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今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしいバイオミメティクスの本

定価(税込)  1,620円

編著
編者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-07527-8
コード C3034
発行月 2016年03月
ジャンル ビジネス 機械

内容

バイオミメティクスとは、動物や昆虫の動きや特徴を模倣して技術に活かすことである。生物のどんなところをどう技術に活かせるか、やさしく網羅的に紹介。小型飛行ロボット、空気抵抗の少ない乗り物の構造や表面、粉末状の接着剤など、環境にやさしく生活を快適にするヒントが満載。

下村政嗣  著者プロフィール

(しもむら まさつぐ)
1954年福岡市生まれ。九州大学工学部合成化学科を卒業、大学院修了後に助手、東京農工大学工学部助教授、北海道大学電子科学研究所教授、同ナノテクノロジー研究センターセンター長、理化学研究所フロンティア研究システムチームリーダー(兼任)、東北大学多元物質科学研究所教授、同原子分子材料科学高等研究機構主任研究者、千歳科学技術大学教授。工学博士、北海道大学名誉教授、東北大学名誉教授。

高分子学会バイオミメティクス研究会  著者プロフィール

●編集グループ
高分子学会バイオミメティクス研究会
大学、博物館、研究機関、企業、科学政策機関などからの問題提起と意見交換を行うプラットフォームとして、高分子学会と関連学協会との連携のもとに2011年に発足。バイオミメティクス国際標準化の国内審議機関。

文部科学省科学研究費新学術領域
「生物規範工学」
自然史学と情報科学で構築した「バイオミメティクス・データベース」により生物から工学への技術移転を行い、環境政策の観点から技術体系を創出するとともに、生物学と工学に通じた人材を育成する時限プロジェクト。

目次

はじめに

第1章 生物の形や仕組みはテクノロジーにいかせる
1 バイオミメティクスがある日常「ナイロン、マジックテープ、新幹線」
2 古くて新しいバイオミメティクス「歴史はダ・ヴィンチからはじまる」
3 バイオテクノロジーとはちがう!「生物の生き残り戦略からの技術移転」
4 生物模倣技術から生物規範工学へ「技術革新をもたらすパラダイム変換」
5 バイオミメティクスは世界を救う?「経済と環境の両立」

第2章 生物表面の多機能性や高機能性に学ぶ
6 ハスの葉の超撥水性を塗料や織物に応用する「テフロン不用!」
7 生物の粘液分泌能を模倣した機能材料「離漿現象」
8 昆虫はMEMS技術のヒントの宝庫!「フナムシに学ぶ流体操作」
9 カタツムリの殻から学んだ建築材料「雨でキレイに! ナノ親水技術」
10 ガの眼を模倣した低反射の光学材料「モスアイ構造」
11 チョウの翅を真似た機能性材料「撥水性・鮮やかさを備えた衣服をまとう」
12 鮮やかな生物の色は退色に強い「構造色と色素色の違い」
13 構造色が可逆的に変化する材料の開発「変色する仕組み」
14 モルフォチョウの不思議に迫る「ナノテクノロジーが創る美」
15 ファンデルワールス力って何?「接着剤がいらない接合材料」
16 気泡を利用したクリーンな接着方法「空気が接着剤になる」
17 凸凹なのにツルツル滑る「ムシも登れないフィルム」
18 雨の日も安定して動けるキリギリスの脚「まるでタイヤ?」
19 サメ肌のパターンを飛行機の表面に取り入れると…?「ざらざらした構造がポイント」
20 環境に優しい防汚塗料「海の生物の表面から学ぶ」
21 電子顕微鏡のための宇宙服「高真空下で生命維持させるNanoSuit?」
22 バイオミネラリゼーション「硬くて強いアワビの殻」
23 粉末のようにふるまう液体「リキッドマーブルの不思議」
24 水の中でもちゃんとくっつく「環境に優しい接着剤」

第3章 情報の受信と発信の仕組みに学ぶ
25 コウモリとイルカに学んだバイオソナーシステム「音でものを見る」
26 危険、近づくな! 振動や音のサイン「振動や音による行動制御」
27 音の方向を知る仕組み「ムシの耳と人間の耳」
28 微弱な風で気配を探る「コオロギに学ぶ気流センサ」
29 100キロ先の情報をつかむタマムシの赤外線センサ「冷却不要の赤外線センサの開発へ」
30 ハエの眼を持つヘリコプタ「複眼で飛行制御」
31 月明かりだけでも道に迷わない仕組み「ムシは偏光がわかる」
32 虫の求愛の仕組みからセンサ技術が生まれる「ガ類の優れた嗅覚メカニズム」
33 アリは匂いで家族がわかる「化学環境センシング」
34 自然生態系のシステムに学ぶ「植物と昆虫の攻防」
35 人工膜で味見したら?「味の数値化」

第4章 生物の構造とメカニズムに学ぶ
36 微風でも滑空できるトンボの翅「断面構造の秘密」
37 羽ばたいて飛べ! 昆虫ロボットを作る「羽ばたき翼と回転翼」
38 世界が認める新幹線の秘密「鳥に学ぶ騒音防止対策」
39 ゴカイの遊泳制御メカニズム「前後左右、自在に進める機構」
40 動物の動きは次世代ロボット技術のヒントが満載!「ドイツのロボット会社の取り組み」
41 分子の自己集合がもたらす基本構造「二分子膜の材料化」
42 幹細胞分化をコントロールする力学場「機械的環境の模倣」
43 滑らかに動く関節の構造「超低摩擦な関節軟骨」

第5章 生物の設計とものつくりに学ぶ
44 人間のものつくりと生物のものつくり「進化適応に学ぶものつくりとは?」
45 自己組織化って何?「生物のものつくりの本質」
46 自己組織化が創る多機能性「セミの翅にもモスアイ構造?」
47 自己組織化は好い加減さの起源?「セミとガを比べてわかったこと」
48 ナノテクノロジーによるものつくり「厳密に作り込まないボトムアップ方式」
49 自己組織化によるものつくり「持続可能な社会へのパラダイムシフト」
50 自己組織化によるバイオミメティクス「ハニカムフィルムで水滴操作」

第6章 生物の相互作用やシステム、生態系から学ぶ
51 宇宙空間で生き残れる生物がいた!「乾燥耐性の仕組み」
52 暗闇のエネルギー産出系「環境適応と多様性」
53 生物の体内構造をインフラの設計に取り入れる「カイメンに学ぶフェイルセーフ」
54 バイオミメティック・アーキテクチャ「砂漠のアリ塚はとっても快適」
55 ぶつからないイワシ、渋滞しないアリ「交通手段への応用」

第7章 様々な分野や学問が融合するバイオミメティクス
56 博物館が持つデータをどのようにいかすか?「自然史博物館はバイオミメティクスの宝庫」
57 オントロジー・エンハンスド・シソーラスって何?「工学者の発想を言葉で支援する」
58 生物顕微鏡画像から新発明 「技術者の発想を画像で支援する」
59 生物から技術矛盾解決のヒントを探る「バイオTRIZって何?」
60 特許調査にみるバイオミメティクス「多岐にわたる応用」
61 工業製品の剛性向上・軽量化とその標準化「生物の順応的成長に学ぶ」

第8章 バイオミメティクスとこれからの社会
62 バイオミメティクスはなぜイノベーションか?「欧州で研究活発化」
63 ステークホルダーは誰だ?「社会実装に向けて」
64 心豊かな暮らしを支えるバイオミメティクス「有限な地球環境を大切に」
65 日本の現状と世界との距離「後塵を拝する日本」
66 インダストリー4.0とバイオミメティクス「自律分散システムと生態系バイオミメティクス」

【コラム】
①バイオミミクリーとバイオミメティクス
②チョウだけじゃない、鱗粉の秘密
③ミミクリーのミメティクス|昆虫の擬態の巧妙さ
④Fin Ray Effect? 魚の鰭に学ぶ
⑤寺田寅彦と日本人の自然観|自己組織化研究の先駆者
⑥フグが作るミステリーサークル
⑦情報科学が繋ぐナノテクノロジーと生物学
⑧だから、博物館に行こう

参考文献
執筆者一覧

はじめに

 2015年5月、“バイオミメティクス”の国際標準が発効しました。“バイオミメティクス”って、舌を噛みそうな言葉ですね。“生物模倣”と書くと堅苦しそうですが、実は“生物に学ぶ”という古くからある考え方で、鳥を観察して飛行機の設計図を引いたレオナルド・ダ・ヴィンチにまで遡ると言っても過言ではありません。合成繊維ナイロンは“蚕(カイコ)”が紡ぐ絹糸を真似、マジックテープで知られるベルクロ(面状ファスナー)は植物の種である“ひっつきむし(オナモミ)”にヒントを得、ウレタン樹脂製の台所スポンジは海の生物“カイメン”を模倣したものです。そんなに古くから私たちの身のまわりにあるバイオミメティクスなのに、なぜ、今さら国際標準化が必要なのでしょう。
 ボン大学の植物園では、ハスの葉の表面に形成されるナノメータからマイクロメータに至る階層的な微細構造が超撥水性をもたらすことから、ロータス効果という登録商標のもとにセルフ・クリーニング(自己洗浄)効果を有する塗料を開発しました。メルセデス・ベンツは、“ハコフグ”の骨格構造からデザイン最適化を行うことでバイオニック・カーを開発しました。ルフトハンザドイツ航空では省エネ効果を図るために、エアバスA340の機体表面に“サメ肌リブレット”という微細な構造を施し、耐久性などの実験を始めました。このような技術潮流と産業界の動向を背景にして、2011年、ドイツ政府はバイオミメティクスの国際標準化を提案したのです。
 2007年に発行されたドイツ政府の「生物多様性に対する国家戦略」では、動植物をヒントにすることでロータス効果のような革新的技術が開発されることに言及しています。また、2009年に提言された「日本経団連生物多様性宣言」においても、「自然の摂理と伝統に学ぶ技術開発を推進し、生活文化のイノベーションを促す」ことの重要性が説かれています。2010年にサンディエゴ動物園は、ダ・ヴィンチ・インデックスという指標を用いて、バイオミメティクスが様々な産業分野において技術革新をもたらし、「15年後には年間3000億ドルの国内総生産、160万人の雇用をうむ」という経済予測をしています。
 生物多様性とは、長い時間をかけて多様な環境において進化適応した結果であり、壮大なるコンビナトリアル・ケミストリーだと考えることができます。つまり、生物多様性に学ぶバイオミメティクスとは、生物の生き残り戦略にヒントを得て人類の未来を築くこと、即ち、持続可能性に向けたパラダイム変換と技術革新を意味しています。
 文部科学省は平成24年度から5年間にわたる「生物多様性を規範とする革新的材料技術」(略称:生物規範工学)という新しい学術領域プロジェクトを発足しました。我が国初となる博物学、理学、工学、農学、医学、環境学、情報学、経済学などの異分野連携プロジェクトです。本書は、「生物規範工学」プロジェクトの成果を含め、産学連携のプラットフォームである高分子学会バイオミメティクス研究会の編集のもとに、今、世界が注目しているバイオミメティクスについて解説いたしました。
2016年3月
下村 政嗣

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