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今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしい蒸留の本

定価(税込)  1,620円

著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-07453-0
コード C3034
発行月 2015年09月
ジャンル ビジネス 化学

内容

ウイスキーなどでもおなじみの“蒸留”という技術。原料と製品を精製する蒸留は化学工場には必要不可欠である。化学工場で消費するエネルギーの90%は蒸留に使われるとも言われ、蒸留をいかに上手く処理するかがカギだ。本書では蒸留の必要性、原理、設計、応用、最近の蒸留研究の傾向など可能な限り広い範囲を網羅し、解説する。

目次

第1章 蒸留って何だろう「蒸留の役割」
1 蒸留酒はいつから 「蒸留の歴史」
2 ウイスキーは蒸留で造る 「単蒸留の方法」
3 どうして蒸留で分離できるの? 「蒸留の原理」
4 石油からガソリンを蒸留する 「蒸留の本命」
5 連続蒸留は年中無休 「連続式と回分式」
6 なんとシリコンも蒸留で造る 「化学工業で必須の蒸留」

第2章 気液平衡とは何「蒸留の要は気液平衡」
7 液体は蒸発して圧力を示す 「蒸留は蒸気圧の差を使う」
8 蒸気圧は温度で変わる 「蒸気圧線図」
9 液体混合物の蒸気圧が気液平衡 「気液平衡測定の原理」
10 気液平衡はこんなに変わる 「気液平衡は千変万化」
11 千変万化しないもの、それは 「活量係数」
12 ウィルソンは素晴らしい 「活量係数の計算式:ウィルソン式」
13 ウィルソンの得意技 「気液平衡における多成分系への拡張」
14 水と油の関係 「不溶解系の気液平衡」
15 塩を入れると沸点上昇 「気液平衡における塩効果」
16 正しく計る工夫は 「気液平衡の正確な測定」
17 数ある計算法何を使う 「気液平衡計算式選定の基準」
18 モノの様々な性質が必要な蒸留 「物性推算法」

第3章 さまざまな蒸留
19 ものを分ける精密な蒸留 「精留 ・ 分留」
20 蒸留の仕組み 「蒸留プロセス」
21 階段の数が理論段数 「マッケーブ ・ シール作図法」
22 「階段」の作り方 「階段作図の詳細」
23 還流比はどこまで減らす 「最小還流比とは」
24 丁度良い還流比は? 「最適還流比の決め方」
25 蒸留する物質数の多いときの計算 「多成分系の蒸留計算」
26 焼酎の度数はなにで決まる? 「回分単蒸留計算」
27 純度を上げる工夫 「単蒸留計算」
28 蒸留には領域がある 「3成分系の気液平衡」
29 毒を以て毒を制す 「共沸蒸留法」

第4章 実際の蒸留塔はどのように造る
30 蒸留塔内は矛盾した流れ 「蒸留塔の構造」
31 蒸留を実現する方法 「棚段式と充填式」
32 流しすぎると溢れる 「操作限界:フラッディング」
33 どこまで流せる 「棚段塔のフラッディング限界」
34 沸騰のしかたもいろいろ 「気液の接触状態」
35 理論通りに蒸留できるの? 「蒸留塔の効率」
36 なぜ理論通りにならないのか 「飛沫同伴の影響」
37 処理量を増やすには 「棚段塔の挙動:段間隔」
38 多孔板トレイの効率を上げるには 「孔径がキーポイント」
39 大きいことはいいことだ 「流路長と効率」
40 充填塔の性能は? 「蒸留塔の構造:充填塔」
41 大きいことはいいことではない? 「充填塔の圧力損失」
42 規則充填物の性能は 「規則充填物の効率」
43 棚段塔か充填塔か? 「棚段塔と充填塔の選択基準」

第5章 トラブルはどう解決するの「トラブル対処法」
44 トラブルの原因を突き止めよう 「トラブル対処法」
45 ダウンカマーバックアップとは 「ダウンカマーにおけるフラッディング」
46 流れを良くするには 「ダウンカマーの改良策」
47 新型の高性能トレイでもトラブル 「ハンギングダウンカマーの留意点」
48 蒸留塔が振動する 「トレイの振動による破壊の防止策」
49 蒸留塔のCTスキャン? 「蒸留塔の診断技術:ガンマスキャン」
50 蒸留塔を透視する 「ガンマスキャンによるフラッディングの発見」
51 液が均一に流れない 「充填塔における偏流の影響」
52 流れを透視する 「ガンマスキャンにより充填物の破損を発見」
53 冷やしすぎに注意 「熱交換器利用上の留意点」

第6章 新しい蒸留塔の開発法は
54 連続蒸留のできる実験塔 「実験用蒸留塔オールダショウ塔」
55 沸騰の真似をする 「空気─水系トレイシミュレータ」
56 パイロットプラント 「実証試験用蒸留塔」
57 トレイ開発の方法 「アングルトレイの開発」
58 工業規模の実証試験用蒸留塔 「FRI」
59 実験しないで予想する 「プロセスシミュレータ」

第7章 省エネは可能なの「最新の蒸留技術」
60 熱エネルギーを無駄にしない 「蒸気再圧縮法」
61 蒸留塔の中に蒸留塔を入れる 「塔分割型蒸留塔」
62 熱を自前で調達 「内部熱交換型蒸留塔:HIDiCの原理」
63 蒸留の常識を破る 「HIDiCの塔内流量」
64 実際にやってみたら 「HIDiCのパイロットプラント省エネ率60%台」
65 蒸気の向きを変えて効率を上げる 「高性能トレイ」
66 蒸気と液の流れを整えて効率をあげる 「規則充填物」

【コラム】
●黒糖焼酎とウイスキー
●人も物質にもクセがある
●マッケーブ ・ シール法
●突沸に注意!
●気液平衡データ集
●アングルトレイ1号機
●画期的な発明

参考文献
索引

はじめに

 蒸留という語は多くの方がご存知です。蒸留を冠した語に蒸留水や蒸留酒があります。中学校・高校の理科で蒸留の実験を経験された方も多いのではないでしょうか?これらももちろん、蒸留ではありますが、化学産業での蒸留の仕組みは相当に複雑であり、重要な役割を担っています。化学産業における原料に、純粋な状態で存在するものは、ほとんどありません。化学反応で得られた生成物も、純粋なものはありません。原料も生成物も、分離・精製しなければなりません。この分離・精製は蒸留塔によることが多いのです。
 
化学産業はエネルギーを多く使う産業です。化学産業のエネルギー消費量は全製造業の18%になり、そのうちの約40%が蒸留分離に使われています。化学産業では、いかに、蒸留による処理を適切に実施できるか否かが、経営上、重要なこととなります。さらに、地球温暖化を防止するために二酸化炭素の排出の抑制が強く求められている今日、蒸留塔の省エネルギーは重要な課題となっています。
 
本書の表紙を飾っているのはコンビナートの夜景ですが、林立する塔類のほとんどが蒸留塔です。コンビナートは最新鋭の制御技術で、日夜、運転されており、蒸留塔のことは知らなくとも、その威容に多くの人が引かれて、夜景を楽しまれているのだと思います。蒸留を専門とする者の誇りです。
 
本書は最新の蒸留技術を、イラストをふんだんに活用して、蒸留のポイントが容易に理解できるように基本から解説しました。イラストをご覧いただければ、一目瞭然に理解していただけるものと期待しております。蒸留技術では数式をよく使いますが、あえて、必要最小限にとどめました。さらに、詳しくお知りになりたい方は、同じ日刊工業新聞社の「絵とき」シリーズの拙著(参考文献に記載)などをお読みいただければ幸甚です。

 
本書を次の方々にお薦め致します。
  
①既に蒸留の業務に従事しているが、もっと広く蒸留技術を知りたい方
  
②蒸留を専門としていないが、業務上、蒸留を理解しなければならない方
  
③教育機関で化学工学の中の蒸留を担当されている方
  
④学生諸君で、なお一層、蒸留を良く知りたいと願っている方
   
(ウェブサイト上には「気液平衡はどう使うのですか」という質問が多い)
  
⑤そして蒸留に興味をお持ちのすべての方
 
 
本書の出版に際しまして、多くの書籍や文献を参考にしましたので、記して謝意を表します。イラスト化に際し、著者の無理を聞いていただいたデザイナー、イラストレーターの方々に深謝いたします。最後に、ご協力くださった日刊工業新聞社の阿部正章氏をはじめ、書籍編集部の方々、ならびに関係各位に心から感謝します。

 

2015年9月

大江 修造

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