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おもしろサイエンス
錆の科学

定価(税込)  1,728円

著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-07396-0
コード C3034
発行月 2015年05月
ジャンル ビジネス 金属

キーワード

内容

錆は工業において厄介者とされているが、その一方で機能材料として利用されてもいる。錆の成分である酸化鉄は古くから着色顔料として使われてきたが、今日では磁性材料としてITを支え、医療や環境用途にも応用が広がっている。錆は古くて新しい工業材料なのである。

堀石七生  著者プロフィール

(ほりいし ななお)

1960年、京都工芸繊維大学工業短期大学部機械電気科卒業、戸田工業㈱入社。
1980年、同社創造部研究部長。
1988年、同社取締役役員、創造本部副本部長。
1999年、同社役員退任、常勤技術顧問。
2001年~2003年、岡山大学非常勤客員教授。
2002年、東京工業大学非常勤客員教授。
2003年~2005年、東京理科大学非常勤講師。
工学博士(1999年、東京工業大学)。

受賞歴には、1981年科学技術庁長官発明奨励賞、1994年粉体粉末冶金協会賞技術功績賞、2000年特許庁長官発明奨励賞、2005年加藤科学振興会加藤記念賞などがある。

著書:「機能性酸化鉄粉とその応用」(米田出版)

目次

はじめに

第1章 
錆はどのようにしてできるか  

1  鉄は水と酸素で錆びる
2  金属の腐食のいろいろ
3  配水管の錆
4  水道水の水質と錆
5  腐食を制する錆


第2章 
天然産の鉄錆

6  鉄器の原料は天然の鉄錆
7  鉄鉱石の誕生
8  赤い土と鉄錆
9  黄色い土と鉄錆
10  黒い土と鉄錆



第3章 
伝統産業に使われた鉄錆

11  天平文化の香りを伝える鉄錆
12  弁柄格子に使われる鉄錆
13  赤漆に使われる鉄錆
14  赤絵磁器に使われる鉄錆
15  南部鉄器に使われる鉄錆
16  人工鉄錆の誕生

第4章 
現代の基幹産業を支える鉄錆  

17  鉄錆は鉄鋼産業のコメ
18  赤レンガは土の錆
19  ステンレス鋼は錆で錆を防ぐ
20  電磁石になった鉄錆
21  テレビ放送を支えた鉄錆
22  電波吸収材になった鉄錆
23  酸化鉄の無公害製法


第5章 
情報化社会をつくった鉄錆

24  大量の情報を記録する鉄錆
25  オーディオテープに使われる鉄錆
26  ビデオテープに使われる鉄錆
27  磁気トナーに使われる鉄錆
28  フロッピーディスクに使われる鉄錆
29  磁気カードに使われる鉄錆
30  磁気切符に使われる鉄錆


第6章 
未来産業へと続く鉄錆の新機能  

31  磁性細菌がつくる黒錆を医療分野に利用
32  鉄バクテリアがつくる赤錆で地下水を浄水
33  燃焼触媒になるナノ粒子の鉄錆
34  磁性流体になる鉄錆を宇宙服や音響機器に利用



Column

鉄錆から生まれた羅針盤
たたら製鉄の原料も鉄錆
お歯黒は予防歯科だった
「黒染め法」は古くて新しい防食技術
紫外線をカットする鉄錆

参考文献
索 引

はじめに

 


日常用品の金属製品には錆が発生することは、どなたでもご存知だと思います。金属が酸化して錆びることを「腐食」と言います。これは金属が朽ち果てて金属ではなくなることを意味します。日常用品や生活環境の中の金属製品が錆びることは生活する上で障害になります。そこで、金属の腐食を防ぐための防錆技術の開発が古くから行われてきました。

 その一方で、錆を工業材料として積極的に利用してきたもう一つの歴史があります。鉄が酸化して錆となったものを酸化鉄と言いますが、酸化鉄は広い地域で天然に産出し、着色顔料として古くから広く重用されてきました。赤錆からなる弁柄は、旧石器時代のラスコーの洞窟壁画の時代から用いられた長い歴史をもち、日本では弁柄格子や有田焼の赤絵などが有名で、色の鮮やかさとともに優れた耐候性ももっています。また、お歯黒や南部鉄器の表面処理のように黒錆も防食目的で利用されていました。今日では人工合成された酸化鉄は、着色顔料のみならず、磁石、磁気テープ、自動改札切符、トナーなど種々の磁性材料としても利用されITを陰で支えていますが、このことをご存知の人は意外に少ないようです。

 著者は1960年に酸化鉄メーカーの戸田工業㈱に入社しました。当時、酸化鉄の製造工程で発生する有毒な亜硫酸ガスが公害問題となっていました。著者は亜硫酸ガスを発生させない無公害製法を1965年に開発し、そして、この技術の応用によって酸化鉄は磁性材料に生まれ変わりました。

 著者は酸化鉄の機能性と合成法に関する研究開発に長年取り組んできた結果、鉄錆は古代から現代に至る文明と産業を支えてきた古くて新しい工業材料であり、多様で優れた機能性があることを知りました。そこで、多くの人々に鉄錆の百面相の機能性を知ってもらうために本書を書きました。鉄錆が生活に密着した有用な工業材料であることを理解していただければ幸いです。 

 出版に際し、出版の動機とご推薦を賜りました早稲田大学名誉教授の一ノ瀬昇先生に心からの感謝を申し上げます。また、編集企画を全面的にご支援いただきました日刊工業新聞社出版局書籍編集部の森山郁也氏に厚くお礼申し上げます。



2015年5月 

堀石 七生

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