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IoTが拓く次世代農業
アグリカルチャー4.0の時代

定価(税込)  2,484円

著者
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サイズ A5判
ページ数 184頁
ISBNコード 978-4-526-07617-6
コード C3034
発行月 2016年10月
ジャンル 経営

内容

アベノミクスで成長産業として期待高まる農業の第4次革命(アグリカルチャー4.0)の全容に迫る。農業IoTシステムの全体像、市場構造、ビジネスモデル、さらには特区や導入促進制度・規制緩和などを明快に披露。5つの中核システムと基盤インフラ「DONKEY」の提唱など具体策を明かす。

三輪泰史  著者プロフィール

(みわ やすふみ)
1979年生まれ。広島県出身。
2002年、東京大学農学部国際開発農学専修卒業。2004年、東京大学大学院農学生命科学研究科農学国際専攻修了。同年株式会社日本総合研究所入社。現在、創発戦略センター・シニアスペシャリスト。農林水産省、内閣府等の有識者委員を歴任。
専門は、農業ビジネス戦略、農産物のブランド化、植物工場やスマート農業等の先進農業技術、日本農業の海外展開。農産物のブランド化に関する新会社「合同会社Agri Biz Communication」の立上げに参画。
主な著書に『次世代農業ビジネス経営』『植物工場経営』『グローバル農業ビジネス』、『図解次世代農業ビジネス』(以上、日刊工業新聞社)、『甦る農業―セミプレミアム農産物と流通改革が農業を救う』(学陽書房)ほか。

井熊 均  著者プロフィール

(いくま ひとし)
株式会社日本総合研究所常務執行役員 創発戦略センター所長
1958年東京都生まれ。1981年早稲田大学理工学部機械工学科卒業、1983年同大学院理工学研究科を修了。1983年三菱重工業株式会社入社。1990年株式会社日本総合研究所入社。1995年株式会社アイエスブイ・ジャパン取締役。2003年株式会社イーキュービック取締役。2003年早稲田大学大学院公共経営研究科非常勤講師。2006年株式会社日本総合研究所執行役員。2014年同常務執行役員。環境・エネルギー分野でのベンチャービジネス、公共分野におけるPFIなどの事業、中国・東南アジアにおけるスマートシティ事業の立ち上げ、などに関わり、新たな事業スキームを提案。公共団体、民間企業に対するアドバイスを実施。公共政策、環境、エネルギー、農業、などの分野で60冊の書籍を刊行するとともに政策提言を行う。

木通秀樹  著者プロフィール

(きどおし ひでき)
1964年生まれ。慶応義塾大学理工学研究科後期博士課程修了(工学博士)。石川島播磨重工業(現IHI)にてキュービックニューラルネット等の知能化システムの技術開発を行い、各種のロボット、プラント、機械等の制御システムを開発。2000年に日本総合研究所に入社。現在、創発戦略センター・シニアスペシャリスト。新市場開拓を目指した社会システム構想、プロジェクト開発、および、再生可能エネルギー、水素等の技術政策の立案等を行う。著書に「なぜ、トヨタは700万円で『ミライ』を売ることができたか?」(B&Tブックス・共著)、「『自動運転』が拓く巨大市場」(B&Tブックス・共著)、「なぜ、日本の水ビジネスは世界で勝てないのか」(B&Tブックス・共著)、など。

目次

はじめに

第1章 ビジネス化が進む農業
1.日本農業の苦境
世界トップの品質なのに低迷する日本農業/日本農業の概観/離農と耕作放棄地の増加というピンチ/転換を求められる農業政策/日本農業の何が悪いのか/日本農業を救う「皆が儲かる農業」
2.加速する企業の農業参入
家族経営から法人経営へのシフト/農業参入という新たな波/農業参入を推進する規制緩和/法人化・農業参入のメリット/農業参入の課題
3.成功した農業企業家
高まる農業企業家の存在感/多角化や先進技術導入で躍進する農業法人/大企業からの出資を受ける農業法人/農業ビジネスの成功者が政策を動かす/低空飛行が続く農業従事者の所得水準

第2章 IoT化する農業
1.農業IoTの分類
IoT時代の幕開け/農業にも到達したIoT化の波/農業IoTの定義/農業IoTを後押しする政策
2.事例紹介①生産管理や環境制御のシステム化
実用化進む農業IoT/生産管理システム(農業ICT)/海外の営農支援ICTの事例/環境制御技術/環境制御がパッケージ化された植物工場/植物工場で導入進む自動化技術
3.事例紹介②自動運転農機や農業ロボットの出現
自動運転農機/自動運転農機の普及拡大のハードル/農業ロボット/農業用ドローン

第3章 アグリカルチャー4.0の時代
1.農業の技術革新の歴史
技術革新の歴史から浮かび上がる日本農業の位置/農業技術の分類/アグリカルチャー1.0:生物学と農業土木を中心とした変革/アグリカルチャー1.5:ヨーロッパで起きた農業革命/アグリカルチャー2.0:農芸化学を中心とした変革/アグリカルチャー3.0:機械化を中心とした変革/アグリカルチャー3.5:ICTの部分的な活用
2.アグリカルチャー3.5で取り残された課題
不可欠な露地栽培のテコ入れ/農業経営の現状/日本農業の構造的課題/農機導入によるコスト増加/付加価値向上の問題点
3.真のIoT化が導く『アグリカルチャー4.0』
IoTによる農業の大革新=アグリカルチャー4.0/アグリカルチャー4.0の鍵となるIoT/北海道の大規模農家から何を学ぶか/日本農業固有の課題を根本から解決/現状の「スマート農業」政策の効果と課題

第4章 アグリカルチャー4.0を牽引するIoT
1.農業ICT化の現状
(1)「種苗調達」のICT化
(2)「土づくり/播種・育苗・定植」のICT化
(3)「育成」のICT化
(4)「収穫」のICT化
(5)「出荷」のICT化
(6)「流通(加工)」のICT化
(7)「販売」のICT化
2.現状システムの問題点
①農業知見データの蓄積と共有化の遅れ
②システムの分断
③市場ニーズと生産を連携するシステム化の遅れ
④高コストで斑模様の機械化
農業のグランドデザイン再構築/グランドデザイン作りに求められるIoTの三層構造の理解
3.農業における究極のICT化
(1)農業IoT中核機能①:「農業知見の共通データベース」
(2)農業IoT中核機能②:「計画・管理・制御で連携する
アプリケーション群」
(3)農業IoT中核機能③:「生産・流通のマッチングプラットフォーム」
(4)農業IoT中核機能④:「小投資・多用途・無人化を目指す
自動化プラットフォーム」
4.アグリカルチャー4.0の中核『DONKEY』
(1)自律多機能型ロボット「DONKEY(ドンキー)」
(2)ベースモジュールの機能概要
(3)プラットフォームのシステム概念
(4)アタッチメントの構成
(5)「DONKEY」が生み出す未来の農業生産
5.アグリカルチャー4.0がもたらす農家の所得向上
アグリカルチャー4.0で年収1000万円を目指す/効果試算のモデルケース/所得向上効果のシミュレーション/DONKEYのシステム料/アグリカルチャー4.0が創る新たな農業従事者像

第5章 アグリカルチャー4.0の推進策
1.アグリカルチャー4.0の基盤アグリデータベースを構築せよ
アグリデータベースの重要性/データベース構築のハードル/データベース運営の受け皿/データベース運営者に求められる機能/農業データベースで先行するオランダ農業/データベースに参画するインセンティブ
2.自律多機能型農業ロボット『DONKEY』の開発戦略を推進せよ
自律多機能型農業ロボットの開発におけるハードル/DONKEY開発のための枠組み作り/ベースモジュールとプラットフォームの開発プロセス/アタッチメントのラインアップ充実のためのオープンイノベーション
3.アグリカルチャー4.0特区で成功事例を創出せよ
アグリカルチャー4.0特区で実用化を加速/アグリカルチャー4.0特区の面展開
4.アグリカルチャー4.0を農業のグローバル展開のパイオニアとせよ
新興国で高まる高付加価値農産物へのニーズ/日本式農業による新たなマーケットの開拓/日本式農業=農業知財ビジネス/再現性が高いアグリカルチャー4.0は日本式農業の決定打/アグリカルチャー4.0を日本版IoTの海外展開のパイオニアに/最後に~アグリカルチャー4.0が拓く次世代農業ビジネス~

はじめに

 日本農業はいま、長い衰退傾向の果てに壊滅的状況に陥るか、劇的なV字回復を実現するかという、重要な分岐点に差し掛かっている。
 日本農業の現状は、「農業産出額の低下」、「農業就業人口の減少」、「耕作放棄地の増加」、といったネガティブな表現で説明されることが多い。これらは紛れもない事実である。だが、厳しい逆境をただ嘆いていても、日本農業の状況は日に日に悪化するばかりだ。いま求められているのは、ピンチをチャンスに変える、逆転の発想である。農業就業人口の減少は、見方を変えれば、一人当たり農地面積の増加と読み替えることができる。日本の食卓を支えてくれたベテラン農家のリタイアは、「狭い農地」という日本農業の長年の課題を解消する千載一遇のチャンスでもあるのだ。
 そのような中、情報通信技術の急速な発展により“IoT(モノのインターネット)”という新たな仕組みが台頭した。産業界ではインダストリー4.0(第四次産業革命)により製造業の革新が実現しつつあり、その波は続いて農業に迫っている。農業IoTを効果的に活用すれば、農業界の悲願である「農業従事者みなが儲かる農業」を実現することも可能だ。本書では、筆者はそのような農業モデルを「アグリカルチャー4.0」と定義した。
 農業IoTの実用化を目指し、農林水産省をはじめとする各省庁は、自動運転農機、農業ロボット、環境制御システム、リモートセンシンング等を「スマート農業」と位置付け、研究開発や実証を積極的に支援している。これから5年間で様々な技術が実用化され、普及が進むと考えられる。
 一方で、現状のスマート農業は万能ではない。日本農業のボリュームゾーンである数ha規模の分散圃場では、自動運転農機は本領を発揮できないのである。営農面積が狭く農機の稼働率が低いことや、圃場間の移動に時間がかかってしまうことが原因だ。そこで本書では、日本農業の典型例であるこのような分散圃場に対するソリューションとして、小型の自律多機能農業ロボット「DONKEY」及びそれを支えるデータベースを提唱し、必要な機能、運用方法、開発戦略について説明している。
 「DONKEY」やスマート農業技術といった農業IoTを、圃場の特性やビジネスモデルに応じて使いこなすことで、農業従事者は従来の厳しい作業から解放され、その時間を企画、マーケティング、研究開発といったクリエイティブな業務に充てることができる。他産業並みの収入と魅力的な業務内容を兼ね備えることで、農業に優秀な人材が集まり、持続的な発展の礎となる。
 農業ビジネスやIoTへの関心が高まる中、本書の内容が、高い志を持った農業者やビジネスパーソンに対して少しでもお役に立てば、筆者としてこの上ない喜びである。
 本書は株式会社日本総合研究所・創発戦略センターの井熊均所長及び木通秀樹シニアスペシャリストとの共同執筆である。豊富な経験と鋭い発想力を基に、アグリカルチャー4.0のコンセプト検討及びアイデアの具体化にご尽力頂いたことに感謝申し上げる。また、同センターの清水久美子氏と各務友規氏には、国内外の農業IoTの先進事例の収集にご協力頂いた。多忙な中、的確かつ迅速な情報収集と分析を行ってくれたことに感謝の意を表したい。
 本書の企画、執筆に関しては新日本編集企画の鷲野和弘様に丁寧なご指導を頂いた。この場を借りて厚く御礼申し上げる。
 また、私事で恐縮ではあるが、これまでの著作活動を陰ながら支えてくれた妻に感謝したい。
 最後に、筆者の日頃の活動にご支援、ご指導を頂いている株式会社日本総合研究所に対して心より御礼申し上げる。
2016年10月
三輪 泰史

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