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プレス加工「なぜなぜ?」原理・原則手ほどき帳

定価(税込)  2,484円

編著
サイズ B5判
ページ数 144頁
ISBNコード 978-4-526-07382-3
コード C3053
発行月 2015年03月
ジャンル 機械

内容

「なぜそのような加工現象が起きるのか?」「なぜマニュアルでそのように取り決められているのか?」について、原理・原則から本質を見極められるよう図解で指南。仕様や標準の背景を知ることで、トラブルの真因追及や対策に役立つ視点と進め方を授ける。

小渡邦昭  著者プロフィール

(こわたり くにあき) ─Chapter1〜5

高度職業能力開発促進センター

素材・生産システム系職業能力開発上級指導員

〒261-0014 千葉市美浜区若葉3-1-2
TEL:043-296-2772 FAX:043-296-2780




中杉 晴久(なかすぎ はるひさ) ───Chapter6

高度職業能力開発促進センター

素材・生産システム系職業能力開発先任指導員

〒261-0014 千葉市美浜区若葉3-1-2
TEL:043-296-2772 FAX:043-296-2780




喬橋 憲司(たかはし けんじ) ────Chapter7

新潟職業能力開発短期大学校
生産技術科専門課程職業能力開発指導員

〒957-0017 新潟県新発田市新富町1-7-21
TEL:0254-23-3120 FAX:0254-23-2169

目次






まえがき



Exercise 原理・原則を押さえて
一歩進んだ「プレス加工」を進めよう

Chapter1 基礎

1–1 基本要素はプレス機械・金型・被加工材の3つ

1–2 製品の善し悪しは転写された形状や寸法で決まる

1–3 プレス加工の肝は金型が握っている


Chapter2 金属の特性

2–1 プレス加工は塑性変形を利用して製品ができる
2–2 加工時に板厚が薄くなったり厚くなったりする

2–3 針金が手で切れる理由

2–4 アルミはスプリングバックしにくい

2–5 金属には硬さと粘りが必要

2–6 材料が変われば加工条件も変える

2–7 アルミは鉄より弱い
2–8 加工にはエネルギーが必要だが、多くは直接利用されていない

2–9 円筒絞り成形のとき縁に高低ができる

2–10 加工に必要な材料特性は引張試験でわかる

2–11 プレス加工はひずみを利用する


Chapter3 プレス機械

3–1 能力800kNのプレス機械では800kNの加工が行える

3–2 C型フレームのプレスは門型フレームのプレスより劣っている

3–3 スライド速度とspm(生産数)は合わせた方がいい

3–4 プレス機械は頑丈だから熱膨張の心配はない
3–5 仕様書を理解しないと機械能力をフルに発揮できない

3–6 サーボプレスを使いこなすには現場の知恵が不可欠


Chapter4 金型

4–1 プレス機械の上下運動を材料に伝えるだけが機能ではない

4–2 プレス金型が四角形である理由
4–3 位置決めプレートはダウエルピンで固定

4–4 金型取付は手順書の通り寸分の狂いなく行う

4–5 精密な加工にはインナーガイドが効果を発揮する
4–6 小径パンチにはバッキングプレートを利用する

Chapter5 加工法:せん断

5–1 せん断加工の適正クリアランスは8%

5–2 同じクリアランスならせん断面の状態は同じ
5–3 せん断荷重はせん断製品の出来映えを左右する

5–4 せん断につきもののバリをなくすことは難しい

5–5 せん断された面の状態はすばやく正しく把握する

5–6 硬い材料を加工するとそりが出る
5–7 金切りはさみで鋼板を切るとせん断の仕事量がわかる

5–8 せん断する金型や製品が熱くなるため加工油で冷却する

5–9 大きな荷重がかかるからパンチは破損する

5–10 抜き型の構造を機能面から理解すべきである
5–11 抜き型のダイプレートの厚さを求める計算式が決まっている

5–12 せん断に利用されるプレス機械はストロークが短い

5–13 C型フレームのプレスはブレークスルーが問題

Chapter6 加工法:曲げ

6–1 曲げ加工の最大の急所はスプリングバックを防ぐこと

6–2 曲げ荷重の計算式は難しい
6–3 曲げ角度を安定させるには圧縮するのが効果的

6–4 最小曲げ半径は材料により異なる

6–5 曲げの展開は中立面を計算する
6–6 V曲げではダイ肩部が当たることでキズがつきやすい

6–7 U曲げにはパッドの圧力調整がポイント
6–8 曲げ加工は底突きで精度を出す

6–9 リンクプレスはスプリングバックに強い

Chapter7 加工法:絞り

7–1 平板を継ぎ目のない3次元形状に加工できるわけ

7–2 ダイクッション圧を下げるとしわが発生する

7–3 円筒絞り時に製品の縁に耳ができる
7–4 絞り加工のクリアランスは板厚の1.3倍

7–5 2工程目の絞り率は1工程目より大きくする

7–6 寸法精度が厳しい円筒絞りにはしごき加工を追加する
7–7 絞り加工に潤滑油が必要な理由

7–8 ダイ肩部とパンチ肩部が絞り型の生命線

7–9 絞り加工力はフランジを変形させる最大荷重で計算

7–10 絞り加工を行うプレス機械はストローク長さを重視する

7–11 絞り加工のストロークは製品高さの2倍以上
7–12 絞り加工にはサーボプレスが向いている





索 引

はじめに

 受講生:『プレスせん断加工品のバリで困っています。良い解決策を教えてください』
 

講師:『直球的な回答は難しいです。バリの発生要因は、「製品形状・ブランクレイアト」「金型製作・組立調整」「プレス機械」「被加工材の材種、供給方法、装置」「潤滑」「作業環境」「作業者の技量」など多岐にわたります。それぞれの視点から現物・現実・現場を分析する必要があります』


 受講生:『でも、どうすれば簡単に防止できますか…?』

 
とあるセミナーでの受講生と講師のやり取りの一場面である。

 

受講生にとっては、いち早くトラブルを解決したいという思いのこもった発言である。一方、講師はその製品や現場を直接見ることができず、受講生からの断片的な情報だけで即効性を持った解決策を披露するのは神業に等しい。まして受講生が所属する企業でも、多様な試行錯誤をさんざん重ねてきた上での質問であるわけだから、簡単な原因ではないことが推測できる。

 「モノづくり」は、単に形状を「つくる」のではなく、機能のある形状を「つくる」ことである。かつての「モノづくり」は工程全体を見渡すことが容易であったが、大量生産・グローバル生産の現代では、目前で行う作業の位置づけを「モノづくり」全体を俯瞰した上で行うことは難しい。しかし、この「俯瞰」する行為を欠くならば、少なからず「モノづくり」に危機を与えかねない。



 前述の受講生が、講師の指摘事項を的確に受け入れることが難しい背景には、自らの抱えるトラブルをプレス加工全体の中で見ることが難しく、さらに指摘事項と実際に起きている事象との関連づけができないためではないだろうか。たとえばプレス加工は、「弾性変形するプレス機械が発生させる力を弾性変形する金型に伝え、被加工材を弾性変形後に塑性変形させる」という原理・原則から加工プロセスをイメージできないために、トラブルを加工→被加工材→金型→プレス機械という流れに置き換えることができないような状態である。

 逆に、全体を見ながらトラブルに立ち向かっていけるような思考回路を持つ高度熟練技能者は、「ベテランと言われる技能・技術者は、細切れの知識・経験を関係づけられ、全体と個々を行き来する見方ができる」のが特徴である。つまり、技能者が作業トラブルに多岐にわたる視点から分析できるのは、当然ながら知識や経験を背景に必要とする。

 しかし、分断された個々の知識や経験は、同じ原因のトラブルには対応できても、新たな異なるトラブルへの対応は難しい。したがって、個々の知識や経験をネットワーク化(関連づけ)することで、より幅広い対応が可能になる。そのために、知識や経験の根底に流れる接着材のような「原理・原則」が重要なのである。

 原理・原則からの視点で見るトラブル対策や現場改善は、原理・原則に根差さない表面的な対策・改善に比較すると確かに遠回りかもしれないが、応用・発展性を有する確かな「対策・改善」となる。読者のみなさんに、この考え方を少しでも感じていただければ幸いである。



 このたび、職業訓練の場に身を置く指導員集団が加工現場に対する日頃の思いを書籍としてまとめるのに際し、日刊工業新聞社の月刊「プレス技術」編集部のみなさんと書籍編集部の矢島俊克氏にお世話になった。深く感謝する。




2015年3月

小渡邦昭

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