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化学分析・評価の現場実務
トラブル解決・生産性向上・コスト削減に役立つ分析術

定価(税込)  2,484円

著者
サイズ A5判
ページ数 224頁
ISBNコード 978-4-526-07470-7
コード C3043
発行月 2015年10月
ジャンル 化学

内容

企業(あるいは外部分析機関)の現場で成果を上げた具体的な事例をもとに、トラブル防止や生産性向上、コスト削減につながる「化学分析・評価」の実際を紹介・解説する。研究開発の化学分析業務や製品の品質検査に携わる技術者・担当者“必携”の書籍。

米森重明  著者プロフィール

(よねもり しげあき)
米森技術士事務所代表
・1978年 岡山大学大学院理学研究科化学専攻修了、旭硝子(株)入社
中央研究所で材料の分析・キャラクタリゼーションなどに従事
・1995年 名古屋大学よりフッ素材料の分析により博士(工学)
・2000年 同中央研究所材料解析グループ グループリーダー
・2002年 同中央研究所リレーションシップマネージャー(副所長)
・2004年 (公財)旭硝子財団、研究助成部長
・2006年 AGCセイミケミカル(株)開発技師長・品質保証部長
後に取締役開発部長(品質保証、安全環境、エンジニアリング管掌)
・2012年 (公社)新化学技術推進協会部長研究員、後にグループリーダー
・2015年 旭硝子(株)退社、米森技術士事務所開設、化学部門で分析関係のコンサルティング業務を開始

国立研究開発法人産業技術総合研究所客員研究員、東京工芸大学非常勤講師

博士(工学)、技術士(化学部門)、環境計量士

目次

はじめに

第1章 分析情報活用の実際
現場トラブル解決のための分析術
①異物の解析によるトラブル解決
1-1 固い材料の場合
実例-1 異物が大きい場合
実例-2 不均質層のように見える場合
実例-3 異物の元素分析だけでは特定できない場合
実例-4 気泡が不具合の原因となる場合
1-2 柔らかい材料の場合
実例-1 透明樹脂に透明異物がある場合
実例-2 無機系の異物の場合
実例-3 フッ素樹脂に透明異物がある場合
実例-4 透明樹脂に白色異物がある場合
実例-5 魚の目状異物の場合
1-3 複合材料・部材・部品などの場合
実例-1 プリント基板用のガラス繊維の汚れ
実例-2 液晶セルに関わる異物
実例-3 配向膜の上の異物
②表面や接着のトラブル解決
実例-1 表面からの異物取り出し
実例-2 表面が汚染している場合
実例-3 表面でも表と裏は異なる
実例-4 有機系の表面汚染物を解析
実例-5 膜の付着強度が十分でない場合
実例-6 ガラス極表面の無機物汚染の場合
実例-7 化学材料の表面コーティングの場合
③表面近傍での化学変化
実例 ガラス表面での化学変化

第2章 分析情報活用の実際 生産性向上のための分析術
①反応の制御
実例-1 レンズ用モノマーの化学構造の解析
実例-2 重合状態と染色性の関係を解析
実例-3 レンズの重合挙動を解析
実例-4 合成反応での触媒活性の分析
実例-5 銀析出時の反応温度と粒径の関係
②迅速な分析
実例-1 分析時間の短縮で生産性向上を目指して
実例-2 NIRに重回帰分析法を組み合わせて
実例-3 フーリエ変換型NIR(FT-NIR)の活用
実例-4 エチレンオキシド含有量測定も可能に
実例-5 分析機器によるプロセスの計測
実例-6 フッ素材料を現場で素早く定量
③生産工程の総合的な分析
実例-1 きれいなクロスを生産する
実例-2 バインダの安定性を向上させる
実例-3 液晶セルの異物欠点を低減する
実例-4 液晶セルの良品率向上
実例-5 液晶セルの代表的な異物の同定
実例-6 異物原因となった材料と部位の分析
実例-7 クリーンルームでの異物混入の改善
実例-8 発生した異物を製品中に入れない
実例-9 異物モードの変化に対応する
④シミュレーション技術の活用
実例 ポリエーテルポリオールの試作に活用

第3章 分析情報活用の実際
研究開発を加速・推進する分析術
①小スケールでの加速
実例-1 表面汚染の分析例
実例-2 金型の耐久性改良での分析例
実例-3 フッ素系有機材料での分析例
②新分析法での貢献
実例-1 フッ素産業における大きな変革(1)
─水酸化ナトリウムの製法転換に関わる分析─
実例-2 フッ素産業における大きな変革(2)
─フロン削減・代替に関わる分析─
実例-3 フッ素産業における大きな変革(3)
─PFOAに関わる分析─
実例-4 フッ素産業における大きな変革(4)
─フッ素樹脂の重合冷媒の変更─
実例-5 ポリマー分散ポリオールの新規分析法
③機能性能の評価法
実例-1 ガラスの研磨剤の評価方法
実例-2 フッ素系塗料の長期耐候性に関わる評価法
実例-3 接着力の新しい評価法
④継続的なベンチマーク
実例-1 ガラスの化学組成の例
実例-2 フッ素系撥水撥油剤の例
⑤シミュレーションと原理原則

第4章 分析情報の現場活用
①分析情報の程度・複合化を図る方法
1-1 目的に見合った分析か
実例-1 2つの試料の比較の場合
実例-2 塩素の比較定量の場合
1-2 すべてが合わなければ
実例-1 未知成分のIRスペクトルの例
実例-2 典型的な有機化合物の構造決定の例
②分析技術を磨く
2-1 機器よりうまく
(1) 小さい試料のサンプリング
(2) サンプリングのコツ
2-2 コンタミを避ける
(1) 環境からの汚染
(2) ヒトの手からの汚染
(3) ヒトの汚染度
(4) コンタミを常に低いレベルに
2-3 企業内/外コンテスト
(1) 企業外コンテスト
(2) 企業内で技術の継続的な向上を図る
(3) 分析技術の認定試験
③分析品質とコストを見極めた方法
3-1 必要十分か、過剰は不要
(1) どのタイミングでどのくらいの分析をすれば十分か
(2) 定量値は独り歩きする
(3) 過剰な分析情報は混乱を引き起こす
(4) 品質重視か、コスト重視か、スピードか
(5) よりスループットの高い装置で
3-2 なるべくシンプルに
(1) その分析が本当に必要か
(2) なるべくシンプルな分析プランで
④分析の感・勘を養う方法
4-1 最短距離で
(1) アプローチの仕方
(2) 問題解決の進め方
(3) 経験をどのように積んでいくか
(4) 経験を分析デザインへ入れ込む
4-2 感・勘を研ぎ澄まして実行へ
(1) 第六感が重要
実例 液晶材料の化学構造解析の時に

第5章 現場実務を活性化させるための分析技術(者)の活用法
①企業内での実際
1-1 分析部署の実際と集約/分散
1-2 生産現場により近く
1-3 企業内での認知度・地位向上
②企業外での実際
2-1 他社との連携・交流
実例-1 顕微ラマン分光装置での連携
実例-2 フッ素材料用NMR装置での連携
実例-3 高磁場NMR装置での連携
2-2 機関との連携・交流
2-3 企業/自己のPR
③技術伝承と人財の育成
(1) 技術伝承の重要要素
(2) 企業内分析技術者の育成コース例

コラム
・予防を目指す
・地域/国での分析力の向上
・個人力の活きる場として

おわりに
付表・付図
索引

はじめに

企業の化学分析業務に40年近く関わり、分析技術を習得し向上させながら、仲間とともに工夫を重ねて企業内で真に役立つ分析を目指してきた。その経験と先人や同僚と作り上げてきた企業におけるすべてのノウハウをまとめたのが本書である。

 分析技術の基礎や応用、ならびに最新の分析技術について記載された本は多いが、企業人としてどのように分析技術を駆使し、どのように活用してきたかについて述べた本には出会ったことがなかった。そこで企業での分析技術の実際につき、まとめてみることにした。筆者が長年考え、もがき苦しみながら経験したことなどを含めて述べてみたい。既存の分析法であっても工夫して組み合わせながら、問題解決を図ってきた。その経緯やそこでの考え方の適用と活用の仕方などを中心とした。したがって、ここで用いている分析法や分析対象は最新のものではない。これらの最新情報を期待される方はそれらの書籍を参照されたい。

 分析情報活用の実際に則して、トラブル解決のための分析術、生産性向上のための分析術、および研究開発を加速・推進するための分析術と3つの項目に分けて、それぞれの項で、分析的な課題への取り組み方や考え方を中心に具体的な例を挙げて記載した。
 後半は、分析現場での実際として、その分析自体が「目的に見合った分析か」という観点から、分析技術の磨き方、分析品質とコストの兼ね合い、ならびに感性を磨くことなどについて、著者の取り組みを中心にしてまとめてみた。最後には、分析技術者の位置づけについても触れた。化学分析を専門とする方は後半の第4章から読み始めていただいても良いであろう。

 全体を通じて、企業での分析技術者の立場でまとめた。ここでは当然ながら、分析すること自体が目的ではなく、分析はあくまで手段である。強力な手段であるから、その手段(技術)は大いに磨かねばならない。また、企業であるから、その分析が本当に必要であるか、どの程度必要なのかを常々考えながら行うことなどについて触れた。さらに、企業の内部のみで分析してきた時代から、最近は外部の分析機関も活用する時代へと変化してきており、企業外との交流や連携に関して記した。

 国内には、分析に携わっておられる方々は非常に多い。化学産業・電機電子産業・医薬産業・機械産業など多岐にわたっており、さらに研究開発部門・品質保証部門や受託分析会社など部門領域も広い。また、国や公立の機関で分析業務に携わる方や分析装置メーカや周辺機器メーカにも分析技術者が多くおられる。ここで紹介した取り組みや考え方は、基本的で共通したものであるから、いずれの方々にも参考になるであろう。本書を読まれた方に分析業務を楽しくかつ役に立つものと思っていただき、企業内で真に貢献する分析技術者になっていただくことができれば望外の喜びである。分析は人が行い、人が分析技術を高めていくのである。

 最後に、本書の執筆の機会を与えて下さった日刊工業新聞社の奥村功出版局長、また企画段階からアドバイスと支援いただいたエム編集事務所の飯嶋光雄氏、および本書の端緒を開いて下さった外山幸雄技術士に心からお礼申し上げる。また、本書執筆にご協力いただいた多くの方々に感謝する。猛暑の中、見守ってくれた妻に本書を捧げる。

 2015年10月米森重明 

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