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今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしいコンカレント・エンジニアリングの本

定価(税込)  1,620円

著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-07480-6
コード C3034
発行月 2015年11月
ジャンル 経営 ビジネス

内容

コンカレント・エンジニアリング(CE)とは、技術開発において業務を同時並行で進めることで開発の効率化を進め、業務プロセスの前後を担当するメンバーが協働する手法。その本質はムダの排除を追求した開発思想。本書の著者はデンソーにて、創業当初からこのコンカレント・エンジニアリングに取り組み、その発展活動を主導していた、この分野の第一人者。本書では、このコンカレント・エンジニアリングの歴史から基礎知識、手法としての概要、その狙い、取り組み方、計画、組織、マネジメントに至るまでを、トコトン流に楽しく紹介する。

原嶋 茂  著者プロフィール

(はらしま しげる)

作家
専門は、生産マネジメント、技術経営。 
元(株)デンソー。
日本能率協会主催の「生産技術研究部会」「生産技術マネジメント研究会」の運営委員、
中部品質管理協会主催のTQM講座「生産における品質マネジメント」等を長く担当。
愛知工業大学大学院 非常勤講師。
日本大学工学部SSL 客員研究員。
慶應義塾大学大学院SDM 研究員。 
共著『工場長の教材』(日本能率協会)。

一方、鳴海風の筆名で和算小説や歴史ノンフィクションも手がける。
日本文芸家協会会員、関孝和数学研究所 研究員。 『円周率を計算した男』、『江戸の天才数学者』 ほか
著書多数。
 

【略歴】
1953年生まれ。
1980年 東北大学大学院機械工学専攻修了。
日本電装株式会社(現・株式会社デンソー)入社。以後、生産技術部で生産システム開発を担当。
    デンソーの戦略的なコンカレントエンジニアリング活動である「次期型製品研究会」や非自動車分野の「新事業開発」プロジェクトを数多くリード。
2010年 愛知工業大学大学院卒業。博士(経営情報科学)。日本能率協会のCPE-ME。
2011年 日本経営工学会論文賞。
2012年 日本機械学会生産システム部門学術業績賞。
2013年 名古屋商科大学大学院卒業。MBA。
ケースアワード2013。
2014年 デンソーを定年退社。

目次

第1章 コンカレント・エンジニアリングとは?
1 コンカレント・エンジニアリング(CE)は期間短縮だけが目的ではない 「CEの意外な効果」
2 コンカレント・エンジニアリングが狙っているもの 「大きな三つの目的とは」
3 一番わかりやすい「製造を考えた製品設計」 「指摘される前にできていたら「いいね!」しよう」
4 実際は、製品のライフサイクル全体を考える 「真の目的を達成するための最適解を見つけよう」
5 コンカレント・エンジニアリングはどんな会社でもできるか? 「まず目的を明確にすること。CEは手段の一つ」

第2章 コンカレント・エンジニアリングの概要
6 コンカレント・エンジニアリングは米国の軍事機関が研究した 「最初から盛り込まれていたライフサイクル視点」
7 日本のお家芸だったコンカレント・エンジニアリング? 「これは日本人のDNAかもしれない」
8 高い目標値を達成するためのコンカレント・エンジニアリング 「フロントローディングとアーリーソーシング」
9 超短納期開発の必要性から選択されたコンカレント・エンジニアリング 「携帯電話で有名になった手法」
10 開発期間の長い自動車業界で選択されたコンカレント・エンジニアリング 「デザイン・インから3DCAD、DEまで」
11 コンカレント・エンジニアリングに必要な組織 「プロジェクトの目的達成のため柔軟に考える」
12 コンカレント・エンジニアリングに必要なマネジメント 「最も重要なのは、運営の一貫性を構築すること」
13 コンカレント・エンジニアリングの業務プロセス 「パラレルだけでなく、協働のプロセスも重要」

第3章 コンカレント・エンジニアリングの計画
14 製品のライフサイクル全体から考える 「エンジニアリングチェーンとサプライチェーンに分けて関連部門を抽出し、コアメンバーで議論する」
15 基本思想とは重点取り組み課題 「中期計画から基本思想が決まっていく例」
16 他の手段と有効性を比較する 「CEと比較すべき主な手段とは」
17 企画書、計画書の全体構成 「基本思想で貫かれた関連部門の企画書、計画書」
18 コンカレント・エンジニアリングが盛り込まれた製品企画書 「CEの必然性と基本思想を明記したプロジェクトのバイブル」
19 大日程計画表の作成と使い方 「実際の推進リーダーが戦略的に作成する」
20 研究(開発)テーマ一覧表の作成と使い方 「マネジメントが見える一覧表にすること」

第4章 コンカレント・エンジニアリングの組織
21 コンカレント・エンジニアリングの組織構成 「全体リーダー、推進リーダーそして実務担当メンバー」
22 組織内情報伝達の重要性 「総智を結集して協働するための重要課題」
23 指示系統の考え方 「通常のプロジェクトより増える「判断に迷う場面」」
24 大部屋活動的プロジェクトの運営方法 「情報共有や即断即決、チームワークの醸成」
25 他社を含むプロジェクトの運営方法 「実務担当者同士の意見や考えが重要」
26 推進リーダーの要件 「より高い「技術力」「マネジメント力」「人間力」が必要」
27 実務担当メンバーの要件 「担当でありながら推進リーダーと同等の意識」
28 ファブレス企業とEMSのコンカレント・エンジニアリング 「実は智恵を出し合って協働していた?」

第5章 コンカレント・エンジニアリングにおける活動やマネジメント
29 導入判断と結果評価およびフィードバック 「本当に役に立つか、役に立たせられたか」
30 作りやすさ向上活動の可能性 「自社の製品や製造の特徴から活動方法を選ぶ」
31 フロントローディングとは 「過負荷になる期間のマネジメントもセットで考えておくこと」
32 アーリーソーシングとは 「高い目標値を達成するために、きわめて有効な手法」
33 コンカレント設備開発の効果 「製品競争力から現場力まで差をつけよう」
34 原価企画活動とコンカレント・エンジニアリング 「昔からあったコンカレントな取り組み」
35 試作~量産一貫活動 「垂直立ち上げを狙うなら、試作から量産を推定」
36 製造部門での先行開発活動 「一度味をしめるとやめられなくなる?」
37 初期流動活動とコンカレント・エンジニアリング 「まさに品質保証にフォーカスしたCE」
38 品質管理に見るコンカレント・エンジニアリングとの類似性 「品質管理も源流管理と全社活動」
39 コンカレント・エンジニアリングにおける情報マネジメント 「「基本情報の一元化」と「情報の共有」が基本」
40 コンカレント・エンジニアリングとプロジェクトマネジメント 「一般的なプロジェクトマネジメント手法を適宜利用」

第6章 コンカレント・エンジニアリングにおける手法やツール
41 製品のすりあわせと標準化 「標準化はCEの手法の一つ」
42 リーン製品開発とセットベース開発 「トヨタ流CEの特徴」
43 ソフトウェアにおけるモデルベース開発 「システム化の進展と注目すべきソフトウェア開発の動き」
44 3DCADとは 「普及と技術進化でCEがやりやすく」
45 CAEとは 「CEと相性の良い仮想の試作・評価ツール」
46 3DCAD/CAM 「3DCADデータを基本情報とした一気通貫の使い方を心掛ける」
47 デジタルモックアップとデジタルDR 「進化した仮想の見える化技術」
48 RPと3Dプリンタの活用 「より実物に近い試作品の迅速な製造法」
49 リバースエンジニアリング 「現物から3DCADモデルを作ってできること」
50 BOMとは 「形状とともに重要なもう一つの基本情報」
51 PDMとPLM 「CEを実現するための戦略的なツール」
52 ビューワ・ソリューションでできること 「見える化できるなら次にやりたいこと」
53 ロボット・オフライン・ティーチング 「3DCADによる一気通貫の業務プロセスに必要なITツール」
54 デジタルヒューマンの現状 「なつかしいジャックはどこへ行った?」
55 生産ラインシミュレータ 「最適なライン設計だけでない使い道」
56 コンカレント・エンジニアリングにおけるITツールの全体像 「3DCADを基本情報にナレッジを生む道具たち」
57 CALSの変遷と示唆するもの 「ICTを駆使した究極のCEの姿か?」

第7章 これからのコンカレント・エンジニアリング
58 技術立国として生きる 「全体から見たら国内空洞化はしていない」
59 価値創造の手段へ 「コンカレント・エンジニアリングはまさにうってつけ」
60 模倣困難な競争力へ 「CEは容易ではないからこそ競争力になる」
61 グローバル時代のコンカレント・エンジニアリング 「総智を結集するCEこそ成功のカギ」
62 海外拠点を巻き込んだコンカレント・エンジニアリング 「先進国、新興国いずれも障害は文化の違い」
63 日本国内でのコンカレント・エンジニアリング 「究極の高い目標とは経営理念の実現」
64 PLMをコンカレント・エンジニアリングのプラットフォームに 「ビューワ・ソリューションがPLMを進化させた」
65 エンジニアリング機能を強化したPLMで開発業務を効率化 「CEのためのITツールに新たな選択肢」
66 コンカレント・エンジニアリングの新しい形 「構想段階からコラボレーションするツール」
67 グローバルリーダーと人財育成 「しくみやツールの限界を補うのがリーダー」

コラム
●MOTの中のコンカレント・エンジニアリング
●コンカレント・エンジニアリングの再認識
●コンカレント・エンジニアリングとTQM
●アーリーソーシングのみで信頼感を得た話
●製品設計者が一人二役のコンカレント・エンジニアリング
●他社に先駆けたITツール導入での逸話
●インダストリー4・0に見るドイツの国家戦略

はじめに

 この本を取り上げた方の多くは、なぜ今ごろコンカレント・エンジニアリングなのだろう……でも、ちょっと懐かしい響きがあるな、と思われたのではないでしょうか。
 コンカレント・エンジニアリング(以下CE)という言葉が業界に登場したのは90年代でしょうか。でも、その当時にあっても、なんだ日本が昔からやっていたことじゃないか、と思われた方が多かったと思います。筆者自身も、自動車部品メーカーの生産技術者として長年勤務しましたが、どのような仕事でもCE(的な仕事の進め方)がベースにありました。
 ところがアメリカでは、日本企業が普通に持っている文化をそのまま真似ずに、ITを駆使することでCEの本質的な良さを自分たちのものにしました。
 しかし、その後のアメリカの製造業はどうなったでしょう。直接のモノづくりは、すさまじい勢いでアメリカ国外へ移転していきました。
 近年のビジネスの一つの成功例であるアップルのスマートフォン、アイフォンを見ても、開発はアメリカでも、製造に関しては部品調達から組立まで、ほとんど国外で展開されています。
 それでは、アイフォンの開発や生産について、全くCEはなされていないのでしょうか。たしかにアイフォンの組立を主に担当しているフォックスコンの技術者が、アップル本社に常駐して一緒に開発をおこなったという話は聞いたことがありません。しかし、前宣伝をして思いきり期待感(購買欲)を刺激し、発売を開始してひと月もしない間に数千万セットを売り切ってしまうというビジネス(戦略)は、そのための製造法があらかじめ準備されていなければ、とうてい実現するはずがありません。CEのコンセプトの一つは、製品のライフサイクルを通じた最適解を実現することです。そういう意味で、アイフォンにおけるIT(3DCADベースの開発)やEMS(ここではフォックスコンのこと)の利用は、CEの結果とは言えないでしょうか。
 言うまでもありませんが、CEは手段です。手段も進化します。アイフォンの例で言えば、ITやEMSは、CEのさらに下層の手法ということになります。
 グローバル時代になって、製造業の姿も激しく変化してきました。現在は低賃金国での製造が主流ですが、その国の経済の発展にともなって、労務費が上昇し、機械化が進展していきます。そして、コストに占める労務費比率が小さくなっていくと、世界地図の中の工場立地の密度差は、次第に薄まっていくでしょう。たとえ製造現場が全自動化されても、ビジネス全体が無人になることはありません。ビジネスは人と人との相互作用の中で展開されますし、ITをICTと言い換えても埋めきれない部分があります。
 ここで、CEのもう一つのコンセプトを登場させましょう。仕事をシリーズではなくパラレルにおこなうことです。
 これが容易ではないことは、すでに多くの読者が経験されていると思います。ITツールも多く開発され、それらは進化していますが、人や組織に関係する課題が多く発生しているからです。特に人そのものは、時代とともに変化してきました。ライフスタイルの考え方や、雇用形態の多様化、労働人口の高齢化、ダイバーシティ化、そして文化の違う海外ローカル人材などです。
 それでもCEに取り組もうとするのは、ビジネススピードに対する要求が高まる一方なので、有効な手段の一つであるCEが欠かせないからでしょう。
 しかし本書では、さらに重要なことを解説するつもりです。それは仕事をパラレルにおこなうことは、克服すべき困難ばかりが起きるのではなく、大きな付加価値が得られる可能性が生じるということです。それはなぜかと言いますと、複数の部門の人たちが業務プロセスの前段階に結集することで、計り知れない智恵が集まるからです。ただし、この智恵を効率的に集めるためには、業務革新が必要です。そして、それは会社の競争力になります。模倣困難な力であり、グローバル時代には効果的な武器になります。
 本書は、そのことを理解してもらうために、徹底してわかりやすくCEの解説を試みています。
 なお、冒頭で少し触れましたが、筆者は1980年に日本電装株式会社(現在の株式会社デンソー)に入社し、34年間生産技術者として働きました。大きな環境変化を受ける中、競争力ある次期型製品開発や非自動車分野の事業化プロジェクトなどを経験しました。
 本書はその間の経験の多くが下地になっています。逆に言えば、その実務経験なしには本書は決して書くことができませんでした。定年退社して、あらためて貴重な経験を積ませていただいた同社の諸先輩、同僚、部下そして関係した会社の方々への感謝の気持ちでいっぱいです。
 とは言え、筆者の浅学や狭量による誤った解説があるかもしれません。その点は、碩学諸賢のご教示をいただければ幸いです。
 最後になりましたが、筆者に出版を強く勧めてくださった一般社団法人日本能率協会の衛藤達夫氏、磯野茂氏、また、筆者の特徴を見抜いて実力以上のものを引き出してくださった株式会社日刊工業新聞社書籍編集部の鈴木徹部長に、心からお礼申し上げます。

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