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今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしいヨウ素の本

定価(税込)  1,620円

著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-07428-8
コード C3034
発行月 2015年06月
ジャンル ビジネス 化学

内容

ヨウ素は、うがい薬など身の回りにあるものから、自動車、電機などの工業分野、次世代太陽光電池や宇宙関連などの最先端のところまで、さまざまな分野で使われている。また最近では福島第一原子力発電所の事故で注目された元素でもある。本書では、そのヨウ素がどのようなものか、どんな機能があるか、また各分野においてどのような使われ方をしているかを丁寧に解説する。

海宝龍夫  著者プロフィール

(かいほう・たつお)

1976年大阪大学工学部修士課程修了、1976年三井東圧化学株式会社(現三井化学)入社。1979年~1982年マサチューセッツ工科大学理学部化学科客員研究員、1995年三井東圧化学株式会社主席研究員、2001年~2003年千葉大学共同研究推進センター客員教授。2004年関東天然瓦斯開発株式会社入社、2009年関東天然瓦斯開発株式会社理事。2012年日本天然ガス株式会社取締役。2015年株式会社合同資源・技術顧問。理学博士(大阪大学)。技術士(化学部門)。ヨウ素学会理事(事業委員長)。
受賞歴:2001年千葉県科学技術功労者表彰「ヨウ素化合物の開発」、2002年有機合成化学協会賞(技術的)「カリウムチャンネル遮断剤の分子設計と開発」、2012年ヨウ素学会賞(技術的)「機能性ヨウ素化合物の開発」
主な出版物:Iodine Chemistry and Applications(監修)、 John Wiley & Sons, Inc. Hoboken, NJ, 2014。「ヨウ素の化学と最新応用技術(共著)」、シーエムシー出版(2011年)。

目次

はじめに

第1章 ヨウ素ってなんだろう
1 私たちの生活に深く関わるヨウ素製品「うがい薬から液晶テレビまで」
2 ほとんどの元素と反応するヨウ素「安定ハロゲン元素の中で一番重くて大きな元素」
3 ヨウ素はフランスで発見された「発見者ベルナール・クールトア」
4 ヨウ素の作り方の変遷「灰化法、銅法、活性炭法、デンプン法」
5 日本は世界第2位のヨウ素生産国「ヨウ素の世界生産量」
6 天然ガスとともに採れるヨウ素「古代からの贈り物」
7 古代海水からヨウ素を取り出す!「ヨウ素は揮発・吸着し易い」
8 チリ硝石とともに採れるヨウ素「原鉱石カリーチ」
9 ヨウ素はリサイクルされる「ヨウ素資源は限られている」

第2章 身の回りのヨウ素
10 ヨウ素は地球を駆け巡る「ヨウ素の大気循環」
11 うがい薬に使われるヨウ素「ポビドンヨード①」
12 ヨウ素入り抗菌・防毒マスク「ヨウ素吸着樹脂」
13 ヨウ素入り抗菌剤「酵素合成アミロースでヨウ素を安定化」
14 シクロデキストリンはヨウ素を包接する「シクロアミロースがヨウ素を安定化する」
15 カビ退治にヨウ素化合物「ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニル ジヨードメチルパラトリルスルホン」
16 食用色素にヨウ素「赤色3号、赤色105号」
17 ヨウ素は人間や動物の必須元素「甲状腺ホルモン」
18 なぜ海藻はヨウ素を濃縮するの?「海藻はヨウ素で酸化から身を守る」
 
第3章 電子・情報材料を支えるヨウ素
19 ヨードで次世代半導体を開発「新たなエッチングガス ヨウ化トリフルオロメタン」
20 液晶プロジェクターの製造にもヨウ素「高純度ヨウ化水素ガスでドライエッチング」
21 ヨウ素は現代の情報機器には欠かせない「偏光フィルム」
22 電荷輸送材の合成はヨウ素化合物で「ジヨードビフェニル」
23 斜めからでも鮮明に見える液晶にヨウ素「ワイドビューフィルム」
24 ヨウ素を使ってグラファイトを作る「ヘリカルグラファイト」

第4章 ヨウ素で分析する
25 理科の実験で習った反応「ヨウ素デンプン反応」
26 ヨウ素の濃度を測る「いろいろなヨウ素の分析法」
27 ヨウ化物イオン濃度の測り方「イオンクロマトグラフ」
28 油脂の性質はヨウ素でわかる「ヨウ素価」
29 水分分析とヨウ素「カールフィッシャー法」
30 放射線をヨウ化物で測る「シンチレータ」
31 ヨウ素の構造を光で調べる「ラマン分光分析」
32 非破壊でヨウ素濃度を測定する「放射光X線吸光分析」

第5章 革新的な工業技術はヨウ素から
33 酢酸の合成に使われるヨウ素「ヨウ素イリジウム錯体」
34 撥水剤の合成に欠かせないヨウ素「テローゲン」
35 世界的発明の裏にヨウ素があった「導電性ポリマー」
36 ナイロン安定剤にヨウ素「無機ヨウ素化合物でポリマーを安定化」
37 ヨードニウム化合物でリソグラフィー「光重合触媒」
38 消火剤に使われるヨウ素化合物「ヨウ化トリフルオロメタン」
39 3Dプリンターにヨードニウム塩「重合触媒」
40 金属ヨウ化物は新たな反応剤「ヨウ化サマリウム」
41 超原子価ヨウ素酸化剤は安全性が高い「環境調和型の反応剤」
42 ヨウ素化合物で精密重合「リビング重合」
43 有機ヨウ素化合物の合成法は?「ヨウ素化剤」

第6章 健康を保つにはヨウ素が必要
44 医薬品におけるヨウ素の役割「ヨウ素を含む医薬品にはこんなものがある」
45 手術前の消毒にヨウ素「ポビドンヨード②」
46 抗原虫治療薬はヨウ素化合物「アメーバ赤痢特効薬」
47 脳や心臓の検査にはヨウ素系造影剤「X線を遮断するヨウ素系造影剤」
48 放射性ヨウ素の防御に安定ヨウ素剤「原発周辺で配布されるヨウ素剤」
49 治療薬、診断薬としての放射性ヨウ素「放射性ヨウ素は悪者とは限らない」
50 医療用のヨウ素リチウム電池「心臓ペースメーカ」
51 床ずれ治療にヨウ素包接化合物「カデキソマー・ヨウ素」

第7章 野菜の生産や家畜の飼育にもヨウ素
52 家畜用飼料添加剤もヨウ素化合物「エチレンジアミン・二ヨウ化水素酸塩」
53 搾乳にヨウ素系殺菌剤「乳頭の炎症防止」
54 雑草退治にも活躍するヨウ素「ヨウ素系農薬・除草剤」
55 野菜の病気を防ぐヨウ素「ヨウ素系農薬・殺菌剤」
56 安心安全な野菜はヨウ素から「ヨウ素系農薬・殺虫剤」
57 農業用ヨウ素殺菌システム「ヨウ素濃度制御システム」
58 ヨウ素で雨を降らせる「人工降雨」

第8章 次世代技術はヨウ素から
59 次世代太陽電池はヨウ素が決めて「色素増感型太陽電池」
60 原子力発電の排熱利用にヨウ素「IS法水素製造プロセス」
61 宇宙船の浄水はヨウ素で「回収水の殺菌装置」
62 ヨウ素でクロスカップリングが出来る「超原子価ヨウ素化合物」
63 ヨウ素レーザー「化学反応で発生させるレーザー光」
64 ヨウ素のハロゲン結合で分子設計「ヨウ素のハロゲン結合が一番強い」
65 海洋性ヨウ素化合物から新薬を開発する?「含ハロゲン海洋天然物」

【コラム】
●ヨウ素の効能は古くから知られていた?
●偶然うまれたヨウ素化合物ヘラパタイト
●ヨウ素富化作物
●ヨウ素化合物がアルツハイマー薬になる?
●ヨウ素で偽札を見破れ
●古代史に登場するヨウ素化合物
●ヨウ素で都市鉱山を採掘
●ペロブスカイト太陽電池

参考文献
索引

はじめに

 2011年は、良きにつけ悪しきにつけヨウ素に注目の集まった年でした。2011年3月11日に発生した東日本大震災。それにつづく福島第一原子力発電所の事故で一躍有名になったヨウ素(ヨード)ですが、安定ヨウ素と放射性ヨウ素を区別して報道されるようになったのは、しばらく時間が経過してからでした。放射性ヨウ素の原子量は131に対して安定ヨウ素の原子量は127です。実は、日本は世界のヨウ素(安定ヨウ素)産出量の約3割を占める世界第二位のヨウ素生産国なのですが、当時、このことが取り上げられることはほとんどありませんでした。
 一方、2011年は、ヨウ素の歴史上きわめて重要な年だったのです。フランスでベルナール・クールトアによって海藻からヨウ素が発見されたのが1811年のことでした。それから丁度200年の節目にあたる2011年の秋にはヨウ素工業会、ヨウ素学会の後援によりヨウ素発見200年を記念した講演会やシンポジウムがヨウ素の主産地である千葉で開催されました。さらに化学専門誌にはヨウ素総説が掲載され、専門書も発行されました。しかし、これらはいずれも専門的すぎて一般の方たちに理解してもらうには難しすぎる内容となっています。
 このような背景から、本書では、ヨウ素メーカーの技術者や大学の研究者の協力を得てヨウ素の基本的な性質からヨウ素を利用したさまざまな製品や技術まで、やさしく解説することにしました。
 ヨウ素と聞いてみなさんは、まず何を思い浮かべるでしょうか。うがい薬あるいは消毒薬でしょうか、それとも理科好きの方はヨウ素デンプン反応でしょうか。実は、ヨウ素は私たちの身近な生活の中に広く行きわたっているのです。第1章では「ヨウ素ってなんだろう」と言う疑問に答えることから始まり、第2章では身近なうがい薬から意外に知られていない「身の回りのヨウ素」について紹介します。第3章では「電子・情報材料を支えるヨウ素」についてまとめました。第4章「ヨウ素で分析する」では大学の研究室、企業の研究所や工場の分析室で広く利用されているヨウ素を用いた分析技術についてリストアップしました。第5章「革新的な工業技術はヨウ素から」ではすでに工業分野で実用化されているヨウ素特有の性質を利用した製品や技術を取り上げました。第6章「健康を保つにはヨウ素が必要」では病院を中心に医療分野で使われているヨウ素を紹介します。第7章「野菜の生産や家畜の飼育にもヨウ素」では普段の食卓にならぶ野菜や乳製品とヨウ素の関わりについて解説します。最後に第8章「次世代技術はヨウ素から」ではヨウ素が切り拓く未来技術と将来展望について触れています。
 本書の読者には貴重な国産資源であるヨウ素に対する理解を深めていただき、特に若い方にはヨウ素利用した国産技術の開発に期待したいものです。
 本書執筆にあたりご協力いただいたヨウ素メーカーの技術者の方々、ヨウ素製品のメーカーの技術者の方々、大学の研究者の方々に心よりお礼申し上げます。また、編集を担当していただいた日刊工業新聞社阿部正章氏ならびにお世話になった関係各位に感謝申し上げます。

2015年5月
株式会社合同資源 技術顧問
海宝龍夫

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