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熱電併給システムではじめる
木質バイオマスエネルギー発電

定価(税込)  2,592円

編著
サイズ A5判
ページ数 200頁
ISBNコード 978-4-526-07597-1
コード C3050
発行月 2016年09月
ジャンル その他 環境

内容

バイオマスは化石燃料に最も近いエネルギー源であり、使い道が広い。冷暖房用、産業用の熱はもとより、発電にも使える。適用範囲が広いだけに、バイオマスは化石燃料に代わる再生可能なエネルギー源として太陽エネルギーや風力、水力、地熱などとはまた一味違った重要な役割を担うことになる。本書では、今後、主流となると考えられる、熱電併給方式にスポットを当て、中でも実用化が進んでいる蒸気タービン発電、オーガニックランキンサイクル(ORC)発電、ガス化発電の三つの方式を主に取り上げる。それぞれの技術解説のほか、経済性、導入事例も紹介。燃料である木質ペレット、木質チップの規格についても解説する。

熊崎 実  著者プロフィール

(くまざき・みのる)
●編著者・第1章執筆担当
1935年岐阜県生れ。農林省林業試験場(現・森林総合研究所)林業経営部長、筑波大学農林学系教授、岐阜県立森林文化アカデミー学長を歴任。現在は、筑波大学名誉教授、日本木質ペレット協会会長、日本木質バイオマスエネルギー協会会長。専門は国際森林資源論、農学博士。著書に『木質バイオマス発電への期待』(全国林業改良普及協会)『木質エネルギービジネスの展望』(全国林業改良普及協会)、『木質資源とことん活用読本』(編著、農文協)ほか。訳書に『日本人はどのように森をつくってきたのか』(C.タットマン、築地書館)、『樹木学』(P.トーマス、築地書館)ほか多数。

●第2章執筆担当
西山 明雄(にしやま・あきお)
1982年に名古屋大学工学部鉄鋼工学科を卒業、同年バブコック日立(株)に入社し発電事業用の石炭燃焼流動層ボイラの開発に従事。1995年よりフォスターウイラ(株)、2002年より住友重機械工業(株)で循環流動層ボイラの設計業務に携わり、石炭、RDF、バイオマス燃焼に関わる。2003年より(株)シーテックでバイオマス専燒バーナの研究、2007年岐阜大学大学院工学研究科環境・エネルギーシステム工学専攻博士課程修了。その後、中外炉工業(株)を経て、2016年よりテスコ(株)環境事業部技術本部長を務める。

●第3章執筆担当
久木 裕(くき・ゆう)
2001年横浜国立大学工学部卒業、2003年横浜国立大学大学院環境情報学府環境システム学専攻修士課程修了、同年王子製紙株式会社入社。株式会社エックス都市研究所を経て、2014年株式会社バイオマスアグリゲーションを設立。2016年現在、同社代表取締役、一般社団法人木質バイオマスエネルギー協会客員研究員。

●第4章執筆担当
竹林 征雄(たけばやし・まさお)
荏原製作所理事、横浜市立大学客員教授、大阪大学RISS特任教授、(財)地球環境戦略研究機構上席客員研究員、国際連合大学ZEFプログラムコーディネーター、アミタ(株)取締役、東京大学IR3S特任研究員、通産、経産、農水、環境省、自治体の委員会活動を経て、現在NPOバイオマス産業社会ネットワーク副理事長、NPO農都会議理事、(社)エネ経会議理事、(株)エンビプロ顧問、(株)洸陽電機顧問。共著8冊。

●第5章執筆担当
沢辺 攻(さわべ・おさむ)
1965年京都府立大学農学部林学科卒業、1967年京都大学大学院農学研究科林学専攻修士課程修了、1968年同博士課程中退。同年岩手大学農学部林学科助手、1979年農学博士、1980年同助教授。1983年日本木材学会賞受賞、1990年岩手大学農学部応用生物学科教授、2007年岩手大学名誉教授。(社)日本木質バイオマスエネルギー協会理事。
主な著書:『新編木材工学』(共著、養賢堂)、『木質資源とことん活用読本』(共編著、農文教)。

目次

第1章  木質バイオマスによる分散型熱電併給システム ~高まる期待とその背景~
1.1 再生可能なエネルギー源としての木質バイオマス
1.2 木質バイオマスのエネルギー変換
1.3 木質バイオマスによる熱電併給システム
1.4 バイオマスFITが推進したドイツの分散型熱電併給
1.5 日本の木質バイオマスFITと分散型熱電併給の課題
1.6 木質燃料の市場競争力:強みを活かす

第2章 蒸気タービンによる木質バイオマス発電
2.1 蒸気タービン発電のジレンマ
2.2 蒸気タービン発電の原理
2.3 ボイラ燃焼技術
2.4 バイオマス発電所の導入検討
2.4 まとめ

第3章  ORC(オーガニックランキンサイクル)システムによる小規模発電
3.1 ORCシステムの技術概要
3.2 欧州におけるORCシステムの普及実態
3.3 ORCシステムのコスト構造
3.4 ORCシステムの国内における普及の期待
3.5 普及に向けた展望

第4章 小規模木質バイオマスガス化発電
4.1 ガス化技術:200年に及ぶ開発の歴史を振り返る
4.2 ガス化に用いられる木質燃料
4.3 木質バイオマスのガス化とは
4.4 ガス化炉の多様な型式
4.5 木質バイオマスガス化発電
4.6 導入事例の紹介
4.7 ガス化発電のコスト構造と経済性
4.8 まとめ

第5章  木質チップとペレットの燃料特性および品質規格
5.1 木質バイオマスの燃料特性
5.2 燃料用木質チップの生産と品質規格
5.3 木質ペレットの生産と品質基準

はじめに

 この四半世紀を振り返ってみると、木質バイオマス発電についての考え方が大きく変わってきているように思う。
 1990年代の初頭、地球温暖化への懸念が高まる中で、その緩和策の一つとして木質バイオマスを使った発電にも関心が寄せられるようになった。記憶に残っているのは、96年に公表されたIPCC第2作業部会報告の「バイオマス推進シナリオ」だ。バイオマス発電を最大限に推し進めて、最終的には世界の電力供給の1/4を賄うというシナリオがそれである。
 ただ、林産業などに入れられている在来型の蒸気タービン発電では、電気への変換効率が低すぎてどうにもならない。そこで提案されたのが「バイオマス統合ガス化コンバインド・サイクル(BIGCC)」である。まず木材をガス化してガスタービンを回し、その排熱で蒸気タービンを駆動させて二段構えで電気をつくる方式である。発電効率なら40%は堅いとされていた。
 世界の各地でBIGCCのパイロットプラント建設の動きが広がり、実際に稼動を始めるプラントもいくつかあったが、すべて途中で挫折している。スウェーデンのベルナモに建設され、8,000時間運転された実証プラント(6MW)もその一つだ。たまたま99年秋にこのプラントの設計と運転にかかわった技術者が東京でのセミナーに出席してくれた。そのときの彼の話によると、「BIGCCで発電効率が高まるのは事実だが、天然ガスのコンバンイド・サイクルにはとてもかなわない。採算を取ろうとしたら電気出力を30〜100MWくらいにまで増強しなければならず、必要なバイオマスの確保がボトルネックになる」。
 当時、燃料の確保策として提案されていたのは成長の速い「エネルギー・プランテーション」を大々的に造成することであった。しかし人口密度の高い中央ヨーロッパでは、この戦略はとりにくい。これまでと同様、林業・林産業の残廃材利用でいこうとするなら、「プラントの出力規模を大きくして発電だけで採算をとる」という発想そのものを変えねばならない。
 木質バイオマスの得意な分野はやはり熱生産だ。中央ヨーロッパには木質系の熱を巧みに使う技術と伝統がある。ならば、電気だけでなく、熱とあわせて採算をとることを考えればよい。それならプラントの出力規模がごく小さくともいけるだろう。これが「分散型熱電併給」の発想である。ドイツやオーストリアで、こうした発想の転換がはっきりと見て取れるようになるのは、今世紀に入ってからだと思う。
 このころスタートしたバイオマス電気の固定価格買取制度(FIT)には、小規模な熱電併給を積極的に支援しようとする姿勢が鮮明に出ている。その影響を受けて技術開発においても小型の熱電併給プラントの開発に重点が移り、数年後にはさまざまなタイプの新しい機種が市場に出回るようになった。
 在来型の蒸気タービン発電も、大量の熱(とくに蒸気)を必要とする製造業や林産業では欠かせない技術である。ただし電気出力が2MW以下になると発電効率が著しく低下してしまう。ドイツやオーストリアでの一般的な傾向としては、数百kW〜2MWの領域はオーガニック・ランキンサイクル(ORC)のタービンでカバーし、数百kW以下はガス化発電にゆだねているようだ。
 日本でも小型発電への関心は高く、一部ですでに導入が始まっている。こうした状況を踏まえて、一般社団法人日本木質バイオマスエネルギー協会では、外部の専門家の協力を得ながら内外における小規模発電の事例を調査し、国内で導入しようとする事業者に対しては指導や助言を行っている。
 協会の事業にかかわっている専門家のうち、今回とくに執筆をお願いしたのは、蒸気タービン発電の西山明雄氏、ORCタービンの久木裕氏、ガス化発電の竹林征雄氏である。お三方には、それぞれ専門とされる発電方式について、発電の基本原理、導入の事例と留意事項、採算性などについて解説してもらった。それが本書の第2〜4章に収録されている。
 ところで近年、木質バイオマスのエネルギー利用の分野では、発電だけでなく、熱供給のシステムにおいても小型機器の性能が著しく向上している。ここで注意すべきは、機器が小型になり、高性能になればなるほど木質燃料への注文が厳しくなることだ。一定の品質基準をクリアした燃料でないと受け入れてもらえない。
 わが国では木質ペレットの品質規格はつくられていたが、燃料用チップには公式の規格がなかった。ようやく2013年になって日本木質バイオマスエネルギー協会の「燃料用木質チップの品質規格」が公表された。この規格の作成に尽力されたのが、ペレット規格の策定にも当たられた沢辺攻氏である。沢辺氏には木質燃料規格の背後にある基本的な考え方を本書の第5章で解説してもらった。
 以上に記したように、各分野の第一人者である4氏の協力を得て、時宜にかなう解説書が出来上がったと確信している。今後、新しい熱電併給の小型機種が続々と出てくると思うが、現段階で利用できるものについては最新の情報が盛り込まれている。参考にしていただきたい。
 本書の出版に当たっては、執筆していただいた4氏のほか、日本木質バイオマスエネルギー協会の関係者にもいろいろとお世話になった。また日刊工業新聞社出版局の阿部正章氏には企画の段階から編集・校正に至るまで何かと面倒をおかけしている。とくに記して感謝の意を表する次第である。
2016年9月吉日       
執筆者を代表して   
熊崎 実      

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