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今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしい植物工場の本

定価(税込)  1,620円

著者
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サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-07474-5
コード C3034
発行月 2015年10月
ジャンル ビジネス 化学

内容

栽培環境を人工的に制御し屋内で野菜を安定生産する植物工場は、LEDが栽培光源の主流となりつつあり、これまで最大のネックであった消費電力の大幅な削減が可能になってきた。LED照明を中心に植物工場の技術とその実際を解説する。

森 康裕  著者プロフィール

(もり やすひろ)
2003年、東海大学大学院理学研究科博士課程修了。2003年から2011年まで東海大学理学部非常勤講師。2011年から2014年まで(株)植物工場開発取締役。 現在、(一財)社会開発研究センター主任研究員。
主な著書:「LED植物工場」、「LED植物工場の立ち上げ方・進め方」(共著)(日刊工業新聞社)

高辻正基  著者プロフィール

(たかつじ まさもと)
1962年、東京大学工学部応用物理学科卒業。同年、㈱日立製作所に入社し、中央研究所主任研究員、基礎研究所研究主幹を歴任。1974年から植物工場の研究を始める。1991年から2007年まで東海大学開発工学部教授。現在、(一財)社会開発研究センター理事、植物工場・農商工専門委員会委員長。
主な著書:「図解 よくわかる植物工場」、「LED植物工場」(共著)、「完全制御型植物工場のコストダウン手法」、「LED植物工場の立ち上げ方・進め方」(共著)(日刊工業新聞社)

石原隆司  著者プロフィール

(いしはら たかし)
1989年、立教大学社会学部観光学科卒業。
新聞社勤務を経て、2009年から(一財)社会開発研究センター植物工場農・商工専門委員会事務局長。植物工場・高度化農業畜産をはじめ、食品加工、飲食業の商品・業態・メニュー開発、ホテル等宿泊業の開発、それらの技術移転(海外含む)、コンサルティングを行う。また、主にこれらをコアとした地方創生・地域活性化にも取り組んでいる。
主な著書:「図解 よくわかる農業技術イノベーション」(監修)(日刊工業新聞社)

目次

第1章 植物工場のあゆみ
1 植物工場とは 「露地栽培から工場生産へと高度化する農業」
2 植物工場の2つのタイプ 「太陽光利用型と人工光型」
3 植物工場の黎明期 「欧米での植物工場の始まり」
4 日本での植物工場の始まり 「日立製作所中央研究所で研究スタート」
5 実用化植物工場の登場 「カイワレ生産で始まりレタス生産へ」
6 植物工場に吹いてきた時代の追い風 「国も農商工連携で植物工場を支援」

第2章 植物工場の基礎
7 植物工場の中はどうなっているか 「植物工場は総合システム技術」
8 植物工場で行う水耕栽培 「土を使わず培養液で作物を育てる」
9 人工光型植物工場で生産される野菜 「採算性から葉菜類に限定される」
10 植物工場の中で行う作業 「発芽、育苗、生育を別々の部屋で行う」
11 植物工場にかかるコスト 「人工光型は照明コストが最大の課題」
12 工場野菜は栄養価で差別化できる 「環境条件の制御で栄養価も高くできる」

第3章 植物工場のキーテクノロジーとなる照明技術
13 植物と人間の光の感じ方は違う 「植物は赤色と青色の光を吸収」
14 植物成長に必要な光反応? 「光合成と光形態形成」
15 植物成長に必要な光反応? 「3種類の光受容体」
16 植物栽培に最適な光源は何か? 「価格・寿命・光束効率の比較」
17 植物栽培に最適な光源は何か? 「消費電力の比較」
18 LEDの発光原理と種類 「植物栽培にはチップ型LEDが最適」
19 栽培用光源としてLEDが優れている理由 「波長制御・低消費電力・長寿命・パルス照射」
20 省エネ・低コストで重要なLEDの電気的特性 「順方向降下電圧と発光効率」
21 植物育成用4元系赤色LED素子 「世界最大の発光出力で光熱費を大幅削減」
22 植物育成用赤色LEDの国内外の開発状況 「日本製品が性能面でリード」
23 植物栽培でも期待される高演色白色LED 「太陽光に似た見え方をするLED」
24 シングルチップ方式の白色LED 「YAG蛍光体・RG蛍光体・RGB蛍光体」
25 マルチチップ方式の白色LED 「RGB3色の混色と補色2色の混色」
26 植物工場用LEDは色度範囲に注意が必要 「マクアダム楕円と白色LED」
27 植物工場用LEDは劣化対策が重要? 「硫化・マイグレーション」
28 植物工場用LEDは劣化対策が重要? 「耐紫外線・波長シフト」
29 液晶テレビの製造技術が植物工場でも活躍 「光を均一化する導光板方式」
30 導光板技術を採用した植物工場ユニット 「独自の棚構造で排熱性能を向上」
31 植物工場に必要なLEDの数と電力 「多数のLEDを低電流で駆動する方が高効率」
32 植物工場用LED照明はこうして開発される 「LED照明導入のために知っておきたい」
33 技術進歩したLEDの問題点と対策 「少ない個数のLEDでも完全混色・均一光量を」

第4章 植物工場に最適な栽培環境
34 植物工場の環境管理? 「最適な光量と温度を見つける」
35 植物工場の環境管理? 「培養液温度と湿度を最適値に保つ」
36 植物工場の環境管理? 「空気流動とCO2施用はセットで考える」
37 植物工場の環境管理? 「培養液の濃度はEC(電気伝導度)で測定」
38 培養液の調整方法 「培養液を最適な?で管理」
39 植物工場でも発生する生理障害 「カルシウム・リンの欠乏」
40 植物工場で必要となる洗浄作業 「完全閉鎖型植物工場でも細菌が侵入する」
41 成功した植物工場は洗浄を工夫している 「現場に適した独自の方法を採用しよう」
42 植物工場の現場で役立つ光合成測定 「最適な波長組合せ・光量を知る手がかり」
43 光合成速度を測定してみよう 「葉の放出酸素を酸素電極で検出」
44 栽培パネルの工夫で作業効率は向上 「人件費削減と歩留り向上」

第5章 LED植物工場はこうして稼働している
45 最長稼働記録のLED植物工場 「コスモファーム岩見沢」
46 コスモファーム岩見沢の生産工程 「蛍光灯で育苗しLEDで栽培」
47 育苗から完全LED栽培の植物工場 「コスモサンファームパシオ」
48 コスモサンファームパシオの特徴 「育苗から作業を自動化」
49 高速栽培技術「SHIGYO法」 「収穫重量は蛍光灯栽培の2倍に」
50 SHIGYO法を採用した植物工場 「周辺設備も含めてユニット化」
51 大手電機メーカーも植物工場事業に参入 「パナソニックの植物工場システム」

第6章 植物工場のポテンシャルはどこまで広がるか
52 工場野菜の売れ筋作物 「1位はフリルレタス」
53 特定成分を高含量化・低含量化する手法 「LEDの波長変化と培養液の調整で含量制御」
54 小型植物工場に適した作物 「ベビーリーフ」
55 ベビーリーフのミックス方法 「彩りや味覚、香りを良くする品種を選択」
56 イチゴ生産で期待できる植物工場 「イチゴ栽培にはLEDが適している」
57 イチゴ植物工場の課題 「葉菜類の2倍以上の光量が必要」
58 LED照明で花を栽培 「植物工場ビジネスの次の可能性」
59 レストランで活躍する店産店消植物工場 「店頭で作った野菜を店頭で食べる」
60 店産店消植物工場はこうして生産する 「シェフの農園」
61 店産店消植物工場の課題 「栽培光源と店舗照明の両立が必要」
62 家庭でもできる植物工場 「日産10株なら自分でも作れる」

第7章 植物工場ビジネスの拡大に向けて
63 植物事業の参入前に注意すべきこと 「安定した売り先をまず確保しよう」
64 工場野菜販売の問題点 「高コストだが一般野菜との価格差は縮まりつつある」
65 工場野菜はブランド化できるか 「地方自治体との連携が打開策」
66 植物工場は海外でも広まるか 「国によるコストと状況がバリヤーとなる」
67 植物工場システムの海外進出 「農産品の輸出より農業技術移転が有望」
68 植物工場ビジネスを総合農食ビジネスに 「畜産、養殖、バイオマスともマッチング」

コラム
●孤軍奮闘で始まった植物工場研究
●植物工場用培地としても適するロックウール
●最適な光量は蛍光灯植物工場とLED植物工場とでは異なる
●生理障害の原因はどうやって特定できるか
●各社の植物工場システムの消費電力を比較してわかること
●開花の光周性からみた植物の3タイプ

索引

はじめに

 植物工場には、温室の環境制御をハイテク化した太陽光利用型と、太陽光をいっさい使わずに人工光のみを利用し環境条件を完全に人工的にコントロールする人工光型があります。いま注目されているのは人工光型植物工場です。完全人工光型植物工場が注目されている背景には、頻発する天候不順や異常気象、輸入野菜の急増と消費者の安全・安心への志向が大きく関係しています。さらに、原発事故によって放射能に汚染された地域や塩害の地域における安全・安心な農業の創出の問題もあります。
 人工光型植物工場野菜の利点は、安定供給、完全無農薬、極めて清潔など、ほぼ完璧に安全安心な点にあります。しかし、採算性にはいくつかの問題が残されているのも事実です。まず生産コストがかなり高くつくので、様々な面でのコストダウンが基本的な課題になります。
 次の問題は、基本的にはおいしく栄養価の高い野菜の栽培技術が要求されることです。無農薬・清潔というだけでは一部の流通を除き付加価値が認められないからです。
 しかしながら、人工光型植物工場を成立させるうえで一番の課題であった人工光源の光熱動力費がLEDの急速な普及で大幅に改善されつつあり、採算性については好転しています。特に最近、家庭用照明に注目されている平均演色評価数(Ra)が高い高演色白色LEDは、光合成に有効な赤色成分と光形態形成に有効な青色成分、遠赤色成分を含み高効率化も実現しています。加えて、さらなる低価格化と低消費電力化も期待できることから、植物工場の初期導入コストの低減と採算性の大幅な向上が期待できます。味や栄養価、形態についても、植物のさまざまな光応答反応を利用して特定の波長のLED光を適切に組み合わせて照射することにより、生育が良く栄養価の高い作物を効率的に生産可能になってきました。このようなさまざまなメリットから、蛍光灯に代わる新しい光源としてLEDは植物工場のキーテクノロジーとして最も注目されています。
 しかしながら、LED植物工場の普及に伴い、従来の太陽光利用型植物工場や蛍光灯植物工場の栽培方法や栽培環境を改善する必要もでてきています。例えば、培養液の管理方法、光強度、栽培温度、湿度、気流制御、二酸化炭素の施用方法については、従来光源の植物工場で培われた技術が全く参考にならないという声もよく聞くようになりました。
 本書では、植物工場の歴史的な面から植物工場の運営に必要な基礎知識と技術、植物工場用途にLEDを活用する際の課題といった実用的な内容にいたるまで、わかりやすく解説しました。加えて、実用化に成功した実例をもとに、採算を得られる植物工場に求められる思想と開発・運用のヒントを紹介します。
 植物工場に関心を持ちながらも栽培ノウハウのない照明メーカーや植物工場導入を検討している企業担当者、すでに関連事業に関わっている方の現状分析や問題解決の一助となることを願ってやみません。

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