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今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしい圧延の本

定価(税込)  1,620円

監修
編著
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-07481-3
コード C3034
発行月 2015年11月
ジャンル ビジネス 金属 機械

内容

金属材料を「薄く伸ばして製品化する」圧延工法に関わる多くのトピックスを絵ときで紹介する。平板や形鋼、棒鋼のほか硬貨や電線、航空機、建築資材など最終製品を数多く取り上げて親しみやすさにも配慮。圧延のふしぎ・原理原則・用途・技術などについてやさしく語る。

曽谷保博  著者プロフィール

(そだに・やすひろ)


JFEスチール株式会社 専務執行役員スチール研究所長 工学博士

(一社)日本鉄鋼協会代議員、(一社)日本塑性加工学会フェロー、(一財)金属系材料研究センター評議員



1958年 広島県出身

1982年 東京工業大学大学院理工学研究科機械物理工学専攻修士課程を修了。日本鋼管株式会社に入社後、圧延加工プロセスの研究開発に従事

1989年 米国ペンシルベニア大学留学

2006年 JFEスチール株式会社 スチール研究所研究企画部長。2011年常務執行役員を経て、

2015年より現職

目次

第1章 圧延でつくる身近な製品
1 圧延とは 「最も効率の良い金属加工方法」
2 鉄鋼製品の特徴と生産量 「地球にたくさんあって用途が広い鉄」
3 巨大な製鉄所 「地図にも載るほどの広さ」
4 水より安い? 鉄鋼製品の価格 「コスト削減が価格競争力を実現する」
5 薄板製品のバリエーション 「軟らかい鉄と硬い鉄」
6 薄板よりも薄い箔 「どこまでも薄く、装飾品や機能材料として使われる」
7 厚板製品のバリエーション 「大きなモノの製作には欠かせない」
8 形鋼・棒・線・管にもできる 「自在な形状に圧延」
9 アルミの圧延製品 「軽量で加工しやすく、錆びにくい金属製品」
10 銅の圧延製品 「電気や熱を伝える働き者の圧延製品」
11 プラスチックの圧延 「樹脂材料も圧延すれば強度が上がる」

第2章 圧延の基本
12 圧延の原理① 「引っ張るよりもつぶす方が伸びやすい」
13 圧延の原理② 「圧延機の一般的な構成」
14 鍛えて造る鍛造と圧延の違い 「紀元前4000年以前から行われている鍛造」
15 熱間と冷間の違い 「『鉄は熱いうちに打つ』だけではない」
16 1/100の厚さまで伸ばす熱間圧延 「熱延ラインの基本的な構成」
17 熱延コイルをつなげて高速で冷間圧延 「冷延ラインの基本的な構成」

第3章 圧延を行うための設備
18 巨大な圧延機 「ケタ外れのパワーを誇る」
19 鉄骨をつくる圧延機 「ユニバーサル圧延法の発明が用途を広げた」
20 継目無鋼管の圧延 「丸孔をあけて上手に伸ばす」
21 丸い断面の圧延 「四角のみならず丸い断面も圧延でつくり込める」
22 箔の圧延 「金属は圧延でどこまで薄くできる?」
23 つくったものを測る技術 「高速で搬送されるものを非接触で測る」
24 鉄は熱いうちに圧延しろ 「熱間圧延ではスラブを加熱する技術が必要」
25 コイラーは高速巻き取り名人 「鉄のトイレットペーパーをつくる」
26 圧延機を回すモーターは力持ち 「圧延は大量の電力を消費する」
27 鉄を斬る工程 「圧延中に必要な先端部の切断」
28 アルミニウムの圧延 「表面光沢を制御する」
29 銅の圧延 「機能材料として活躍する」

第4章 圧延で用いられるテクノロジー
30 圧延条件を左右する変形抵抗とは 「変形させないように材料は抵抗している」
31 寸法精度に大きく関わる圧延荷重① 「圧延荷重は車数千台分の重さに相当」
32 寸法精度に大きく関わる圧延荷重② 「圧延荷重に与える『摩擦の丘』の影響」
33 圧延機に要求される剛性 「圧延機はばねのように変形する」
34 板圧延での板厚制御の基礎 「狙った板厚を高精度に出す」
35 精密さが問われる加工 「どこまでも同じ厚みを延々とつくり続ける技術」
36 ロール変形 ・ クラウンを抑える 「機械もゆがむ圧延の力」
37 均一な板厚分布を得るためのプロフィル制御ミル 「ロールのたわみを制御する」
38 ロールが多い圧延機 「補強ロールは何本必要?」
39 摩擦は圧延の必需品 「功罪あわせ持つ圧延での摩擦力」
40 “まっすぐ”への飽くなき挑戦 「意外に難しいまっすぐな板の圧延」
41 “平ら”な薄鋼板のつくり込み 「フラットな鋼板をつくるための役割分担」
42 拡げる、縮める、一定を保つ板幅の制御 「厚板では幅を拡げる圧延、薄板では幅を縮める圧延」
43 連続式タンデム圧延 一気通貫の圧延技術 「連続化による生産性向上」
44 世界最高の圧延速度を支える技術 「時速170㎞のかみそり」
45 圧延プロセスにおける省エネ技術 「鉄が持つ熱を大切に使う」
46 酸化スケールを取るのも技のひとつ 「キズの要因をいかに抑えるか」
47 熱間圧延後の酸洗 「酸化スケールを溶かして取る」
48 バッチ式と連続式の熱間圧延 「熱間では先端と尾端の圧延が不安定」
49 熱延/冷延で特性が異なるロール材質 「長もちする工具をめざして」
50 高速圧延に欠かせない潤滑 「水と油の奇妙な関係」

第5章 製品の性能をつくり込む技術
51 圧延機はIT技術の塊 「圧延機は最先端のIT技術を駆使して動いている」
52 熱延後の冷却で金属組織が変わる 「水冷で鉄の組織をつくり込む」
53 温度と圧延の微妙な関係 「鋼の強さは圧延の温度や冷却によって決まる」
54 冷却や変形の不均一から発生する残留応力 「切断した後で現れる反りや曲がりの原因」
55 突起付特殊鋼板の製造方法 「圧延で表面凹凸をプリント」
56 圧延による表面のつくり込み 「ミクロンオーダーの凹凸が決める機能」
57 異なる金属を合体させたクラッド鋼板 「複合特性を持つ高機能鋼板」
58 輪も圧延でつくるリングローリング 「継ぎ目のない輪をどうやってつくる」

第6章 黎明期の圧延
59 貨幣の製造でも圧延が活躍 「明治の造幣局創設とともに導入された近代工業の先駆け」
60 蒸気機関と圧延の歴史 「産業革命期には、鉄道は製鉄業の子供と呼ばれた」
61 ヘンリー・コートによる圧延法の発明 「新たな金属の時代の幕開けとなったパドル法と圧延法」
62 国産化した缶詰用ブリキの圧延 「食料の拡大と戦争に備えて進められたブリキ板の圧延」

第7章 圧延プロセスの革新
63 圧延でつくる1㎛の結晶粒 「超微細粒鋼の特徴」
64 ハイテン圧延のこれから 「どこまでも強くたくましく」
65 極薄圧延の進化はどこへ 「新しい技術開発で高速化が進む」
66 誘導加熱が未来を拓く 「鉄に誘導加熱をうまく使えば圧延がスムーズに」
67 鋳造と圧延をつなげる 「溶けた鋼から薄板を直接製造」

【コラム】
●製鉄所は24時間操業
●圧延しておいしい麺を
●粉や木も圧延できる?
●圧延理論の巨人たち
●「航空工学の父」が圧延の理論を導いた
●ドイツから贈呈された圧延機
●圧延の機械遺産をめぐる

索引

はじめに

 圧延は回転するロールの間で、金属などの材料を薄く延ばす塑性加工法のひとつです。英語ではRollingと言います。くるくる回転するという意味です。押出し、引抜きなどの塑性加工法では、工具が固定されて動きません。鍛造では、工具である金型は材料を押しつぶす方向に直線的に動きますが、圧延は工具であるロールがくるくる回り続けるユニークな塑性加工法です。
 
レオナルド・ダ・ヴィンチと聞くと、みなさんは何を思い浮かべますか? モナリザの微笑で有名な15世紀末の天才画家です。実はレオナルド・ダ・ヴィンチと圧延は深い関係があります。人類で最初に圧延機のスケッチ(設計図面)を残したのがレオナルド・ダ・ヴィンチなのです。彼のスケッチには、手回し圧延機で教会のステンドガラスに使われる鉛縁や錫板を延ばしている様子が活き活きと描かれています。
 
 この時代、圧延は主として銀貨や銅貨などの軟らかい素材を、薄く加工するのに活躍していました。また、博物館でよく目にすると思いますが、王侯貴族が身に着けていたネックレスやティアラの金銀など貴金属装飾品を、薄く加工するのにも使われていました。
 
 一般人の生活に近いところでは、鉛を薄く板状に圧延し、円管やコの字に曲げて水道管や樋にして使っていたそうです。当時の動力は手回しでしたので、圧延できる金属の種類や生産量に限りがありましたが、17世紀に入ると人力に代わり、動力として水車が活用されるようになりました。現在、圧延機のことをミルと呼ぶのもその名残です。
 
 18世紀後半の産業革命は、圧延にとって大きな変革をもたらしました。ワットの蒸気機関を動力にして、強大な馬力での圧延を可能としたことです。鉄鋼の精錬技術の進歩とも相まって、種々の鉄鋼製品が大量に生産されるようになりました。
 
 例えば、レールの敷設によって物資や人の大量輸送が可能になりました。また戦地の兵士の食料として缶詰が必要になり、19世紀には缶素材のブリキ板(錫めっき鋼板)の生産が爆発的に増えました。このように、圧延技術の進歩はヨーロッパ列強の富国強兵に一役買いました。その後、近代に入り動力に電気が使われるようになり、ロールを電気モーターで回す現在の圧延技術の原型ができ上がったのです。
 
 「鉄は熱いうちに打て」と言われますが、熱間圧延機では、重さ20t以上の鋼塊の厚みが、200~300㎜から一気に数㎜まで薄くなります。室温で加工する冷間圧延機では、厚み0・2㎜以下、幅2mの薄板が時速170kmで圧延されながらコイル状に巻き取られます。薄板だけではなく、厚板、形鋼、棒線、鋼管などさまざまな形の製品が圧延でつくり分けられます。今日、圧延は金属製品の加工法の王者として君臨しています。
 
 圧延製品は自動車、船舶、橋梁、ビル、レール、パイプなど社会を支えるさまざまな用途に使われます。家電製品、流し台、屋根や壁、飲料缶や食缶など、私たちが身近に目にし、手に触れるものにも圧延製品はあふれています。
 
 そして、圧延で厚みをどんどん薄くしていった極みが箔です。箔というと日本の伝統工芸品の金箔を思い浮かべますが、みなさんが料理で使うアルミ箔も立派な圧延製品です。電子部品にも銅箔などがたくさん使われています。このように、圧延製品は快適で安全・安心な社会の実現を足元から支えています。
 
 本書では、くるくる回転するロールを用いるユニークな圧延の原理について、みなさんと一緒に科学します。圧延がいかに効率的な加工原理を持っているかを理解してください。同時に圧延が抱える課題と、それを先人たちがどうやって克服してきたか、また現在において最先端の圧延技術のエッセンスを紹介します。圧延は機械、金属、電気、化学などの総合技術から成り立っていることを理解していただけるでしょう。
 
 本書は製鉄会社に勤務する、現役の第一線で活躍する圧延技術者からなる、圧延技術愛好会によって執筆されました。最終章では、未来に向かって圧延技術がどう変容しようとしているか、私たちの夢を語りたいと思います。
 
 本書の企画と編集に尽力された日刊工業新聞社の矢島氏には、心から感謝申し上げます。

 

2015年11月

監修 曽谷保博











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