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次世代農業ビジネス経営
成功のための“付加価値戦略”

定価(税込)  2,376円

著者
サイズ A5判
ページ数 184頁
ISBNコード 978-4-526-07484-4
コード C3034
発行月 2015年11月
ジャンル 経営 ビジネス

内容

日本は食料自給率の低下が続き、農地の大規模化の必要性が高まっている中、すでに参入した企業が農業ビジネスを成功させ次の段階を目指していたり、別分野の企業が新規参入を検討したりするなど、農業に注目する企業は増加。本書では、成功と失敗の両面の事例を織り交ぜ、トレンドから政策、マーケティング、先進技術の導入方法まで紹介する。

三輪泰史  著者プロフィール

(みわ やすふみ)

株式会社日本総合研究所

創発戦略センター シニアスペシャリスト

1979年生まれ。2002年、東京大学農学部国際開発農学専修卒業。2004年、東京大学大学院農学生命科学研究科農学国際専攻修了。同年株式会社日本総合研究所入社。現在、創発戦略センター シニアスペシャリスト。農林水産省などの有識者を歴任。

専門は、農業ビジネス戦略、農産物のブランド化、植物工場などの先進農業技術、日本農業の海外展開。農産物のブランド化に関する新会社「合同会社Agri Biz Communication」の立上げに参画。主な著書に『植物工場経営』、『グローバル農業ビジネス』、『次世代農業ビジネス』(以上、日刊工業新聞社)、『甦る農業─セミプレミアム農産物と流通改革が農業を救う』(学陽書房)ほか。

目次

はじめに 

第1章 農業ビジネスの光と影
1-1 農業ビジネスを取り巻く環境
1-2 農業のビジネス化という新たな潮流
1-3 農業ビジネス立ち上げの検討ステップ

第2章 次世代農業ビジネスを加速させる農業政策
2-1 儲かる農業を生み出すための政策
2-2 規制緩和が農業のビジネス化を加速する
2-3 補助金の“賢い”使い方 ~補助金依存からの脱却~

第3章 儲かる農業ビジネスはマーケティングから生まれる
3-1 マーケティングが農業ビジネスの成否を分ける
3-2 プレミアム商品ニーズを捉えよ
3-3 商品の価値を引き出すためのブランド戦略と手法

第4章 先進事例はなぜ成功できたのか?
4-1 サプライチェーン統合型が成功事例の王道
4-2 ひとひねり必要な異業種からの農業参入
4-3 技術の過信と無謀な販売計画が失敗事例を生む
4-4 「経営力」が農業ビジネスを成功に導く

第5章 収益向上のための先進技術の使いこなし方
5-1 消費者の心に響く農産物の作り方
5-2 生産性向上とリスク低減を両立する先進技術 
~植物工場や農業ロボット~
5-3 農業ICTの導入で農業ビジネスは大きく飛躍する
5-4 先進技術の使いこなし方 
~無駄な投資にしないための五つのポイント~

第6章 総合的な経営能力が試される次世代農業ビジネス
6-1 ストーリーを伝えて価値を生み出すダイレクト流通
6-2 農業+αで収益をあげる6次産業化
6-3 消費意欲の高い海外消費者を攻略せよ
6-4 現地生産・現地販売の「日本式農業」がグローバル化の切り札
6-5 失敗しないための事業計画の立て方


コラム

①TPPの影響を見極める
②TPPに負けないビジネスモデル
③気候変動に対応した農業ビジネス
④伝統野菜の強みを生かす
⑤オランダ方式の農業インフラが地域農業を救う
⑥2020年代のハイテク農業予想図

はじめに

日本の農業は今、大きな転換期を迎えている。戦後の日本の食卓を支えてきた農家は高齢化し、相次ぐ離農により農業就業者は大幅に減少した。あわせて耕作放棄地が増加し、日本農業の足腰はぐらついてしまっている。さらに、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)をはじめとする貿易自由化の大波が迫っており、日本農業の将来を案じる声が多い。

 日本の農産物は総じておいしい。世界的に見てもトップレベルといっても過言ではない。現に、多くの海外からの観光客は日本の農産物や食の素晴らしさに驚嘆している。そのような優れた商品力と技術力がありながら斜陽産業に位置づけられていることに、忸怩たる思いをしている農業関係は数えきれない。私自身もその1人である。マクロデータを見ると悲惨な状況でしかない日本農業に、少なくない人が成長の可能性を感じている。明確な理由はなくとも、日本農業の可能性を無意識にうちに感じているのだろう。優れた技術・ノウハウがあるのにこのまま消えゆくのはもったいない。日本農業の再生に少しでも貢献したいとの思いで今回筆を執った。

 苦境が続く日本農業だが、この5年で新たな芽が出てきた。規制緩和により企業の農業参入が増えるとともに、法人化して事業を拡大する農業者も増加している。従来、農業は零細農家を中心とした保護対象の産業であったが、農業をビジネスとして捉えるプレイヤーの出現により、日本農業は新たな時代に突入し始めている。政府も農業を成長産業の一つに位置づけた。新たな時代の日本農業像を具体化するため、本書を通して「次世代農業ビジネス」の姿を提示できればと考えている。

 本書では、農業ビジネスで収益をあげるため、つまり「儲かる農業」を実現するためのポイントやヒントを示している。「儲かる農業」という言葉に対して違和感を覚える方もいるかもしれないが、ビジネスであれば収益をあげることは必須である。「儲かる農業」と「儲ける農業」は似て非なるものだ。農業には収益以外の側面が多分に含まれる。地域経済を支え、文化を継承し、自然環境を守るという、欠かせない役割を担っている。私の提唱する「儲かる農業」は、農業ビジネスを通して社会にさまざまな面で貢献しつつ、結果として“儲かる”というモデルである。地域も自然も無視した儲け第一主義では、サステイナブルな事業とはならないだろう。農業は収益と社会貢献を両立できる、有望な事業分野である。農業ビジネスの立ち上げ・拡大を目指している読者には、ぜひ堂々と胸を張って高収益なビジネスを作って頂きたい。それぞれの成功が、日本の農業と地域社会への貢献に直結するのである。

 ただし、農業ビジネスは簡単なものではない。これまで農業参入や農業新規事業の立ち上げを数多く支援してきたが、事業の立ち上げ時も、その後の事業運営時にも多くの壁に突き当たる。本書では、そのような経験を踏まえた実効性のあるアイデア・創意工夫を出来る限りちりばめるように意識した。農業ビジネスにもさまざまなパターンがあるので万能な方法はないが、使えそうなものはぜひ有効活用して頂きたい。本書の内容が、高い志を持った農業ビジネスパーソンにとって少しでもお役に立てば、筆者としてこの上ない喜びである。

 農業ビジネスに関する新たなコンセプトの検討において、株式会社日本総合研究所創発戦略センターの井熊均所長及び木通秀樹シニアスペシャリストに丁寧なご指導を頂いたことに感謝申し上げる。

 また、本書の企画、執筆に関しては日刊工業新聞社の土坂裕子様にたいへんお世話になった。この場を借りて厚く御礼申し上げる。

 最後に、筆者の日頃の活動にご支援、ご指導を頂いている株式会社日本総合研究所に対して心より御礼申し上げる。



2015年11月

三輪 泰史

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