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今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしい蒸気の本

定価(税込)  1,620円

著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-07587-2
コード C3034
発行月 2016年07月

内容

水が気体状態なった「蒸気」は、広く地球上に存在し、私たちの生活や各種産業で広範囲に利用されている。本書は、こうした身近な蒸気の特徴、日常生活(料理、お風呂など)や産業(ボイラ、タービンなど)におけるさまざまな応用をわかりやすく紹介、解説する。蒸気を上手に使うヒントが得られる。

勝呂幸男  著者プロフィール

(すぐろ ゆきお)


国立大学法人横浜国立大学産学官連携研究員

(横浜国立大学大学院工学研究院)


1948年 神奈川県生まれ

1972年 東京都立大学工学部機械工学科卒業後、同年三菱重工業株式会社入社

1987年 舶用タービン設計課長

1995年 風車プロジェクト室長

2002年 主幹技師
この間、船舶用の主機・発電用蒸気タービン、歯車等動力伝達装置、復水器・熱交換器などの設計と設計管理業務、風力発電機(風車)の設計などに従事

2004年 三菱重工業株式会社を定年退社、関連会社に移籍

2009年 関連会社定年退社

2013年 12月から現職

2010〜2014年 一般社団法人日本風力エネルギー学会
(前日本風力エネルギー協会)会長

目次

第1章 蒸気を知ろう
1 蒸気工学で出てくる単位 「圧力の単位」
2 温度の単位 「温度とは熱さ・冷たさの度合」
3 蒸気とは何か 「氷、水、蒸気の状態」
4 氷は水が固体になった状態 「水の分子が規則正しく格子状に並ぶ」
5 水はもっとも馴染み深い液体 「氷→水→蒸気という状態変化」
6 蒸発とは液体の表面から気化が起こる現象 「温度が高いほど蒸発が激しい」
7 水中で蒸発が激しく起こるのが「沸騰」 「沸騰がはじまると危ないので注意」
8 蒸気(水蒸気)は水が気体になった状態 「蒸気はいろいろな分類法がある」
9 飽和蒸気はもっとも身近な蒸気 「すべての水が蒸気になってしまった状態」
10 飽和蒸気をさらに加熱すると「過熱蒸気」 「主として動力用途に使用される」


第2章 意外と身近にある蒸気
11 日常生活の中のお湯と蒸気 「水蒸気は本質的には透明な気体」
12 家庭での蒸気の利用 「蒸気を使った調理法の代表は蒸す、蒸かす」
13 欧米やロシアで普及する地域暖房 「蒸気が水に戻るときの熱を使う」
14 捨てられている蒸気の再利用 「ごみ焼却場にある蒸気タービンと冷暖房用蒸気」
15 気象の中の蒸気と水の循環 「「水循環社会」への変革」
16 気象に影響を与える水と水蒸気と氷 「空気中の水蒸気(湿分)で天気が変わる」
17 雲、雨、雪は蒸気と水と氷 「「雨や雪の始まり」のしくみ」
18 煙突から出る大量の蒸気 「真っ白な煙には水蒸気が多く含まれる」
19 温度のある蒸気を利用する地熱発電 「蒸気が地熱の回収を手助けする」
20 「臨界圧力」ってどんな状態? 「水なのか蒸気なのかがわからない状態」


第3章 蒸気工学を学ぼう
21 蒸気の性質と圧力、体積と温度 「蒸気を効率的に活用する方法を考える」
22 蒸気の状態とエネルギー量 「エンタルピとエントロピ」
23 蒸気線図と蒸気表 「蒸気の特性を詳しく示している」
24 状態変化と有効仕事 「力と移動量を大きくすると大きな仕事が得られる」
25 排気圧力を下げていくと効率は上がるが… 「有効仕事である出力を増加させる大きな手法」
26 適切な蒸気選択とコスト 「低圧力における蒸気」
27 工場で蒸気を使用するときの注意点 「蒸気は比較的安全」


第4章 蒸気の工学的応用
28 近代工業における蒸気の利用 「蒸気エネルギーを活用するための機械の開発」
29 「ランキンサイクル」と熱機関 「水と水蒸気の特性を活かしたサイクル」
30 ランキンサイクルの問題点 「蒸気エネルギーを使い切ることができない」
31 ランキンサイクルの欠点を解決する「再生サイクル」 「もっともバランスのよい効率的な方法」
32 もう1つの効率改善方法「再熱サイクル」 「大型火力発電所などで用いられている」


第5章 蒸気をつくる
33 蒸気は簡単につくれる 「水を火で加熱すればよい」
34 時代の技術力を反映している「蒸気条件」 「工業用蒸気の実際」
35 熱伝導研究とともに発展してきたボイラ 「最大のユーザ先は火力発電所や原子力発電所」
36 世界最初のボイラ 「多くの事故を経験しながら進んできた」
37 飽和蒸気の発生を行うボイラ 「比較的小型のボイラに多い」
38 大型プラントで活躍する過熱蒸気ボイラ 「過熱度が大きくなることに対応」
39 ドラムをもっていない貫流式ボイラ 「大容量大型ボイラは貫流式に」
40 湯を沸かし、蒸気をつくるボイラ 「家庭用湯沸かし器から原子炉まで」
41 直接蒸気を利用する 「直接蒸気を利用する方法」
42 水や蒸気を用いた熱交換による蒸気の利用 「水や水蒸気の特長を活かす」


第6章 蒸気から動力を取り出す
43 ニューコメン機関の欠点 「ワットが機関の改良に興味をもった」
44 蒸気機関車の中は煙管ボイラ 「機関車に力を与える」
45 蒸気機関を推進力とした船舶 「帆船から蒸気船の時代に」
46 熱エネルギーを各動力に変換する蒸気タービン 「蒸気タービンサイクルの中核をなす機器」
47 蒸気タービンの基本的な動き 「蒸気エネルギーを機械仕事に変換」
48 蒸気タービンの実際 「蒸気タービンの機能」
49 蒸気タービンを用いたいろいろな動力機械 「蒸気タービンの用途は非常に広い」
50 化石燃料で蒸気をつくる火力発電所 「代表的な蒸気システム」
51 軽水炉型が主役になっている原子力発電所 「原子炉が蒸気を沸かす」
52 ガスタービンコンバインドサイクルと蒸気タービン 「主に天然ガスを燃焼」
53 船舶用蒸気タービン 「船舶用の最初のタービンは「パーソンズタービン」」


第7章 蒸気サイクルの構成機器と蒸気タービン
54 復水器と復水ポンプ 「蒸気を凝縮して水に戻す復水器」
55 冷却水と冷却ポンプ 「冷却系統での問題点」
56 水を温める給水加熱器 「脱気器と給水ポンプ」
57 復水しない工場用背圧式蒸気タービン 「高い圧力や温度が必要な場所で使う」
58 抽気復水式蒸気タービン 「高い圧力の蒸気と多くの電力が必要なときに活躍」
59 衝動式蒸気タービン 「翼が大型になり、段数は少ない」
60 反動タービン、パーソンズタービン 「反動タービンの代表的な例が風車」
61 石油化学プラントなどで活躍するカーチスタービン 「少ない段落数で大きな圧力差」
62 ユングストローム式タービン 「ユニークな蒸気タービン」
63 バイナリー発電 「低温からエネルギーを回収する」
64 低温度沸点蒸気の利用 「エネルギー回収の方法」
65 フロン蒸気タービン 「熱水のみを熱源として使用する」
66 カリーナサイクルとアンモニア蒸気タービン 「水─アンモニア混合物が作動媒体」

【コラム】
●安全弁は最後のとりで
●原子力空母のカタパルトは蒸気式
●蒸気爆発
●蒸気アイロンや蒸気クリーナ
●雨の効用
●やけどに注意!
●発電所の蒸気条件から見る技術

参考文献

索引

はじめに

 蒸気は広い意味では「物質が気体になった状態」のことをいいますが、通常の生活や工業では「水(H2O)の気体状態=水蒸気」に関することとして認識されています。物質としての水は、「氷」、「水」、「水蒸気」と3つの状態に変化しますが、それぞれ固体、液体、気体の状態の別名であると考えてよいでしょう。つまり、一般的にすべての物質は、いろいろな条件の元で固体、液体、気体と状態が変化するわけですが、水はその状態を一番身近に見ることができるため、蒸気というと水蒸気のことを示す場合が多いのです。

 本書では「蒸気は水の気体状態」と定義して話を進めていきます。また、単に「水」と記載した時は、特別なことがない限り「液体状態の水」をいいます。

 物質としての水はいろいろな状態で広く地球上に存在し、私たちの生活に大きくかかわっています。また、生活の中で非常に馴染みが深く、また使いやすい物質のためにあまりにも意識されることなく用いられています。日々の会話の中にも「水に流す」、「湯水のごとく」といった慣用句が使われるなど、当たり前に身近にある物質です。

 通常、私たちが生活している空間、つまり空気中の地表付近では圧力が大気圧(1気圧)であるため、0℃になると水は氷に変化し、100℃になると沸騰します。火にかけることで水は水蒸気に簡単に変化します。この状態は、料理やお風呂といった身近なところで体験することができます。毎日の気象予報で耳にする天気(雨や湿度など)にも蒸気が関係しています。

 また、水は地球上の多く場所に大量にあることから使いやすく、各種の工業で広く使われています。産業革命の原動力となったジェームス・ワットの蒸気機関に始まり、今日の火力発電所や原子力発電所などの大型設備・機械でも使われています。

 本書は、このような身近な蒸気の特徴から、日常の生活や工業における蒸気利用までをわかりやすく紹介、解説します。

 従来の書籍では、蒸気は工学的な立場から工業熱力学の中で取り扱われており、一般の人たちや学校を出て現場で蒸気を扱おうという人ための入門書がほとんどありません。本書は、一般読者には日常の生活の中で蒸気を上手に使うヒントを、技術者の方には毎日の仕事の中で一番効率的で安価な蒸気の使い方のヒントを提供できればと考えています。

 蒸気は高温であることが多く、取り扱いを間違えると非常に危険です。現在の家庭内には圧力鍋や過熱蒸気で調理する電子レンジもあり、便利になってきた一方でこうした高エネルギーの蒸気を使う機会も増えています。したがって今まで以上に蒸気の扱いには注意が必要となっています。工場でも同様に高温・高圧化が進んでいます。危険を察知するためにも事前に蒸気を知っておくことが必要で、本書がその一助になれば幸いです。

 最後に、本書の刊行に際して、執筆の機会をいただいた日刊工業新聞社の奥村功出版局長、構成・編集上のアドバイスをいただいたエム編集事務所の飯嶋光雄氏、また本文デザインをご担当いただいたた志岐デザイン事務所の奥田陽子氏に謝意を表します。
 
 
2016年7月

勝呂幸男

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