買い物かごへ

本当はメチャメチャ簡単!
これなら使える大学数学の本
力学・制御編

定価(税込)  2,052円

著者
サイズ A5判
ページ数 208頁
ISBNコード 978-4-526-07626-8
コード C3053
発行月 2016年11月
ジャンル 機械

内容

大学の数学は本来、「道具」として使い出がある内容が多く、設計開発や各種の分析などで、たいへん利用価値が大きいものが多い。本書は、大学数学に躓き、不幸にも「ブラックボックス」のまま卒業して技術者になってしまった多くの人を対象に、大学数学のそれぞれの目的や便利さを紹介し、数学を道具として使うコツを教える本。数学の使い道として、大きく力学と制御に分け、肩肘はらない解説でそれぞれの「意味」「目的」「使い方のコツ」を紹介していく。

岩淵正幸  著者プロフィール

(いわぶちまさゆき)

岩淵技術士事務所 所長
S54年東京大学大学院修士課程を修了した後、日本セメント(現太平洋セメント)、川崎重工業、事務処理機器メーカーを経て、岩淵技術士事務所を設立。
川崎重工では、油圧制御システム設計、旧石油公団(現石油天然ガス・金属鉱物資源機構)委託研究による圧力波通信システムの開発研究、対戦車用ミサイル操舵装置の開発に従事。
現在、企業のコンサルティング業務の傍ら、同志社大学理工学部、龍谷大学理工学部、大阪府立大学工業高等専門などで非常勤講師を務める。
公益社団法人 日本技術士会近畿本部 機械システム部会幹事。京都技術士会幹事。技術士(機械部門)。
URL:http://www.eonet.ne.jp/~fucamocoleon/

記事執筆
スライド機構におけるロックのメカニズム(2012年5月号)
力学教師としてのCAE、ワンランク上を目指す設計者のための機構解析(2012年2月号)
目から鱗のステッピング・モータの使い方(2011年8月号)
苦手克服!実践ゼミナール第7回機械力学ステップアップ編(2010年11月号)苦手克服!実践ゼミナール第10回制御工学ステップアップ編(2011年2月号)
CAEの使い方(2010年3月号)
機械設計展望2009展望5―設計者とCAE―設計者はCAEをどのように使い、活かすべきか?(2009年3月号)
機械設計の盲点テーマ2流用設計の落とし穴と回避策(2007年2月号)以上、月刊機械設計(日刊工業新聞社)

著書
初学者向け技術経営テキスト(共著)(理工図書)

webサイト(MONOist連載記事)
独学!機械設計者のための自動制御入門(2009年6月~2011年9月)
ピタゴラスイッチの計算書を作ろう(2008年8月~2009年3月)

目次

はじめに 数学の便利さと理論の美しさを知ろう

序論 数学の理解を助けるためのノウハウ
1.低次元で考えよう
2.習うより慣れよう
3.演算は計算方法でなく、機能で理解しよう
4.数学は自ら拡張することを知っておこう(はじめは自然数しか存在しなかった)
5.イメージで理解しよう
6.信ずる者は救われる
コラム1 「f-d論法」なんてくそくらえ

第1章 ベクトル解析(ベクトル解析を使って設計課題を解決しよう)
1.1 なぜ草太は上司に叱られたのか?
1.2 スライダはなぜ動かなかったか
1.3 ベクトルの微分と運動法則(質点の運動とベクトルの微分)
1.4 極座標とコリオリの加速度(ベクトルのご利益)
1.5 草太の問題を極座標で解く
1.6 内積と外積
1.7 剛体の回転運動
コラム2 「高校物理と大学物理の違い」
コラム3 「モーメントとトルク」

第2章 微分と積分(微分は割算、積分は足し算)
2.1 草太が、またやってきよった
2.2 仕事
2.3 微分と積分
2.4 力学的エネルギーとその保存則
2.5 偏微分と全微分
コラム4 「積分は足し算」
コラム5 「微分記号の由来」

第3章 解析学と流体力学
3.1 草太再々登場
3.2 ラグランジェ的見方とオイラー的見方
3.3 テーラーの級数展開
3.4 流体の運動方程式
3.5 ガウスの発散定理と連続の式
3.6 ストークスの定理と渦
3.7 ベルヌーイの定理
コラム6 「gradとdivとrotと∇(ナブラ)」

第4章 フーリエ級数展開とフーリエと変換とラプラス変換
(数学を「制御設計」に利用しよう)
4.1 草太再来
4.2 虚数と複素数(便利だから使われる複素数)
4.3 オイラーの公式
4.4 フーリエ級数展開
4.4-1 自然現象は波動現象
4.4-2 偶関数と奇関数
4.4-3 フーリエ級数展開
4.5 フーリエ変換
4.6 フーリエの積分定理
4.7 フーリエ級数の応用
4.7-1 フーリエ級数と常微分方程式(梁の変形)
4.7-2 フーリエ級数と偏微分方程式(熱伝導方程式)
4.8 畳み込み積分とフーリエ変換
4.9 フーリエ変換と伝達関数
4.10 ラプラス変換
コラム7 「カルダノの公式」
コラム8 「線形とは」

第5章  微分方程式と固有値(接線をつないで微分方程式を解こう)
5.1 1階の微分方程式
5.2 2 階の微分方程式
5.3 行列の微分方程式
5.4 固有値と固有ベクトル
5.5 微分方程式とラプラス変換

付録 補講1
   補講2
   補講3

索引

はじめに

数学の便利さと理論の美しさを知ろう

 100g125円の肉を200g買って、1000円札を出したら、お釣りが750円だった。肉の値段が250円だからお釣りは1000-250=750円。小学生でもわかる計算だ。しかし、図のように、半径1の円上の、x軸から30°の位置にある点Aの座標が、複素指数関数、
eiπ/6=cos(30°)+isin(30°)=(1/2, √3/2)
からわかり、さらにその点から30°反時計廻りに回転した点Bの座標が、複素指数の演算、
ei(π/6+π/6)=cos(30°+30°)+isin(30°+30°)=(√3/2, 1/2)
によって知ることができると説明して、当然だと思う人は、一般企業の「技術者」と呼ばれる人でも、それほど多くはないように思う。
 実数の足し算、引き算、掛け算、割り算は、ほとんどの人が日常生活や実務で使っているから、四則演算を敬遠する人はまずいないだろう。しかし複素数になると、電気技術者を除けば使うことは滅多にない。普段使わないから馴染みがないということもあろうが、複素数が、実数だけではなく虚数を含んでおり、その「直観的意味」が理解できないという理由で、多くの人が複素数を敬遠する。複素数を含んだ微分や積分となればなおさらである。彼らに、複素数という便利な「数」をなぜ利用しないのか、と問えば、虚数が理解できないからという答えが返ってくる。
 そもそも、「理解する」とはどういうことだろう?養老孟司氏は著書「ばかの壁」の中で、男性は出産の痛みは理解できないと言っている。経験していないことは理解できない、ということだ。なぜ経験していないことは理解できないのかといえば、判断の基準となるテンプレートが頭の中に生成されていないからである。人は脳の中に基準テンプレートをもっていて、それとの比較によって事柄の内容を理解する。したがって経験したことのない事柄についてはテンプレートがなく、その大小、多少、軽重、是非、優劣、美醜が判断できないのだ。虚数が実在する数ではないと思うと、実在する実数との組み合わせである複素数が俄かには理解できない、というのも当然である。
 では、経験のないことは理解できないのだろうか。そうではないと考える。人間には、未経験の事柄でも、自分が過去に経験した知識をベースに想像できる能力がある。勿論、男は女性の出産の痛みを体感できないだろう。しかし、包丁で指を切ったときの痛みや誤って木刀で殴られたときの痛み、腹痛、頭痛など、かつて自分が経験した痛みから、陣痛や出産の痛みも想像できる。数学においても同様だろう。大切なのは想像力である。
 数学の神髄は理論の美しさと厳密性にあるといわれる。一般に、数学の教科書は厳密性に重点をおいて書かれているようだ。教科書の多くが数学者を目指す者たちのために書かれているから当然だし、数学者になろうとする者であれば、厳密性の中に内在する理論の美しさが見えるはずだということだろう。残念ながら、数学者でない者には、そのような美しさを読み取る理解力が不足している。しかし数学の美しさは厳密性の中にだけではなく、複雑に絡み合った数式が一瞬にしてシンプルな式になったりする「驚き」や、指数と三角関数が、虚数を介して思いがけず繋がっていたりする体系の「美しさ」にもある。
 数学を計算ツールとして利用する場合、厳密性が問われることはほとんどない。普通の人にとっては厳密性より、複雑な計算も一発で解ける「便利さ」や、少ない知識でも理解できる単純な体系の「美しさ」を知る方が重要だ。筆者は数学者ではない。したがって厳密性やその中に内在する数学の美しい世界を正しく説明できない。しかし、実務における数学の便利さとその便利さがもたらす感嘆や体系化された理論の美しさは紹介できる。
 製品に不具合が発生したとき、力学的数式モデルを仮定し解くことで、原因を解明することができれば、合理的な対策が立てやすくなり、かつ対策も短期間でおこなうことができる。しかし、原因を物理理論や数式で説明しても、多くの技術者は数式を理解できない。そのため不具合の原因の本質も理解されない。また、対策をするためには、数式を解いて、最適値に設計変更する必要があるが、数式が理解できないため、提案された設計修正値が正しいのか間違っているか判断できず、修正に納得しない。多くの技術者は、そういった状況を良しとしているわけではなく、できるならば数式モデルを理解し、モデルの是非を議論したいと思っている。
 本書は、実務で今以上に数学を活用したいが、今さら大学の講義で使った数学の教科書をはじめから読む気力はない、という技術者、あるいは現在大学で数学を学んでいるが、授業で学ぶ数学理論に、いまいち実感が得られないという学生のために、数学の有用性や面白さを、気軽な読み物として理解する方法を提供するものである。また、数学がまったく理解できないのではなく、理解がまだら模様で、あの理論がよくわからない、あの理論を理解するために自分とは違う考え方やヒントを知りたい、と思う人たちに、筆者が考える理解の仕方を提供することを目的としている。したがって、高校で学んだレベルの基礎数学をある程度理解している人たちを対象としている。
 くどいようであるが、筆者は数学者ではない。筆者の、定理や数式の解釈等に、学問的に見れば疑問な点があるかもしれない。数学を理解するうえで、ひとつの考え方あるいは、ものの見方であるとご理解いただければ幸甚である。
2016年11月
岩淵正幸

買い物かごへ