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今日からあなたも機械制御の 通 になる

定価(税込)  2,376円

著者
サイズ A5判
ページ数 264頁
ISBNコード 978-4-526-07614-5
コード C3053
発行月 2016年10月
ジャンル 機械

内容

私たちに身の回りには、「動く機械」がたくさんある。その特性を捉え、これを活かすにはきちんとした制御理論が必要。本書の目的は、機械制御をわかりやすい図面と、一般的な説明で解説することにより、制御の理論で必要な難しい数式に対する忌避感を緩和し、機械制御に対する理解力をつけること。制御技術の通になるポイントを、図面、イラスト、ポイント吹き出しで丁寧に解説する本書で、「機械制御」の通になろう。

涌井伸二  著者プロフィール

(わくい しんじ)
1977年 信州大学工学部電子工学科卒業
1979年 信州大学大学院修士課程了(電子工学専攻)
1979年 株式会社第二精工舎(現セイコーインスツル株式会社)勤務
1989年 キヤノン株式会社勤務
1993年 博士(工学)(金沢大学)
2001年 東京農工大学大学院教授
 企業在職のとき、磁気軸受を用いたターボ分子ポンプ、CD用の光ピックアップ、組み立てロボット、精密位置決めステージ、空圧式除振装置などの研究開発に従事。大学赴任以降、振動制御の研究分野に従事。学術論文161編。「現場で役立つ制御工学の基本(コロナ社)」、「これなら書ける!特許出願のポイント(コロナ社)」、「エンジニアのための失敗マニュアル(コロナ社)」の書籍出版

目次

まえがき

第1章 制御なしでは生きられない
1.1 人の歩行と行動とは
1.2 永久磁石を使って物体の距離を一定に保てるのか
1.3 電池だけでモータの回転数を一定に保てるのか

第2章 コントロールのための道具だて
2.1 ビジュアル化のためのブロック線図
2.2 フィードバックとは反省でフィードフォワードはイケイケだ
2.3 一般化するための技術用語
2.4 物理現象を写し取るモデリングと定量化のための同定
2.5 伝達関数のプロパーとは
2.6 補償器そして型とは
2.7 特性方程式とは
2.8 安定性とは
2.8.1 ラウス・フルビッツの安定判別法
2.8.2 ナイキストの安定判別の意味
2.8.3 ゲイン余裕・位相余裕の意味
2.9 根軌跡とは
2.10 時間応答と周波数応答の分かちがたい関係
2.11 周波数応答の整形
2.11.1 速度制御系の周波数応答の整形
2.11.2 ゲイン余裕GM、位相余裕PMを確保するために周波数応答の整形
2.11.3 機械共振に対する低感度のための周波数応答の整形
2.11.4 PID調整による周波数応答の整形
2.11.5 メカニカル機構の整形
2.12 たがいにトレードオフの関係にある感度関数と相補感度関数
2.13 自由度とは―トレードオフの解消のため―
2.14 参照モデルあるいは公称モデルとは
2.15 ステップ入力、インパルス入力による試験
2.16 調整則
2.16.1 多重のループを調整するときの大原則
2.16.2 テキスト記載の有名な限界感度法
2.16.3 バランスをとるための調整
2.16.4 順番が大事な調整
2.16.5 手戻りが発生する調整
2.16.6 最適値が存在する調整
2.17 ロバスト制御系とは

第3章 コントロールによって生きている証(あかし)
3.1 ホバークラフトを直進させる
3.2 ステージを高速に位置決めする
3.3 働きモノのコンパクトディスクプレーヤの光ピックアップ
3.3.1 半導体レーザに対するサーボ系
3.3.2 光ピックアップのフォーカスおよびトラッキング・サーボ系
3.3.3 スライダのサーボ系
3.3.4 スピンドル・モータのサーボ系
3.4 空中浮揚のような磁気浮上技術
3.5 多軸の空圧式除振装置の制御
―各人勝手と全体を見渡すコントロールの差異―
3.6 因果応報を活用するフィードフォワード制御
3.6.1 ステージ反力フィードフォワード制御
3.6.2 床振動フィードフォワード制御
3.6.3 傾斜補正フィードフォワード制御
3.6.4 供給圧フィードフォワード制御
3.7 圧電素子を使った位置決め装置

第4章 アドバンスト制御とは
4.1 古典制御と現代制御
4.2 状態フィードバックとは
4.3 外乱オブザーバとは
4.4 圧力センサを使わない圧力制御―センサレス制御―
4.5 エッチな制御それはH無限大
4.6 繰り返しという現象を抑える制御
4.7 学びの制御
4.8 配管長が長いことに起因するむだ時間の補償

終章 制御のそれを感じるとき

参考文献

はじめに

 新入社員としての最初の仕事は磁気軸受を使ったターボ分子ポンプの開発であった。制御技術のかたまりと言ってよい製品である。制御工学の単位は学生時代に取得しているものの、実地での適用経験はもちろんない。だから、書籍をひもとき、あるいは講習会に参加して知識の獲得に努め、そうして実際の開発に従事していた。しかし、書籍にはおどろおどろしい数式が並んでいるだけだ。そして、一瞬で感じとれる技術名称ではないため、チープな頭に映像を浮かべることは容易ではなかった。繰り言を言っても給料は上がらない。勉強していくしか手はなかった。
 そして、開発する製品が変わり、CD用の光ピックアップ、スカラロボット、そして産業装置の研究開発に携わった。一つの製品に長く関与することも悪くないが、次々と素性が違う機械を扱えたので飽きがこないメリットがあった。素性が悪い機械をねじ伏せるために制御に工夫を凝らす。
 意図どおりになれば嬉しく、ヤッターという気分になる。意図どおりにはならずさらに悪いことに、ステージに搭載された位置計測用の反射ミラーをレーザ干渉計に激突させたときには肝を冷やした。高価な反射ミラーをボキッと破壊し、飛沫したガラスにステージを乗り上げさせた。いままで誰も犯したことがない偉業だ。摩擦を退治したい意図があって補償器に工夫を込めたが、機械は言うことを聞かなかった。機械はウソをつかない。このことを機械から教えてもらった。
 そしていま大学教員の立場にあり、もっと直截的な言い方をすれば、儲け・納期・仕様の向上・生産現場への技術移転容易性などを一切考慮することなくメカトロ機器の制御に関する研究に携わっている。だから企業在籍時代には見向きもしない、つまり産業用装置には相応しくないと思われる制御手法であっても、これを試すことを通して機械制御の面白さを存分に味わえている。
 そのため、数えきれない失敗も経験した。しかし、動くものは面白い。磁気軸受によって非接触で位置決めされているロータを手で押し込む。すると電磁石に電流が通電されていきジワジワと押し返してくる。機械が生きていることを感じる瞬間である。情緒的な表現を改めて清く正しく美しく言えば、積分器が働いているのだ。所定の位置にサーボロックされている位置決めステージにもさわってみる。ピクリとも動かない。固い制御が施されている。調子にのって、もっと固いサーボにするためにゲインを上げる。再び、ステージに指をそえる。すると、ステージ深部のところで唸りを上げていることが指先で感知できる。さらにゲインを上げたとき、俺はもう発振してやるぞと機械が訴えているようだ。

 このような私的な経験を、あるいは感覚を書籍にしたいと秘かに夢想していた。学問的には曖昧でも、あえてキッパリと言い切ってみたい。数式から浮かんだ映像を書籍にしたかった。願いは叶うものだ。そして、世間は狭い。本書の執筆依頼が舞い込んできた。数十年前、とある書店で歴史小説「円周率を計算した男(新人物文庫)」を手に取り、このタイトルに魅了されて購入し、そして一気に読ませてくれた作家兼技術者兼工学博士を通してである。鳴海風さんという。小説から受けた感動を自分の胸にだけしまってはおけない。本人には内緒で書評を書いて、これを雑誌に投稿した。ところが気づかれてしまい、それ以降電子メールでのやり取りをしているものの、じつは一度もお会いしたことはない風さんから「書いてみませんか」「出版社を紹介します」ときたのだ。即座にやりますと回答したことは言うまでもない。
 そうして、日刊工業新聞社書籍編集部の鈴木徹部長が来学された。書籍の執筆方針のお話の後に、度数50を超える中国の白酒(バイジュウ)を飲み合う仲となった。執筆が少し進捗した後の打ち合わせでは、本文中には言い切れない内容を漫画で説明して欲しいと要請された。このとき、小躍りした。そうなのだ。本文の文脈に沿って書けないことが多々ある。これを漫画と抱き合わせて書いてよいという有難いご指示を頂いた。そのため、経験に基づく実話を漫画にし、これらをほとんどの節に挿入した。だから、本書は筆者の機械制御の経験を面白おかしくまとめたものと言える。もちろん、不真面目な態度で執筆したわけではない。真の想いは、機械は素直でもあり強直でもあり、これを思いどおりに制御することの楽しさをお伝えしたいということである。
 最後に、このような楽しい仕事をさせてもらったことに対して日刊工業新聞社に感謝したい。本書の内容が、機械制御の仕事に携わろうとする若い研究開発者に役立つことを期待する。筆者は欲張りなのだ。さらに、機械制御の仕事に既に従事している技術者にとって、本書の内容が研究開発深耕の一助になれば望外の喜びである。
涌井伸二

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