ベンチュリー管内の分散気泡流
コラム:テッポウエビとキャビテーション

第4章 化学工学とファインバブル
 4.1 気液間物質移動
  4.1.1 平衡論と速度論
  4.1.2 定常状態と非定常状態
  4.1.3 拡 散
  4.1.4 気液間物質移動
  4.1.5 物質移動抵抗と総括物質移動係数
  4.1.6 無次元相関式
 4.2 ガス吸収
  4.2.1 律速過程
  4.2.2 物質収支
  4.2.3 気泡塔型連続ガス吸収塔
  4.2.4 並流ガス吸収操作における最大液ガス比
 4.3 吸着と浮上分離
  4.3.1 吸着剤
  4.3.2 吸着平衡
  4.3.3 吸着操作
  4.3.4 回分式吸着
  4.3.5 固定層吸着
  4.3.6 マイクロバブル吸着
  4.3.7 マイクロバブル吸着浮上分離
 4.4 洗  浄
  4.4.1 界面エネルギー
  4.4.2 表面張力と界面張力
  4.4.3 濡れ性と接触角
  4.4.4 汚れの付着および脱離に伴う自由エネルギー変化
  4.4.5 洗剤の作用
  4.4.6 ファインバブル洗浄

第5章 生物学とファインバブル
 5.1 代  謝
 5.2 微生物
  5.2.1 増 殖
  5.2.2 微生物と酸素の関係
  5.2.3 微生物と二酸化炭素の関係
 5.3 植  物
  5.3.1 灌水利用
  5.3.2 根と溶存酸素の関係
  5.3.3 発芽に対する活性酸素種の影響
  5.3.4 光合成における二酸化炭素
 5.4 動  物
  5.4.1 高い酸素溶解効率の効果
  5.4.2 溶存二酸化炭素による麻酔作用
  5.4.3 鮮 度
  5.4.4 生理活性作用の仮説
コラム:二酸化炭素ファインバブルを用いた食品保存の改善

第6章 ファインバブル発生技術
 6.1 ファイバブルの生成
 6.2 マイクロバブル製造技術
  6.2.1 旋回液流式
  6.2.2 スタティックミキサー式
  6.2.3 機械的せん断式
  6.2.4 微細孔式
  6.2.5 エゼクター式
  6.2.6 ベンチュリー式
  6.2.7 加圧溶解式
  6.2.8 加温析出式
  6.2.9 混合蒸気凝縮式
  6.2.10 その他
 6.3 ウルトラファインバブル製造技術
  6.3.1 界面活性剤添加+微細孔式
  6.3.2 スタティックミキサー式
  6.3.3 旋回液流式
  6.3.4 加圧溶解式

第7章 ファインバブル計測技術
 7.1 ファインバブルを含むバルク物性計測
  7.1.1 ファインバブル内圧力
  7.1.2 密度と見かけ密度
  7.1.3 界面張力と濡れ性
  7.1.4 気泡形状
  7.1.5 溶存ガス濃度
  7.1.6 界面活性剤および溶質の濃度
 7.2 マイクロバブル計測技術
  7.2.1 マイクロバブル径と分布の計測技術
  7.2.2 単一マイクロバブルの上昇速度
  7.2.3 マイクロバブルのガスホールドアップ
  7.2.4 マイクロバブル群の上昇速度
  7.2.5 マイクロバブル群からの物質移動速度
 7.3 ウルトラファインバブルの計測技術
  7.3.1 ウルトラファインバブルの簡易的可視化
  7.3.2 ウルトラファインバブル径と数密度分布
  7.3.3 ゼータ電位
  7.3.4 ラジカル測定

第8章 ファインバブル応用技術
 8.1 超音波洗浄
 8.2 ポリフェノールの回収
  8.2.1 マイクロバブル浮上分離法
  8.2.2 ポリフェノール回収に及ぼす操作条件の影響
  8.2.3 分散気泡サイズの影響
  8.2.4 疎水性の影響
  8.2.5 ルチン初濃度の影響
 8.3 水産業
 8.4 農産業
 8.5 マイクロバブル内包ゲルビーズの製造
  8.5.1 さまざまなカプセル化食品
  8.5.2 マイクロバブル懸濁液を内包したアルギン酸ゲルビーズの製造
  8.5.3 マイクロバブル内包ゲルビーズの機能性および物性の制御
 8.6 マイクロエマルション製造
  8.6.1 蒸気直接接触凝縮法によるマイクロW/O エマルションの製造
  8.6.2 蒸気直接接触凝縮法の開発
  8.6.3 エマルションの品質

索 引

著者紹介

執筆者一覧
(氏 名) (所 属) (執筆担当)
寺坂 宏一(慶應義塾大学 教授) 第1 章第4 章第6 章第7 章(7.3.4を除く)8.2、8.5、8.6
氷室 昭三(米子工業高等専門学校 教授) 第2 章8.3、8.4
安藤 景太(慶應義塾大学 専任講師) 第3 章8.1
秦 隆志(高知工業高等専門学校 准教授) 第5 章6.2.4、7.3.4、8.3、8.4

はじめに

ファインバブル技術は日本発祥で国内各地での普及だけでなく世界からの注目や関心も集めており、現在急速に普及が進んでいる。一方この技術は利用現場での開発と実用化が先行し、それを科学が追いかけて現象解明していくという珍しいスタイルで発展してきた。そのためファインバブル技術にはこれまで基盤となる特定の学術分野がなく、その応用分野ごとに、土木、農業、漁業、機械工学、医療、化学、物理のような別々の学術分野で各論が議論されてきた。そのためファインバブルをサイエンスとして体系化して学ぶことはできず、ファインバブルに関心をもった初学者やエンジニアは、若干名のファインバブルに詳しい講師の講演、いくつかの企業の実施例紹介、ファインバブル発生器メーカーによる実演展示、ユーザーの体験談、ある科学の視点に特化した検討などを集めたセミナーや講習会で聴講し独学で勉強するか、あるいはそれらの話題やトピックスを集めただけで内容に関して十分な統一性や整合性のチェックがされていない高額な書籍を購読してもより疑問を深めることも多かった。
 こうした状況はファインバブルのサイエンスとしての発展を阻害し、初学者の意欲を損ねてしまう。
 そこでファインバブルの学術発展のために2015 年に設立されたファインバブル学会連合に次の3つの委員会が設置された。各委員会のミッションは以下のとおりである。
(1)シンポジウム委員会
   ファインバブル学会連合シンポジウムの開催
(2)出版委員会
   学術誌で「ファインバブル」関連の記事や論文の発刊
   ファインバブル初学者向けテキストの発刊と監修
(3)広報委員会
    ファインバブル学会連合ホームページ1)によるファインバブル関連情報の発信
 本テキストの発刊はファインバブル学会連合出版委員会の重要ミッションである。これからファインバブルをサイエンスとして学びたい大学生や大学院生、ファインバブルの研究開発を担う企業の初学者やエンジニアを対象とした、世界初のファインバブル入門のためのテキストとして作成された。
 ファインバブルサイエンスは、ファインバブル特有の現象と結果を理解する視点から俯瞰すると、主な基盤となる学術は物理化学、流体力学、音響工学、化学工学、生物学である。他にもより応用面に近い学術としては医療工学、農業水産工学や食品工学なども関連する。ファインバブルサイエンスを体系化するための最初の礎として本テキストでは、物理化学、音響工学、化学工学、生物学を学ぶ。流体力学2)および他の基盤学術はファインバブル学会連合から次回の本テキスト出版時に追加したい。
 第2章から第5章にかけて各基盤となる学術分野の基礎理論が解説されるが、それぞれ「ファインバブル」に関連する重要な知識に焦点を当てて説明が進められており、ファインバブルサイエンスの構築と体系化の最初の一歩となるようにまとめられている。各章間で一部重複する理論もあるが、ファインバブルサイエンスにおいてはその重複する理論の重要性に気づいてほしい。また各基盤学術で紹介される基礎理論について疑問や興味がわけばぜひその専門書を入手して知識を掘り下げていくとよい。
 ファインバブルがサイエンスとして育っていく歴史についてを第1 章で紹介した。ファインバブル技術が日本で生まれて世界に広がるまでの経緯を垣間見ることができる。さらに第6 章ではファインバブルの発生技術とそれに関連する基盤学術や理論を紹介した。ある企業の発生器の製品紹介としてではなく、ファインバブルをガスと液の2つの流体から生成させるためにどのような原理や法則が利用されているのかを理解してほしい。まだ現象解明が不十分な点、定量的な解析が途上な点も数多く残っているので初学者の研究テーマとしても魅力的である。第7 章ではファインバブルの主な計測技術について紹介した。とくにウルトラファインバブルについてはまだ計測できない物性や物理量も数多く残っている。紹介した原理や理論も元来は固体ナノ粒子の測定目的であり気体のウルトラファインバブルへの適用が十分正しいとは言えない方法もある。ぜひ計測に関心をもつ研究者や技術者には研究開発に参加してほしい分野である。最後に第8 章ではファインバブルの応用技術の一端を紹介した。非常の多くの分野で適用が試みられているが、さまざまな都合や理由で実用化には至らない成果も多いが、成功例は画期的なものも多い。学術分野の解説に比べて応用例は次々と更新されて積み重ねられるので、このテキストで紹介された応用例もすぐに陳腐化するだろう。しかしながら一つの時代での成果紹介として理解いただきたい。
 本テキストの執筆において、ファインバブル学会連合出版委員会(委員長:埼玉大学本間俊司准教授)は次のように執筆適任者を選定し快諾を得た。
  慶應義塾大学理工学部 寺坂宏一教授
  米子工業高等専門学校 氷室昭三教授(校長)
  慶應義塾大学理工学部 安藤景太専任講師
  高知工業高等専門学校 秦 隆志准教授
 それぞれ、化学工学会粒子・流体プロセス部会気泡・液滴・微粒子分散工学分科会3)、日本混相流学会マイクロバブル・ナノバブル技術分科会4)、ファインバブル産業会5)、日本機械学会(流体工学部門)6)などを母体とし、ファインバブルの専門家として現在最先端で活躍中の研究者である。
 各執筆者ともたいへん多忙ななか本テキスト執筆にご尽力いただき完成に至ることができた。また本文中でファインバブル研究を専門とされている滋賀県立大学工学部南川久人教授からも研究データのご提供を戴いた。ご協力に感謝申し上げたい。
 最後に本テキストの立案および編集段階ではそれぞれ日刊工業新聞社7)出版局の土坂裕子氏と木村文香氏にたいへんお世話いただいた。ここで感謝の意を表したい。
ファインバブル学会連合理事長 
寺坂宏一 
(慶應義塾大学理工学部教授)

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