買い物かごへ

おもしろサイエンス
長もちの科学
良い製品を長く大事に使うための技術

定価(税込)  1,728円

編者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-07410-3
コード C3034
発行月 2015年04月
ジャンル ビジネス 化学

内容

大量生産・使い捨ての時代から、良い製品を長く大事に使っていく時代に変わりつつある今日、安心して長く使用できる日本の工業製品は大きな強みをもつ。その背景には近代以前からモノの長もちを追求してきた歴史がある。長もちさせるための技術を伝統工芸やインフラ設備にも視点を広げて取り上げる。

京都工芸繊維大学 長もちの科学研究センター  著者プロフィール

執筆者



第1章 日本の工業製品の強みは長もちにある

西村 寛之〔京都工芸繊維大学〕


第2章 伝統工芸に隠された長もちの科学

いにしえから文字を伝える媒体、長もちする和紙

岡 泰央〔(株)岡墨光堂〕

手編み金網は優雅で傷や錆も少なく長もち

辻  賢一〔金網つじ〕

漆で描いて時代を超えて長もちする蒔絵

下出 祐太郎〔下出蒔絵司所〕

木材保存剤で歴史的木造建築物も長もち

西村 寛之〔京都工芸繊維大学〕

京壁は材料を寝かせて長もち

佐藤 ひろゆき〔佐藤左官工業所〕


第3章 金属の長もち

久米 辰雄〔京都工芸繊維大学〕





第4章 インフラ設備の長もち

久米 辰雄〔京都工芸繊維大学〕 

藤井 善通〔京都工芸繊維大学〕

藤井 重樹〔積水化学工業(株)〕


第5章 用途に合わせてゴムも長もち

堀田 透〔藤倉ゴム工業(株)〕


第6章 こんなところにリユース、リサイクルされた工業製品

西村 寛之〔京都工芸繊維大学〕


第7章 機能性のある優れものの部材を長もちさせる

川崎 真一〔京都工芸繊維大学〕

近藤 義和〔京都工芸繊維大学〕


第8章 長もちさせるための健康診断「非破壊検査法」

町田 邦郎〔京都工芸繊維大学〕

目次

はじめに

第1章
日本の工業製品の強みは長もちにある

1  大量生産・使い捨ての時代から、良い製品を長く大事に使っていく時代へ

2  日本の工業製品が優れている理由
3  日本の工業製品の優位性を保つ「信頼性」の技術とは?



第2章
伝統工芸に隠された長もちの科学

4  いにしえから文字を伝える媒体、長もちする和紙

5  手編み金網は優雅で傷や錆も少なく長もち

6  漆で描いて時代を超えて長もちする蒔絵

7  木材保存剤で歴史的建造物も長もち

8  京壁は材料を寝かせて長もち


第3章 
金属の長もち

9  圧倒的に強度の高い鉄がなぜ劣化する?

10  金属はなぜ錆びるのか

11  局部腐食はこんなに怖い

12  ステンレスやアルマイトはなぜ錆びない?

13  地下埋施設や船舶に利用される電気防食
14  国家の浮沈を左右した防食技術
15  化成皮膜処理による長もち効果
16  メッキによる長もち効果
17  塗装による長もち効果

18  日本の焼付け塗装技術はすごい!

19  明石海峡大橋、東京スカイツリーに見る日本の重防食技術のすごさ


第4章 
インフラ設備の長もち

20  戦後日本を支えてきたインフラがいよいよ危ない

21  金属とコンクリートの欠点を補う鉄筋コンクリート

22  老朽化した下水道管を路面開削しないで再生

23  土木建築物にも使われる強化プラスチック

24  阪神大震災、東日本大震災でも生き延びたプラスチックパイプ

25  ポリエチレン管が壊れにくいのはなぜか

26  ガス用ポリエチレン管は1000年寿命

27  融着前の表面をリフレッシュしてポリエチレン管は長もち


第5章 
用途に合わせてゴムも長もち

28  ゴム材料を長もちさせる材料設計

29  耐熱性に優れたフッ素ゴムやシリコーンゴム

30  耐寒性に優れたゴム材料
31  耐油性に優れたゴム材料が自動車用途に使われる

32  オゾンや塩素によっても劣化しないゴム材料

33  ガス・温水通路に使われるゴム材料

34  自動車燃料にもそれぞれに強いゴム材料がある


第6章 
こんなところにリユース、リサイクルされた工業製品

35  廃ポリエチレンを長もちさせるリサイクル技術
36  ペットボトルのまるごとリサイクルでPET樹脂を長もち

37  ガスメーターにはリユースされた部品がこんなにたくさんある


第7章 
機能性のある優れものの部材を長もちさせる

38  フッ素樹脂コーティングの広がる用途
39  スマートフォンのカメラは過酷な試験をパスしたプラスチックレンズが主流

40  混ざらないを逆手にとると不思議と長もちの皮膜が形成できる

41  使っているときは長もちで使い終わると分解するプラスチック


第8章 
長もちさせるための健康診断「非破壊検査法」

42  なぜ非破壊検査は長もちに役だつの?

43  非破壊検査の基本はまず目で見ること

44  手軽で安価、一番普及している超音波法

45  複合材料に最適なアコースティックエミッション法

46  非破壊検査の最古参、X線透過法

47  金属材料に強い渦流探傷法

48  応用範囲が広いレーダー法

49  着色させて欠陥を見つける浸透探傷法

50  熱で欠陥を見つけるサーモグラフィー法

51  干渉縞で欠陥を見つけるレーザーホログラフィー法



Column

日本のモノづくりで受け継がれてきた長もちの伝統

長もち建築を多数残した建築家エッフェル

インフラ設備のワンストップ化

ガスメーターの故障率はなぜこんなに低い?

マルチスケールシミュレーションによる高度先端材料の寿命予測



参考文献


索 引

はじめに

日常の生活品は昔は手作りで作られていました。手先の器用な日本人の特質を活かした伝統工芸品は今でもたくさん残っています。ところが、欧米流のものづくりが浸透して大量生産・大量消費によって、ものが満ち溢れるようになり高度経済成長に貢献しましたが、今、見直しの時期に来ています。工業製品を大量生産し使い捨てするのではなく大事に長期間使用していくことが、環境配慮の観点から重要になっています。製品のライフサイクルを延ばし長もちさせることはCO 排出削減にも非常に有効です。

 「長もちの科学」とは、工業製品が設計通りの機能や耐久性をもつことを確認する科学です。工業製品の設計思想をよく理解して、もし使用中に不具合が発生した場合、不具合の原因となる劣化機構の調査や分析をまず行い、劣化因子、劣化メカニズムの解明を実施し、劣化現象を再現できる促進試験方法を考案していくことであり、工業製品を陰で支える技術であるとも言えます。

 京都工芸繊維大学では、樹脂複合材料、樹脂成形品、ゴム材料などの工業製品全般を研究対象にして、各種使用環境下における長期劣化機構を解明するとともに、促進試験方法を確立し、促進試験方法をJIS規格などに盛り込むためのデータ蓄積を図ることを目的とした研究開発組織「長もちの科学研究センター」を2010年に発足しました。「長もちの科学研究センター」では、この「長もち」を一つのキーワードにして研究者たちが集い、成果を披露し、良い製品を長く大事に使うための技術について討論しています。
 
本書は、「長もちの科学研究センター」の特任教授、京都の伝統工芸の製作者らを執筆者とし、まず、古くから受け継がれてきた伝統工芸品や文化財に内在する長もちの技術を紹介し、次に、金属、コンクリート、樹脂、ゴムなどの様々な材料を用いた製品の課題と長もちさせて使う技術を紹介します。身近な製品にもこんな創意と工夫があったのかと気付かれることがあるのではないでしょうか。また、長もちさせるための診断方法やコーティング技術も含まれています。

 本書では、京都工芸繊維大学の伝統みらい教育研究センターの濱田泰以教授、大阪産業大学デザイン工学部の後藤彰彦教授にご助言やとりまとめをしていただきました。本書を発行するにあたり、日刊工業新聞社の森山郁也様をはじめ、関係者の皆様には大変お世話になりました。心から感謝を申し上げます。



2015年 春

執筆者代表              

長もちの科学研究センター長 西村 寛之

買い物かごへ