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おもしろサイエンス
匠の技の科学 ―材料編―

定価(税込)  1,728円

編者
サイズ A5判
ページ数 144頁
ISBNコード 978-4-526-07551-3
コード C3034
発行月 2016年03月
ジャンル ビジネス 機械

内容

日本が西洋以外では最も早く近代的な工業国となった要因の一つは、近代以前から蓄積されてきた伝統産業の匠の技にある。伝統産業の匠の技は現代の工業技術にも応用できるヒントを秘めている。匠の技の科学的解明にはいくつもの切り口があるが、本書では材料から匠の技を取り上げる。

京都工芸繊維大学 伝統みらい教育研究センター  著者プロフィール

執筆者



濱田 泰以   京都工芸繊維大学伝統みらい教育研究センター・センター長/工学博士(①~③、⑫、㉓、コラム)


浅田 晶久   浅田製瓦工場三代目/京都工芸繊維大学伝統みらい教育研究センター・特任教授/博士(学術)(㊱、㊲)

飯  聡    京都調理師専門学校・日本料理教授/ホスピタリティー産業振興センター・主任/京都工芸繊維大学伝統みらい教育研究センター・特任教授(㉝)

池坊 専好   華道家元池坊・次期家元/博士(学術)(㉞)

岩崎 政雄   陶芸家(コラム)

上芝 雄史   藤井製桶所・代表(④)

魚住 忠司   岐阜大学複合材料研究センター・特任准教授/博士(学術)(⑪)

遠藤 淳司   京都工芸繊維大学/博士(学術)(⑮~⑳、㉟)

岡  岩太郎  ㈱岡墨光堂・代表取締役(⑬、㉔、㉕)

小嶋 俊    小嶋商店(⑥)

後藤 彰彦   大阪産業大学デザイン工学部情報システム学科・教授/博士(工学)(㉙~㉛)

近藤 香菜   下出蒔絵司所(㉒)

佐藤 ひろゆき ㈲京壁 井筒屋佐藤・代表/京都工芸繊維大学伝統みらい教育研究センター・特任教授/博士(学術)(㊳、㊴)

塩野 剛司   京都工芸繊維大学材料化学系・准教授/工学博士(㊵)

柴田 勘十郎  御弓師/京都工芸繊維大学伝統みらい教育研究センター・特任教授(①~③、㉓)

下出 茉莉   関西大学大学院(㉑)

下出 祐太郎  京都産業大学文化学部京都文化学科・教授/下出蒔絵司所三代目/博士(学術)(⑮~㉒、㉟)

Porakoch SIRISUWAN   Rajamangala University of Technology Thanyaburi, Lecturer, Doctor of Philosophy(⑤)

杉本 卓也   ㈱KOYO熱錬・専務取締役/博士(学術)(㉜)

高井 由佳   大阪産業大学デザイン工学部情報システム学科・講師/博士(学術)(⑥)

多田 牧子   ㈱テクスト/京都工芸繊維大学大学院・非常勤講師/博士(工学)(⑧~⑩)

辻  賢一   金網つじ・代表/京都工芸繊維大学伝統みらい教育研究センター・特任教授/博士(学術)(㉙~㉛)

仁科 雅晴   ㈱仁科旗金具製作所・代表取締役/博士(学術)(㉗、㉘)

西村 浩樹   ARC EDU㈱・社長(⑦)

藤原 髙志   京都工芸繊維大学/元・丹後織物工業組合(⑫)

古川 貴士   ㈱菱健・代表取締役社長/博士(学術)(㉖)

吉川 貴士   新居浜工業高等専門学校機械工学科・教授/博士(工学)(⑭)

目次

はじめに


第1章 
竹・木材  

1  3層構造の京弓の材料選び

2  足かけ3年経た竹が京弓に使われる

3  京弓の外竹・内竹は振れば区別できる

4  桶・樽の輪竹は引張強度を常時保持できる

5  京うちわ製作の「もみ工程」における竹と水の関係

6  京提灯の美しい形を支える竹の骨

7  快適性を与える材料としての竹炭


第2章 
繊維・紙

8  縄文時代から現代までつながる組紐の歴史

9  美しい光沢をもつ絹糸の仕組み

10  現代でも利用される組紐・組物技術

11  組物技術を熱硬化性樹脂複合材料の引抜成形に応用

12  生糸の特性を活かした丹後ちりめん

13  美意識に培われた和紙の多様な使い分け

14  素材と道具が奏でる高級和紙「檀紙」


第3章 
塗料・接着剤

15  塗料にも接着剤にもなる漆
16  9000年に及ぶ漆の歴史は現在進行形

17  漆の色は精製工程と製法で変わる

18  漆は湿度を利用して乾燥させる

19  漆の艶を判別する熟練の職人技能
20  漆塗膜はわずかの厚みでも驚異の強度を示す

21  漆器の堅牢さを支える漆下地

22  接着剤として活用されている糊漆

23  弓の引き心地の良さを支える天然接着剤

24  表具に用いる伝統的接着剤はなぜ使われ続けるのか

25  掛軸の接着を促進する叩打技術

26  防汚糊が京友禅染の「はんなり度」に及ぼす影響


第4章 
金属材料  

27  旗頭は打たれて伸びる金属で表現する

28  旗頭の組立は熱せられた金属の伸びを抑えて接合

29  豆腐すくいの針金の硬さはみな同じ?

30  豆腐にやさしい豆腐すくいの形

31  熟練者の作る豆腐すくいが腐食しにくいのはなぜか

32  平坦平滑な金属断面を作り出す熟練者の研磨作業

33  刺身の美味しさを決める包丁の研ぎ方

34  いけばなを良好に保つ鋏の魅力

35  蒔絵に使用する金属粉には何百もの種類がある

第5章 
土・焼き物

36  京瓦の最高峰「本ウス」に使われる粘土と仕上げ方法

37  京瓦の表面の美しさは磨きによって得られる

38  身近な素材「土壁」に秘められた四つの魅力

39  土壁はなぜサビ壁になるのか? なぜ強いのか?

40  土壁・瓦のはたす調湿・防水機能




Column
梅花皮模様は世界で一つ




索 引

はじめに

伝統工芸品は、美しい、使いやすい、持っていると心が落ち着く、そして人々に薦めてみたいものであります。長年人々に愛されてきたこれらの製品の良さは、それを作る匠の技によるものです。本書は、伝統の技を様々な角度から分析し、わかりやすく解説したものであります。その技は、材料選び、道具の工夫、ものづくりの現場における動作、目配り、力の入れ方、そしてでき上がりの評価と、一連の流れに、すべての段階に必要であります。そのすべてを身に着けたのが〝匠〟であります。

 本書においては材料の観点から匠の技を述べています。伝統工芸品で使われる材料は多岐にわたります。その一番に挙げられるのは、木、竹でありましょう。人と永きにわたり付き合っている材料であります。本書では、それらが弓、桶、提灯、うちわとして使われていることを説明しています。次いで繊維、紙、漆、糊、そして金属材料へと展開してまいります。繊維には、縄文時代から残る組紐や、美しい絹糸、ちりめん、さらに和紙があります。漆は製品の表面に塗られ、その美しさを表現してくれます。糊は接着剤としての使い方でありますが、その作り方には奥深いものがあります。金属材料においては旗金具、金網、鋏と我々の日常にある工芸品、製品を形作っています。最後に、最も永いお付き合いの材料が土であります。土壁、瓦、陶器とその利用価値は大きいものがあります。

 匠がどんな材料を選び、どのように加工していくのかなど、興味が尽きることはありません。匠の技を十分にお楽しみいただき、伝統工芸品のもの知りになって下さい。

 京都工芸繊維大学では2005年に伝統みらい教育研究センターを立ち上げ、「伝統産業に内在するものづくりの暗黙知を形式知化し、日本のものづくりに寄与し、みらいを切り拓く」ことを目的に活動を行ってまいりました。それがご縁で、多くの伝統工芸のものづくりの匠の方々と共同で研究・活動することができました。彼らの身体の中には、ものづくりのすべての段階のコツが染み込んでおり、それを活用しつつ、その場その場に応じて勘を働かせて工芸品を産み出しております。一人で企画─設計・開発─材料調達─製造─検査とすべてをこなす体力と知力があります。そして彼らは雄弁であります。技術論になりますと多くを語られます。さらにその話はおもしろい。これが匠であります。読者の皆さんがお持ちのイメージとは少し離れたものではないでしょうか?

 匠の方々との共同の活動が本書には詰まっています。楽しみながらお読み下さい。そして、できますれば、ものづくりの現場を訪れてその神髄にお触れ下さい。

 本書をまとめるに当たりまして、執筆者の皆様に厚くお礼を申し上げるとともに、日刊工業新聞社出版局書籍編集部の森山郁也様にはその忍耐に深く感謝し、実際の編集作業を買って出ていただきました京都工芸繊維大学の遠藤淳司氏に謝意を申し上げます。皆様がいなければ本書は生まれなかったことでしょう。


京都工芸繊維大学伝統みらい教育研究センター 

センター長 濱田 泰以

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