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生産技術革新によるコストダウン戦略の強化書
原価企画段階から財務レベルも含めたトータルコストを管理せよ

定価(税込)  2,592円

著者
サイズ A5判
ページ数 296頁
ISBNコード 978-4-526-07438-7
コード C3034
発行月 2015年07月
ジャンル 生産管理

内容

本書は「生産技術の枠組みを広げて財務レベルも含めた生産革新プロジェクトを断行すれば、コストダウンはもっと合理的に行える!」ことを解説した企業のコストダウン戦略を強化するための本。ある現場での生産革新プロジェクトをストーリー形式で追いかけることで、「労務費」だけではなく「材料費」にも気を配り、「作り方」だけではなく「買い方」「運び方」「運転資金の管理」などにおいても精緻な戦略を練り、「工場」だけではなく「間接部門」の管理活動や企画活動の生産性を向上させることで製造業の競争力の根源を改革する方法を学ぶ。

吉川武文  著者プロフィール

(よしかわ たけふみ):公認会計士

東京工業大学工学部修士卒。エンジニアとして三菱化学株式会社、太陽誘電株式会社に勤務。新製品開発や革新的な生産技術の開発に従事。数十億円規模のコストダウンや自動化の成果により三菱化学プレジデント表彰などを受賞。特許出願多数、1級保全技能士など。業務の傍ら原価計算を研究し公認会計士試験に合格した後、有限責任監査法人トーマツにて勤務。財務監査、内部統制監査、国連の排出権審査(CDM)などに従事。日本公認会計士協会の経営研究調査会サステナビリティ保証専門部会に参加。公認会計士登録の後、株式会社富士通ゼネラルの生産技術部部長を経て、現在は横河ソリューションサービス株式会社にて工場経営コンサルタントとして活動中。操業改善、業務改善、コストダウン、管理会計、情報ソリューションの導入支援など。著書に「モノづくりを支える管理会計の強化書」(日刊工業新聞社)、「付加価値会計の強化書」(日刊工業新聞社)などがある。

目次

はじめに…精神論から、合理的なコストダウン戦略へ

第Ⅰ部 現場に学ぶ……ある生産革新プロジェクト
効果
第1話 古い生産技術の風景(着任前日) ▲100億円

〈プロセス技術編〉 効果
第2話 これから取り扱うプロセスを理解する(着任 第1週) 0億円 未知への挑戦
第3話 シックスシグマ、そしてコストの構造(着任 第2週) 0億円 木を見る前に森を見る
第4話 同じものが作れないのはなぜ?(着任1ヶ月) 0億円 「常識」にこそチャンスあり!
第5話 生産性2倍を目指そう(着任2ヶ月) 0億円 活動目標の組み立て
第6話 科学の実験になっていないよ!(着任3ヶ月) 0億円 科学と非科学の境界
第7話 良いものを作るな!(着任4ヶ月) 0億円 再現性が全ての前提
第8話 夜の現場で3現主義を実践する(着任5ヶ月) 0億円 ヒントは現場にある
第9話 10年間解決できない問題の本質(着任6ヶ月) 0億円 コミュニケーションの失敗
第10話 全ての関係者の力を合わせる(着任7ヶ月) 0億円 異なる視点で見る
第11話 現場を巻き込む(着任8ヶ月) 0億円 現場の声を聴く
第12話 それ、何のための日誌ですか?(着任9ヶ月) 0億円 「必達目標」と「努力目標」
第13話 大きな会社にだって負けるな!(着任10ヶ月) 0億円 ムダな実験はムダなコスト
第14話 いつも教科書通りだとは限らない(着任11ヶ月) 10億円 正規分布を疑え!
第15話 設備仕様を見直そう(着任12ヶ月) 18億円 合意の記録を残す
第16話 進歩とは、古い何かを乗り越えること(着任13ヶ月) 18億円 組織と常識の壁
第17話 でたらめが理論に化けるからくり(着任14ヶ月) 18億円 乱数のグラフ
第18話 人から聞いたこと、自分で確かめたこと(着任15ヶ月) 18億円 レポートの書き方

〈工程設計編〉 効果
第19話 生産技術のお客様は現場の方々(着任16ヶ月) 18億円 経営と現場をつなぐ
第20話 小ロットが良いなんて、誰が教えた?(着任17ヶ月) 18億円 段取り替えというムダ
第21話 生産性2倍への道(着任18ヶ月) 18億円 ボトルネックと外段取り
第22話 ボトルネックはどっちだ?(着任19ヶ月) 18億円 全体観を持つ
第23話 頑張ることにもコストはかかる(着任20ヶ月) 18億円 自動化というワナ
第24話 「できること」と「やるべきこと」(着任21ヶ月) 18億円 手近なテーマに逃げ込まない
第25話 床にマークを付けて立ってみる(着任22ヶ月) 18億円 ガムテープと段ボール
第26話 仕掛品の山を作れ!(着任23ヶ月) 18億円 「仕掛らない」と「仕掛れない」は違う
第27話 ライン設計は安全第一、シンプルが第二(着任24ヶ月) 18億円 大切なものを見失わない

〈イノベーション編〉 効果
第28話 コンセプトを作る方法(着任25ヶ月) 20億円 夢の形を描く
第29話 モックアップを作りコンセプトを検証する(着任26ヶ月) 20億円 任せて、技術者を育てる
第30話 「当たり前」と言われることをやり遂げる(着任27ヶ月) 20億円 計画的な保全
第31話 ボトルネックを狙って叩け!(着任28ヶ月) 28億円 自動化の真の力
第32話 発明者になろう(着任29ヶ月) 28億円 特許の出し方

〈工場マネージメント編〉 効果
第33話 明るくなった現場(着任30ヶ月) 28億円 生産技術の基礎知識編
第34話 会計は技術の夢を実現する力(着任31ヶ月) 28億円 「頑張ろう」は目標ではない
第35話 コストダウンの効果の検(着任32ヶ月) 23億円 金額評価のもう一つの意味
第36話 製造業のパラダイムシフト(着任33ヶ月) 23億円 作るだけが能じゃない!
第37話 社長との会話(着任34ヶ月) 無限大 トップの覚悟と支援
第38話 3年頑張れば世界一!(着任35ヶ月) 無限大 次の世代の技術者に伝えたいこと
第39話 生産技術は魔法じゃない!(着任36ヶ月) ?億円 「できない」も1つの答え


第Ⅱ部
新しいコストダウンのヒント
〈コストハーフをどう組み立てますか?〉
第40話 どこにも原価計算が出てこない! 生産技術の新たなフィールド
第41話 変動費はコストダウン、固定費はイノベーション 逃げ回る労務費

〈材料費のコストダウン戦略〉
第42話 差異を出さなきゃ、管理じゃない! 作り方で負けているのではない
第43話 エネルギー費の目標管理 長期的な視点で明日に備える
第44話 生産が始まってからでは手遅れ! 原価企画と、トータルコストのコントロール

〈物流費のコストダウン戦略〉
第45話 工場の中も外も区別しない! サプライチェーン全体をカバーする

〈運転金利のコストダウン戦略〉
第46話 見えない在庫…売上債権 加重平均資本コスト(WACC)
第47話 「ゼロ在庫」じゃあ目標にならない! 健全な議論ができる現場にする
第48話 遊休資産と5S経営、ROAのカイゼン 財務指標を工夫する

〈製造労務費のコストダウン戦略〉
第49話 標準工数の設定にも基準が必要 固定的な労務費と変動費的な労務費の違い
第50話 カイゼン復活の方法とは? カイゼンと日本的経営
第51話 なぜ自動化は成功しないのか? 攻めの自動化、逃げの自動化

〈固定費のコストダウン戦略〉
第52話 コストダウンだけでは全く足りない! コストから付加価値への意識のシフト

〈付加価値会計によるコストダウン活動の管理〉
第53話 クラウドがやってくる! 全ては会社のポリシー次第
第54話 コストダウン活動が管理しやすい会計 指標の形が行動を決める


おわりに…生産技術者は失業しない! 絶対に生き残る!

はじめに

はじめに…精神論から、合理的戦略へ

コストハーフ、やればできるか?
生産技術に「なぜなぜ分析」という手法があります。物事の本質に迫るなら、疑問を5回はぶつけてみなさいと言われます。そこでさっそく最初の疑問をぶつけてみましょう。
質問1.製造業とは何でしょうか?
これは少し突拍子のない質問かもしれません。「製造業は製造業だ。モノづくりの会社に決まっているだろう!」とお叱りを受けそうです。とはいえ、ただ闇雲にモノを作ってもビジネスモデルにはなりません。利益も得られないでしょう。会社のモノづくりには必ず何等かの強みがあり、それが競争力の源泉となっている筈です。そこで次の質問です。
質問2.会社の競争力の源泉は何でしょう?
ここでは「当社の競争力の源泉は技術力!」という答えを頂くことがほとんどです。では、更に一歩踏み込んで、
質問3.技術力とは何でしょう?
と重ねて問うならどうでしょう。技術とは知識でしょうか? 人材でしょうか? 最新鋭の生産装置でしょうか? あるいは特許でしょうか? ここでまた質問を変えてみます。
質問4.‌どうすれば技術力は高まりますか? 会社は技術力を高めるため今何をしていますか?
製造業というビジネスモデルにおいて「技術力」と呼ばれるものほど曖昧に使われている言葉はないかもしれません。多くの場面において「技術力」はまるで魔法のキーワードです。
〈何でも解決、「技術」という名の魔法!〉
厳しい時代を乗り切るため技術力でコストハーフにせよ!
生産技術を駆使して徹底的にモノづくりのムダ取りをせよ!
やればできる! 技術力があれば必ずできる!
ここで気付かされるのは、「技術」あるいは「生産技術」と呼ばれているものが、多くの場面で「モノづくりのムダ取り力」即ち「労務費のムダ取り力」として認識されているらしいことです。即ち製造業は、素材を仕入れ「加工」を施して販売するという点において、仕入れたものをそのまま販売する商社や流通業とは異なります。「うちはモノづくりの会社であって、商社じゃないんだ!」というのが私の昔の上司の口癖でした。ですからモノづくりの技術を磨いた結果として省かれるムダとは、当然に「加工費のムダ」であり、経営の視点に立てば製造現場の「労務費のムダ」ということになるでしょう。つまり、
        ‌「生産技術力」
≒「ムダのないモノづくり力」
≒「現場の労務費のコストダウン力」
だったのです。
ところが今日のモノづくりのコスト(製造原価)を調べてみると、多くの製造業で材料費が80%以上、労務費が10%以下だったりするので驚かされます。労務費率が著しく下がっているのです! この状況でどれだけ優れたモノづくり力を発揮しようとも、80%の材料費を減らすことはできません。むしろ資源の枯渇、あるいは新興国の経済発展などが材料費の高騰傾向をこれから更に加速していくことでしょう。そこで最後の質問です。
質問5.今の生産技術で、コストハーフが実現できますか?
多くの現場に限界感が漂っています。
生産技術の新しいミッション
製造業の様々な活動の中で「モノづくり力」の中核を成すのが生産技術です。従来の生産技術は、例えば「図面に表現されたアイディアを具体的な製品にムダなく作り上げていくための技術」などと表現されてきました。まさに製造業の競争力の根源であり、
モノづくりという活動の根幹となってきたものです。
生産技術は、知識、ノウハウ、経験、技能といった様々な価値の集合体であり、長年の蓄積がものをいう世界でもありました。ところが昨今では、人材の流動化やインターネットの普及、技術のデジタル化などで、これらの蓄積がすっかり失われてしまったようです。
しかしながら、今日の生産技術(あるいは製造業)の不振は、知識やノウハウの流出にのみ起因するものではありません。例えばモノづくりの教科書を紐解けば、そこには様々なムダ取りの知識がずらっと並んでいます。しかしそれを読んで「これだ!」と思うことは少なくなり、ワクワクすることもなくなったと感じるのは私一人でしょうか? では、
なぜ、ワクワクしなくなってしまったのか?
恐らく今日の生産技術(あるいは製造業)の最も根底にある問題は「目標を見失っていること」かもしれません。目標を見失っているからこそ小さなムダ取りばかりが話題になり、創造的活動としてのダイナミズムが失われてしまったのです。適切な目標をしっかり見定めれば、日々の活動の効率は自ずと改善されていくものでしょう。仮にそれ等を「外段取り」「多台持ち」「多能工」などと呼ぶことを知らなくても、現場が1つの目標に向かって真に一丸となって頑張っているのなら、手が空いてブラブラしている人などいる筈がありません。
改めて今、小さなムダ取りの「技」を駆使するだけでは製造業の危機を救うことはできなくなりました。いわんや、それだけでコストハーフが実現できる筈もありません。
工数を削減しても、代わりにやるべき仕事がなく
最悪の場合には自分自身の失業に直結する可能性さえあるとしたら、現場はどうして頑張ろという気持ちになるでしょう? どうやら目標設定が正しくないようです。このまま製造原価の10%に過ぎない労務費の削減だけをやっていたのでは、生産技術者はその存在意義を失い失業してしまうでしょう。否、恐らくこれからの生産技術が担うべき新しい役割(ミッション)とは、従来の枠を超えた遥かに広大で重要なものなのです。即ち、
1.「労務費」だけではなく「材料費」にも気を配り
2.「作り方」だけではなく「買い方」「運び方」「運転資金の管理」などにおいても精緻な戦略を練り
3.「工場」だけではなく「間接部門」の管理活動や企画活動の生産性を向上させ
4.製造業の競争力の根源であるべき研究開発活動においても適切なサポートをしていく
それらが今後も引続き「生産技術」という名前で呼ばれるべき活動であるか否かはともかくも、
誰かがそれをやらなければなりません。
そして恐らく生産技術者の他に、この困難でダイナミックなミッションを担うことができる人材は会社の中に存在しないのです。
イノベーションに向き合おう
モノづくりはコスト(現場の労務費だけではなく全てのコスト!)との戦いです。しかし従来の技術者の大半が不思議とコストや原価計算について体系的に学ぶ機会を持つことがありませんでした。大学の工学部の講義や生産技術のテキストにもコストや原価計算の説明はほとんど出てきません。しかしこれからの技術者は、従来の古い知識の枠組みに囚われず、常にコストの構造を意識しながら取り組むべき課題の優先順位を判断し、製造業の競争力をアップする新しいミッションを築き上げていかなければならないのです。
新しいミッションに向かって自由自在に変化していく力
こそ、厳しい国際競争を生き残り、日本の製造業を再び復活させるために必要な新しい「技術力」であり、イノベーションの1つの形です。真のコストダウンはそこにあります。ではどうすればイノベーションは起こるのか?
技術は素晴らしい仕事です。本書はモノづくりに関わる全ての技術者の方々が(特に生産技術に従事する技術者の方々が)取り組むべき目標を再発見し「イノベーション」に向き合うに際に必要だと思われる知識とマインドの整理を試みるものです。
生産技術は、本当はとてもクリエイティブな仕事!!!

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