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検証 電力ビジネス
勝者と敗者の分岐点

定価(税込)  1,944円

編著
サイズ A5判
ページ数 184頁
ISBNコード 978-4-526-07552-0
コード C3034
発行月 2016年03月
ジャンル ビジネス 環境

内容

4月から電力小売自由化がスタート!「原子力」「再生可能エネルギー」「ガス」自由化などエネルギーミックスに向けた展開とビジネスモデル像を、新規参入組の動向などをもとに検証する。30兆円の事業規模を巡る攻防を予測。新規ビジネス戦略立案のヒントを示す。

井熊 均  著者プロフィール

(いくま ひとし)

株式会社日本総合研究所

常務執行役員 創発戦略センター所長

1958年東京都生まれ。1981年早稲田大学理工学部機械工学科卒業、1983年同大学院理工学研究科を修了。1983年三菱重工業株式会社入社。1990年株式会社日本総合研究所入社。1995年株式会社アイエスブイ・ジャパン取締役。2003年株式会社イーキュービック取締役。2003年早稲田大学大学院公共経営研究科非常勤講師。2006年株式会社日本総合研究所執行役員。2014年常務執行役員。環境・エネルギー分野でのベンチャービジネス、公共分野におけるPFIなどの事業、中国・東南アジアにおけるスマートシティ事業の立ち上げなどに関わり、新たな事業スキームを提案。公共団体、民間企業に対するアドバイスを実施。公共政策、環境、エネルギー、農業などの分野で60冊の書籍を刊行するとともに政策提言を行う。

目次

はじめに 

パートⅠ 成功するビジネスと厳しいビジネス
第1章 成功しているエネルギービジネス
1 着実に普及するスマートハウス 
2 注目高まる日本版スマートシティ 
3 エコカープラットフォームを創ったハイブリッドカー 
4 FIT市場先行で収益を確保したメガソーラー事業 
5 成長するグローバルな再生可能エネルギー事業 
6 トータルサービスが勝負を分けるルーフトップ式太陽光発電 
7 国内をベースに成長する廃棄物発電事業 
8 成長する海外火力発電事業
9 自由化で拡大するエネルギーファイナンス 
コラム 日本の良さを知ろう 

第2章 厳しい状況にあるエネルギービジネス
1 ポジショニングが重要になる電力小売事業 
2 新たな枠組みを模索する送電事業
3 絞り込みが求められるバイオ燃料事業 
4 エコカーの将来ビジョンを待つ電気自動車 
5 岐路に立つクリーンディーゼル車(その他エコカー含む) 
6 自由化で期待高まるスマート機器 
7 バンドリングで価値を追求する高圧一括受電 
8 地道な取り組みが鍵となる国内風力発電
9 新たな展開が期待される電力需給調整事業 
10 継続する海外大規模スマートシティ市場 
11 IoTで再生する省エネサービス 
12 リプレースが鍵を握る原子力発電 
コラム 迷走止まない低炭素ビジネス 

第3章 今後の取り組みで評価が分かれるビジネス
1 日本型の付加価値を追求する電力ITサービス 
2 規制緩和で成長する小規模水力発電事業 
3 着実な普及が期待される燃料電池 
4 熱利用・燃料化を目指すバイオマス発電 
5 地方創生の鍵となる地域エネルギー事業 
6 長期的な視点が必要な蓄電池事業 
7 従来型資源と再エネ混在のエネルギー資源開発 
8 不確実さ含む国内火力発電事業 
9 維持・改修が必須の大型水力発電 
コラム 民の恣意が生む政策のブレ 

パートⅡ 成功のための事業戦略
第4章 事業を左右する5大要素
1 自由化政策 
2 国内外の需給動向 
3 再生可能エネルギー政策 
4 地球温暖化に関する国際議論 
5 技術開発の動向 
コラム 合成の誤謬を避ける 

第5章 成功のための10のポイント
1 政策通になる 
2 政策を使いこなす 
3 グローバル指向を持つ 
4 海外と日本の違いを押さえる 
5 顧客をつかむ 
6 提携で相乗効果を上げる 
7 将来の市場構造を読む 
8 「環境」は短期と長期の目線で評価する 
9 技術の進化を先取りする 
10 ITを活用する 
コラム エネルギー分野での将来フロンティア 

はじめに

 

2016年4月の電力小売全面自由化を前に、日本の電力市場は大変な盛り上がりを見せた。PPSの数は900近く(2016年3月1日時点)、小売事業者への参加者数は200近く(2016年2月23日時点)に達するなど、予想を超えた数の企業が電力市場に参入した。固定価格買取制度の下でのメガソーラーバブルを含めると、企業が電力市場にいかに高い関心を寄せているが分かる。

 電力業界の圧力などで止まっていた小売の全面自由化と再生可能エネルギーの大量導入政策は、東日本大震災で一気に動き出した。何百年に一度の災害を背景に、何十年に一度の変革が同時に進められたことで、電力市場への過大な期待が生まれた。本書を執筆している時点で、「2020年 電力大再編」は7刷を果たし、「続 2020年 電力大再編」も増刷となった。両書で心掛けたのは、過剰なまでに関心が高まった電力市場の姿をできるだけ冷静に示すことだ。読者の評価を得たのは、企業の参加意向が過熱する中で市場の行方に若干の不安を持っていた企業が多かったことを示しているのだろう。
 
ここに来て、不安が現実となることを予感させる事態が起こった。2016年2月、新電力の日本ロジテック協同組合が3月末で小売事業から撤退することを発表したのだ。利幅の薄い電気事業で安売り競争が続けば、撤退や大手による統合などが相次ぐ可能性がある。新規事業者は経済的な活力の源泉の一つだ。競争の結果淘汰が進むのは市場の常だが、志を持って船出た企業の一つでも多くが、成長のきっかけをつかみ生き残って欲しい。
 

本書はこうした認識の下、電力市場での事業を占うための一助となることを願って執筆したものである。第1章、第2章、第3章では、電力関連の事業を3つのカテゴリーに分け、成功の理由や課題などを整理した。もちろん、電力市場にはこれ以外にもビジネスモデルがあるが、本書で取り上げた30の事例だけを見ても、事業の成否を分ける一定の流れが見えてくる。事業の仕分けは筆者の認識によるものであり、読者の見解と異なる点や独断と評価される点もあろう。それらについては、電力市場の動向をできるだけ冷静に把握して欲しいとの願いゆえの仕分けであるとご理解いただければ幸いである。

 第4章では、電力市場の行方を占うに当たって必須となる5つのトレンドについて整理した。政策、資源価格、国際的な協議などと切っても切れない関係にある電力市場では、基本的な環境要件を把握することが重要である。

 第1章から第4章の内容を受けて、第5章では、電力市場で成功するための10のポイントについて述べた。
 
本書の内容が読者の事業展開の何らかの参考になれば幸いである。
 

本書は企画段階から日刊工業新聞社の矢島俊克氏にお世話になった。この場を借りて心より御礼申し上げたい。

 本書は、株式会社日本総合研究所の木通秀樹君、瀧口信一郎君、松井英章君、梅津友朗君とともに執筆した。多忙の中、各事業の調査・分析、執筆いただいたことに心より御礼申し上げる。

 最後に、筆者の日頃の活動にご指導ご鞭撻を頂いている株式会社日本総合研究所に心より御礼申し上げる。


2016年 早春


井熊 均

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