買い物かごへ

よくわかる
雷サージ対策技術

定価(税込)  2,160円

著者
サイズ A5判
ページ数 188頁
ISBNコード 978-4-526-07450-9
コード C3054
発行月 2015年08月

内容

雷サージとは落雷により電気系統などに対して異常に高い電圧が瞬間的に発生する現象である。その影響でネットワーク機器やパソコンなどのハードウェアが損傷してしまう。本書は雷発生原理から対策技術までを紹介する。著者がよく受ける問い合わせの解決策を多く盛り込み解説する。

柳川俊一  著者プロフィール

(やながわ しゅんいち)
1961年神奈川県生まれ
1985年3月 東海大学工学部電気工学科卒
1985年4月 (株)昭電 入社
1990年10月~ 大阪工場~成田工場に勤務
2000年10月~ テクノセンタ 技術開発部 配属 現在に至る
  主として雷害対策の製品開発,技術検討業務に従事
  雷被害の調査・解析・検討に基づき,新製品の開発を行っている
  電気学会,電気設備学会,電子情報通信学会等会員
2012年3月 発明大賞 発明功労賞受賞(日本発明振興協会)
2013年4月 文部科学大臣表彰 科学技術賞受賞
2015年6月 星野賞受賞(電気設備学会)
主な論文
Lightning Surge Response Characteristics of SPDs Used for Protecting an
Electronic Apparatus; APEMC, Beijing, China, 2010
Measurements of Transient Grounding Characteristics of a MW Class Wind
Turbine Generator System and its Considerations; ICLP, Vienna, Austria, 2012 他

目次

はじめに

1章 雷放電と雷被害
1.1 雷現象
 1.1.1 雷放電の解明の歩み
 1.1.2 雷はどうやって発生するか
 1.1.3 代表的な雷の種類と特徴
 1.1.4 雷侵入の種類と日本における落雷状況
 1.1.5 雷の性状
1.2 雷被害
 1.2.1 建築物の雷被害
 1.2.2 一般需要家設備の雷被害
 1.2.3 特定需要家設備の雷被害
 1.2.4 その他設備の雷被害

2章 雷保護の基本的考え方
2.1 雷保護に関する関連法規について
 2.1.1 建築物等の雷保護に関する関連法規と規格
 2.1.2 建築物内部の電気・電子機器の雷保護に関する関連法規と規格
2.2 雷保護の基本的構成
 2.2.1 建築物等の雷保護の基本構成
 2.2.2 建築物内部の電気・電子機器の雷保護の基本構成

3章 雷保護の設計
3.1 建築物等の雷保護設計
 3.1.1 受雷部システム
 3.1.2 保護レベルの選定
 3.1.3 引下げ導線システム
 3.1.4 接地システム
3.2 建築物内の電気・電子機器の雷保護設計
 3.2.1 サージ侵入の阻止
 3.2.2 雷過電圧の抑制
 3.2.3 等電位化
 3.2.4 接地抵抗の低減
 3.2.5 遮蔽
3.3 SPDの構成と特性
 3.3.1 電圧スイッチング形SPD
 3.3.2 電圧制限形SPD
 3.3.3 複合形SPD
3.4 SPDの選定と設置場所
 3.4.1 低圧電源回路用SPD
 3.4.2 信号・通信・制御回路用SPD
3.5 耐雷トランス(電源用保安装置)の構成と特性
 3.5.1 絶縁形(耐圧形)耐雷トランス
 3.5.2 放流形耐雷トランス

4章 雷被害と対策事例
4.1 建築物の被害と対策事例
4.2 一般需要家設備の雷被害と対策事例
4.3 特定需要家設備の雷被害と対策事例
4.4 その他設備の雷被害と対策事例

5章 雷保護対策上の留意点
5.1 接地の基本
 5.1.1 建築物などの雷保護に関連した接地システム
 5.1.2 内部の電気・電子機器の雷保護に関連した接地システム
5.2 SPDの効果を左右する接地線の敷設方法
 5.2.1 SPDの接地線の長さと断面積
 5.2.2 接地線敷設方法の違いによるSPDの効果

6章 保守点検および落雷情報配信
6.1 受雷部システム
6.2 接地抵抗の測定
 6.2.1 一般建築物
 6.2.2 電気所などでの測定
6.3 SPD
 6.3.1 SPDの動作の特徴
 6.3.2 SPDの検査および保守点検
 6.3.3 検査および保守点検の例
6.4 その他の保守点検装置

おわりに
参考・引用文献
索引

はじめに

 19世紀後半から電力輸送のために送電線や配電線が数多く建設された。送電線や配電線は高い構造物であることから,自ら雷を受ける頻度も高くなり,多くの地域で雷被害に悩まされた。雷被害によって引き起こされる停電や機器の破損により,日常生活に支障をきたすことは大きな問題であった。これらの被害を低減するために,電力会社などは雷害対策に関する研究や技術開発を精力的に進め,今日では雷による停電はかなり減少してきている。同じくして鉄道事業者や放送事業者なども同様に研究や技術開発を推進し,輸送障害や放送障害などもかなり減少してきているが,まだまだ皆無というところまでは達していないのが現状であるように思える。さらに,2011年3月の東日本大震災から端を発し,わが国の電力事情が一変することとなった。低炭素化社会の実現に向けた取り組みとして再生可能エネルギーの利用拡大と電気のスマート利用が進められてきており,風力発電システムや太陽光発電システムなどを利用した分散電源を電力系統に接続して環境に配慮した電力供給グリッドが構築されてきている。これらのシステムの設置環境は,風況のよい山間部や遮蔽物がない広大な敷地となるため,落雷を受ける頻度が高まっている。
 一方,近年の急速な技術の進歩によって情報社会が高度化され,使用する機器の扱う電圧も低くなってきているとともに,ネットワークを構築するなどの通信線が接続されることが当たり前のようになってきており,ますます過電圧に対する絶縁強度が弱くなってきている。電力会社や放送事業者,通信事業者ならびに鉄道事業者でもこのような電気・電子機器を扱うようになり,以前の雷被害状況から少し異なる雷被害が発生している。これらの電気・電子機器の使用は一般需要家にも広まり,今では社会機構運営の基板機器となっており,今まであまりクローズアップされなかった一般家庭における電化製品の雷被害の増加現象にも波及している。例えば電話機が黒電話機であった時代,接続されているのは通信線のみで,木製の棚や台に置かれていたと思う。これが近年では多機能電話となり,電源線と通信線が接続されてかつ電子回路が搭載されているものがほとんどであり,雷被害を増加させている要因にもなっている。また,電気温水器も普及し,屋外にも電子回路が搭載された機器が設置されかつ機器の函体(外箱)を接地していることも雷被害を増加させている要因となっている。
 これら雷被害を防ぐために避雷設備(LPS:Lightning Protection System 雷保護システム)や雷防護素子(SPD:Surge Protective Device サージ防護デバイス)による対策を講じる必要がある。国際的にも情報化社会の進歩によって急増している雷被害の防止のための対策についてIEC(国際電気標準会議)で継続して審議し,IEC規格を制定している。わが国においてもIEC規格に整合してJISの改正,制定を進行しており,効率的な雷害対策のよりどころとしている。
 本稿では,雷の発生メカニズムと実際の雷被害を紹介し,対策としてはJISを基本としているが,各現場においてはそのとおりにならない状況や環境に遭遇することがあるため,ここでは多くの分野の事象をもとに,現場環境になるべく合った対策手法や考え方を中心に述べる。本書が雷害対策の考案者や設計者などの参考になれば幸いである。

買い物かごへ