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連続繊維FRTPの成形法と特性
カーボン、ガラスからナチュラルファイバーまで

定価(税込)  3,456円

編著
サイズ A5判
ページ数 240頁
ISBNコード 978-4-526-07384-7
コード C3043
発行月 2015年03月
ジャンル 化学

内容

今後CFRTP成形の中心になると見られる連続繊維を強化材に用い、母材にPPなどの熱可塑性樹脂を利用したFRTPの成形技術を解説。フィルムやスタンパブルシート、ペレット、混織繊維を用いた場合など材料形態別に成形条件や機械的特性などを示す。

邉 吾一  著者プロフィール

(べん ごいち)
日本大学生産工学部教授
昭和49年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了
工学博士

執筆者および執筆分担一覧

第1章 フィルム,スタンパブルシートを用いた成形法とその特性
(坂田憲泰,邉 吾一)
第2章 モノマーを用いた成形法とその特性(邉 吾一)
第3章 ペレットを用いた成形法とその特性(平林明子,邉 吾一)
第4章 コミングルヤーンを用いた成形法とその特性(濱田泰以)
第5章 混織ファブリックを用いた成形法とその特性(仲井朝美)
第6章 パウダーを用いた成形法とその特性(大谷章夫)
第7章 含浸理論(仲井朝美)
第8章 熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂(久保内昌敏)

邉 吾一(べん ごいち)
日本大学生産工学部教授
昭和49年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了
工学博士

坂田憲泰(さかた かずひろ)
日本大学生産工学部助教
平成17年日本大学大学院生産工学研究科修士課程修了
博士(工学)

平林明子(ひらばやし あきこ)
日本大学生産工学部助教
平成17年日本大学大学院生産工学研究科博士課程修了
博士(工学)

久保内昌敏(くぼうち まさとし)
東京工業大学大学院理工学研究科化学工学専攻教授
昭和61年東京工業大学大学院理工学研究科化学工学専攻修士課程修了
博士(工学)

濱田泰以(はまだ ひろゆき)
京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科先端ファイブロ科学部門教授
昭和60年同志社大学大学院工学研究科機械工学専攻博士後期課程修了
工学博士

仲井朝美(なかい あさみ)
岐阜大学工学部機械工学科教授
平成11年東京大学大学院工学系研究科先端学際工学専攻博士後期課程修了
博士(工学)

大谷章夫(おおたに あきお)
岐阜大学複合材料研究センター特任准教授
平成20年京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科先端ファイブロ科学博士後期課程
修了
博士(学術)

目次

まえがき

第1章 フィルム,スタンパブルシートを用いた成形法と特性
1.1 PA6をマトリックスとしたFRTP板
 1.1.1 成形方法
 1.1.2 化学的特性と機械的特性
 1.1.3 曲げ特性
1.2 グリーンコンポジットを用いた板材と構造用部材
 1.2.1 グリーンコンポジットを用いた板材
 1.2.2 グリーンコンポジットを用いた構造用部材
1.3 プレス成形の研究開発動向
 1.3.1 サステナブルハイパーコンポジット技術の開発
 1.3.2 名古屋大学ナショナルコンポジットセンター

第2章 モノマーを用いた成形法とその特性
2.1 成形法
 2.1.1 マトリックス
 2.1.2 強化材
 2.1.3 成形方法
 2.1.4 ハイブリッドHFRPの成形法
2.2 I―GFRTPとI―CFRTPの特性評価
 2.2.1 走査型電子顕微鏡(SEM)観察
 2.2.2 融解熱および結晶化度の測定
 2.2.3 未反応モノマー残存率および吸水率の測定
2.3 3 点曲げ試験
 2.3.1 I-PA6とI-GFRTP
 2.3.2 I-CFRTP
2.4 アイゾット衝撃試験
 2.4.1 I-PA6とI-GFRTP
 2.4.2 I-CFRTP
2.5 ハイブリッド繊維強化熱可塑性プラスチック
2.6 HFRPの特性とI―HFRTPとの比較

第3章 ペレットを用いた成形法とその特性
3.1 引抜成形法
3.2 押出成形概要
3.3 クロスヘッドダイによる一方向強化材の成形
 3.3.1 一方向開繊カーボン繊維を強化材とするFRTPの成形
 3.3.2 天然繊維を強化材とする一方向強化FRTPの成形
3.4 ガラスマット強化熱可塑性樹脂成形法の応用
 3.4.1 成形概要
 3.4.2 天然繊維織物を強化材とするグリーンコンポジットの成形
 3.4.3 ガラス連続繊維強化フェノール複合材料の成形
3.5 押出ラミネート法の応用

第4章 コミングルヤーンを用いた成形法とその特性
4.1 曲げ強度に及ぼす混繊効果
 4.1.1 材 料
 4.1.2 混繊状態の定量化
 4.1.3 力学的特性に及ぼす成形条件の影響
4.2 繊維軸方向曲げ特性と含浸挙動
 4.2.1 実験方法
 4.2.2 実験結果
 4.2.3 考 察

第5章 混織ファブリックを用いた成形法とその特性
5.1 繊維状中間材料
5.2 プレス成形を用いた高速成形加工技術
5.3 引抜成形を用いた連続成形加工技術
 5.3.1 システムの構成
 5.3.2 含浸機構
 5.3.3 引抜成形条件
5.4 組物強化熱可塑性樹脂複合材料の引抜成形装置
5.5 連続繊維と長繊維樹脂射出成形のハイブリッド成形

第6章 熱可塑性樹脂パウダーを用いた成形法とその特性
6.1 PIFの概要
6.2 PIFの製造原理
 6.2.1 これまでの歴史
 6.2.2 最新の原理
 6.2.3 樹脂の電気的特性
 6.2.4 粒子径
 6.2.5 粒子に作用する力
 6.2.6 付着量の制御
 6.2.7 その他
6.3 PIFの成形
 6.3.1 材 料
 6.3.2 PIFの概要
 6.3.3 熱可塑性樹脂織物複合材料作製方法
6.4 含浸特性評価
6.5 力学的特性評価
 6.5.1 静的引張試験方法
 6.5.2 成形温度が力学的特性に及ぼす影響
 6.5.3 保持時間が力学的特性に及ぼす影響
 6.5.4 成形圧力が含浸特性に及ぼす影響

第7章 含浸理論
7.1 一方向単層板における繊維配列
7.2 ダルシー則
7.3 コゼニー―カルマン(Kozeny―Carman)の式
7.4 繊維集合体への応用
7.5 グトブスキ(Gutowski)モデル
7.6 含浸時間の予測手法

第8章 熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂
8.1 高分子材料とは
 8.1.1 高分子材料
 8.1.2 モノマーとポリマー
8.2 連鎖重合ポリマー
 8.2.1 ラジカルビニル重合
 8.2.2 カチオン/アニオン重合
 8.2.3 Ziegler-Natta触媒による立体制御
8.3 逐次重合ポリマー
 8.3.1 逐次成長と縮合重合
8.4 ポリマーの構造と物理的性質
 8.4.1 熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂
 8.4.2 結晶性
 8.4.3 共重合体
8.5 熱可塑性樹脂
 8.5.1 汎用樹脂/オレフィン系樹脂
 8.5.2 エンジニアリングプラスチック
 8.5.3 FRTP用樹脂
8.6 熱硬化性樹脂
 8.6.1 スチレン架橋樹脂
 8.6.2 エポキシ樹脂
 8.6.3 フェノール樹脂

索 引

はじめに

 本書は一般社団法人強化プラスチック協会創立60周年の記念出版です.
 熱可塑性樹脂は加熱することで軟化,溶融し,冷却によって固化する樹脂であり,成形過程に化学反応を伴わないことから,熱硬化性樹脂と比較して扱いやすく,制御も容易です.種類も,結晶性,非晶性と豊富にあり,対応する耐熱温度も広範囲に広がっています.このような特徴を有する樹脂を母材とし,連続繊維で強化した連続繊維強化熱可塑性プラスチック(Continuous Fiber Reinforced Thermal Plastics,c-FRTP)系複合材料は,各種構造物の主構造部材としての使用するために必要な機械的特性を有し,かつ連続成形が可能であるため,広く普及する可能性を有する繊維強化系の複合材料と言えます.しかしながら,連続繊維束に溶融粘度の高い熱可塑性樹脂を含浸することが難しいという問題点を有していることから,車を中心とした量産品への適用には,短繊維を用いたFRTPにとどまっているのが現状です.
 日本において熱硬化性樹脂を用いた繊維強化プラスチックFiber Reinforced Plastic,FRP)の研究活動は盛んであり,炭素繊維やガラス繊維,熱硬化性樹脂など扱ったFRPの原材料としての研究,FRPの成形法の研究,FRPの機械的特性の評価とそれらの向上に関する研究,さらにFRP構造物の解析と最適設計の研究などは大きな成果を達成し,FRPは工業的にも大きく利用されています.
 しかしながら,熱可塑性樹脂複合材料の成形技術に関しては諸外国に比べて遅れています.現在,ヨーロッパを中心に連続繊維強化熱可塑性樹脂の成形に関する研究が盛んに行われている中,日本でもそれらに関する研究を進めていくことが必要です.加えて熱可塑性樹脂がFRTPの母材となった場合,熱硬化性樹脂のFRPと比較して,一般的に樹脂の特性や繊維/樹脂界面の特性が低い,といった熱可塑性樹脂複合材料特有の問題点も今後解決していく必要があります.
 熱硬化性樹脂を用いた繊維強化樹脂系の複合材料の書籍に関しては,FRPの原材料,成形法,各種特性,試験法,設計や応用法などを網羅したハンドブック的な本が数多く出版されており,さらに力学特性や設計法,成形法や試験法などの要点を絞って記述した教科書的な書籍も数多く出版されています.しかしながら,熱可塑性樹脂を用いたFRTPに関しては短繊維を用いた射出成型に関する書籍は多く出版されていますが,本書が主として記述をする連続繊維を強化材に用いた繊維強化熱可塑性プラスチックの書籍はほとんど見当たりません.
 本書では,強化材として連続繊維を用いて熱可塑性樹脂を強化したFRTPの成形法とその特性について,この分野で精力的に研究を行っている第一線の研究者達が初心者にも理解しやすいように平易に記述しています.特に熱可塑性樹脂の原料形態をベースにしてFRTPの成形法とその特性から説明をして,読者がFRTPの具体的なイメージ持つようには配慮しました.
 第1章のフィルム,スタンバブルシート用いた成形法は,強化繊維と熱可塑性樹脂のフィルム,あるいはスタンパブルシートを積層し,プレス装置でこの積層材を加熱・加圧することで,繊維に樹脂を含浸させる方法です.簡易的な方法で,繊維と樹脂の組み合わせにより多彩な材料が成形可能となります.その一方,高粘度の熱可塑性樹脂を使用した場合には,繊維への樹脂の含浸が難しくなります.
 第2章では熱可塑性樹脂のモノマーを用います.熱可塑性の樹脂は常温で粉末やペレット,あるいは加工によってフィルムの固体状態で,溶融温度以上の加熱によって液状化するが高粘度の状態が一般的です.ナイロン(PA6)のモノマーであるイプシロンカプロラクタムは融点よりも半分以下の温度で液状化し,低粘度状態です.これを用いて通常の熱硬化性樹脂を用いた場合と同様にVaRTM法でFRTPを成形します.
 第3章は,ペレットを押出機で溶融させ,それを溶融樹脂槽内に貯留し,その中に強化繊維を通して樹脂と含浸させた後に金型内で引き抜く成形法です.熱可塑性樹脂は熱硬化性樹脂と比較して粘度が高いため,溶融樹脂槽内に強化繊維を通過させただけでは,樹脂を繊維に十分に含浸させることは難しく,そのため,この方法では一般的に引抜速度を下げる,溶融樹脂槽内に樹脂含浸ロールを設置するなどの工夫が必要となります.
 第4章のコミングルヤーンは繊維化した熱可塑性樹脂を強化材の繊維に混ぜ合わせて混織したものを加熱成形の工程で溶融し,強化繊維に含浸させる方法です.繊維と樹脂が近くに配置されるため,含浸性は良いが,高価格になる傾向にあります.
 第5章の混織ファブリックを用いた成形法では,織物,編物,組物の違いを明らかにし,これらのテキスタイル加工技術で作った樹脂と繊維の混織ファブリックを用いたスタンピング成形,引抜き成形,ハイブリッド成形など高速成形加工技術の適用を記述しています.
 第6章のパウダー法は,熱可塑性樹脂の粉末を強化繊維に付着させた後に,熱可塑性樹脂を溶融させて強化繊維に含浸させる方法のことです.繊維への含浸が容易となるため,高品質な材料が成形できます.その一方,熱可塑性樹脂を粉末化させる工程が必要となるため,製造コストは高くなる傾向となります.
 第7章ではFRTPやFRPの機械的特性向上のために最も重要な繊維と樹脂間の含浸理論について紹介しています.最後に第8章では,熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の分類と特徴についてまとめて記述しています.
 本書はハンドブックでなく個人が手元に置き,教科書的に使用する入門書です.本書がこれからFRTPの勉強を始める初心者やFRTPをまとめて理解したい研究者にとって有益な書物になれば,執筆者たちにとって望外の喜びです.末筆ながら,本書の出版のために大きな忍耐と努力をしていただいた日刊工業新聞社矢島俊克氏に深く感謝いたします.

平成27年3月
執筆者代表 邉 吾一

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