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今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしい形状記憶合金の本

定価(税込)  1,620円

編著
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-07579-7
コード C3034
発行月 2016年06月
ジャンル ビジネス 金属

内容

形状記憶合金は合わせる2種類の金属の比率によって形を記憶し、熱を加えることでその形に戻ることができる。それ自体に電力を必要としないため、省エネ、省スペース、省コストを実現。超弾性特性も併せ持つため、しなやかさの特徴を活かした応用も拡大している。本書では、形状記憶合金とは何か、つくり方、使い方、さらに応用事例までをトコトンやさしく解説する。

(一社)形状記憶合金協会  著者プロフィール

●編著者
(一社)形状記憶合金協会

●編集委員および執筆者(五十音順)
【編集委員長】
山内 清(やまうち きよし) 東北大学大学院工学研究科
 
【編集委員】
石井 崇(いしい たかし) 相互発條(株)
大方一三(おおかた いちぞう) (一社)形状記憶合金協会
加藤 勉(かとう つとむ) (株)パイオラックス
髙岡 慧(たかおか さとし) 古河テクノリサーチ(株)
土谷浩一(つちや こういち) 物質・材料研究機構
中畑拓治(なかはた たくじ) 新日鐵住金(株)
  
【執筆者】
荒木慶一(あらき よしかず) 京都大学大学院工学研究科
池田忠繁(いけだ ただしげ) 名古屋大学大学院工学研究科
石井 崇(いしい たかし) 相互発條(株)
石田 章(いしだ あきら) 物質・材料研究機構
稲邑朋也(いなむら ともなり) 東京工業大学フロンティア材料研究所
大方一三(おおかた いちぞう) (一社)形状記憶合金協会
大塚広明(おおつか ひろあき) 淡路マテリア(株)
岡村賢治(おかむら けんじ) ディーテック(有)
小澤倫秀(おざわ みちひで) NECトーキン(株)
貝沼亮介(かいぬま りょうすけ) 東北大学大学院工学研究科
加藤 勉(かとう つとむ) (株)パイオラックス
喜瀬純男(きせ すみお) (株)古河テクノマテリアル
北村一浩(きたむら かずひろ) 愛知教育大学
権藤雅彦(ごんどう まさひこ) (株)青電舎
佐藤英之(さとう ひでゆき) サエス・ゲッターズ・エス・ピー・エー
鈴木昭弘(すずき あきひろ) 大同特殊鋼(株)
髙岡 慧(たかおか さとし) 古河テクノリサーチ(株)
千葉悠矢(ちば ゆうや) 淡路マテリア(株)
長 弘基(ちょう ひろき) 北九州市立大学国際環境工学部
土谷浩一(つちや こういち) 物質・材料研究機構
戸伏壽昭(とぶし ひさあき) 愛知工業大学工学部
豊川秀英(とよかわ よしひで) (株)パイオラックス メディカルデバイス
中畑拓治(なかはた たくじ) 新日鐵住金(株)
中安 翌(なかやす あきら) 金沢美術工芸大学
坂 一宏(ばん かずひろ) (株)吉見製作所
引地正伸(ひきち まさのぶ) トミー(株)
本間 大(ほんま だい) トキ・コーポレーション(株)
御手洗容子(みたらい ようこ) 物質・材料研究機構
山内 清(やまうち きよし) 東北大学大学院工学研究科
渡辺和樹(わたなべ かずき) (株)ウェルリサーチ

目次

はじめに

第1章 「形状記憶合金」ってなんだろう
1 ついに金属が記憶を手にした?「形状記憶合金とは」
2 相変態が記憶のカギを握る「相変態とは」
3 原子がつながったまま動く「マルテンサイト変態とは」
4 顕微鏡で見てみると金属にも顔がある「マルテンサイト相とは」
5 なぜ金属が記憶するの?「形状記憶のメカニズム」
6 普通の金属の変形との違い「すべり変形と双晶変形」
7 鉄のマルテンサイトとどう違うの?「マルテンサイトの由来」
8 どんな形を記憶するの?「記憶は上書きできる」
9 複数の形も記憶することができる「二方向形状記憶効果」
10 ゴムのように変形する金属「超弾性のメカニズム」
11 金属にもボケがある「形状記憶合金の劣化」

第2章 形状記憶合金のつくり方
12 形状記憶合金の代名詞「チタン・ニッケル合金について」
13 チタン・ニッケル合金のファミリー「チタン・ニッケル系多元合金」
14 酸素や窒素と反応させないために「チタン・ニッケル合金の溶解プロセス」
15 「温めて冷やす」の加工プロセス「熱間加工と冷間加工」
16 製品の形と変態温度を決める最終処理「形状記憶処理」
17 厚さ数ミクロンの薄膜「スパッタ膜の特性と応用」
18 粉末成型と液体急冷「溶解鋳造以外の製造法」
19 さびなくても行う表面処理「形状記憶合金の表面処理」

第3章 形状記憶合金の使い方
20 汎用ステンレスとはどこが違うの?「チタン・ニッケル合金の諸特性」
21 バイメタルとどこが違うの?「特徴的な発生力と変位」
22 2タイプの形状変化「一方向性と二方向性」
23 1つのばねに2つの役割「コイルばねの活用」
24 アクチュエータとしての基本的な動作「バイアスばねとの組み合わせ」
25 熱の伝わりやすさが作動時間を左右する「クイックアクション、熱の伝わり方」
26 電気を流してみよう「チタン・ニッケル合金の通電加熱法」
27 加工と接合は難しい「加工上の注意点」
28 元の形に戻らなくなるのはなぜ?「チタン・ニッケル合金の繰り返し特性」
29 チタン・ニッケル合金は安全?「形状記憶合金の生体適合性」

第4章 形状記憶効果を活かした応用事例
30 世界で初めての応用製品「単純な使い方のパイプ継手」
31 日本で初めての応用製品「玩具と防湿保管庫」
32 省エネルギーで快適な住居づくり「エアコンのフラップ・床下換気口」
33 応用に積極的だった家電業界「コーヒーメーカー、炊飯ジャー、浄水器」
34 最も活用された応用の1つ「風呂・トイレでの湯温調節」
35 破砕や解体する形状記憶合金「岩石破砕器、易解体ねじ」
36 安全面の信頼性を証明「自動車・新幹線」
37 小さいのに静かで強い力を発揮「通電アクチュエータ(ロボット)」
38 一瞬の高速動作を実現「タッチパネルに通電アクチュエータ」
39 形状変化の特性を生命感に表現「アートデザイン」
40 温水の熱エネルギーで動くエンジン「形状記憶合金熱エンジン」
41 国ごとの需要に応える活用方法「海外での産業用途」

第5章 超弾性効果を活かした応用事例
42 世界初の超弾性応用製品「装着感が良い眼鏡フレーム」
43 『形状記憶合金』を一躍有名にした商品「ブラジャーワイヤ」
44 美しいシルエットを維持「衣料、装身具」
45 折れ曲がらない軽量アンテナ「携帯電話アンテナ」
46 竿と釣糸の敏感なアタリとトラブル防止「釣果が変わる釣具」
47 バッテリーが不要な作業補助具「介護・農作業の補助具」
48 口の中での作業を減らした治療法「人工歯根・根管治療ファイルなど」
49 理想の位置に歯を移動「歯列矯正ワイヤ」
50 カテーテルを目標位置まで導くワイヤ「ガイドワイヤへの応用」
51 狭い血管、消化管を自動的に拡張「超弾性合金ステント」
52 体内のさまざまなサイズの石を取り除く「採石バスケット」
53 選択肢が広がった心臓疾患の治療法「閉塞栓と大動脈弁への応用」
54 欧米が取り組む医療機器への応用「さまざまな医療用デバイス」
55 大地震後もすぐに使えるコンクリート橋梁「土木・建築構造物」

第6章 いろんな種類の形状記憶合金たち
56 チタン・ニッケルと似て非なる合金「βチタン合金の特性」
57 X線造影性、人体への安全に配慮「ニッケルフリーの医療用βチタン合金」
58 鉄系もある!形状記憶合金「鉄・マンガン・シリコン系合金」
59 大きなものを締め付けるのが得意「鉄・マンガン・シリコン系合金の用途」
60 疲労耐久性の高さを活かした地震対策「大型構造への応用」
61 古くて新しいもう1つの形状記憶合金「銅系合金の特徴と応用」

第7章 形状記憶合金の未来
62 高温への挑戦「高温形状記憶合金とは」
63 高速動作可能なアクチュエータを目指す「磁性形状記憶合金」
64 樹脂と合金による相乗効果「形状記憶樹脂の特性」
65 限られたエネルギーとスペースの中で活躍「応用範囲が広がる航空機」
66 はやぶさを支えた形状記憶合金「人工衛星の展開構造物への応用」
67 新しい形状記憶合金を探して「製造業で広がる用途開発」

【コラム】
●形状記憶特性は会議室で発見された?!
●どんな材料が形状記憶効果を示すか?
●優等生になるか、不良になるか。育てる環境が大事
●日の目を見なかった製品たち
●金属とファッション。考えにも及ばない壁があった
●形状記憶合金を使った冷蔵庫?
●血管を縦横無尽。SF映画が現実になった?!

はじめに

 本書が紹介する「温めると元の形状に戻る」形状記憶合金は、その基本的特徴を端的に表現した「形状記憶」という語が市民生活に広く使われ、合金以外にも使用されるほど定着しています。
 筆者が初めて形状記憶合金に触れたのは雪が降る寒い冬でした。先輩がポケットから取り出した薄い板はダルマストーブの上にポンと乗せられるや否やくねと丸まってしまい、まるでノシイカそのもの。ビックリでした。それが私の仕事になろうとはまたのビックリでした。
 科学への興味は、モノの動きを観察し触れることで育まれ、科学は身近なものになります。理科の実験は自然現象やモノづくりの楽しさを体験できる貴重な場です。古くは、小学生向け科学雑誌『小学5年生』(小学館)の付録教材として、形状記憶合金線を5センチほど同封させてもらったことがあります。みなさんにお湯に入れて遊び馴染んでもらう何よりの機会だったように思います。
 形状記憶合金は、見た目にはノシイカであったりゴムであったりと、その動きはシンプルなのですが、当然のこと、そこには相応の理由と理屈があります。その探求が学問としての材料研究なのだと思います。
 応用開発は夢の新素材として一世を風靡した黎明期の玩具やブラジャーに始まり、その後の淘汰を経て30余年、今や家電、住宅、輸送、通信、医療など幅広い分野に浸透し、混合水栓、眼鏡フレーム、カテーテル用ガイドワイヤやステントなどに採用され、商品の多くは世界標準として高い評価を受けるまでに及んでいます。
 本書の執筆はメーカー、ユーザー、大学や研究機関などからなる形状記憶合金協会のメンバーを中心にして、幅広い分野の人たちが執筆しています。
 本書は7章で構成され、全体を通して読者の材料への興味を呼び起こすことを念頭にまとめました。第1章では形状記憶合金の基礎的動作や原理をできるだけ噛み砕いて解説しています。第2章、第3章は工業的に最も使われているチタン・ニッケル合金のつくり方、使い方のポイントをあまり専門的にならないように解説しています。第4、5、6章には多くの商品化事例と新しい合金を紹介しました。タイミング悪く商品化に至らなかったものも、今も市場で進化を続けるものもあります。第7章にはこれからの新しい応用を拓く機能材料や用途分野をそれぞれまとめました。紙幅の関係で多くの実用化例が紹介できなかったことは本当に残念です。
 チタン・ニッケル形状記憶合金はアメリカで発見されましたが、本書に採り上げた多くの実用化例や新しい合金は世界初のものがほとんどです。実用化製品の数は日本が世界最多であることは、この合金開発に携わった本当にたくさんの関係者全体の誇りであります。
 一旦生まれて世に出た材料は決してなくなりません。用途という衣が時代や環境によって替わるのみです。
 最後に形状記憶合金をここまで育み広めていただいた先生方・先輩諸氏に感謝を申し上げると同時に、後へ続く多くの研究開発者、事業者を待ち望んで止みません。

2016年5月
山内 清

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