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“後工程はお客様”で生産効率を上げる!
食品工場のトヨタ生産方式

定価(税込)  2,160円

著者
サイズ A5判
ページ数 192頁
ISBNコード 978-4-526-07391-5
コード C3034
発行月 2015年03月
ジャンル 生産管理

内容

日本の食品製造業は、巨大産業でありながら、その生産性が低い。そこで本書では、トヨタ生産方式に代表される組立産業の生産性の高さを食品工場に応用・適応させ、どういう施策をとっていけば、食品工場の生産性を上げていけるかを事例を交えてわかりやすく解説。

弘中泰雅  著者プロフィール

(ひろなか やすまさ)
 

テクノバ株式会社 代表取締役

http://www.technova.ne.jp   hironaka@technova.ne.jp


経歴

農学博士(九州大学):パンの品質特性に及ぼす製造条件に関する研究

鹿児島大学大学院水産研究科修了:魚肉タンパク質の冷凍変性抑制

中堅食品企業にて研究室長、製造課長等歴任

船井電機にて食品研究課長、電化事業部技術責任者
 
世界初の家庭用製パン器の開発に携わる 功績により社長表彰

現在 テクノバ株式会社 代表取締役

 生産管理ソフト「アドリブ」開発

 食品工場等の生産性向上指導多数

 ISO22000審査員補

受賞

 ベストITサポーター賞(近畿経済産業局長) (2006)

 日本生産管理学会賞(実務書) (2013)

所属学会

 日本生産管理学会 理事、日本食品科学工学会 正会員、

 標準化研究学会、 日本穀物科学研究会 理事、

 食品産業研究会 主査、

主な著作

・こうやれば儲かりまっせ!食品工場の経営改革(編著)、光琳(2013)

・モノと人の流れを改善し生産性を向上させる!食品工場の工程管理、日刊工業新聞社(2013)

・生産性向上と顧客満足を実現する食品工場の品質管理、日刊工業新聞社(2012)

・ムダをなくして利益を生み出す食品工場の生産管理、日刊工業新聞社(2011)

・よくわかる「異常管理」の本、日刊工業新聞社(2011)

目次

はじめに

序 章 トヨタ生産方式と食品工場
トヨタ生産方式とは
1 食品製造業にとってトヨタ生産方式とは
2 ジャスト・イン・タイムと自働化
コラム トヨタ生産方式の歴史――その1

第Ⅰ章 トヨタ生産方式の基本的な考え方を食品工場に応用する
1 効率的な生産には流れが必要
  事例  個人完結型座作業からコンベア使用の分業による流れ作業
2 平準化生産
3 ラインの改善
  1 バイパス方式
  事例  標準作業によるバイパスの排除
  2 定位置停止方式
  3 工数バランス
  4 材料・部品供給
4 原材料・部品の受入業務
  1 受入業務の平準化
  2 運搬業務の縮小化
  3 伝票処理の簡素化
5 段取り替え
  1 段取り替えの考え方
  2 生産設備の段取り替え
コラム トヨタ生産方式の歴史――その2

第Ⅱ章 食品工場におけるジャスト・イン・タイム
1 食品工場で正しく理解されていないかんばん方式
  1 かんばんの種類
  2 目で見る管理の道具としてのかんばん
  3 かんばんの枚数の考え方
2 情報の指示
  1 情報指示の考え方
  2 情報の種類
  3 工場タイプによる情報の伝達の違い
3 食品工場では工夫が必要となる特別な運搬方式
  1 工程間運搬
  2 多回納入方式
  3 乗継方式
  4 ダイレクト運搬方式
5 台車の選択と改造

第Ⅲ章 食品工場における自働化とは
1 食品工場で考えねばならない自動化と自働化
  1 自働化を進める順序
  2 人と機械の仕事の分配
  3 自動停止
  4 あんどん方式
2 異常"が誰にでもわかるようにする―目で見る管理
  1 原材料資材置場の表示
  2 目で見る管理としてのあんどん
  3 生産管理盤
  4 かんばんの利用
3 目で見る管理"ができる電気制御
  1 異常管理の制御方式

第Ⅳ章 食品工場の工程の組み方
1 食品生産での工程の組み方の考え方
2 多台持ちと多工程持ちの相違
3 離れ小島をつくらない工程の組み方
  1 多工程の工程の組み方
  2 ズリ替え方式
  3 組立ラインのサブ工程の組み方
  4 1個流しの作業順序
  事例 円滑な流れによりタクトを作る
4 多工程持ち
  1 多工程持ちの推進
  2 多工程持ちが困難な工場での多工程持ち
  3 部品単位に機械が配置されている場合の多工程持ち
  4 加工時間の長い機械の多工程持ち
5 生産能力の増強
  1 基本的な考え方
  2 生産能力増強法
  3 儲けるIE
6 少人化の考え方
  コラム 歴史にみるトヨタ生産方式の効果――その1

第Ⅴ章 食品工場における標準作業
1 標準作業とは?
  1 標準作業決定のキーポイント
2 食品を部品と見做す工場の標準作業
3 包装工程での標準作業
  1 真空包装機の多台持ちの標準作業
  2 充填包装機での標準作業
4 組立(弁当盛り付け)工場の標準作業
  1 弁当の盛り付け工場の標準作業
  2 将棋倒しの回避
  3 小物の組み付けラインの標準作業
  事例  座作業→手流し→コンベア作業
  コラム 歴史にみるトヨタ生産方式の効果――その2

第Ⅵ章 食品工場のコンベアの上手な使い方
1 食品工場でのコンベアとは?
  1 コンベアの使い方
  2 トヨタ生産方式におけるコンベアの条件
  3 コンベアの構造
  4 コンベアの止め方
2 流れ作業と流し作業
  1 コンベアの廃止
3 コンベアの効率向上方法
  1 定量方式
  2 プールオーバー制御方式
  3 クッション
4 現場で起きる問題点
  4 食品工場におけるコンベアの使用
  5 プロセス機能を持ったコンベア
  コラム 歴史にみるトヨタ生産方式の効果――その3

第Ⅶ章 トヨタの技術者教育と食品製造職人
1 職人と技術者
2 会社の技術管理者評価
3 標準作業は社員教育にも使える
4 後工程はお客様
5 食品工場の礼儀教育
6 朝令暮改と君子豹変す
7 大きな段取り、小さな段取り

第Ⅷ章 食品工場の品質管理
1 真因の追求
2 食品工場における作り込む品質
3 ポカヨケ
  1 ポカヨケの条件
  2 ポカヨケの定着
4 品質検査
  1 自動化ラインでの抜取検査方法
5 食品衛生と品質管理
  コラム 歴史にみるトヨタ生産方式の効果――その4

第Ⅸ章 トヨタに学ぶ食品工場の設備保全
1 食品工場での機械保全
  1 保全とは
  2 機械は壊れるか壊すか
2 故障に対する予防処置
  1 給油と機械の清掃
  2 ベルトコンベアの保守
  3 消耗部品の定期交換
  4 日常点検による異常の早期発見と対策
  5 オーバーホール
3 故障の再発防止
  1 原因追究の取組み方
  2 原因と現象(結果)
  3 再発防止と強化
  4 故障情報の対応処理
  5 修理と修繕
4 生産性の高い設備
5 設備償却と更新
  1 設備の価値は低下するか
  2 古い機械の更新の経済性
6 保全に備えたい最小能力


おわりに
索引
参考文献

はじめに


著者は食品企業に研究職・製造職として長年勤務した後、世界初の家庭用製パン器開発中の大手電機企業に転職した。入社してみると家電製品工場の生産ラインは、以前勤務していた製パン工場のような大型生産設備もなく、最初は電機工場の設備に多少落胆したことを記憶している。

ところがしばらくすると、日々生産性を向上させる電機工場の生産の仕組みに驚いた。生産を効率的に行うには大掛かりな自動化された装置が必要であるとばかり思い込んでいた著者は、大した設備もなくしかも人海戦術で生産を行う電機工場の生産の仕組みの素晴らしさに感心したのだ。

その時、工場の生産効率は装置設備ではなく、工場運営の仕組み(組織資産)が重要であることに初めて気付いたのである。著者はこのような経験から食品製造業が低生産性である原因は、生産性向上に必要な企業内組織資産形成が、他の製造業に比べて大きく不足している為ではないかと考えるようになった。

そしてその電機工場の仕組みこそトヨタ生産方式(TPS)であった。その企業ではトヨタの関連の自動車工場に昭和50年代はじめより多くの社員を送り込んでトヨタ生産方式を学び、その実践に取組んできていた。著者が入社した頃には、トヨタ生産方式に取組んでから既に10年以上の歳月が経っており、その工場の実情に合わせてトヨタ生産方式を活用しその効果が顕著になった時期であった。その電機企業ではトヨタ生産方式のノウハウが、工場の生産性を向上させるまさに資産になっていたのである。今にして思えば著者はその電機企業でトヨタ生産方式の考え方と仕組みを幸いにも実体験できたのである。

トヨタ生産方式以外にも幾つか著名な生産方式があるが、最も広く普及しているのはトヨタ生産方式であることは多くの人の認めるところであろう。元々トヨタ生産方式は組立型製造業の典型である自動車製造から生まれた為に、電機製造業などの機械組立型製造業には適用しやすく広範囲の製造業に広まっていったが、著者の知る限りプロセス型製造業である食品製造業に導入された例は極めて少ない。なぜなら組立産業型を前提にして発展したトヨタ生産方式は、プロセス型の食品工場にはそのままでは導入が難しいからである。

トヨタ生産方式とかトヨタ・プロダクション・システムとか言うと、初めて聞く人はどんな装置や機械を使うのだろうと思うだろう。しかし先に書いたようにトヨタ生産方式とは、生産に使用する装置や機械等を示しているのではない。トヨタ生産方式とは考え方であり工場運営の思想ではないかと筆者は考えている。

トヨタ生産方式に関する書物は数百にも及ぶようだが、食品工場を対象にしたトヨタ生産方式の本は見当たらない。食品工場の経営者・従業員にとって、身近な食品工場向けのトヨタ生産方式の参考書がなかったことも、食品製造業にトヨタ生産方式が導入されなかった原因の一つではないだろうか。食品工場にトヨタ生産方式を広めるためには、食品工場向けの本が必要だと考えたことが本書を著した理由である。

筆者がトヨタ生産方式に関心を寄せるのは、トヨタ生産方式を自ら実際に経験し、その効果を実感していることに加えて、統計的にその効果が示されているからである。石油ショック・ドルショックの経済環境下にあった当時の日本において、トヨタ生産方式の他製造業への導入時期と製造業の大幅な生産性向上の時期が重なっていることは偶然とは考えられない。そのためトヨタ生産方式が日本の製造業に与えた影響は計り知れないと認めざるを得ないからである。

ところでトヨタ生産方式の目的とは何であろうか。トヨタ生産方式の創始者とも言えるトヨタ自動車の元副社長である大野耐一氏が明言しているように、トヨタ生産方式は企業の中からあらゆるムダを徹底的に排除することによって、生産効率を上げようというものである。トヨタ生産方式を一言で言えば「売れる物を、売れるだけ、売れる時に、できるだけ安く作る」ための手法なのである。

従って世間に広く知られている、例えば「かんばん」はトヨタ生産方式の運用手段の一つに過ぎず、「かんばん」や「シングル段取り」だけがトヨタ生産方式ではないのである。トヨタ生産方式は幅広い内容を含んでいる。1つの手段を部分的につまみ食いしたのでは、その効果を享受することはできない。トヨタ生産方式ができた経緯を知り、その考え方あるいは思想を理解した上で導入しなければ、トヨタ生産方式の効果を上げることはできないと著者は考えている。

工場の生産性向上にトヨタ生産方式の活用が有効なことは、先にあげたようにトヨタ生産方式導入企業の実績からみて明白である。戦後日本の製造業の生産性に大きな影響を与えたトヨタ生産方式を理解した上で、食品工場にもその考えや手法を導入していき、ぜひ食品製造業の生産性を向上して頂きたい。そのために本書が生かされれば著者の望外の喜びである。



2015年3月
弘中 泰雅 

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