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エコ・リーディングカンパニー東芝の挑戦
環境戦略が経営を強くする

定価(税込)  2,160円

編者
サイズ 四六判
ページ数 272頁
ISBNコード 978-4-526-07430-1
コード C3034
発行月 2015年06月
ジャンル 経営 環境

内容

東芝は、社長自らが先頭に立って超長期の環境目標を踏まえて経営に取り組んでいる。環境性能で業界トップを目指した製品開発をはじめ、さまざまな環境経営戦略を実行、日本を代表する「環境企業」としての地位を固めている。本書は、東芝の環境経営の軌跡を追うとともに、現在の環境戦略の全貌と将来の展望を解き明かす。

日刊工業新聞社  著者プロフィール

【著者】

松木 喬(まつき たかし)

日刊工業新聞 環境担当記者

担当:プロローグ、第1章、第2章、第4章、第5章



石川 憲二(いしかわ けんじ)

ジャーナリスト、作家、編集者

担当:第3章



【取材協力、資料・写真提供】

㈱東芝、東芝キヤリア㈱、東芝テック㈱、東芝メディカルシステムズ㈱、
東芝ライテック㈱、東芝ライフスタイル㈱

目次

はじめに  


プロローグ  ─ エコ・リーディングカンパニーへの決意  


第1章 環境経営の軌跡

《環境経営の歴史① 模索期 88年~91年》

88年からあった「全員参加」の思い  
《環境経営の歴史②  黎明期 92年~96年》

トップの理解、役員の応援で環境活動の基盤完成  

《環境経営の歴史③ 発展期 97年~06年》

攻めの情報公開で経済と環境の両立に挑む  
《環境経営の歴史④ 展開期 07年~14年》

ビジョン、戦略、羅針盤で攻めの環境経営へ  

エコ・リーディングカンパニーへの期待  


第2章 環境経営を支える四つの「Green」

四つのGreenで事業経営と環境経営の一体化  
Green of Product―環境性能№1の製品を創出せよ  

Green by Technology―世界の温室効果ガス排出量を削減  

Green of Process―高効率モノづくりでグローバル№1の低環境負荷を追求  

Green Management― 環境経営の基盤強化、次世代を担う人財育成  


第3章 環境先進プロジェクト

《環境先進プロジェクト①》 ドラム式洗濯乾燥機 ZABOON 東芝ライフスタイル 

環境性能のさらなる向上を目指し洗濯機はこれからも進化していく  

《環境先進プロジェクト②》 複合機 Loops 東芝テック

紙を使いながら環境に配慮した世界初のペーパーリユースシステム  

《環境先進プロジェクト③》 MRIシステム Vantage Elan 東芝メディカルシステムズ

環境性能№1の製品こそがビジネスでも№1になれる!  

《環境先進プロジェクト④》 コンバインドサイクル発電システム 電力システム社

世界最高62%の熱効率を実現する最先端の高効率複合火力発電  

《環境先進プロジェクト⑤》 地熱発電 電力システム社

環境に配慮した安定電源としても期待される地熱発電の技術と実績で世界トップに!  
《環境先進プロジェクト⑥》 ヒートポンプCAONS 東芝キヤリア

使ったエネルギー以上のエネルギーが得られる魔法のヒートポンプで熱源革命を起こしたい  

《環境先進プロジェクト⑦》 四日市工場 セミコンダクター&ストレージ社

世界トップクラスのメモリを製造する世界トップクラスの環境配慮工場  

《環境先進プロジェクト⑧》 絶滅危惧種ハマカンゾウ 東芝ライテック

「工場」が希少植物を守る聖域になる 絶滅の危機にある野草を救え!  


第4章 東芝グループの環境マネジメントを支える環境推進室

環境推進室の仕事  

《環境推進室の取り組み①》

化学物質規制の荒波から東芝グループを守る  

《環境推進室の取り組み②》

トップと現場をつなぐ喜ばれる監査  

《環境推進室の取り組み③》

目指せ20万人! 社員、地域、世代をつなぐ環境コミュニケーション  

《環境推進室の取り組み④》

業界の環境レジェンド  

これからを担う強い「環境人財」の育成  


第5章 2050年への未来ビジョン

環境経営の新コンセプト T―COMPASS  

 インタビュー 田中久雄社長に聞く

なぜ、東芝はエコ・リーディングカンパニーを目指すのか  


おわりに  

はじめに

株式会社東芝 取締役会長 室町正志



 東芝は2015年7月に創立140周年を迎えます。1875年7月に田中久重が電信機製造工場として開業した田中製造所が当社のルーツであり、後にモーターや発電機を製造することになる「芝浦製作所」の前身です。もう一つのルーツは1890年に藤岡市助が創設した白熱舎であり、日本初となる電球製造をスタートさせ、後に「東京電気」として発展していきます。1939年には両社が「東京芝浦電気株式会社」として合併、さらに1984年には「株式会社東芝」に改名し、今日に至っています。この過程で数々のイノベーションを実現し、卓越した技術により社会に貢献してきました。現在は複合電機メーカーとして、安心・安全・快適な社会、Human Smart Communityの実現を目指しています。

 今回、日刊工業新聞社殿からお申し出を受け、東芝グループの環境経営を体系的に整理する機会をいただきました。同社の取材に全面的に協力させていただき、当社の活動を過去、現在、未来までを俯瞰できる形で読者の皆様にお届けできることはたいへん喜ばしいと考えております。

 60年代の日本では急速な経済発展とともに、水俣病や四日市ぜんそくなどのいわゆる四大公害病の他、典型七公害により人間健康への被害が深刻化しました。この大きな社会問題に対し、各企業は工場における公害防止活動を徹底し、問題解決に取り組んできました。80年代ころからは地球環境問題や社会貢献が重要視されるようになり、個別法令対応・エンドオブパイプ対策(工場・事業場の排出口での対策)だけでなく、企業の環境保全に取り組む姿勢が問われる時代へと移行します。特に地球温暖化問題は喫緊の課題とされ、世界的に低炭素社会への道筋が議論されてきました。97年には京都議定書が採択され、まず先進国において温室効果ガス削減に舵を切りました。その後08年の洞爺湖サミットでは、50年までに温室効果ガスの排出量を50%削減する目標を世界全体で共有するよう求めるなど、新興国および発展途上国も参加する形での枠組み確立に向けて国際的にも日本のプレゼンスは高まりました。しかし11年3月11日に未曾有の震災が日本を襲い、東京電力福島第一原子力発電所で事故が発生します。地球温暖化対策の流れから見れば、エネルギー・環境政策の大きな転換点となりました。地球温暖化対策の根幹をなすエネルギーミックスが不透明な状況となり、国際的に見ても日本における温暖化対策の議論は大幅に遅れています。今後、20年以降すべての国が参加する形で国際的な温室効果ガスの削減ターゲットが採択されるか否か、15年に開かれる気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)の役割は大きいといえます。同時に、日本におけるエネルギーミックスのあり方を決める意味でも、重要な局面にきているといえるでしょう。

 10年の環境担当役員時代、東芝グループの温室効果ガス排出量を「ピークアウト」する宣言を出しました。半導体事業を拡大・増産する一方で環境負荷総量は減らさなければいけないというせめぎ合いの中で、大きな決断だったことを記憶しています。現在は立場を変え、WEF(世界経済フォーラム)やWBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)などに参画し、グローバルな視点で低炭素社会の構築に向けた政策提言に携わっていますが、温暖化対策の国際交渉の場においても同様の「せめぎ合い」がしばしば見受けられます。温室効果ガス排出量をドラスティックに削減するためには、社会システムの根本的な変革が必要不可欠であり、国や産業の競争力に直結します。各国政府と民間セクターの相互協力によって新興国や発展途上国における低炭素型の社会インフラ整備を進めるなど、成功事例を積み上げていくことが問題解決につながる一つのアプローチだと考えています。この意味で、われわれ企業が果たすべき役割もますます重要になります。当社はエネルギー供給側から需要側まで幅広いソリューションを有しており、グローバルな温暖化対策に貢献していく所存です。

 今回、第三者の目でわれわれの活動を客観的に整理、分析していただき、改めてわれわれの強みやさらなる発展に向けた課題を整理することができました。近年の環境対応はビジネスリスクとしてだけでなく、社会課題の解決が企業の中長期的な成長につながると認識されるようになったことで、経営課題の一つとして定着してきた感がありますが、「環境対応を全社運動としていかに根付かせるのか?」「どのように付加価値につなげていくのか?」は、多くの企業において共通の問題意識といえるのではないでしょうか。当社歴代の経営陣や環境推進部門の担当者たちは、この課題と真摯に向き合ってきました。当社が試行錯誤しながら環境経営を推し進めてきたプロセスは一つのモデルであり、「トップのリーダーシップ」や「事業戦略と環境戦略の一体化」など、多くの示唆に富むものであると確信しています。

 もはや「環境」を抜きにして将来の社会や経済のビジョンを語ることはできません。本書を通じて、広く皆様にも環境経営の知見をお伝えし、新しい時代を切り拓く一助となることを願っています。本書が環境経営の羅針盤となれば幸甚に存じます。


2015年6月

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