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図解よくわかる
ナノセルロース

定価(税込)  2,160円

編者
サイズ A5判
ページ数 208頁
ISBNコード 978-4-526-07448-6
コード C3043
発行月 2015年08月
ジャンル 化学

内容

セルロースをナノレベルに精製したセルロースナノファイバーは、炭素繊維やカーボンナノチューブに次ぐ新素材として世界中で注目を集めています。日本の産官学におけるセルロースナノファイバーの研究開発最前線を、数々の特性データとともに平易に図解する。

ナノセルロースフォーラム  著者プロフィール

ナノセルロースフォーラム 人材育成分科会入門書編集委員
磯貝 明、河崎雅行、近藤哲男、野村秀徳(経済産業省)、
平田悟史、三上英一、宮西孝則

 
◆編集委員の所属先は執筆者一覧をご参照ください



ナノセルロースフォーラム ホームページ:https://unit.aist.go.jp/brrc/ncf/

eメール:ncf-ml@aist.go.jp

目次

Introduction
製品化・事業化へ
期待高まるナノセルロース

はじめに

第1部 基本編
第1章 注目素材のナノセルロースと日本の政策展開
1 ナノセルロースとは
2 ミクロフィブリル化セルロースの開発と実用化
3 高度フィブリル化セルロースの製紙への応用
4 ナノセルロース研究はバクテリアセルロースから
光学用途
5 ナノセルロース研究は高強度複合材料へ
6 ナノセルロースフォーラム
日本が誇る基幹組織
7 日本の政策動向
8 ISOへの対応と取り組み
9 日本での研究開発動向
ナノセルロースに関する京大生存圏シンポジウム

第2章 国内における産官学連携研究の歩み
10 京大を集中研とするプロジェクト紹介Ⅰ
経済産業省地域新生コンソーシアムプロジェクト2005~2006年度
11 京大を集中研とするプロジェクト紹介Ⅱ
NEDO大学発事業創出実用化研究2007~2009年度
12 京大を集中研とするプロジェクト紹介Ⅲ
自動車部材用のCNF技術開発-グリーン・サステイナブル
ケミカルプロセス基盤技術開発2010~2012年度
13 京大を集中研とするプロジェクト紹介Ⅳ
非可食性植物由来化学品製造プロセス技術開発2013年度
~「高耐熱リグノセルロースナノファイバーの開発」
14 東京大学におけるナノセルロース研究
セルロースシングルナノファイバーを用いた環境対応型高機能包装部材の開発
15 九州大学におけるナノセルロース研究Ⅰ
環境にやさしく作られたセルロースに「優しいナノ化」
:水中カウンターコリジョン(ACC)法
16 九州大学におけるナノセルロース研究Ⅱ
中越パルプ工業との産学連携
17 産総研におけるナノセルロース研究Ⅰ
ナノセルロースをバイオ燃料に
18 産総研におけるナノセルロース研究Ⅱ
リグノセルロースナノファイバー製造技術
19 産総研におけるナノセルロース研究Ⅲ
リグノセルロースナノファイバー複合材料化技術

第3章 世界での研究動向
20 2000年の世界のナノセルロース研究調査概要
21 フィンランドの取り組み
製品化を見据えたステージに移行
22 EU圏の大型研究プロジェクト「SUNPAP」
23 スウェーデン中心の大型研究プロジェクト
「BiMaC」「SustainComp」
24 ヴァレンベリ木材科学センター(WWSC)
基礎科学を産業ニーズに結びつける
25 カナダの取り組み
長年のCNC研究を下地にCNFへ展開
26 アメリカの取り組み
先行国をキャッチアップする研究体制

第2部 応用編
第4章 ナノセルロース調製法
27 様々な植物から得られるナノセルロース
28 木材セルロース繊維の完全ナノ分散化
29 再生セルロース系からでもナノファイバー生成
30 高圧ホモジナイザーと2軸押出機によるナノ解繊
31 原料により性質が異なるACCナノセルロース
32 物理的処理と酵素加水分解の併用によるナノセルロース製造
33 CNF製造技術
2つの化学前処理方法
34 ACCナノセルロースの産業利用への取り組み

第5章 分析・解析手法
35 ウォータージェット解繊によるナノセルロース「BiNFi-s」
36 リグノセルロースナノファイバー表面組成の評価
37 セルロースナノファイバーの粘度
38 ナノセルロースの長さ測定
39 パルプからナノ繊維への解繊メカニズム
40 ナノセルロース1本の弾性率と引張強度

第6章 ナノセルロースの成形加工
41 CNF透明シート化技術
42 ナノセルロースから作る高強度ゲル
43 スプレードライによるナノセルロースの集合体
44 高強度で透明な高断熱性エアロゲル
45 クモの巣状ネットワークを作る
46 セルロースナノファイバーの固形化について
47 ナノファイバーからなる膜・シート

第7章 ナノセルロースの表面改質
48 マレイン酸変性セルロースナノファイバー
49 親水性から疎水性へのスイッチ
50 ナノセルロース用高分子分散剤の開発
51 PEG結合によるセルロース・キチンナノウィスカーの立体安定化
52 乾燥しても完全ナノ分散化が可能に
53 ナノセルロースの生分解性制御
54 製紙用薬品によるTEMPO酸化セルロースナノファイバーの機能化
55 セルロースの表面改質による高機能化

第8章 複合材料化
56 高強度複合材料
セルロースナノファイバー強化ゴムへの期待
57 TEMPO酸化CNF塗布による紙の物性変化
58 変性セルロース/樹脂複合材料の開発
59 セルロースナノファイバーをプラスチックと複合化する試み
60 ナノクレイとの複合化による軽量高靱性・高強度材料
61 ポリプロピレンとセルロースナノファイバーの複合方法
62 ナノセルロースとポリ乳酸の複合化
63 抄紙技術を活かしたCNF樹脂複合化

第9章 分散剤・増粘剤としての利用
64 両親媒性ACCナノセルロース
65 化粧品への応用
66 増粘剤・ゲル化剤への応用
67 乳化分散安定剤への応用

第10章 酸素バリアフィルムの開発状況
68 超高ガスバリアフィルムへの期待
69 ナノセルロースからの高透明酸素バリアフィルム
70 ナノセルロース積層ガスバリア紙の開発
71 バリアフィルムへの応用
(バイオマスバリアフィルム)

第11章 高機能化と先端材料への利用
72 セルロースナノファイバーを用いた電子デバイス
73 ナノセルロース結晶表面で触媒反応
74 デジタル情報を記憶する紙
75 紙は透明になり、電気も流れる
76 ナノセルロース膜に孔をあけてガス分離
77 高誘電率ナノペーパーを用いた小型・フレキシブルアンテナ
78 宇宙でのセルロースナノファイバー利用について
79 ナノセルロースを分散剤とする環境調和型ナノカーボンインク
80 ナノセルロースとアミノ酸で不斉合成
81 帯電防止用途
TEMPO酸化処理したナノセルロースの塗工膜
82 ガラスに代わる光学基板材料
うねりを低減した高透明複合化フィルム
83 薄層クロマトグラフィー用シートの開発
84 TEMPO酸化パルプ・TEMPO酸化CNFへの金属担持技術

索  引
執筆者一覧

はじめに



樹木に代表される植物は、重力・風雨や生物の攻撃から自らの生命を守り、重力に逆らって根から葉まで水をくみ上げて光合成を可能にする「疎水性でパイプ状の繊維組織」の集合体を形成している。この樹木の繊維組織を1本1本に分離し、さらに高白色度の繊維(パルプ)に変換する「パルプ化-漂白技術」の蓄積と革新は、紙パルプ産業を中心に進められてきた。このように分離したパルプを、水存在下で機械的なせん断力を加えることにより、紙の物性を制御するフィブリル化(叩解あるいはリファイニング)技術、水に分散させたパルプ繊維から各種機能材料を複合化してシート状に成形し、印刷情報用紙、包装用紙、家庭紙、各種機能紙に変換する抄紙-表面処理-塗工-加工-印刷などの技術により、紙関連製品は私たちの文化的な生活を支えている。

今、そのパルプ繊維を構成する最小エレメントの「幅数nmの結晶性セルロースミクロフィブリル」が注目されている。これまでセルロースミクロフィブリルに関する基礎研究は、理学系の植物学、農学系の樹木組織学、製紙化学、木材科学などの分野で別々に続けられ、多くの知見や技術が蓄積されてきていた。今世紀に入り、各種ナノ材料が注目され、関連する分析・解析手法が開発されてナノテクノロジーの時代に入った。合わせて、20世紀の化石資源に支えられた材料・エネルギー利用の拡大により、地球温暖化やゴミの蓄積などの環境問題がクローズアップされた。その結果、脱化石資源・循環型社会基盤の構築が求められ、再生産可能でカーボンニュートラルなバイオマスであるセルロースに再度注目が集まっている。特に植物繊維重量の約50%を占める主成分で、結晶性の最小エレメントであるセルロースミクロフィブリルを、バイオ系ナノ材料として先端部材に応用展開する研究開発が、工学系も含めた分野横断型の研究領域や産官学連携体制で世界的に進められている。

植物繊維組織から、①いかに効率的にナノサイズのセルロースミクロフィブリルを取り出し、②得られたナノサイズのセルロース(ナノセルロース類)はどのようなナノ構造を有し、③それによってどのような特性や機能があり、④成形や複合化によってどのような機能が発現するかなど、多くの研究例が今世紀になって報告されてきた。20世紀は、日本は石油や木材、各種金属類、食糧などの資源を有しない国として、原料を輸入して製品を輸出する技術立国であった。確かに日本の国土の6割以上が森林ではあるが、急斜面が多く、北欧や北米のように森林資源が日本の資源の中心になることはなかった。スギやヒノキのような伐期を迎えた人工林の多くは放置され森は疲弊し、間伐されても資源として有効利用されずに林地残材として放置されてきた。

ナノセルロースが工業原料として利用されるようになれば、森林から先端産業への新しい価値の潜在性を有するマテリアルとしてのストリームが創成され、森林産業を活性化し、異業種異分野融合の新産業が生まれ、循環型社会基盤を支えるバイオマス資源立国、技術立国となって日本が世界をリードできる可能性がある。そのような背景から、2014年6月に改訂された「日本再興戦略」には「ナノセルロース(セルロースナノファイバー)の研究開発等によるマテリアル利用の促進に向けた取り組みを推進する」と記載された。関連して同時期に経済産業省主導で、オールジャパン体制でナノセルロースの基礎研究と実用化を目指す「ナノセルロースフォーラム」が設立された。フォーラム設立から数カ月が経過し、人材育成分科会にナノセルロースの入門書作成の依頼があり、今回、各方面の方々のご協力・ご支援を得て、本書をまとめることができた。改めてナノセルロースフォーラム幹事の皆様、執筆者の皆様、日刊工業新聞社の矢島俊克様、木村文香様に感謝申し上げるとともに、読者の方々が、本書によってナノセルロースへの理解と期待を深めていただき、日本発の新しいナノセルロース含有製品の実用化・事業化がいち早く実現されれば幸いである。

なお、ナノセルロース類の用語の定義がまだ定まっていないため、セルロースナノファイバー(CNF)、セルロースナノフィブリル、ナノフィブリル化セルロース(NFC)はほぼ同じ意味であるが、本書ではそれぞれの著者の記述に任せてある。これらの用語の定義、規格化、統一についても、今後のナノセルロースフォーラムのミッションである。



2015年7月

ナノセルロースフォーラム

人材育成分科会

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