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技術大全シリーズ
アルミニウム大全

定価(税込)  4,104円

編著
サイズ A5判
ページ数 380頁
ISBNコード 978-4-526-07515-5
コード C3057
発行月 2016年03月
ジャンル 金属

内容

自動車の燃費競争が激しさを増す中、軽量化材料として、比重が鉄の3分の1と軽い、アルミニウムに注目が集まっている。アルミは以前からエンジンやトランスミッションに使われていたが、最近は、ドアやサイドフレームなどの外装部品にも採用が進んでいる。また自動車以外にも航空機や鉄道車両など、今後成長が期待される産業においても欠かせない材料でもある。本書では、「プロセス(鋳造、加工成形、熱処理など)」、「材料特性」、「微細組織」という、アルミニウム各種を理解する上で必要な三つの視点により、基礎と実際の材料技術を丁寧に解説していく。

里 達雄  著者プロフィール

(さと・たつお)
1974年東京工業大学工学部金属工学科卒業、1976年東京工業大学大学院金属工学専攻修士課程修了、1979年同大学大学院博士課程修了、工学博士。1979年に東京工業大学助手、1988年英国マンチェスター大学客員研究員、1991年東京工業大学工学部金属工学科助教授、
1999年教授、2012年東京工業大学精密工学研究所教授。2015年東京工業大学名誉教授。
日本アルミニウム協会顧問、(株)神戸製鋼所アルミ・銅事業部門顧問。2009年軽金属学会会長。
主な著書:「材料技術基礎」(実教出版)、「軽合金材料」(コロナ社)。
●第6章執筆担当
小椋 智(おぐら・とも)
2002年東京工業大学工学部金属工学科卒業。2004年東京工業大学大学院理工学研究科材料工学専攻修士課程修了。2005年University of Oxford Department of Materials Academic Visitor。2007年東京工業大学大学院理工学研究科材料工学専攻博士課程修了(博士(工学))。2007年東京工業大学大学院理工学研究科研究員。2008年大阪大学大学院工学研究科マテリアル生産科学専攻助教。2015年同大学准教授。
●第7章執筆担当
難波江 元広(なばえ・もとひろ)
1979年京都大学工学部工業化学科卒業、同年古河電気工業株式会社入社。古河アルミニウム株式会社技術研究所、古河スカイ株式会社技術部、株式会社UACJ技術開発研究所などを経て、2014年一般社団法人日本アルミニウム協会。2016年3月現在、同協会理事。

目次

はじめに

第1章 アルミニウムの基礎
1.1 アルミニウムの発展
1.2 アルミニウムとは
1.3 アルミニウムの用途例および需要
1.4 純アルミニウムの性質―アルミニウムの基礎特性
1.5 アルミニウム合金と微細組織
1.6 相変化・構造変化の基礎―プロセスと微細組織

第2章 材料の組織解析法・評価法
2.1 ミクロ組織・ナノ組織解析法
2.2 機械的試験法

第3章 アルミニウム合金の溶解・鋳造
3.1 溶解・鋳造の基礎
3.2 アルミニウムの溶解・鋳造プロセス
3.3 鋳造技術―アルミニウムのプロセス
3.4 鋳塊ミクロ組織および鋳塊割れ―
3.5 鋳物・ダイカストのプロセスとミクロ組織
3.6 特殊鋳造

第4章 アルミニウム合金の塑性加工と焼なまし
4.1 各種塑性加工―アルミニウムのプロセス
4.2 加工硬化および加工組織
4.3 回復および再結晶
4.4 回復・再結晶の速度論
4.5 結晶粒成長
4.6 回復・再結晶と固溶元素および析出粒子
4.7 変形集合組織および再結晶集合組織
4.8 延性(伸び)と加工硬化率n値の関係

第5章 アルミニウム合金の時効熱処理
5.1 アルミニウム合金の熱処理
5.2 アルミニウム合金の時効熱処理の基礎現象
5.3 時効硬化型アルミニウム合金の析出過程と時効硬化
5.4 析出組織制御と熱処理

第6章 アルミニウム合金の溶接・接合
6.1 アルミニウム合金の溶接・接合の基礎
6.2 溶融接合(溶接)
6.3 ろう接
6.4 固相接合
6.5 異材接合
6.6 機械的接合、接着

第7章 アルミニウム合金の表面科学
7.1 表面科学・表面処理の基礎
7.2 化成処理
7.3 陽極酸化処理
7.4 腐食挙動

第8章 アルミニウム合金の工業材料と性質
8.1 アルミニウム実用合金と高機能化
8.2 代表的実用合金の特徴と標準的性質
8.3 アルミニウム合金の選定指針
8.4 先進アルミニウム合金の研究
8.5 アルミニウム合金のリサイクル・環境負荷

索引

はじめに

 材料は生きている、といわれる。それは時間とともに、また、環境に依存して材料は変化することを意味している。材料の示す様々な性質や挙動は決して固定的なものではない。従って、材料を深く理解し、その上で活用することが重要である。鉄や銅などの金属材料を人類は紀元前から利用しており、長い歴史をもつが、まだ、十分な理解に至っている訳ではなく、現在でも次々と新しいことが出現している。アルミニウムは1886年に電解製錬法によって工業的生産基盤ができあがり、ようやく本格的に利用されるようになった新しい金属材料である。今後の大いなる発展が期待される材料であるといえる。
 さて、生きているといわれる材料の内部では常に何らかの変化がおこっている。それらを理解し、最適に制御し、社会に活かすためには材料内部のミクロレベル、ナノレベルの現象を把握することが必要である。近年、エネルギー効率の増大や資源枯渇問題などの点から軽量金属材料が注目され、ニーズが急速に高まっている。とりわけ、アルミニウムはその優れた特性から世界的に需要が増大している。特筆すべき特性として、鉄や銅の約1/3の軽さという軽量性、合金化と熱処理による比強度(強度/密度)の飛躍的な増大、鋳造や塑性加工など多岐にわたる優れた成形性、そしてリサイクルの顕著な有効性などをあげることができる。
 本書では、アルミニウムおよびその合金を理解するために、3つの視点から見ることとしている。すなわち、「製造プロセス」、「微細組織」、「材料特性」である。これらは相互に密接に関連し、より深い理解に資する重要な要素と考えたからである。製品や素材をつくるためには製造プロセスが基本であり、同時に製造プロセスは単に形状付与のためだけでなく、ミクロ・ナノ組織を制御する要素でもある。また、ミクロ・ナノ組織の変化によって力学的特性や物理的・化学的特性等が変化する。逆に、優れた材料特性を引き出すためにはミクロ・ナノ組織の最適化が重要であり、そのために製造プロセス条件を最適にする必要がある。
 上記の3つの視点を踏まえ、本書は8章で構成されている。第1章では、「アルミニウムの基礎」を、第2章ではミクロ・ナノ組織の解析や材料評価のための「組織解析法・評価法」を述べ、続いて、実際の生産工程での流れを考慮し、第3章では「溶解・鋳造」、第4章では「塑性加工と焼なまし」、第5章では「時効熱処理」を取り上げている。さらに、第6章ではものつくりに不可欠の「溶接・接合」を、第7章では「「表面科学」を扱っている。第7章では、腐食挙動、耐食性も重要項目として含んでいる。最後の第8章では実用工業材料を知るために、展伸材および鋳物・ダイカストについて主要な材料特性や挙動を「工業材料と性質」としてまとめ、さらに材料の選定指針についても述べている。また、先進材料として最新のトピックスについても紹介している。なお、第6章は大阪大学の小椋智氏が、第7章は日本アルミニウム協会の難波江元広氏がそれぞれ執筆している。お二人ともこの分野のエキスパートである。本書は上記の視点を踏まえ、基礎現象と実用材料特性とを融合させており、大学や工業高校・高専の材料系、機械系、土木系、建築系、電気系の学生や研究者に活用できるように配慮してある。また一方で、企業等で開発・設計・製造・保守などに関わる現場技術者や研究者にも役立つ情報を多く盛り込んである。
 本書をまとめるにあたり、多くの方々のご協力ならびにデータのご提供をいただいた。とりわけ、日本アルミニウム協会、軽金属学会、日本鋳造工学会には多大なご協力とご理解をいただいた。さらに、先人の知見や貴重なデータも活用させていただいた。また、長年、身を置いていた東京工業大学の研究室には貴重なデータを活用させてもらった。ここに深甚なる謝意を表する。
 最後に、出版にあたり、日刊工業新聞社出版局の阿部正章氏には多大なご配慮とご支援をいただいた。ここに深く感謝申し上げる。本書がアルミニウムおよびその合金について理解を深める一助となることを願っている。
平成28年3月
里 達雄
(東京工業大学名誉教授)

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