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今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしい色彩工学の本

定価(税込)  1,620円

著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-07605-3
コード C3034
発行月 2016年09月
ジャンル ビジネス

内容

各種ディスプレイ、コピー機、デジタルカメラなど電機製品の分野においては、いかに良い色を表現するか、という技術開発に力が注がれている。印刷・インク分野においても同様。本書では、そんな「色彩」というもの全体を俯瞰しつつ、「リンゴはなぜ赤いのか」といった色に関する素朴な疑問や、色についての基本的なこと、色の表現法、色の心理作用、最新の色に関するトピックスなどをやさしく噛み砕いて解説。学生や技術者が、専門的な色彩工学の勉強に取りかかる前の入門的な本として、印刷・インク業界の営業マンが簡単に色についての基礎知識を得る本として最適。

前田秀一  著者プロフィール

(まえだ しゅういち)
1989年慶應義塾大学理工学研究科修士課程修了。同年王子製紙株式会社入社。同社研究所にて情報記録用紙、電子ペーパー、光学部材等の研究開発に従事。1992〜1994年英国Sussex大学高分子科博士課程にて、導電性高分子のコロイド化の研究に従事。2010年より東海大学工学部光・画像工学科にて、電子ペーパー用表示材料、金属ナノ粒子薄膜、3Dスクリーンの研究を開始。技術士(化学部門、総合技術監理部門)。Ph.D.(Sussex大学)。
現在、東海大学工学部光・画像工学科教授。高分子学会(印刷・情報記録・表示研究会運営委員)、日本技術士会(化学部会幹事、広報委員)、International Display Workshop(実行委員)、日本画像学会(学会誌編集委員)、加飾技術研究会(理事、会長)。
●主な著書
「電子ペーパーの最新技術と動向」シーエムシー出版、2004(共著)
「適用事例にみる高分子材料の最先端技術」工業調査会、2007(共著)
「デジタルプリンタ技術−電子ペーパー」東京電機大学出版局、2008(共著)
「電子ペーパーの最新技術動向と応用展開」シーエムシー出版、2011(共著)
「化学系JABEE修了者・修了予定者のためのキャリア形成ハンドブック」納諾相研究所、2011(共著)
「新商品開発における【高級・上質・本物】感を付与・演出する技術」技術情報協会、2012(共著)
「化学便覧 応用化学編 第7版」丸善、2014(共著)等

目次

第1章 色の正体と色覚
1 リンゴが赤いのはなぜ? 「色の発現に必要なものは、①光、②物体、③観察者」
2 リンゴの色を決定する三つの要素 「「光源の分光分布」×「物体の分光反射率」×「錐体の分光感度」で色が決まる」
3 光は色覚を刺激するエネルギー 「色彩における光の役割」
4 リンゴは物体色、ロウソクの火は光源色 「物体色と光源色と光源」
5 物体色は、物体の分光反射率によって異なる 「リンゴとバナナの色の違い①」
6 物体色は、光源の分光分布によって異なる 「リンゴとバナナの色の違い②」
7 光と私たちと最初の接点である目 「目の構造と機能」
8 光のセンサー、桿体と錐体 「光エネルギーから分子構造の変化へ」
9 色情報伝達のしくみ 「光から電気信号に変換される色情報」
10 色覚は共有できない 「色覚タイプの分類」
11 カラフルな世界に生きるニワトリ 「動物の色覚」



第2章 色の科学
12 ビックネームが並ぶ色彩研究の歴史 「色彩の科学史」
13 白色光の分割 「ニュートンのプリズム実験①」
14 色彩の科学的研究の基礎 「ニュートンのプリズム実験②」
15 混色や補色を予想できる色相環 「ニュートンのアプローチ/ゲーテのアプローチ」
16 ヤングとヘルムホルツの共振説 「色を持たない光が脳に色を感じさせるしくみ①」
17 共振説に基づく混色の説明 「色を持たない光が脳に色を感じさせるしくみ②」
18 ヘーリングの反対色説 「色を持たない光が脳に色を感じさせるしくみ③」
19 数学的な段階説の予言 「三色説、反対色説、その後の発展と決着①」
20 計測による段階説の証明 「三色説、反対色説、その後の発展と決着②」
21 混色のしくみ 「混色の分類」
22 同時加法混色のしくみ 「色光の重ね合わせで色をつくる」
23 継時加法混色のしくみ 「錐体の応答時間の遅れによる混色」
24 並置加法混色のしくみ 「錐体の位置的分解能の限界による混色」
25 減法混色のしくみ 「色光の間引きで色をつくる」



第3章 色のポジショニング
26 人に色を伝えるにはどうしたらよいだろう 「表色系を用いた定量的表現」
27 色を記号で表現する 「マンセル表色系による定量化」
28 赤色光、緑色光、青色光で色を定量化する 「RGB表色系による定量化」
29 等色実験 「単色と混色の比較」
30 架空の色刺激で色を定量化する 「XYZ表色系による定量化」
31 二次元上に色をポジショニングする 「xy色度図による定量化」
32 均等空間に色をポジショニングし、二色間の色差を定量化する 「L* a* b*表色系による定量化」
33 直感的な色の定量化 「色温度」



第4章 色の心理とその活用
34 色の現れ方による分類もある 「面色/表面色/空間色」
35 慣れによる明るさや色の感じ方の変化 「明暗順応と色順応」
36 色の対比 「周囲の色の影響を受ける色①」
37 色の同化 「周囲の色の影響を受ける色②」
38 光がないところで感じる色 「残像/主観色/記憶色」
39 色から受ける感情効果 「暖色/寒色、膨張色/収縮色、進出色/後退色」
40 色と遠近感 「進出色と後退色」
41 色は世界共通言語 「実社会における色の利用」
42 色は本当に世界共通語? 「色が引き起こす先入観」
43 加飾技術と色彩 「高級感を感じる色は?」



第5章 物質を中心に考えたときの色
44 光の吸収による色、光の放出による色、そして構造色 「心理的な変動要因を排して物質中心に考える」
45 分子の構造と色 「光の吸収による発色①」
46 色素の役割 「光の吸収による発色②」
47 光の吸収により、色を変える分子 「光の吸収による発色③」
48 水の色 ・ 海の色 「光の吸収による発色④」
49 金属の色 「光の吸収による発色⑤」
50 ナトリウムランプの発光 「光の放出による発色①」
51 炎色反応と花火 「光の放出による発色②」
52 蛍光と燐光 「光の放出による発色③」
53 黒体放射 「光の放出による発色④」
54 虹とCD 「構造色①」
55 シャボン玉の色 「構造色②」
56 白い雲 ・ 青空 ・ 夕焼け 「構造色③」



第6章 進化する色をあやつる技術
57 世界の四大発明の一つ、印刷技術 「印刷と色再現」
58 パーソナルユースから高速プリントまで、インクジェットプリンター 「インクジェット方式」
59 「プリクラ」やコンビニのレシートで活躍するサーマルプリンター 「サーマル記録方式」
60 光も電気も熱も圧力も使う記録方式 「電子写真記録方式」
61 色(色素)の助けを借りる太陽電池 「色素増感型太陽電池」
62 カラーの影絵、液晶ディスプレイの色再現 「液晶ディスプレイのしくみ」
63 液晶ディスプレイを支えるバックライト技術 「LEDバックライト」
64 加法混色による映像の担い手 「プロジェクター」
65 光の三原色を読み取る 「スキャナー」
66 自ら発光するディスプレイ 「有機EL」
67 カラー化を期待される未来の紙 「電子ペーパー」
68 画像の入力から出力まで 「カラーマネージメント」



【コラム】
●宇宙空間で「スペシウム光線」はみえるのか
●果物の選別に最適な手袋
●恒星の色温度
●色の恒常性 ・ 明るさの恒常性と錯覚
●宝石の色彩
●カラー印刷におけるブラック(K)インク

参考文献
索引

はじめに

 「私は自分の目でみたことしか信じない」という人がいます。こういう人が一番間違いやすい。最もマジックにかかりやすい人です。「少しだけ科学に携わっているからといって偉そうなことをいうな」とお叱りを受けるかもしれません。しかし、日夜実験に明け暮れ、その結果を自分なりに考察している私たち研究者なら大丈夫ということではありません。

 実は研究者でも、一部の天才を除いては、危ない。本書では、ニュートンのプリズム実験を挙げています。この実験結果からだけでは、「光の成分を波長ごとに分割したものが色の正体だ」と考える研究者がほとんどだと思います。しかし、ニュートンは「光に色はない。光の中にあるのは色という感覚を引き出す一種の性質だ」といっています。詳細は本書をお読みいただくとして、結論だけいいます。色は光の中にあるのではなく、私たちの脳内でつくられる一種の感覚です。いくら実験を重ねても、ニュートンのような天才でない限り、光が色そのものではないことには気がつかないと思います。この例でわかりにくければ、「天動説」と「地動説」を思い出してください。天体を観測しているだけで、「地動説」に行き着く人がどれだけいるでしょうか。
 
自分でみて、そして考えることは重要です。でもそれだけでは、勝手な思い込みや間違った解釈につながる危険性があります。特に、色彩に関しては、間違って理解しやすい部分が沢山あります。例えば、色は物質ではありません。物質に付いているものでもありません。したがって、科学的には「黄色をみる」という表現はおかしいし、「黄色がみえる」というのも正確ではないと思います。色は、脳内で合成されるものです。したがって、「黄色を感じる」はオーケー、「黄色にみえる」はどうにかセーフといったところでしょうか。
 
ニュートンやガリレオのような天才ではない私たちは、色彩に関しても先人の残してくれた知恵に大いに学ぶ必要があると思います。さて、先人の知恵の学び方です。体系化された書物から学ぶのが最もよい方法です。色彩の分野でも、いくつかの名著があります。本書の作成においても参照させていただきました。ただ、これらの名著は、専門でない人にはハードルが高すぎる場合があります。私自身も、理解に苦労しながら読んで学んだクチです。名著の出来の悪い読者だった著者が、苦しみながら理解したところも含めてできるだけわかりやすく解説したのが本書です。ただ、わかりやすさを優先し深入りするのを避けたため、厳密性を犠牲にした部分もあります。本書を通して色彩に少しでも興味を感じていただけたならば、より深く学ぶために巻末に挙げた参考文献をご覧になることをお勧めします。
 
本書を執筆するにあたり、多くの方々のご協力を得ました。特にわかりやすさ重視の観点から、学生たちの意見を取り入れました。その中でも、長村君、木山君、山岸君、野田君、橋本君、馬場君、樽木君、翔君、慶君は、色彩に関する情報の収集とそのまとめ、原稿のチェックと大活躍してくれました。さらにプロの方々にも、原稿の確認をお願いしました。吉成伸一技術士、福井寛博士・技術士、面谷信教授、虎谷充浩教授、室谷裕志教授に、この場を借りてお礼申し上げます。また、日刊工業新聞社の阿部正章氏には、本書の企画から出版に至るまで、大変お世話になりました。本当にありがとうございます。

 
2016年9月                          

前田秀一

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