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今度こそ納得!
難しくない品質工学

定価(税込)  3,024円

著者
サイズ A5判
ページ数 312頁
ISBNコード 978-4-526-07584-1
コード C3034
発行月 2016年07月
ジャンル 生産管理

内容

品質工学を活用しながらも疑問を解消できずにいる人、理解を深めたい人、つまずいている人に向けて、品質工学の思想から、原理としての数式、さらに実務で役立つ活用法までを解説する。無償のソフトウェアをダウンロードすることで体験も可能。品質工学の主柱であるパラメータ設計に重点を置きつつ、類書では詳細にふれられていない損失関数についても詳しく解説する。

鈴木真人  著者プロフィール

(すずき まさと)
1958年 静岡県生まれ。
1982年 芝浦工業大学工学部 機械工学科卒業。
同年 アマノ株式会社に入社。
同社にて,タイムレコーダ,駐車場管理機器,集塵機,業務用清掃機,洗剤リサイクル,電解水生成装置,信号処理,時刻配信,デジタルタイムスタンプ,電子署名の技術開発,商品開発に従事。
現在同社にて,実験計画立案,データ解析,および,品質工学の指導・支援を担当。品質管理検定1級,統計士,データ解析士,生涯学習2級インストラクター(統計)

論文・著作
・論文
 「自動搬送車のための音源探知技術の最適化」2010
 「自動搬送車のための音響誘導技術の最適化」2011 以上 品質工学会
 「開発・設計における品質工学の有用性について」産業技術大学院大学紀要第3号
 「品質工学における回帰寄与率SN比の提案」産業技術大学院大学紀要第4号
・著作
 「バーチャル実験で体得する実践・品質工学」日刊工業新聞社 2007
 「品質工学のススメ」EDN Japan 2009 7月号
 「試して究める!品質工学 MTシステム解析法入門」日刊工業新聞社 2012
 「めざせ!最適設計 実践・公差解析」日刊工業新聞社 2013(共著)

目次

はじめに

第1編 品質工学の源流思想と原理
第1章 品質工学を正しく使うために知っておくべきこと
 1・1 出荷検査を合格した製品が出荷直後にクレームを起こすのはなぜ?
  1・1・1 まずは劣化の本質を理解しよう
  1・1・2 製品の機能と劣化と寿命との関係
  1・1・3 故障のメカニズムを考える
  1・1・4 製品が機能不全におちいらないようにするには
 1・2 『品質』を実感できるように表現するには
  1・2・1 一般的な『品質』の定義と品質工学での『品質』の定義の違い
  1・2・2 『品質』を損失という負の指標で評価する理由は?
  1・2・3 『損失』という特性で品質を考えてみる
  1・2・4 品質をお金で定量化する手段―損失関数―
  1・2・5 損失関数の3つのパラメータはどのように決めるべきか
  1・2・6 工場の会話から説明する損失関数が2次関数になるわけ
 1・3 システムについて考えることが品質工学の第一歩
  1・3・1 『技術』という言葉を定義することから品質工学が始まる
  1・3・2 技術者の立場からシステムを定義すると
  1・3・3 通信システムにおけるノイズと品質工学におけるノイズを考える
 1・4 システムを評価するSN比とはなにを表現しているのか?
  1・4・1 通信システムでは情報伝達特性の良さをどのように表すのか~SN比を使って『技術』を評価する
  1・4・2 『機能』に対してSN比はどのようにかかわってくるのか?

第2章 パラメータ設計の思想と原理
 2・1 パラメータ設計の思想とは
  2・1・1 パラメータ設計をダーウィンの進化論で考えるわけ
  2・1・2 進化論をパラメータ設計にあてはめて考える
 2・2 パラメータ設計の原理
  2・2・1 狙撃兵を例としてシステムを考える
  2・2・2 パラメータ設計の原理と進め方 ~効率良く設計諸元を探すために
 2・3 直交表という道具について
  2・3・1 直交表を簡単に説明すると
  2・3・2 直交表の使い方 ~割付について
 2・4 パラメータ設計の思想をより深く理解する
  2・4・1 コンティンジェンシープランとは
  2・4・2 ノイズを与えて実験を行う本当の理由とは

第3章 品質工学を理解するために必要な統計学の基礎の基礎
 3・1 集団の特徴を表すために集約されたいくつかの数値:基本統計量
  3・1・1 母集団とサンプル,およびサンプルの集め方
  3・1・2 サンプルの『平均』~母集団の中心はどのあたりにあるか
  3・1・3 『偏差平方和』~サンプル群のばらつきを調べるために
  3・1・4 『分散』と『標準偏差』~母集団のばらつきを推定する
 3・2 分布を調べてサンプル群のばらつき方を可視化する
  3・2・1 サンプル群のデータでヒストグラムをつくる
  3・2・2 正規分布と標準正規分布 ~その特性と活用方法
  3・2・3 データ数,平均,標準偏差,分散,分布をイメージする
 3・3 統計数理の源泉 ―中心極限定理― 
  3・3・1 サンプル平均の群れについて ~その分布とばらつきの特徴
  3・3・2 体験してみよう!『中心極限定理』
  3・3・3 分散はなぜ偏差平方和を(n-1)で割るのか?
 3・4 相関と回帰分析 ―動特性解析の原理を理解する―
  3・4・1 入出力関係を可視化する散布図と相関係数の役割
  3・4・2 偽相関,擬似相関
  3・4・3 回帰分析 ~原因系から結果を予測する
  3・4・4 寄与率 ~回帰分析結果のあてはまりの良さを示す指標
  3・4・5 動特性評価の原理 ~ゼロ点回帰分析について
  3・4・6 ゼロ点回帰分析の問題点 ~寄与率の計算方法について
 3・5 F検定と分散分析
  3・5・1 F検定 ~得られた結論の信頼性を調べるために
  3・5・2 分散分析 ~水準の効果と偶然誤差とをはかりにかける
  3・5・3 どの要因がどの程度結果を支配しているのか―分散分析の実施―
  3・5・4 交互作用を分離して交互作用を検証する方法
  3・5・5 プーリングの意味とその方法,および寄与率とは
 付録1 標準正規分布表

第2編 品質工学の実践
第4章 損失関数
 4・1 分布と損失関数
  4・1・1 正規分布にしたがう品質特性の製品を損失関数で評価する
  4・1・2 どちらの製品を買うべきか?~分布の違いによる損失の比較
 4・2 損失関数を使ってコストと品質の経済性を評価してみる
  4・2・1 加工方法を変更するべきか?~工場内の損失で判断するには
  4・2・2 部品を変更するべきか? ~社会に与える損失で判断する
 4・3 損失関数が2次関数になる理由 損失関数の数理
 4・4 正規分布以外の分布での損失関数
  4・4・1 MTシステムへの損失関数の導入
  4・4・2 MT法でのしきい値の決め方~第1種の過誤と第2種の過誤
  4・4・3 任意の確率密度関数と損失関数の関係

第5章 パラメータ設計の数理の理解と実践法
 5・1 パラメータ設計 .数理の理解の準備
 5・2 パラメータ設計の本質―静特性解析の数理―
  5・2・1 パラメータ設計が提案された時代背景を知っておく
  5・2・2 静特性 ~望目特性の考え方
  5・2・3 望目特性の数理 ~なぜ,Veをひくのか?
  5・2・4 望小特性,望大特性の使い方
  5・2・5 ゼロ望目特性 ~その名前にひそむ危険な落とし穴
 5・3 パラメータ設計 .動特性の数理と注意点
  5・3・1 動特性の評価の意味と原理,および利点について
  5・3・2 動特性評価でのノイズの役割とその影響を調べる
  5・3・3 動特性評価で使うy=bMという式が意味すること
  5・3・4 動特性 ~感度とSN比の式を導出する
  5・3・5 動特性解析に関するいくつかの検証
 5・4 標準SN比による解析方法とその注意点
  5・4・1 非線形問題に対応するための標準SN比と転写性のSN比評価
  5・4・2 標準SN比 ~解析の原理と解析上の注意点
195 6・1 採集したデータの解析
  6・1・1 直交表の性質を調べる ―加法性と交互作用―

第6章 直交表を使いこなすために
  6・1・2 交互作用を減衰するための対数変換と直交表の列の性質
  6・1・3 2水準系の直交表の性質
 6・2 直交表にのっとって採集したデータの分散分析のしかた
  6・2・1 L18直交表の場合
  6・2・2 L8直交表の場合
  6・2・3 L8直交表 ~交互作用の検証
 6・3 L9直交表とL18直交表

第7章 パラメータ設計 実験計画から確認実験,最適化まで
 7・1 パラメータ設計の準備
  7・1・1 パラメータ設計のながれを確認する
  7・1・2 実験計画の立案と準備段階での留意点
  7・1・3 実験を実施するときの心得
  7・1・4 実験結果の解析
  7・1・5 確認実験の実施と再現性の検査
 7・2 L18直交表 実験計画から解析の実施
  7・2・1 L18直交表 ~解析支援ファイルのダウンロード
  7・2・2 解析ファイルの説明

第8章 SN比について考えてみる
 8・1 進化するSN比
  8・1・1 汎用性と拡張性が大幅に向上―エネルギ比型SN比とは―
  8・1・2 回帰寄与率型SN比の紹介
 8・2 SN比の計算工程についての問題点とその解決方法の提案
  8・2・1 SN比の計算工程にひそむ問題点とは

参考文献
索引

はじめに

 これまで,日刊工業新聞社から3冊の書籍を出版していただきました.『バーチャル実験で体得する実践・品質工学』は,仮想実験装置を使って品質工学を使ったシステムの最適化を実際に体験して,品質工学の有用性を理解していただくことが目的でした.
 『試して究める!品質工学MTシステム解析法入門』では,品質工学を構成する1つの柱であるMTシステムについて,数理や使い方,さらには各手法がかかえる問題点の解説をしました.また,MTシステムを使ってみようと思ったときに最大の障壁となる演算を自動的に実施できるように,Excelのマクロ機能を使ったファイルを提供しました.
 そして,『めざせ!最適設計実践・公差解析』では,品質工学の損失関数を活用した公差の最適化方法を解説し,許容差設計についてもふれています.
 今まで執筆した書籍は,読者が品質工学を最適化技術,あるいは道具としてすぐに活用できることを目的として,そこに重心を置いた内容となっています.
 今回,本書を書かせていただいた目的は,品質工学の本質を十分に解説することにより,読者の方々に品質工学を深く正しく理解していただいたうえで活用し,成果に結びつけていただくことです.
 道具を使うときにはその機能や構造を理解して,正しい使い道で正しい使い方をしなければケガをします.品質工学のような汎用技術も同様です.したがって,品質工学を正しく活用するにはその修得や実践において浮かぶわずかな疑問さえも解消する必要があります.
 筆者は過去所属していた地方研究会でその会員を対象として,品質工学の思想・原理から数理や,直交表などの道具について解説してきました.残念ながら,すでに品質工学を活用していても,その思想や原理が十分理解されておらず,思うように活用できていない方もいました.また,初心者の方はなおさら,品質工学の思想や原理は受け入れ難いようでした.
 なぜ,品質工学は受けいれ難いのか,と考えてきたのですが,2つの大きな原因があることに気づきました.その原因の1つは,パラメータ設計で設計目的の機能の目標値を獲得する前に,まず,機能のばらつきを減らすことを優先することや,『品質』という一般的にはよいこと,よいものととらえられる特性を,品質工学では『損失』という負の指標で評価するなど,天邪鬼的と思われてしまう方法論や思考過程です.
 そして,もう1つの原因が品質工学の数理です.ほとんどの書籍は品質工学で使う評価指標の『感度』といくつかの『SN比』を計算する数式を,ぽんと提示しているだけで,その数式がどのように導き出されてきたのか,の解説はほとんど見あたりません.
 そのほかにも,品質工学独特の表記やことばがあり,これらにひっかかりを持つ技術者もかなり多いことと思われます.例えばy=bMという動特性の基本機能をあらわす式です.数学や統計学では,多くの場合直線の方程式はy=bxと表記されます.なぜ,bではなくbなのか?なぜ,xではなくMなのか?技術者の多くは,原理やなりたちが理解できないものごとにたいして,とても懐疑的になりがちです.そのため,品質工学とのふれあいには消極的になるのでしょう.
 今回,品質工学の思想と原理を正しく理解して活用いただけるように,本書ではこれら品質工学の理解や活用をはばむ大きな2つの問題の解決と,いくつかのひっかかりの解消を目的として企画しました.本書では,例えば品質は損失という負の指標でなければ評価できない理由や,パラメータ設計の方法論について,なぜ天邪鬼にならなければいけないのか,などをわかりやすく説明したつもりです.本書を読んでいただければ,まず,第1の大きな問題は解決できるはずです.
 また,品質工学の数理の源流は統計学です.本書では,品質工学の数理を解説する前に,それを理解するうえで必要不可欠な統計学の基礎を十分に解説することにしました.そのなかには,なぜ,分散という2乗した情報でばらつきを調べるのか?その分散の計算で,なぜ偏差平方和を(データ数-1)で割るのか?の本当の理由など一般的な統計学の教科書にも載っていない内容も含めて解説しました.
 そして,これら統計学の数理から品質工学の数理に至る工程をしっかりと解説したつもりです.統計学の知識などなくても品質工学は実践できる,と説かれる方もいるのですが,やはり,統計学の知識があるのとないのとでは,品質工学を正しく活用して,その結果得られる成果にはとても大きな差がでてしまうことはあきらかです.
 統計学の基礎をしっかりと身につけ,そのうえで品質工学の数式を導く工程を理解すれば,田口玄一先生が考案された数式という形で提供されている品質工学の数理だけでなく,その数式に込められた思想と哲学もきっと理解していただけるものと思います.
 その他,筆者が自身の品質工学の推進や地方研究会での議論などから得ることができたパラメータ設計を実施するときの注意点や,まかない料理的な裏メニューなどについても述べさせていただきました.これらの情報が読者の方々にとってパラメータ設計を実施するときになんらかの助けになれは幸いです.
 それでは,本書の主柱となる考えを紹介します.それはパラメータ設計の原理にも結びつくことなのですが,生物の進化の源泉,つまり,『進化論』として語られている進化のメカニズムと品質工学の共通点です.
 2年ほど前に「パラメータ設計とは科学・技術への進化論の適用である」ことに気づきました.進化論が成立するための必要条件は「多様性の獲得」と「環境による選択と淘汰」です.これについては本書で十分に解説していますので,きっと,パラメータ設計と進化論の共通点についてはご理解いただけるはずです.そして,その結果,パラメータ設計は進化論に通ずる自然の摂理にのっとった技術活動であることをご理解していただけるものと思います.
 さらに本書では,従来の品質工学の手法だけでなく,筆者の考案も含めた新しい解析方法や解析指標などについても紹介し,品質を獲得するための技術手段から得られる情報に『多様性』を与えることも目的としています.これは品質工学自体の進化を願ってのことです.あとは,本書を活用して,紹介した新たな解析方法など試していただき,皆様の『環境』のもとで,『選択と淘汰』がなされれば,品質工学はさらに進化するはず,というのが筆者の思いです.
 しかし,新たな解析方法も多くの方に実際に使っていただかなければ進化も進みません.そこで,今回もL18直交表にのっとった実験について,直交表への割付,データ解析,要因効果図による可視化,分散分析,確認実験の立案支援,利得の再現性の確認までの一連の処理がとても簡単な操作で実施できるExcelファイルを用意しました.そのなかに,新しい解析方法を実施する機能も実装してあります.
 そしていっしょにダウンロードできるExcelファイルとして,損失関数の理解を深め活用を支援するためのツールや,理解と納得に困難がともなう統計学の中心極限定理を体験するためのツールも合わせてダウンロードしていただけます.これらのExcelファイルもきっとお役にたつものと思いますので,ぜひ,使ってみてください.
 本書を執筆するにあたり,数理解説などの一部は,著者が浜松品質工学研究会用に制作したテキストをもとにしています.研究会の場でいただいたテキストに対するご意見などを取り入れて,内容と文章を熟成させることができました.浜松品質工学研究会ならびに会員の方々に感謝いたします.
 また,本書で紹介しているいくつかの内容は,一昨年よりお招きいただいた山梨県品質工学研究会,長野県品質工学研究会,関西品質工学研究会,そして,現在著者が所属しているQEF埼玉で報告,議論していただいたことで考えをまとめあげることができました.各地方研究会ならびに研究会会員の皆様に感謝いたします.
 また,関西品質工学研究会の太田会長には,「エネルギ比型SN比」の紹介とExcelファイルへの機能の実装のご許可をいただきました.あわせてお礼を申し上げます.大変ありがとうございました.
 本書の原稿を完成させるにあたり,ちょうど品質工学の勉強をはじめた同僚の齊藤一誠君には,原稿の誤記だけでなく表現の悪さやゆらぎをいくつも指摘していただき,とても助かりました.ありがとうございました.
 2015年9月のシルバーウィークの5日間をExcelのマクロ作成に筆者が没頭したため一切外出などもできなかったのに,不満もいわずいろいろと手伝ってくれた妻にも感謝しています.
 そして,筆者が提案させていただいた本書の企画を実現するために,大変なご尽力をいただいたうえに,最後の最後までいろいろとご苦労をおかけした日刊工業新聞社書籍編集部の木村文香さんにお礼を申し上げます.ほんとうにありがとうございました.

2016年7月 
鈴木真人

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