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チャイナショックで荒れ狂う
アジアのビジネス・リスク

定価(税込)  1,728円

編著
編著
編著
サイズ 四六判
ページ数 272頁
ISBNコード 978-4-526-07581-0
コード C3034
発行月 2016年06月
ジャンル ビジネス

内容

ビジネス・リスクに無防備な日本企業の実情を明かし、対応策を提案する本の第2弾。中国経済失速やアセアンの景気後退などの現実を背景に、もはや警鐘レベルではなくなった実際のリスクにどのように対処するかを解説している。第一部では、人口動態と地政学の両面から、世界の識者が唱えるリスク分析やその枠組みを解説。第二部では、マレーシアの爵位「タンスリ」を授与された小西史彦氏のロングインタビューなどを紹介。第三部では、アジア各国における数々の貴重なリスク対応事例を掲載している。

越 純一郎  著者プロフィール

(こし じゅんいちろう)
㈱せおん代表取締役、㈱テイク・グッド・ケア(TGC)代表取締役。
1978年東京大学法学部卒業。日本興業銀行にて東京、ニューヨークの国際金融、投資銀行業務に20数年間従事。2000年より企業再生の現場経営者に転じ、その後、薬剤師向けEラーニングのTGC社の経営、児童教育テーマパーク「カンドゥー」の創業など、実業に従事しつつ、JR東日本、東京高検ほかの役員研修、各種企業顧問など、多数の企業・組織を指導・支援。タイの政府系銀行のシニア・アドバイザー、外国弁護士制度研究会委員(法務省)等を歴任。著書・講演多数。日本ほめる達人協会、Eパートナー(メンタルヘルス)等顧問。

杉田浩一  著者プロフィール

(すぎた こういち)
㈱アジア戦略アドバイザリー代表取締役
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス・アンド・ポリティカルサイエンス(LSE)経済学修士。米系投資銀行のフーリハン・ローキー在日副代表、UBS証券投資銀行本部エグゼクティブディレクター等、長年にわたり、外資系投資銀行において海外進出に関するアドバイザリー業務に従事。その後独立し、日系企業のアジア戦略立案サポートを行う株式会社アジア戦略アドバイザリーを創業。東南アジアへの企業進出においてさまざまな企業に対する高品質な戦略アドバイスの提供を目指している。著書は「実践ミャンマー進出戦略立案マニュアル」(ダイヤモンド社)など。

福谷尚久  著者プロフィール

(ふくたに なおひさ)
PwCアドバイザリー合同会社 パートナー
国際基督教大学(ICU)卒業。コロンビア大学MBA、筑波大学法学修士、オハイオ州立大学政治学修士。三井銀行入行後、さくら銀行、三井住友銀行(NY)、大和証券SMBC(シンガポール)、GCAサヴィアン(中国現法代表やインド現法役員等を歴任)、及び現職にて日米欧亜のクロスボーダー案件のほか、敵対的買収関連案件、業界再編・MBOなど多くのM&A案件をアドバイス。著書は「M&A敵対的買収防衛完全マニュアル」(中央経済社)、「事例 中小企業M&A白書」(中小企業経営研究会)など。

目次

序文 アジアのリスクが「見えにくい」のはなぜか?
編集代表 越 純一郎

巻頭言 チャイナリスクのマクロ構造 ─ 「発展方式の転換」から「新常態」へ
拓殖大学学事顧問・前総長 渡辺 利夫

第一部 アジア・リスクの真相
─ 人口動態リスクと地政学的リスク
第一章 人口動態リスクとチャイナショックの真相
株式会社せおん 越 純一郎
第二章 グローバル企業として注目すべき2016年の世界10大リスク要因とアジア地域へのインプリケーション
ユーラシア・グループ/日本オフィス代表 坂口 恵
補論 経済圏の人口年齢構成と経済成長の関連性
三井不動産投資顧問株式会社 飯島 中夫

第二部 リスクの海の戦士に贈る武器と海図と羅針盤
第一章 アジア・ビジネスの王道
─ テクスケム・リソーゼズ 小西史彦氏との会談(聞き手:杉田浩一)
第二章 「日本の常識」は「世界の非常識」?
─ リスクの荒海を漕ぎ切るためのヒント
PwCアドバイザリー 福谷 尚久
第三章 対談「アジアM&Aリスクの現実」
第四章 アジアにおける不正・コンプライアンスリスク
クロール・インターナショナル・インク 影山 正・村崎 直子
〈補論〉 リスク対応の一般理論からの幾つかの教訓
株式会社せおん 越 純一郎

第三部 アジア・ビジネス・リスクの実況報告とリスク対応具体論
〈事例1〉
中国現地法人撤退時の関門─経済補償金
山田ビジネスコンサルティング株式会社 池野 幸佑
〈事例2〉
中国撤退トラブル ─ 合弁解消の激闘
株式会社アジアン・アセットリサーチ 菱村 千枝
〈事例3〉
中国撤退リスク ─ 経営状態による判断
唯来亜可亜企業管理咨詢(上海)有限公司 高田 勝巳
〈事例4〉
中国事業リポジショニングの重要性
株式会社KPMG FAS 舟橋 宏和
〈事例5〉
タイ・意外に厳しい外資規制
長島・大野・常松法律事務所 佐々木 将平
〈事例6〉
タイでの登記手続、合弁契約リスク
西澤綜合法律事務所 西澤 滋史
〈事例7〉
タイの追徴課税
タレンテックス 越 陽二郎
〈事例8〉
インドネシア ─ 将来のリスクを見据えた合弁契約の締結を
長島・大野・常松法律事務所パートナー 福井 信雄
〈事例9〉
インドネシア進出企業のマネジメント
─ 事務系管理職の確保が課題
KPMGジャパン 石渡 久剛
〈事例10〉
インドネシアの「甘い話」と日本企業
─ バリ島のリゾート開発のヨタ話
グレース・トラスト合同会社 アリ・ウィドド(Ari Widodo)
〈事例11〉
フィリピン進出 ─ 『その「グレー」、本当にグレー?』
C&G法律事務所 岡﨑 友子
〈事例12〉
インドM&A、理論を超えた実戦
GCAサヴィアン株式会社 依田 和之

終章 アジア・ビジネス千夜一夜
PwCアドバイザリー 福谷 尚久

はじめに

序文 
アジアのリスクが「見えにくい」のはなぜか?

編集代表
越 純一郎

現象面はわかるが、その原因がわからない
 2010年に「NHKスペシャル 灼熱アジア」という番組が放映された。だが、それは灼熱というほどの好景気であるという「現象面」を報じるばかりで、「なぜ、そうなったか」、つまり現象を引き起こした「原因」についてはほとんど語っていなかった。
 同様に、2015年に日本経済新聞社が編集・刊行した「中国バブル崩壊(日経プレミアシリーズ)新書」も話題を呼んだが、そこでも記述のほぼ全ては「現象面」(株価下落、不良債権増嵩など)に集中していて、「現象を引き起こした原因」についての分析、言及はほとんどなかった。
 現象面であれば目の前に見えるから、灼熱の好景気でも中国失速でも、それが起こっていることはわかる。しかし、原因はなかなかわからない。
原因がわからないまま、アジアのリスクの時代が到来している
 今日、「アジアの成長をとりこめ」という声はなくなり、「アジアはリスクの海」と言う実務家もいる。ところが、アジア・ビジネスを襲っているリスクの正体・真因が「見えにくい」ことが問題である。たとえば、次のような現地(インドネシア)からの声がある(2015年8月、ジャカルタの鉄鋼関係の日系企業のトップ)。
   現地の実感としては、さらに景況感が悪化し、もうあきらめの雰囲気さえ出てきている感じです。みなさんは、「こんなはずじゃなかった」と口々に言われます。
 この方は、「各社とも口々に、『どうしてこうなったのかわからない』と言うのです」とも語っていた。要するに、「原因が見えにくい」と言うのだ。
前書と本書の関係 ─ リスクが現実化した
 「失敗例は隠される。表ざたにしない。」との事情があることは前書の時と同じである。だが、それに加えて、「原因が見えにくい」ため、それによって生じる「リスクも見えにくい」ということが、現時点では重要である。本書はこの観点から編集されている。
 つまり、前書は「アジアの見えないリスク」全般を扱ったが、本書ではアジアのビジネス・リスクの「原因」に焦点を当てている。なぜなら、前書を刊行したタイミングでは「アジアの好景気に浮かれていてはならない」ことに警鐘を鳴らし、アジアの景気後退とリスクの潜在・増嵩を広く知って頂くことが必要であったからだ。一方、現在は、予想通り中国経済失速やアセアンの景気後退などは現実となっているので、もはや警鐘の必要はなく、本書では現実のリスクにどのように対処するかに、より重点を置いている。リスクへの対処を考えるためには、リスクの原因を分析する必要もある。本書では(特に第一部で)、それにも大きな重点を置いている。
著名な識者だが、その議論は「見えにくい」(=わかりにくい)
 表をご覧頂きたい。この表にある四人は、本書にも登場し、世界に大きな影響を与えている識者で、いずれも著名な方々である。しかし、どの方が述べておられる内容も「目で見てわかる」「日々、実感できる」というものではなく、「見えにくい」ものである。医療に例えれば、交通事故による怪我や骨折なら「目で見てすぐに確認できるし、原因が明らか」であるが、老化や食餌による循環器系の慢性疾患は原因が「見えにくい」のと似ていると言えよう。
 これらの四人はそれぞれに著名な識者であり、特にイアン・ブレマー氏とタイラー・コーエン教授は、世界の実務家、経営者に大きな影響を与えている。実際にも、イアン・ブレマー氏のユーラシア・グループと日興アセットマネジメント社が、新興国投資に関するパートナーシップを組んだ。
 だが、彼らの名前を知っている人は多いかもしれないが、彼らの使用する次のような概念は、わかりにくい(「見えにくい」)のではないか。
   地政学、国家資本主義(イアン・ブレマー)
   人口ボーナス(アンドリュー・メイソン、大泉啓一郎)
   容易に収穫できる果実の枯渇(タイラー・コーエン)
原因が見えにくいから、リスクも見えにくくなる
 これらの事項こそ、アジア・ビジネス・リスクを増嵩させてきた真の要因である。だが、そのいずれもわかりにくい。たとえば、「アジアの経済失速には、人口動態が関係している」と言われても、実感を持てない方も多いだろう。実際にも、アジアの日系企業の経営計画が人口オーナス問題に基づいて策定されたというケースは非常に少ない。(そこで本書第一部の補論にて、三井不動産グループの例を御紹介する。)
 外資系などの一部の実務家を除けば、人口動態も、地政学も、技術革新の停滞も、まだ「見えにくい」状態のままのようであり、そのため、それらがもたらす巨大なリスクにも気づきにくくなる。
 要するに、「見えないリスク」は、「見えにくい原因」によって生まれるのだ。
治療法を考えるには、まず原因の特定が必要
 たとえば、「中国経済は今後どうなるのか」「中国政府はどうするべきなのか、我々はどうすればいいのか」を人々は知りたがる。医療にたとえれば、「病状変化の予想」と「治療方法(どの手術を選択するか、どの薬剤を選択するか、など)」を知りたがる。
 だが、これらを考えるためには、まず疾病の「原因」が何なのか(老化なのか、悪性腫瘍なのか、細菌感染なのか)を分析・確認することが必要である。それなしに「病状変化予測」や「治療法の選択」を論じるのは、そもそもオカシイではないか。これが、本書を刊行する基本的な問題意識である。
 たとえば、特に影響の大きい中国経済失速の原因は、次の二つのうち、どちらの性質であると考えられるであろうか。
   抗生物質で治療できる細菌感染のような「一時的・可逆的なもの」なのか、
   それとも、老化などのように「非可逆的」なものなのか。
中国経済失速の原因が語られない理由─「見える原因」と「見えない原因」
 賢明な読者はすでに推測されておられるだろうが、要するに、中国経済失速の原因は、医療にたとえれば、「交通事故による外傷や骨折」のようなものというよりも、「循環器系の慢性疾患」のようなものだと考える必要がある。
 交通事故で生じた外傷や骨折ならば原因は明らかで、「簡単に確認できる」。しかし、循環器系の慢性疾患の原因を探るには、様々な「検査」が必要である。検査結果から「診断」をくだすためには、「理論的な裏付け」が必要である。特に、経済学(人口動態、生産関数など)、及び地政学である。
人口ボーナス終了で失速した中国経済と老いるアジア ─ Aging Six(老いつつある6か国)
 筆者は2012年初に「リーマンを上回るチャイナ・ショックの衝撃」という小論を公表した。そこでは、「中国の人口はタイの20倍。とにかく規模が大きいので、タイの経済への影響も甚大である。中国経済がクシャミをすれば、日本経済は風邪をひき、タイはインフルエンザかもしれない。」といったことや、中国経済失速の原因として世界の識者や専門誌が論じている内容を紹介した。
 本書は中国だけを扱うものではないが、中国経済失速の影響は巨大である。しかも、リーマンショックの時とは異なり、世界全体の状況が悪いので事態は実に深刻である。リーマンショックの際には、中国自身が四兆元対策を実施し、日本でも数次にわたって大規模な財政政策が発動された。ブラジル他の国々の経済も好調だったし、「アジアの成長を取り込め」という声がどこにもあって、NHKはアジア諸国の好況を伝える「NHKスペシャル 灼熱アジア」を放映した。
 だが、現在はどうか。ヨーロッパ(中国の最大の輸出先である)もアジアも南米も、失速する中国経済を支える余力はなく、むしろ中国経済失速によって自国経済が足を引っ張られている。こうして中国だけでなく、アジアの大半の国が景気後退に見舞われた状況になっている。
 そうなった原因に関して、人口動態を抜きにして語ることはできない。これまであまり意識されてこなかったが、中国経済失速を招いた最大の原因である「人口ボーナス期の終了」は、本書第一部で詳述する通り、ほぼ同時に韓国、台湾、香港、シンガポール、タイの5か国にも生じている。「見えにくい」から意識されてこなかったものの、この6か国がほぼ同じ時期に同じ原因で経済停滞に突入したのだ。
 第一部で解説する人口ボーナス期(=経済成長が著しい時期)を、日本は1990年代前半に終了し、人口老齢化によって経済の停滞が継続する状態に突入している。その日本に20年ほど遅れて、近年、「中国、韓国、台湾、香港、シンガポール、タイの計6か国」がほぼ同時に人口ボーナス期を終了した。
 日本をAged Japanとすれば、これら6か国はAging Sixである。2013年から2015年にかけてアジア全体の景気が後退したのは、この時期にAging Sixがほぼ同時に人口オーナス期(=経済が停滞する時期)に突入したことが大きく影響していると断言できる。
 この中国を含むこれら6か国を合計した経済規模は非常に大きい。そのため、Aging Sixが同時に景気後退を始めれば、「まだ人口が若い国々」の景気も悪影響を受けるのは当然である。前述したインドネシアなどの苦境の大きな原因は、これである。
本書の目的と構成
 アジア経済の失速は、あらゆる場面でビジネス・リスクを巨大にする。であれば、アジア経済が失速した原因が何であるのかを追究することは、何にもまして重要である。第一部では、これを幾つかの重要な角度から扱う。特に、人口動態と地政学の両面から、世界の識者が唱えるリスク分析やその枠組みを紹介する。識者とは、アンドリュー・メイソン教授、大泉啓一郎氏、タイラー・コーエン教授、そしてイアン・ブレマー氏である。今回、イアン・ブレマー氏が代表を務めるユーラシア・グループからも原稿を頂いたことは感謝にたえない。
 第二部は、「リスクの海の戦士に贈る武器と海図と羅針盤」と題している。アジア・ビジネスに携わる諸氏のために、最高レベルの実務家から、またとない貴重な論考を頂くことができた。
 とりわけ、小西史彦様のインタビュー内容をお伝えできることは、本書を編むに当たって最大の喜びの一つである。また、対談して頂いた福谷尚久氏と杉田浩一氏は、アセアンと日本の金融市場において長年にわたりM&Aバンカーとして赫々たる成果を上げてこられた著名にして熟達のお二人である。さらに、フォレンジック・リスクに関する世界的な巨頭であるクロール社(アジア太平洋地区統括責任者 影山正氏、日本支社代表 村崎直子氏)からも貴重な論考を頂いた。こうした世界的な専門家にご協力頂いたことは編集者冥利に尽きることで、読者諸氏には広く活用して頂きたいと衷心より願っている。
 一方で、「アジアに特有のリスク対応実務」もあるが、「世界共通のリスク対応実務」ももちろんある。普遍的な原理や原則である。「1+1」は世界のどこで誰が計算しても2であるように、アジアにも欧米にもどこにも共通する原則・原理は、もちろん存在する。第二部の補論において、若干だが、それを扱っている。
 第三部は、多数の実務家による実務リスクの現場報告である。10名以上の実務家からの寄稿を頂いた。過半数は、弁護士、経営コンサルタントなどの外部専門家の諸氏である。なぜならば、リスク関連事案や失敗事例を当事者企業に語って頂くことはむずかしいのだ。そこで、外部専門家に語って頂いたのである。
 第三部では、中国以外に、タイ、インドネシア、フィリピン、インドを扱う。中国や韓国などのAging Sixが再び高度成長を実現する可能性がないとするならば、「次のフロンティアはどこか?」「最後のフロンティアはどこか?」も、当然の関心事だからである(だが、楽観は許されない)。本書は、こうして「見えないリスク」を生じさせている「見えにくい原因」を少しでも見えるようにすることを目指している。
 そして、本書の最終章は福谷氏による「アジア・ビジネス千夜一夜」。インドも含めたアジア全体に触れた、本書の締めくくりに相応しい珠玉のエピローグである。
豪華執筆陣と関係者への感謝
 本書を世に出すことができたのは、日刊工業新聞社殿が世に先駆けて人口動態の変化に伴うビジネス・リスクに注目して、2011年頃から実務家への情報提供を開始されるという先見性を有しておられたことが大きい。実際の編集作業は、同社の出版局書籍編集部部長である鈴木徹様の努力と貢献に支えられていた。読者諸氏が本書に何らかの意義を見出されたときには、その背後に鈴木様による熟達した水際立った出版実務があったことをご想像いただけば嬉しい。
 また、共同執筆者には、ユーラシア・グループ、クロール社などの世界的な専門家に加わって頂けたことは、私としても本当に驚いている。これほどのことは我が国でも初めてではないか。更に、巻頭言を賜った渡辺利夫先生は、我が国におけるアジア経済の研究者として、深い見識と長きにわたる研究実績を有する第一人者のお一人である。更に、杉田浩一氏と福谷尚久氏は著名なM&Aバンカーで、お二人の見識と発言は多くの実務家にお聞かせしたいものの、実際にはそうした機会がほとんどないので、本書でそれを実現できたことは意義深く喜ばしい。今回、お二人には本書の共同編集者として、共同執筆者として多大なご協力を頂き、特に、杉田氏には小西様のインタビューのためにマレーシアのペナンにまで赴いて頂いた。
 こうした、考えられないほどの素晴らしい執筆陣に御協力を頂けたことに、この場を借りてお一人お一人に衷心より御礼申し上げるとともに、本書が、かかる専門家のエキスパティーズが実務界で活かされるための一助となることを願うものである。

1 越純一郎編著「アジアの見えないリスク」日刊工業新聞社2012年
2 Foreign Policy誌「世界の思想家トップ100」にランクイン(2011年)、英国エコノミスト誌が「世界に最も影響力をもつ経済学者の一人」(2011年)に選ぶなど、世界に大きな影響を与えている。
3 同書の第一章『「容易に収穫できる果実」は食べつくされた』では、イノベーションを含む「容易に収穫できる果実(low-hanging fruit of modern history)」は食べつくされたとしている。
4 両社のプレス・リリース「日興アセット、米ユーラシア・グループと新興国投資でパートナーシップ」(https://www.nikkoam.com/files/lists/release/150330_01_j.pdf、2015年3月30日)によれば、「日興アセットマネジメント株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長兼CEO:柴田拓美、以下、「日興アセット」)と世界の政治リスクを分析するコンサルティング会社ユーラシア・グループ(本社:米国ニューヨーク、社長:イアン・ブレマー)は、日興アセットのマルチアセット運用戦略にユーラシア・グループが独自開発した政治的リスク指標を活用することで合意した。世界的に増大する政治および経済的懸念を背景に、地政学的リスクの評価・分析と資産運用、それぞれの分野で高い専門性を誇る2社が、リスクをコントロールした新興国投資ソリューションの提供において協力体制を構築します。」
5 2015年12月にユーラシア・グループのイアン・ブレマー代表が訪日した際の講演会(複数回行われた)でも、この点に質問が集中する傾向があった。
6 越 純一郎「リーマンを上回るチャイナ・ショックの衝撃」月刊プロパティマネジメント2012年2月。
7 「安心実現のための緊急総合対策」(平成20年8月 福田内閣)、「生活対策」(平成20年10月 麻生内閣)、「生活防衛のための緊急対策」(平成20年12月 麻生内閣)、「経済危機対策」(平成21年4月 麻生内閣)
8 2010年。第1回「タイ “脱日入亜”日本企業の試練」、第2回「中東 砂漠の富の争奪戦」、第3回「インドネシア 巨大イスラム市場をねらえ」、第4回「日韓中 緑色戦争」。
9 同氏の単行本という形態以外では、我が国で初めて上梓されるものではないか。
10 マレーシアのテクスケム・リソーセズの創業者、会長。同社を1973年に創業し、年間売上高300億円超の複合企業体に育て上げ、マレーシアを初めとするアセアン諸国7か国で、製造業、外食、サービス業等を展開。この間、長年にわたり、アセアン諸国に進出する日系企業を支援。2007年、マレーシア国王より、民間人として最高位の「タンスリ」の称号を受ける。2015年、日経産業新聞に15回にわたり「ASEANビジネス記40年」を連載。
11 因みに、執筆者を選定する過程でお目にかかった経営コンサルティング企業の方々は、異口同音にこう言われた、「ウチは、中国からの撤退に関するトラブル事案であれば、相当な案件数を手がけていますよ。」

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