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ISO9001/ISO14001:2015年版 対応!
建設業のマネジメントシステム徹底見直し

定価(税込)  2,376円

著者
サイズ A5判
ページ数 176頁
ISBNコード 978-4-526-07567-4
コード C3052
発行月 2016年05月
ジャンル 土木・建築

内容

ISO9001およびISO14001:2015年版による建設業のマネジメントシステム(MS)の効果的な運用・活用を解説した本。不良を出さない仕組み作りに2015年版がどう役立つのか、日常の実務と、規格の要求を無駄なくマッチさせることでMSを機能させた例を多数紹介していく。

三戸部 徹  著者プロフィール

(みとべ とおる)

1969年 東北大学建築学科卒業後、前田建設工業で建設工事管理・設計・技術開発などに従事

2001年 MSA入社、登録部長、品質審査部長、企画部長、製品認証部長など認証業務に従事

2011年 アイエスオーミトベ事務所にて認証審査・ISOコンサルティング活動中

取得資格:一級建築士、一級建築施工管理技士、コンクリート主任技士、WES一級溶接技術者、AWA建築鉄骨溶接外観検査技術者、CFT構造施工管理技術者

著作活動:月刊アイソス誌

      2006年12月号「建設業とISOの活用」

      2009年4-9月号 連載「QMS規格の活用提案」

      2010年10月号「10年目の審査プロセスアプローチへの転換」

      2011年4-9月号 連載「新経審改正施行 ISO-MSの見直しを考える」

      2012年4月号「建設会社の統合マネジメントシステム」

      2013年4月号「ISO9001 7.5.2を考察する」

      2014年4月号「規格改正の機会にどのような改善ができるのか」

      2015年4月号「建設業の次期改正対応環境マネジメントシステム」

     全建ジャーナル誌 2009年4,5月号 「2008年版改正規格解説」

     全建ジャーナル誌 2015年9月号から2016年3月号連載「ISO規格の改正は建設業にとって絶好の改善の機会」

目次

はじめに

出版に寄せて

序章 
なぜISOは建設業界では役に立たなかったのか?
欧州調査では形骸化が予見されていた
建設におけるISO9001とISO14001のあらまし

紙ごみ、電気の活動
ギャップ分析とは
なぜ役に立たない運用になってしまったのか
なぜISOで杭の問題を防止できなかったのか

第1章 


品質・環境マネジメントシステム
建設分野の見直すべきポイント
1-1 台帳管理にはじまる偏った文書管理
1-2 誤解がある外部分署の管理
1-3 不必要な記録(文書化した情報)の管理
1-4 目標は数値が無ければ達成度が評価できないか
1-5 協力会社を後から点数で評価することが再評価なのか
1-6 顧客の所有物はリストで管理するのか
1-7 教育・訓練の記録には有効性の評価を記載しなければならないか
1-8 測量機器は校正証明書が必要か
1-9 鉄筋圧接と鉄骨溶接は特殊工程か(プロセスの妥当性確認)
1-10 内部監査員の資格に外部研修は必須か
1-11 内部監査をダメにするもの
1-12 なぜ著しい環境側面は点数で決定するのか
1-13 環境側面に関連する法規制のリスト化が適合か
1-14 法順守の評価は、リストに年に一度チェックを入れることか
1-15 マネジメントレビューは、年1回審査の前に行うのか
1-16 不適合が発生したら、是正処置と予防処置をしなければならないか

Column 翻訳の問題

第2章 


ISO:2015年版の概要と意図を読み解く
2-1 ISO:2015年版のねらい
2-2 ISO2015年版の主な箇条の概要
4. 組織の状況
4.1 組織及びその状況の理解
4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解
4.3 マネジメントシステムの適用範囲
4.4 マネジメントシステム及びそのプロセス
5. リーダーシップ
5.1 リーダーシップ及びコミットメント
5.1.1 一般
5.1.2 顧客重視
   
5.2 方針
    
5.2.1 品質方針の確立・5.2.2品質方針の伝達
5.3 組織の役割、責任及び権限
6. 計画
6.1 リスク及び機会への取組み
6.2 品質(環境)目標及びそれを達成するための計画策定
     
   品質(環境)目標の考え方と設定のしかた     
6.3 変更の計画
7. 支援
7.1 資源
7.1.1 一般
7.1.2 人々
7.1.3 インフラストラクチャ
7.1.4 プロセスの運用に関する環境
7.1.5 監視及び測定のための資源
7.1.6 組織の知識
7.2 力量  
7.3 認識
7.4 コミュニケーション
7.5 文書化した情報
7.5.1 一般
7.5.2 作成及び更新
7.5.3 文書化した情報の管理
8. 運用    
8.1 運用の計画及び管理    
8.2 製品及びサービスに関する要求事項
    
8.2.1 顧客とのコミュニケーション
    
8.2.2 製品及びサービスに関連する要求事項の明確化     
8.2.3 製品に関連する要求事項のレビュー
    
8.2.4 製品及びサービスに関連する要求事項の変更
   
8.4 外部から提供されるプロセス、製品及びサービスの管理
8.4.1 一般
8.4.2 管理の方式及び程度
8.4.3 外部提供者に対する情報
8.5 製造及びサービス提供の管理
8.5.1 製造及びサービス提供の管理
8.5.2 識別及びトレーサビリティ
8.5.3 顧客又は外部提供者の所有物の管理
8.5.4 保存
8.5.5 引渡し後の活動
8.5.6 変更の管理
8.6 製品及びサービスのリリース
   
8.7 不適合なアウトプットの管理   
9. パフォーマンス評価
9.1 監視、測定、分析及び評価
9.1.1 一般
9.1.2 顧客満足
9.1.3 分析及び評価
9.2 内部監査
9.3 マネジメントレビュー
9.3.2 マネジメントレビューへのインプット
10. 改善
10.1 一般
10.2 不適合及び是正処置
10.3 継続的改善
2-3 改訂規格の読み方

第3章 設計・開発でのISO9001の活用
    
8.3.2 設計・開発の計画     
8.3.3 設計・開発のインプット
    
8.3.4 設計・開発の管理―「検証」は忘れ物防止
    
8.3.4 設計・開発の管理―レビューは計画の価値を上げる機会     
8.3.4 設計・開発の管理―妥当性確認は会社としての承認
    
8.3.5 設計開発のアウトプット
    
8.3.6 設計・開発の変更


第4章 
建設分野の環境マネジメントシステムの活用  
4-1 ISO14001:2015の変更点    
6.1 リスク及び機会への取組み
    
6.1.2 環境側面    
6.1.3 順守義務    
6.1.4 取組みの計画策定    
6.2 環境目標及びそれを達成するための計画策定

4-2 会社業務における環境活動

第5章 
品質・環境統合マニュアル作成のポイント
 
5-1 統合マニュアルの目次例
5-2 「用語及び定義」の例
5-3 好ましくないマニュアルとはどんなものか

第6章 


第三者審査の受け方及び考え方
 
6-1 第三者認証制度の理解
6-2 望ましい審査の受け方
6-3 審査も変わる必要がある
6-4 会社の常識的な判断基準でよい
6-5 管理責任者と事務局のあり方

終章 
建設業のマネジメントシステムの今後
今後の方向性と展望
マネジメントシステム(MS)とは
実感することが重要

付録 
品質・環境統合マニュアルの例



あとがき

索引

はじめに

 1995年、我が国の建設業界でISO規格の認証が始まり、すでに20年の歳月が流れました。我が国の建設業では、認証を取得していることが入札条件にされるという危機意識から営業に不可欠な資格として急速に普及しました。特にISO9001は他の産業を抑え、最大の認証件数を誇っています。(図1 世界の認証件数は110万件超)

 ところが、多くの企業の認証維持年数が10年を超えた現在、建設業では品質にまつわる様々な不祥事が続発しています。2015年に発覚した「杭工事記録の偽装問題」は、これまで築いてきた建設業界への不信感をあおる社会的問題となりました。その他「大臣認定の偽装」「鉄筋の間違いやスリーブなど様々な施工ミスの発生」といった一連の事件にみられるように、形骸化したマネジメントシステムへの諦めや慣れが進む中、現場の実態とかけ離れた規格の運用実態が明らかになったのです。

 筆者は1993年から、建築業協会の品質システム小委員会のメンバーとして、建設業へのISO9001の導入や留意点を検討する勉強会に参加しました。1994年秋には、欧州4ヵ国の認定機関、認証機関、設計会社、建設会社の他にISO本部を訪問し、ISOの実態調査に参加する機会にも恵まれました。そして、1995年には香港国際空港ターミナルビル新築工事で体験し、帰国後認証審査を受審するなど、幸いにも比較的早い時期からISOに携わる機会を多く持つことができました。

 1994年の視察調査の際には、ISO本部の委員や訪問した数ヵ国の企業の担当者から「日本はすでにTQMが普及し、品質活動の改善が進んでいるのに、なぜその第一歩としてのISO9001を勉強する必要があるのか」「もし導入するのであれば、現行のシステムとISOの要求を比べて不足があればそれだけを補えばよい。規格に合わせて新しいシステムを作ると大変です」といった多くの助言を頂きました。ちなみに後者の指摘は、規格が発行されるたびにIAFがギャップ分析の重要性を推奨していることに通じます。

 ISOの導入は、日本では規格要求の主旨に対する理解を進めるよりも、認証取得の先行に伴い「欧州流の文書管理法」や「測量機器の校正証明書」など、これまでにはなかった管理のしくみができ、ISOコンサル業が乱立し、瞬く間に普及しました。規格に従ったシステムは目新しさがあったものの、手順書に従って定型の記録様式への書き写しなどの業務が増えました。同時に、その保管管理から「書類が多い」「ISOのために仕事が増えた」といった混乱に加えて、審査準備やその後の是正処置対応に追われたのです。このようなスタートが、その後の形骸化の原因になったと考えています。

 ISO形骸化の原因はほかにもあります。本来、認証を取得した企業が実務の中でどのように維持・運用して改善につなげるかが重要なのですが、これには大きな障害がありました。当初は、認証審査において「手順類の標準化、再発防止による品質管理の安定」に焦点が当たったことから、規格の要求通りでなければ、「適合とはいえない」という考え方が主流を占めていました。結果として、認証審査を無事に通り抜けるために、実際の業務とかけ離れた別のシステムを運用する必要に迫られたのです。また審査では審査員の指摘した通りにシステムを修正するため、回を重ねるたびに「金太郎飴のシステム」となり、今日に至っていると考えます。

 当然、組織活動の本質的な向上には、ほとんど役に立たなかったことから、認証組織の知恵で「ISOの適用範囲の縮小や限定、及び対象製品などを最小限に絞る」などの対策により、できるだけ認証維持への負担を減じる手法をとらざるを得なかったと思います。

 また、“品質”のあとで“環境”や“情報セキュリティ”、“労働安全衛生”など多くのマネジメントシステム(MS)が発行されました。これら複数のMSを維持するにあたって、多くの企業では共通の部分があるにもかかわらず、それぞれ単独にシステムを構築し、認証を取得し、維持してきました。

 このことは日本のみならず世界的な問題として「ISO技術管理評議会(ISO/TMB)」は複数のマネジメントシステム規格の整合化を目的に「専門諮問グループ(JTCG)」を2006年に設置しました。2007年から分野横断的な検討の結果、2012年に「ISO/IEC専門業務用指針 附属書SL」の「Appendix2(規定) 上位構造、共通の中核となるテキスト、共通用語及び中核となる定義」が制定されました。これに伴って、規格の構成が統一されたのです。今後、ユーザーである認証組織の利便性の向上が大いに期待されます。

 本書は、建設業の実務にどのように規格要求を当てはめていくかを柱に、形骸化の典型部分に焦点を当てました。品質・環境2015年版の規格箇条の要求をどのように考え、そして経営に一致した運用の効果を実感していただきたいという思いから、改善のポイントとして規格の意図を新たな観点から実務に適用できる可能性を示すことに注力しました。

 そのため規格本文の引用は一部にとどめ、規格要求の意図と企業活動に即した例を数多く挙げて説明しました。同時に、規格が求める「事業との一体化」「認証の結果に対する成果」を得るために、マネジメントシステム本来の目的である予防機能を強化し、形骸化したシステムからの脱皮を促す第三者審査の受け方も変えられることを意図しました。

 改訂規格への移行は、建設業のあるべきマネジメントシステム(MS)へと生まれ変わるチャンスでもあります。ISOが建設業界へ浸透して20年以上が経過した現在、これまでの流れを変えることは容易なことではありません。ISO再構築に向けた挑戦は、これまで長く築いてきたき企業風土そのものへの挑戦にもなります。

 本書がそうした読者の挑戦の一助になることを願って止みません。

2016年2月 

三戸部徹 

 

システム:ここで言うシステムとは、会社が事業のために決めているしくみのことで、ISOのシステムという意味ではない。
 
IAF:国際認定フォーラム(International Accreditation Forum, Inc.)のことで、ww適合性を認定する機関及び関連機関の国際組織。日本では公益財団法人日本適合性認定協会(JAB)及び日本マネジメントシステム認証機関協議会(JACB)がメンバーとなっている
 
ギャップ分析:IAFが規格の変更のたびに発行する文書で、組織のシステムと規格の差を事前に調べることを推奨している

 
TMB:ISO/IECの専門業務のマネジメント全般の責任を負い「ISO/IEC専門業務用指針」など規則などのメンテナンスを行う上位組織
 
専門諮問グループ(JTCG): 2006年に設置され、2007年から分野横断的な検討の結果、2012年に「ISO専門補足指針の附属書SL(規定)マネジメントシステム規格の提案」を策定した
 
ISO/IEC専門業務用指針:ISOが国際規格及び他の出版物を作成する上で従うべき基本的手順を定めた文書で、認証組織や企業等ユーザー向けの文書ではない
 
共通の中核となるテキスト:ISO/IEC専門業務用指針附属書SLに制定された「Appendix2(規定) 上位構造、共通の中核となるテキスト、共通用語及び中核となる定義」にマネジメントシステム規格の構成が規定されたため、改訂されたISO9001:2015及びISO14001:2015は同じ基本構成になった



本書におけるISO規格からの引用については、一般財団法人 日本規格協会の許諾を得て掲載している。





出版に寄せて

 

 三戸部さんは、当社マネジメントシステム評価センター所属の審査員として現在もご活躍いただいていますが、かねてから一貫して規格に対して様々な解釈の応用を試みられおり、審査の折には、これらを元にした噛み砕いたわかりやすい指摘をしていただいております。

 かつて審査部に在籍していた筆者の立場からすると、適用例についてはそれぞれ真意を確かめる必要があり、規格の解釈論も踏まえてディスカッションさせていただいた記憶があります。規格の解釈とその適用に「これで完璧」という結論はないので、時には議論が白熱し、尽きなかったこともありました。

 本書でも繰り返し指摘されているように、審査の目的を考えると、かつての型どおりの適合性だけを追求していた段階から、“組織に有効な指摘”をするにはどうしたらよいかという視点に移ってきています。本書の解説や、数多く紹介されている規格の適用例にもその一端を垣間見ることができます。どのような形で規格要求を適用していくかは“組織の裁量”とはいうものの、こうした適用例の情報は大いに参考になるのではないかと思います。なにより、これら一つ一つから「ISOを普及させたい。ISOを活用してほしい」という三戸部さんの熱い気持ちが伝わってくるように思います。

 また、本書には、2015年のISO9001/14001の規格改正の内容と併せ、これまで審査経験で積み重ねてこられた様々な見識が溢れんばかりに展開されています。斬新な考えは、かつてと変わっておらず、お読みになると、「こういう考えもできるのか」と“目から鱗が落ちる”思いを抱かれるかもしれませんし、反対にギャップを感じるものもあるかもしれません。このあたりは読者の会社の背景や受けとめ方にもよりますが、本書はシステム運用の道を切り開く、一つの見解として価値があると思います。

 本書が、マネジメントシステム有効活用の切り口となることを期待しております。

株式会社 マネジメントシステム評価センター

代表取締役社長 藤井 信二

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