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建築計画・設計に潜む
“マサカ・マタカ”の設備トラブル

定価(税込)  2,592円

著者
サイズ A5判
ページ数 240頁
ISBNコード 978-4-526-07451-6
コード C3052
発行月 2015年08月
ジャンル 土木・建築

内容

建築設備のトラブルは多種多様で、関係者の努力にもかかわらず、なかなか改善されない。特に、「建築計画や設計」に起因するトラブルは、その情報が建築計画や設計に携わる人たちにフィードバックされないケースが多いため深刻だ。本書は、実際に起きた設備トラブル事例を多数取り上げ、体系化し、解説する。

山本廣資  著者プロフィール

(やまもと ひろし)

1963年 早稲田大学第一理工学部建築学科卒業。同年、高砂熱学工業(株)入社。空調設備の設計施工業務に従事。
1971年 東急不動産(株)入社、設計監理部勤務。
1973年 (株)東急設計コンサルタント出向。建築の空調衛生設備の計画・設計・工事監理業務に従事。2000年同社定年退職。
2003年〜2005年(財)省エネルギーセンターにて、建物・施設の省エネチューニング技術・手法の開発・調査・広報業務に従事。
現在、(有)環境設備コンサルタント代表として建築設備計画・設計、セミナー講師、トラブル相談、省エネルギー診断、執筆などに従事。
技術士(衛生工学部門)、一級建築士、設備設計一級建築士

◆主な著書、執筆
・「建築/設備トラブル『マサカ』の話」建築技術(2013年)。
・「マンション設備『マサカ』の話〜設備トラブル相談のQ&A」オ ーム社(2008年)。
・雑誌「設備と管理」(オーム社)に、『マサカの話』連載中。

目次

はじめに

第1章 建築設備トラブルの現象と種類
1 -1 建築設備の3大クレーム
1 -2 建築/設備トラブル・クレームの種類
1 -3 エンジニアリングトラブルと建築計画関連設備トラブル
1 -4 建築関連設備トラブルとエンジニアリングトラブルの諸事例
1 -5 『マサカ』のトラブルと『マタカ』のトラブル

第2章 建築各部位および設備スペースに潜む設備トラブルの要因

第3章 建築計画・設計の流れと設備トラブル
3 -1 建築計画と設備計画の関連
3 -2 建築計画への意思決定と設計着手
3 -3 着手前業務の重要性
3 -4 なかなか決まらぬ基本計画
3 -5 図面変更のインターバル(季刊・月刊・週刊・日刊・夕刊・号外)
3 -6 整合性を阻害する設計工程管理
3 -7 積算・VE・工事契約から施工段階
第4章 建築生産における品質管理
4 -1 品質管理について
4 -2 品質管理とPDCAサイクル
4 -3 建築生産における情報断絶①
4 -4 建築生産における情報断絶②
4 -5 そのほかの情報断絶要因
4 -6 技術の狭間はどこに生じるか
第5章 建築計画・設計に伴う設備トラブル事例
①音のトラブル(建物内部および周辺への影響)
1 -1 建物入居者・使用者に影響のある騒音
1 -2 騒音に配慮した建築計画
1 -3 音に関する建築計画・設計トラブルとエンジニアリングトラブルとの区分
1 -4 騒音基準値への考察
1 -5 騒音トラブルに関する常識
1 -6 騒音トラブルの事例と対策
1 シャンデリアのきしみ音
2 設備機械室の真上階・真下階に居室を配置したための音のトラブル
3 天井内に排気ファンを設置して騒音トラブル
4 機械室壁の遮音性能が低かったための騒音トラブル
5 ホテル客室で配管シャフトからの騒音トラブル
6 隣に空調機室のある店舗売り場の吸込みガラリ騒音トラブル
7 排気ガラリからの騒音
8 ガラリルーバの形状変更による騒音トラブル
9 ガラリの向きは近隣に注意
10 無梁版構造のスラブにエアコンを吊って床振動発生
11 屋上設置冷却塔騒音に近隣住民クレーム
1 -7 マンションの騒音トラブル事例と対策

②雨水のトラブル(浸水と排水管からの逆流)
2 -1 雨水トラブルに関する諸規定
2 -2 雨排水設備計画上の問題点─雨水の排出から浸水・逆流防止へ
2 -3 雨水トラブルの事例と対策
1 集中豪雨時の諸事例
2 雨排水に関する『マサカ』『アワヤ』事例(設計監修物件)
2 -4 集中豪雨対応事例と非対応事例
3 出水地域に建設されたマンションの豪雨対応事例
4 半地下のマンショントラブル
5 周辺地盤面より低いマンション1階ベランダに雨水が逆流、住戸内に浸水
2 -5 通常降雨時の雨水トラブル
6 オーバーフロー対策がないためマンション居室に浸水
7 マンション中庭にフロアドレンを使って地下ピットに浸水
8 高台からの雨水の浸水で駐車場水没
2 -6 集中豪雨時の道路冠水対策
2 -7 雨排水管竪桶の1階での吹出し

③室内環境トラブル(暑い寒いのトラブル)
3 -1 建築計画の流れと室内環境トラブル
3 -2 空調設備に関する常識
3 -3 室内環境トラブル事例と対策
1 吹出し口が窓面から離れていたためクレームに
2 カセット型エアコン配置をモジュール配置してクレーム
3 内部ゾーンと外部ゾーンの室内機を同じ室外機にまとめたため暑い寒いのトラブルが発生
4 用途の違う部屋を同じ系統にまとめたため冷暖房トラブルが発生
5 間仕切りをしたため冷房が効かなくなった
6 天井から吊られた表示物によって風が届かない
7 複雑な形状の天井にカセット型を設置、ドラフトを感じて寒い
8 高い天井にカセット型室内機を設置、足元が寒くなった
9 サーモスタット位置はデザインで決めてはいけない
10 ダクトをつぶすと空調トラブルになる
11 小劇場で動力盤や操作盤類を天井裏に設置しトラブルに
12 日射で冷房が効かない(温室を作らない)
13 報・連・相不足のトラブル
14 床下断熱をケチったため足元が寒くなった
15 多数の入場者のため冷房が効かなくなった床吹出し方式
16 床吹出し方式でもペリメータは別系統に

④換気のトラブル
4 -1 換気トラブルとは
4 -2 一般ビルの換気トラブル
1 冷温水発生器排気ガスの混入
2 梁巻きダクトに油が溜まって排気不良
3 外気調和器や共有外気ダクトがある場合の各階給気のアンバランス
4 隣接ビル排気の、外気取入れ口への回り込み
5 厨房給気を止められ風切り音が発生
4 -3 集合住宅・住宅の換気トラブル
6 レンジフードを運転すると厨房流しから空気が逆流
7 レンジフードを運転すると風切り音が発生
8 便所排気口からの逆流
9 24時間換気を行って中枢神経機能障害になった
10 給気口の面積不足で洗濯パンから臭気が逆流
11 二重管式ダクトの排気逆流
12 リニューアルを行ったらコンセントから隙間風
13 換気不足で初夏まで結露となった建築基準法不適合

⑤臭気のトラブル
5 -1 換気設備系臭気トラブル
5 -2 排水設備系臭気トラブル
1 洗濯パントラップからの臭気の逆流
2 トラップがないため排気口から臭気が上がる
3 3階建て住宅の排水ゴボゴボ音と臭気トラブル
4 バルコニーの異臭

⑥結露のトラブル
6 -1 水蒸気と結露の常識
1 外壁でなくても結露は起こる
2 吹出し口の結露
3 鉄骨造+ALC版構造の冷凍・冷蔵庫で天井内に結露
4 結露しやすい地下住宅・半地下住宅
6 -2 建築設計者に知ってほしい設備関連結露のトラブル

⑦風のトラブル
1 ホテルロビーは足元が寒い
2 侵入外気はエスカレータを下る
3 受付嬢の足元が寒い
4 風の通り抜け通路ができてしまった
5 足元が寒い地下の飲食店

⑧給排水設備のトラブル
 8 -1 給排水設備の機能不全
 8 -2 給排水設備の常識
1 最上階の水の出が悪い
2 鳥居配管で水栓から空気が噴出
3 排水勾配の不足で洗濯機洗剤の泡が逆流
4 オフセット配管で通気不良発生
5 通気弁の故障で排水・臭気・騒音トラブル
6 配管類の埋設配管が起こす各種トラブル
 8 -3 その他の建築設備関連給排水トラブル
 8 -4 給排水設備のエンジニアリングトラブル

⑨二次災害の防止
9 -1 二次災害防止対象室・スペース
9 -2 二次災害対応策
1 電気室上部の喫茶室厨房の水洗いにより電気室に漏水、全館停電に
2 スプリンクラ撥水事例
9 -3 高置水槽事故対応
3 塔屋設置の高置水槽がオーバーフローし、下階の機械室に浸水
4 高置水槽がオーバーフローし、下階のエレベータシャフトに流入
5 寒冷地のボウリング場で高置水槽がオーバーフローし、張り込み中の板を濡らした
6 高さ100mの展望室で漏水によりエレベータ停止

⑩隠すことからトラブルが始まる
       (室外機の省エネ的配置ほか)
10 -1 室外機の目隠しについて
10 -2 エアコン室外機の適切な配置計画とトラブル事例
1 外壁に設けた不適切な室外機置場で高圧カット頻発
2 目隠しガラリの羽根の向きにより、室外機排気がショートサーキットした
3 狭いスペースにたくさんの室外機を設置、不適切なガラリ配置で高圧カット頻発
4 屋上設置のビルマルチエアコン室外機が冷房停止
5 ベランダに多数の室外機を設置して高圧カット頻発
6 三方壁に囲まれた狭いベランダに2台の室外機が設置され高圧カットで冷房停止
7 ベランダ設置の室外機の排気が手すり壁に当たり高圧カット
8 バルコニー手すり脇のコーナーに設置して能力不足
10 -3 調査・計測事例
10 -4 シミュレーション事例
10 -5 大型ビルのエアコン室外機の配置について
10 -6 冷却などの隠蔽

◆コラム
・施工者のみが表彰された新築物件
・コンサートホールで気が付いたこと
・工場設備ではなぜトラブルが少ないのか
・女子トイレの数量不足と行列
・設備のグレードと経済的トラブル
・コンサートホールワインコーナーの混雑
・滞在空間と移動空間
・お盆の季節に(設計の)幽霊が出る
・外国製の水栓器具は水圧に注意
・同じ住居に操作の違う水栓が混在

はじめに

 モニュメント的なものは別として、すべての建築物は使用するために作られると考えてよい。建築物が計画・設計・製作されるにあたっては、顧客要求事項、法的要求事項および社会的要求事項が満足されなければならないが、出来あがってからの評価は、建築に関係するいろいろな立場によって若干の違いがある。
 事業者側の評価は、話題性、デザイン性、実用性であるが、有効率の大きさ、建設費・維持管理費の低廉さも重要である。使用者側の評価としては、安全性、使いやすさ、保守管理・メンテナンスの容易さが評価の基準であろうが、不具合・トラブル・クレームの少ないことは当然の前提条件でもある。最近のキーワードは、「省エネルギー」と「地球環境への配慮」である。
 建築設備のトラブルは多種多様であり、これに関する書籍はたくさん出版されている。しかし一品生産・現場生産という建築設備の製作上の特性から、依然として設備トラブルの発生はなくなっていない。この原因の1つは、建築設備が計画されてから設計・施工され使われるにいたるまでに、各段階ごとに多種多様な技術者(建築意匠設計者を含む)が存在し、(トラブル)情報の断絶が起きやすいことである。また、設備トラブルが各設備独自のエンジニアリングトラブルと、建築計画・設計が原因・要因である建築計画が原因となるトラブルに分かれていることも、もう1つの要因である。
 空調・衛生・電気各設備専門分野それぞれの技術体系下にあるエンジニアリングトラブルに関しては、施工会社で再発防止の努力を行っており、そのトラブル情報は社内で水平展開されている。もちろん設備設計各社もトラブル経験の反省は計画・設計に反映させるよう努力をしている。また空気調和衛生工学会や建築設備技術者協会でも会報・機関誌にトラブル情報コーナーを設けている。
 建築計画が原因の設備トラブルに関しては、第4章「建築生産における品質管理」で述べるような理由により、品質管理上の重要な手法であるPDCAサイクルが回らず、建築計画に起因する設備トラブル情報が建築計画・設計に反映されないことが多い。またトラブル発生・再発防止に関して各設備エンジニアの権限が及ばない分野が存在するため再発防止が難しい。これが建築計画原因の設備トラブルがなくならない最大の要因である。
 建築と設備はトレードオフ(二律背反・あちらを立てればこちらが立たず)の関係にあるので、設備トラブル防止のためには、建築計画・設計に潜む設備トラブルの要因について建築意匠設計者に理解していただくことが必要である。設備トラブル防止に配慮して計画することは、結果として建築計画における設備計画の組み込みが適切なものとなり、建築設計業務効率の向上、最終的には建物の品質向上につながるのである。また設備計画・設計に携わる者にとっても、建築設計者に設備計画・設計上の理解を求めるのに本書は役立つものと考えている。
 本書によって、建築・設備の計画・設計に従事する建築設計者、設備設計者が、設備トラブルの要因について理解していただき、建物の品質向上となることを願っている。
 なお、トラブル事例については、拙著や巻末にあげた参考文献より参考になるものを取り上げた他、筆者の友人・知人・メーカの技術者の方々からも貴重な情報を提供いただき、お礼申し上げます。
 また、挿画に関しては、すでに設備関係技術書で挿画の実績のある瀬谷昌男氏にお願いした。設備技術者でありイラストレータでもある瀬谷氏には、著者の意を汲んでトラブル状況を的確に表現していただいた。表紙に名前をあげてお礼を申し述べます。
 最後に、本書執筆の機会を与えていただいた日刊工業新聞社の奥村功出版局長、編集に当たってお世話になったエム編集事務所の飯嶋光雄氏にお礼申し上げます。
 
2015年8月
山本廣資

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