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よくわかる
炭素繊維コンポジット入門

定価(税込)  2,376円

著者
サイズ A5判
ページ数 224頁
ISBNコード 978-4-526-07489-9
コード C3043
発行月 2015年12月
ジャンル 化学

内容

航空機や自動車産業などで活用が進む軽くて強い・硬い材料である炭素繊維コンポジットについて、豊富なデータや機構図を用いて基礎技術をわかりやすく解説。応用例や力学的・機能的特性、成形加工方法なども詳述する。導入活用に関心があるビギナーに向けて図解で説く。

平松 徹  著者プロフィール

(ひらまつ とおる)

1968年 京都大学大学院理学研究科修士課程修了

1968~2004年 東レ㈱:炭素繊維、炭素繊維中間基材、炭素繊維複合材料に関する研究、技術開発、技術戦略企画、技術マーケティングに従事

2005~2011年 科学技術振興機構(JST):「さきがけ」研究プロジェクト「生命現象と計測分析」領域技術参事

2012年~現在 平松先端材料事務所:技術コンサルタント

[著書]「トコトンやさしい炭素繊維の本」、日刊工業新聞社、(2012年)

[受賞]1993年度 高分子学会賞(技術)「超高強度炭素繊維の開発」
    
2012年度 日本化学会化学技術賞「軽量航空機用複合材料の実用化」

目次

はじめに

第1章 炭素繊維の概要
1 炭素繊維の種類と特徴
1.1 炭素繊維の種類
1.2 炭素繊維の特徴
2 炭素繊維の製造方法と微細構造
2.1 PAN系炭素繊維の製造方法
2.2 PAN系炭素繊維の微細構造
2.3 ピッチ系炭素繊維の製造方法
2.4 ピッチ系炭素繊維の微細構造
3 炭素繊維の力学的特性
3.1 炭素繊維の力学的特性の他素材との比較
3.2 炭素繊維の理論強度・弾性率と実測値
3.3 炭素繊維の性能の向上技術
4 炭素繊維の機能的特性
5 炭素繊維の試験方法
6 炭素繊維の特性と品種構成
6.1 PAN系炭素繊維の特性と品種構成
6.2 ピッチ系炭素繊維の特性と品種構成

第2章 炭素繊維コンポジットの概要
1 炭素繊維コンポジットの種類
1.1 複合材料(コンポジット)とは
1.2 炭素繊維コンポジットの種類
2 マトリックス樹脂の種類と特徴
2.1 マトリックス樹脂の種類
2.2 熱硬化性マトリックス樹脂の特徴
2.3 熱可塑性マトリックス樹脂の特徴
3 炭素繊維強化プラスチックの力学的特性
3.1 炭素繊維強化プラスチックの代表的な力学的特性の種類
3.2 炭素繊維強化熱硬化性プラスチック(CFRP)の力学的特性
3.3 炭素繊維強化熱可塑性プラスチック(CFRTP)の力学的特性
4 炭素繊維強化プラスチックの機能的特性
4.1 熱・電気的特性
4.2 化学的特性
5 炭素繊維強化プラスチックの試験方法
6 炭素繊維強化プラスチック部材の設計
7 炭素繊維中間基材の種類と製造方法
7.1 炭素繊維中間基材の種類
7.2 ドライ中間基材
7.3 樹脂含浸中間基材
7.4 中間基材の試験方法
8 炭素繊維強化プラスチック部材の成形方法
9 サンドイッチパネルの成形方法
10 成形品の2次加工
10.1 機械加工
10.2 接合
11 成形品の検査・品質保証
12  C/Cコンポジットの製造方法と特徴・用途
13 炭素繊維コンポジットの用途の概観
13.1 炭素繊維コンポジットの特徴と用途
13.2 炭素繊維強化熱硬化性プラスチック(CFRP)の応用例
13.3 炭素繊維強化熱可塑性プラスチック(CFRTP)の応用例
13.4 その他の複合材料としての応用例

第3章 産業用途への応用
1 産業用途への応用の概観
2 土木・建築分野/耐震補強用途への応用
2.1 炭素繊維シートを用いる耐震補強工法
2.2 CFRP板を用いる耐震補強工法
2.3 炭素繊維シート複合パネルを用いる耐震補強工法
3 土木・建築分野/軽量建材用途などへの応用
3.1 CFRP立体トラスへの適用
3.2 CFRP軽量屋根材への適用
3.3 鉄道高架橋用軽量高欄への適用
3.4 その他の土木・建築用途への適用
4 一般産業機械分野/ロール、ロボットハンド、X線機器用途への応用
4.1 ロールへの適用
4.2 ロボットハンドへの適用
4.3 X線撮影機器への適用
5 エネルギー分野/風力発電、回転胴、フライホイール用途への応用
5.1 大型風力発電機への適用
5.2 小型風力発電機への適用
5.3 ウラン濃縮回転胴への適用
5.4 スーパーフライホイールへの適用
6 エネルギー分野/高圧送電線、海底油田用途への応用
6.1 高圧送電線への適用
6.2 海底油田への適用
7 輸送機器分野/自動車用途への応用
7.1 自動車用途への応用の歩み
7.2 レーシングカーへの適用
7.3 スーパーカーへの適用
7.4 高級自動車への適用
7.5 汎用自動車への適用
7.6 CFRP製部材の低コスト成形技術
7.7 力学的特性が高いCFRTP製部材の成形技術
7.8 最近の開発状況
7.9 圧縮天然ガス(CNG)自動車への適用
7.10 電気自動車への適用
7.11 燃料電池車への適用
8 輸送機器分野/列車・船舶用途への応用
8.1 鉄道車両への適用
8.2 船舶への適用

第4章 航空・宇宙用途への応用
1 大型旅客機への応用
1.1 大型旅客機への応用の歩み
1.2 CFRP構造試作・運用試験
1.3 2次構造部位への適用
1.4 1次構造部位への適用
1.5 エアバスA380への適用
1.6 ボーイング787への適用
1.7 エアバスA350 XWBへの適用
1.8 ボーイング777Xへの適用
2 小型旅客機、ヘリコプタへの応用
2.1 国産リージョナルジェットMRJへの適用
2.2 ホンダジェットへの適用
2.3 ヘリコプタへの適用
3 実験機、ドローンへの応用
3.1 ボイジャーへの適用
3.2 ソーラー・インパルスへの適用
3.3 電気飛行機への適用
3.4 小型無人電動ヘリコプタ(ドローン)への適用
4 ジェットエンジンへの応用
5 ロケット、人工衛星、宇宙ステーションへの応用
5.1 ロケットへの適用
5.2 人工衛星への適用
5.3 宇宙ステーションへの適用
6 電波望遠鏡への応用

第5章 スポーツおよび日常生活用品用途への応用
1 スポーツ用具への応用
1.1 スポーツ用具への応用の歩み
1.2 釣竿への適用
1.3 ゴルフシャフトへの適用
1.4 テニスラケットへの適用
1.5 その他のスポーツ用具への適用
2 日常生活用品への応用
2.1 ノートパソコン、カメラなどのハウジングへの適用
2.2 その他の日常生活用品への適用
3 介護用品への応用

第6章 炭素繊維の新しい技術動向
1 炭素繊維の展望
1.1 炭素繊維使用による環境負荷低減への期待
1.2 炭素繊維の需要量の大幅拡大
2 炭素繊維の課題と新しい技術動向
2.1 炭素繊維の生産能力の増強
2.2 炭素繊維の製造コストの低減技術の開発
2.3 炭素繊維コンポジットの大量低コスト成形技術の開発
2.4 炭素繊維および炭素繊維コンポジットの性能向上技術の開発
2.5 炭素繊維のリサイクル技術の開発

索引

はじめに

 

炭素繊維の本格的商業生産が1971年に開始されてから、ほぼ45年が経過した。その間に炭素繊維の応用はスポーツ用途から始まり、次いで航空・宇宙用途、さらに産業用途へと発展し、2014年における全世界における使用量は5万トンを超えるまで大きく拡大した。

 これは、炭素繊維複合材料(コンポジット)の力学的特性が他素材に比較して非常に高く、適用部材の軽量化に大きな効果を発揮することが最大の理由である。さらに、炭素繊維コンポジットは高い力学的特性に加えて耐腐食性が高い、熱伝導性が高い、熱膨張率が小さく寸法安定性が高い、振動減衰性が高いなどいくつかの優れた機能的特性を有し、これらの高い力学的特性と機能的特性をうまく組み合わせた用途開発が行われてきたことが使用量の拡大に寄与した。

 また、炭素繊維コンポジットの基本となる一方向に揃えた繊維で補強された一方向コンポジットは、繊維軸方向には高い特性を有するが、繊維軸に対して直角方向は特性が低い異方性を示す。この一方向コンポジットを繊維軸の角度を変えて積層する工夫により、軽量かつ多方向に必要な力学的特性を備えた部材の設計・製作が行われたことも使用量の拡大に寄与している。

 炭素繊維は、輸送機器の軽量化による燃費向上、CO2排出量の削減など、時代の要請である省エネルギー・環境負荷低減の切り札となる存在として期待がもたれている。また、炭素繊維は発明・開発・工業化、およびその後の高性能化などにおける日本の寄与が非常に大きく、世界の炭素繊維使用量の70%を日本の炭素繊維メーカーが供給している。炭素繊維は、日本が世界をリードする注目の先端材料である。

 今後、ますます炭素繊維の応用および炭素繊維や中間基材などの開発・製造に従事する技術者が増加することが期待される。本書は、このような技術者の入門書として役立つことを念頭に置いて、より具体的なイメージを持って理解しやすいように図表や写真を多用した。

 本書では第3章~第5章で、産業用途、航空・宇宙用途、スポーツ・日常生活用途において開発・生産された炭素繊維コンポジットの応用事例を取り上げ、炭素繊維コンポジット製部材の構造、成形方法、炭素繊維適用の効果などについてできるだけ幅広く詳細に記述した。

 第2章では、炭素繊維コンポジット応用の基礎として、炭素繊維コンポジットの力学的特性および機能的特性の基礎データを他素材と比較して示すとともに、炭素繊維コンポジット製部材を作製するための要素技術であるマトリックス樹脂、中間基材、成形方法、2次加工方法などについて記述した。

 第1章では、炭素繊維コンポジット特性理解の基礎として、炭素繊維の力学的特性および機能的特性の基礎データを他素材と比較して示すとともに、炭素繊維の製造方法や繊維微細構造、力学的特性が非常に高いメカニズムなどについて記述した。

 第6章では、炭素繊維および炭素繊維コンポジットの展望および課題と新しい技術動向に触れた。

 できるだけ多くの応用事例を紹介することや理解しやすい内容とするため、多くの文献や資料を参考にさせていただき、同時に多くの図表を引用させていただいた。さらに、炭素繊維やその応用に関連する企業や研究機関から写真を提供していただいた。ご協力をいただいた関係各位に厚くお礼申し上げる。

 本書は、日本航空技術協会発行の月刊誌「航空技術」に2013年6月~2015年1月に連載した「よくわかる炭素繊維の基礎と応用」をもとに大幅に加筆改訂したものである。今回の書籍化に際して、改めて資料やデータなどの提供にご協力いただいた日本航空技術協会の樋口和一氏、工藤喬太氏にお礼申し上げる。

 本書の出版に当たって、企画・編集など全般にわたってご尽力いただいた日刊工業新聞社の矢島俊克氏に深く感謝申し上げる。

 本書が炭素繊維コンポジットの応用の入門書として少しでも役立ち、炭素繊維および炭素繊維コンポジット発展の一助となれば幸いである。


2015年12月

平松 徹

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