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今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしい電気化学の本

定価(税込)  1,620円

著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-07463-9
コード C3034
発行月 2015年09月
ジャンル ビジネス 電気・電子

内容

「電気化学」は、多くの自然現象や、現代社会の重要な技術(各種電池、腐食と防食、表面めっき処理、工業電解、再生可能エネルギー基づくエネルギーシステムなど)と深くかかわっている。本書は、「電子」と「イオン」に焦点をあて、電気化学の基礎を解説するとともに、関連する現象や技術をわかりやすく紹介する。

目次

第1章 電気化学ってなんだろう
1 電気化学ってなんだろう? 「「電気」と「化学」の関わる現象」
2 身の回りの電気化学 「実は、いたるところに電気化学」
3 電気エネルギーと化学エネルギーのやりとり 「電気化学の専売特許」
4 電気化学の主役:「電子」と「イオン」 「エネルギー変換の立役者」
5 電気の本質~電荷という性質 「みんな同じ電子くん」
6 もう一人の主役 「個性的なイオンちゃん」
7 電子が自由に動ける場所~電極 「電子伝導体という性質」
8 イオンが自由に動ける場所~電解質溶液 「イオン伝導体という性質」
9 「酸化」と「還元」というものの見方 「酸化と還元は対になって起こる」
10 酸化と還元を別々の場所で起こす 「電気化学の心臓部~電極と電解質溶液の界面」
11 酸化還元反応だからって… 「いつでも電気を取り出せるわけではない」
12 電気エネルギーを継続的に取り出すには 「電気中性の原理は破れない」
13 未来を拓く電気化学 「ますます重要になる電気化学」

第2章 電気エネルギーを理解しよう
14 エネルギーはなくならない 「偉大な経験則」
15 エネルギーには質がある 「質の良いエネルギーと悪いエネルギー」
16 電荷に作用する力~クーロンの法則 「クーロン力が電気エネルギーを考える基本」
17 電気エネルギーは電位で表そう 「電位の単位はボルト(V)」
18 電子は電位の低い方から高い方へ移動する 「電荷はエネルギーが高いところから低いところへ移動」
19 電気エネルギーは電子の電気的エネルギーの差 「電子の電気的エネルギーが別のエネルギーに換わる」
20 大切なのは電位差~だから電圧 「電池の電位差を電圧という」

第3章 電子は化学結合の必需品
21 化学反応は物質の組み換え 「化学反応とは化学結合の仕方の変化」
22 原子のつながりは原子核のつながり 「プラスとマイナスは等価ではない」
23 電子は原子核の周りを少し離れて運動する 「微妙な電子ココロ」
24 分子や固体はなぜできる 「原子はスカスカ」
25 分子は電子がつくる 「電子の向こうに原子核が見える」
26 金属結合も電子が大事 「アルミニウム原子の外側の電子ははるかに自由」
27 金属内の自由電子 「自由電子は金属内をかなり自由に動き回る」
28 イオン結合も電子が主役 「すべての結合は電子による」

第4章 化学エネルギーを理解しよう
29 モノは化学エネルギーをもっている 「モノの状態変化に伴う化学エネルギーの変化を利用」
30 熱エネルギーにしたらもったいない 「カルノー効率は越えられない」
31 直接の燃焼では電気エネルギーは取り出せない 「電子は分子内を移動するだけ」
32 反応熱の正体みたり! 「みんなバラバラにしてみよう」
33 どの原子から電子を取る? 「えいやと決める酸化数」
34 酸化とは物質が電子を失うこと 「酸化数をみれば一目瞭然」
35 電子を取り出すのはいいけれど 「取り出した残りはイオン」

第5章 電子とイオンが電気化学の主役
36 電解質溶液の中ではイオンは安定だ 「気体は溶かして使う」
37 反応に関与する電子に引っ張られる自由電子 「自由電子のエネルギーが変化する」
38 反応が違うと電子のエネルギーは違う 「酸化反応と還元反応で2つの状態をつくる」
39 イオンも移動しないと困る 「電荷が一周する回路をつくる」
40 電子はエネルギーの高い方から低い方へ動く 「水素側の電子のエネルギーが高い」
41 これが電気化学システムだ 「電極と電解質溶液を組み合わせて、酸化と還元を分ける」
42 電池を短絡させたら電子のエネルギーは同じ? 「短絡させたら駆動力がなくなる?」
43 短絡させたら電子のエネルギーが変わる 「短絡させても電流が流れるワケ」
44 電極と電解質溶液の界面に注目 「電気化学の心臓部」
45 駆動力は界面にあった! 「電極と電解質溶液の界面の電位差の変化分が駆動力」
46 モノの反応量と電気量の関係 「ファラデーの法則のすごいところ」
47 どれだけ電気エネルギーを取り出せるのか? 「室温で高い効率が得られる」
48 取り出せるエネルギーと取り出せないエネルギー 「取り出せない98 kJは何に対応する?」
49 燃料電池はいろんな種類がある 「つじつまさえ合えばいろんなイオンが利用できる」
50 電解質溶液が違うのに起電力が同じなのは? 「酸化反応も還元反応もどちらも変わる」
51 改めて身近だけど不思議なイオン 「極性をもつ水分子のおかげ」
52 電気分解も原理は同じ 「電池に起電力以上の電圧を外部からかけると何が起こる」
53 「電気分解」の価値 「必要な時に化学エネルギーとして貯める」
54 電気分解で元素発見 「電気分解は化学を発展させた」
55 いろんなエネルギー状態の電子 「標準電極電位は反応に関与する電子のエネルギーを反映」
56 思いがけない現象から電気エネルギーを取り出す 「濃度差でも電気エネルギーが取り出せる」
57 濃度差を電子のエネルギーを変えて補償する 「酸素ガスの濃度差を解消させる反応を起こす」

第6章 「電気化学」の得意技
58 反応の速さは電流で測ろう 「19世紀の物理化学の発展に貢献」
59 反応だけではダメ!物質移動も大切 「電気化学反応だけが速ければいいわけではない」
60 越えなきゃならない山がある活性化エネルギー 「化学反応には活性化エネルギーが存在」
61 触媒は反応速度に影響を与える 「活性化エネルギーの大小が速さを決める」
62 電気化学では活性化エネルギーを変化させる 「電気化学平衡はどちら向きの反応の速さも等しい」
63 電位を上げるとエネルギーの山も変わる 「電位を上げると電子のエネルギーは低下」
64 電位の上げ下げで起こる反応の違い 「活性化エネルギーへの効果が異なる」
65 電位と電流の関係 「一方向に反応を進めるには電位を変える必要がある」
66 触媒能を表わすパラメータ 「触媒能を過電圧で表わす」
67 取り出せなかったエネルギーは熱になる 「触媒能の高い材料を電極に用いることが重要」
68 真の電気文明へ~火の文明を越えて 「もっと電気化学を!!」

【コラム】
●一次電池に使われている、化学エネルギーから電気エネルギーを取り出せる性質
●二次電池に使われている、化学エネルギーと電気エネルギーを相互変換できる性質
●工業電解に使われている、電気エネルギーを化学エネルギーに変換する性質
●電子のエネルギーと電気的エネルギー〜とりあえず同じと考えて大丈夫です
●センサに使われている、濃度差を起電力に変えられる性質
●電気化学の文明史的意味

参考文献

索引

はじめに

 「電気化学」は古くから研究開発されてきた科学技術の1つで、すでに私たちの身の回りにも、いたるところに「電気化学」と関連した現象や技術があります。たとえば、一次電池、二次電池、電気分解によって製造された原材料、腐食、めっきなどの表面処理、センサ、さらには生体機能などがあります。そして、今後、エネルギーや環境との関わりの中で、電気化学の重要性はますます高まっていくと思われます。
 
本書では、その電気化学の本質を理解していただくことを目的として執筆しました。本書を執筆するにあたり、最初は、電気化学の関連したさまざまな現象や技術を個別に解説することを考えました。しかし、電気化学と関連した、二次電池、燃料電池、錆び、めっき、表面処理などに関して、すでにこの「トコトンやさしいシリーズ」で素晴らしい本が刊行されています。そこで、電気化学と関わる個別の現象や技術に関しては、これらの本を参考にしていただくことにして、本書では、それらの基礎となる電気化学の本質をできるだけやさしく解説したいと思いました。
 
本書では、電気化学の本質は、電気エネルギーと化学エネルギーの相互変換にあるという立場に立っています。そのためにどのような工夫が必要なのか、そしてそれは物質のどのような性質に基づいているのかということを、できるだけていねいに、やさしく解説するように心がけました。ていねいにやさしく解説することは、簡略化して解説することと違って、とても困難でした。論理を飛ばさず、ていねいに解説しようとするが故に、ややこしく、わかりにくくなることもありました。電気エネルギーと化学エネルギーの相互変換の主役は、「電子」と「イオン」です。そこで、「電子くん」と「イオンちゃん」のキャラクターを登場させ、重要なポイントがわかりやすくなるように工夫しました。
 
いまや、電気化学を利用した技術は当たり前のように使われていますが、よく考えてみるとそんなに当たり前のことではありません。電気化学において、電子とイオンがどのような役割を果たしているのか、そして、物質がもっている性質がいかにうまく用いられているか、その妙を感じていただけるように執筆したつもりです。本書によって、みなさんに電気化学に興味をもっていただき、さらに関連した本で理解を深め、知識を広げていただければ、著者としてこれに優る喜びはありません。
 
本書の刊行に際して、執筆の機会をいただいた日刊工業新聞社の奥村功出版局長、「電子くん」と「イオンちゃん」のアイデアと構成・編集上のアドバイスをいただいたエム編集事務所の飯嶋光雄氏、また本文デザインをご担当いただき、特に筆者が遅筆のために多大なご助力をいただいた志岐デザイン事務所の奥田陽子氏に謝意を表します。
 
最後に、私に、燃料電池を通じて電気化学に深く関わるきっかけと、本書を執筆できるようになるまでの環境を与えていただいた横浜国立大学名誉教授太田健一郎先生、最初に電気化学を含めた物理化学の素晴らしさと面白さを感じさせていただいた横浜国立大学名誉教授朝倉祝治先生、エネルギー変換を根幹とする電気化学の考え方を教えていただいた横浜国立大学名誉教授故高橋正男先生に深く感謝いたします。そして、あれこれ25年以上にわたって物理化学勉強会に参加して一緒に議論していただいている物理化学マニアの方々に深く感謝いたします。

 

平成27年9月                               

石原顕光

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