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超入門 インピーダンス整合

定価(税込)  1,944円

著者
サイズ A5判
ページ数 192頁
ISBNコード 978-4-526-07601-5
コード C3054
発行月 2016年09月
ジャンル 電気・電子

内容

インピーダンスの整合はエネルギーや信号の伝送に関わる重要な技術である。一方で、インピーダンスに関わる要素を整理できていない初心者は混乱しがちとなり、インピーダンスがさけられる原因となっている。本書は、インピーダンス整合に関わって出会う理論や考え方、実務的なコツなどを著者の経験を交えながら易しく解説した「超」入門書。

若井一顕  著者プロフィール

(わかい かずあき)

第一工業大学工学部情報電子システム工学科教授

1969年 NHK(日本放送協会)入局
技術本部鳩ヶ谷放送所、川口放送所、技術管理部、名古屋放送局技術部、
技術局技術管理部、技術開発センター、送信技術センター、
菖蒲久喜ラジオ放送所所長などを歴任

JICAエキスパートでタイ駐在
米ニュージャージー、ロサンゼルスに放送衛星開発で駐在

2007年 株式会社NHKアイテック入社

2008年 現在に至る


■取得資格

工学博士、経営学修士、技術士(電気電子部門)、第1級無線技術士、第1種電気主任技術者、APECエンジニア

■所属

電子情報通信学会(信頼性研究会専門委員)、映像情報メディア学会(エクゼクティブ会員、放送技術研究会専門員)、日本技術士会(桜門技術士会・鹿児島県技術士会会員)、IEEE Senior Member、電子情報通信学会(シニア会員)

■専門分野

放送技術(地上デジタル放送、衛星放送、電波伝搬、中波技術)

コミュニティFMの伝送路解析、システム設計

無線設備の設計論、信頼性工学

電波法・電波防護指針、EMC・EMI技術、ベクトル整合論応用

高周波計測、電波工学、マイクロ波工学、測定器の設計開発

国際ビジネス論、技術と経営、マーケティング論、経営リーダーシップ論

情報リテラシー、技術者倫理

■著書

「トコトンやさしい無線通信の本」2013年、日刊工業新聞社

「回路設計者のためのインピーダンス整合入門」2015年、日刊工業新聞社

目次

まえがき


第1章 インピーダンスと整合
1 インピーダンスとは何?
 インピーダンスとは何?
 インピーダンス回路の電流と電圧ベクトル
 電気素子のリアクタンスとインピーダンス
 回路素子の電圧と電流ベクトル
 インピーダンスと周波数
2 インピーダンス整合は面倒で嫌い
 エネルギの橋渡しが整合の基本
 インピーダンス整合と伝送路を考える
 整合の意味
 伝送線路の不整合の意味を考える
 整合回路:複素数の計算から整合素子を決定
 S(Sharpness)を用いた整合方法
3 伝送効率とチャートの基本
 整合が必要な理由は伝送効率
 負荷側と電源側の反射係数を考える
 スミスチャートの活用と整合:スミスチャートを描く
4 不整合による伝送線路の焼損
 実際のアンテナ運用で経験する不整合
 焼損フィーダのあと始末
 アンテナ特性とインピーダンスの変化
 中波アンテナの帯域内特性
 中波アンテナの今昔

5 送信機の整合と受信機の整合
 伝送線路内の進行波と反射波
 送信機の整合を考える
 受信伝送路のVSWRの改善

6 伝送線路の計算はしたくない
 伝送線路の計算はしたくない
 伝送線路の基本的な考え方
 抵抗のラダー回路の図式解法
 伝送線路の等価回路
コラム1
 宇宙からの電波の遅れはどれくらい?

第2章 整合の意義
7 整合しないとなぜ悪い
 デジタル固体化増幅器の出力合成
 固体化PAの負荷インピーダンスと効率
 耐雷サージと整合回路のPA保護方式
 放電箇所とBG設置位置の選定
8 不整合による伝送特性と効率の低下
 気象条件によるアンテナ基部インピーダンスの変化
 不整合がおよぼす悪影響
 整合回路の安定度
 実際のアンテナ運用で経験する
 中波アンテナの帯域内特性
 不整合時の増幅デバイスと許容損失
 PAの効率計算の基本
 PAの負荷インピーダンスと電圧と電流
9 やっぱり好きになれない整合回路
 好きになれない伝送線路、だから整合回路も嫌い
 整合作業と円線図の発見
10 整合理論、少しは見えてきた?
 高周波のインピーダンスを身近に感じる
 並列回路のインピーダンスを描く
 λ/2ダイポールアンテナの電流分布
 λ/2アンテナの放射電力の計算
11 整合理論は面白い
 整合はあらゆる周波数のメディアで使われる
 中波帯の整合回路
 π型整合回路の定数の決定
 T型自動整合回路の動作
コラム2
 電波の窓を考える

第3章 伝送線路から自由空間との整合
12 なぜ75Ωや50Ωが使われるのか?
 フィーダのインピーダンスが違う理由
 伝送線路の特性インピーダンスのロスを考える
 特性インピーダンスの違いによる電圧と電流
 伝送線路の今昔 
13 同軸線路の損失
 いろいろな同軸フィーダ
 特性インピーダンスの選択
 伝送線路の損失が特性インピーダンスによって変わる
 伝送線路の特性インピーダンスは構造的に決まる
14 伝送線路の遅延 8
 伝搬路と伝送線路
 同軸線路の遅延と波長短縮
 伝送線路の伝達関数
 並行ケーブル、同軸ケーブルの電磁波の伝搬
 同軸ケーブル内の整合調整
15 伝送線路内の反射
 負荷による伝送線路内の反射とは
 伝送路のVSWR算出
 不整合負荷時の進行波と反射、定在波電圧のベクトル合成
 負荷開放時の進行波と反射、定在波電圧のベクトル合成
 負荷短絡時の進行波と反射、定在波電圧のベクトル合成
16 特性インピーダンスという概念
 カスケードに接続された伝送線路とは
 無限長線路は整合線路?
 伝送線路の基本的な考え方
 伝送線路のインピーダンス
17 伝送路の特性インピーダンスをLCラダー回路に置き換える
 あらゆる周波数で入力インピーダンスを一定にできるのか
 LCのラダー回路は周波数特性を持つ
 π型回路で特性インピーダンスを計算する
 T型回路で特性インピーダンスを計算する
 LCラダー回路と特性インピーダンスの考察
18 自由空間の特性インピーダンス
 自由空間のインピーダンスを考える
 電波の特性インピーダンス
 電波と整合
 固有インピーダンス(波動インピーダンス)
 整合の一般論とアンテナ
コラム3 電波は曲がる

第4章 合成・分配回路の応用と整合
19 お尻に噛みつくラットレース回路
ラットレース回路は出力合成装置
 ブリッジドT型回路と3dBカップラ
 分布定数線路の3dBカップラ
 同軸線路の平衡型合成装置
 同軸線路の不平衡型合成装置
 ラットレース回路
20 伝送線路で出力を分配
 入出力インピーダンスを50Ωとした電力分配
 電力分配回路を変圧器で表現
 導波管の分岐回路
 マジックTによる合成器と分配器
 ラットレース合成回路
21 伝送路でフィルタを生成
 同軸フィーダを用いたノッチフィルタ
 ノッチフィルタの構成
 コムフィルタ
 ブリッジドT回路のノッチ特性
22 方向性結合器
 伝送系から進行波と反射波を検出
 方向性結合器の構成と信号の抽出
 広帯域での進行波の検出測定
 伝送路のVSWR算出
23 λ/4回路は便利
 λ/4回路とはどのような回路?
 とても便利なλ/4変成器
 π型、T型の集中定数で構成するλ/4回路
 π型のλ/4回路
 T型のλ/4回路
 λ/4回路の負荷に対する入力インピーダンスの変化
24 ルートjは面白い
 唐突に√j=±(1/√2+j/√2)から
 自由空間の電波が金属内に突入
 表皮効果(スキンエフェクト)を考える
 高周波電流は金属の表面にしか流れない
コラム4
 電波の通路はフランスパン

第5章 整合方法の基本
25 負荷の整合と電源の整合、どちらが先?
 アンテナの整合と電源の整合
 送信装置と固体化増幅器
 所要出力の生成と電力増幅器
 負荷側と電源側の反射係数を考える
26 直流からマイクロ波までの整合
 直流、中波からVHF、そしてマクロ波の整合
 直流回路の潜在電力と整合負荷
 直流回路のVSWR
 分布定数線路スタブによる整合
 導波管変成器 
27 マルチパスは不整合線路と同じ
 マルチパスと不整合線路
 マルチパスの今昔
 多相化による伝送速度とマルチパス耐性
 伝送線路内の不整合と信号劣化
28 整合損失を小さくするには
 整合損失が発生する理由
 オーミックロスとtanδ
 整合回路の特性インピーダンスと損失
 周波数の近接によるkVAの増加と特性劣化
29 損失を代償にした整合回路とは
 伝送路のVSWRの改善
 バイパスルートによるVSWRの改善
 アイソレータによる不整合の改善
 位相器がスルーの場合
 位相器を挿入した場合の等価回路
コラム5 アンテナは空間との整合回路

第6章 整合と評価、設備管理
30 方向性結合器で反射を抽出
 方向性結合器による反射波検出
 λ/4回路による反射係数の算出
 任意のλ/4の入出電圧からVSWRの算出
 方向性結合器とλ/4回路との反射検出
31 送信電波でインピーダンスを監視
 運用中の送信機出力とアンテナインピーダンスを監視する
 監視装置のシステム構成
 監視装置のインターフェース
 測定装置の仕様 
32 反射係数は電圧比
 アンテナと伝送路のΓとVSWRの関係
 伝送路の電圧成分と電流成分の抽出
 伝送路のVSWR算出
 パワーで検出する反射係数とVSWR
33 リターンロスって?
 反射係数とリターンロス
 ブリッジの不平衡時の検出電圧
 測定端子がオープンとショートのときの検出電圧(eΓ)
 リアクタンス負荷時の検出電圧(eΓ)
 インピーダンス負荷時のブリッジの検出電圧(eΓ)
34 狭帯域と広帯域での反射波検出
 狭帯域化のための共振回路の多段接続
 狭帯域特性と共振回路
 共振回路のQと帯域制度
 周波数ヘテロダインと帯域の制限
 周波数分周と帯域の制限
35 雪が降るとアンテナインピーダンスが変動
 降雪とアンテナインピーダンスの変化
 中波空中線への着雪とインピーダンス
 アンテナ特性の変動と自動整合
 自動整合回路の基本
コラム6
 自由空間と水中の電波伝搬

あとがき

索引

参考文献

はじめに

 製造業の技術者は信頼性の高い製品をユーザに届ける義務があります。通信設備の納入か調整段階、とくに回路改修など従来のシステムを変えるときなどには整合作業を伴うことがあります。整合回路はパッシブな回路で構成されます。抵抗、インダクタンス、そしてキャパシタンスの合成回路です。装置間の整合ではこれらの値を調整する必要があります。インピーダンスは周波数によって変化するためピンポイントで調整が求められます。面倒な整合作業が理由で、インピーダンスが嫌いな技術者が多いのです。しかし、整合が見えてくると面白くなること受けあいです。

 インピーダンス整合技術の底力を身に付けるのが本書の狙いです。面白くない部分はいつまでたっても面白くないのですが、新しいイメージができると回路解析もしてみたくなるかと思います。

 本書は、第1章では、インピーダンスの理解とその整合についてのイメージを醸成します。第2章では、整合の必要性と不整合の弊害について論じます。第3章では、伝送路の特性インピーダンス、さらに自由空間の特性インピーダンスを理解して空間とアンテナとの接続についても考えます。第4章では、伝送フィーダを使った出力合成回路、フィルタを合成して、λ/4回路の面白さも紹介します。第5章では、整合方法の基本と損失とのトレードオフを議論します。第6章では、実際にインピーダンスの運用状況を知るための整合と評価、設備管理について述べます。

 本書は拙著の「回路設計者のためのインピーダンス整合入門」よりもさらに門戸を広げた基礎体力醸成本です。目からうろこの高周波技術が身に着くことを希望します。


2016年9月

若井 一顕

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