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今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしい有機ELの本
第2版

定価(税込)  1,512円

著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-07352-6
コード C3034
発行月 2015年01月
ジャンル ビジネス 電気・電子

内容

プラスチックなどの有機材料に電気を流すことで発光する有機ELは「発光が美しい」「薄くて軽量」「低消費電力」という優れた特徴を持つ理想のデバイス。本書は有機ELの発光原理や作成法などをイラスト図解でわかりやすく紹介。有機EL照明の解説も新たに加えた好評書籍の第2版。

森 竜雄  著者プロフィール

(もり たつお)
1962年(昭和37年) 愛知県名古屋市生まれ。
1985年(昭和60年)名古屋大学工学部電気学科卒業。
1990年(平成2年)名古屋大学大学院工学研究科電気工学専攻 博士課程修了。
工学博士。同年4月より名古屋大学工学部助手。講師、助教授を経て、
2007年(平成19年)4月より名古屋大学大学院工学研究科電子情報システム専攻 准教授。
2012年(平成24年)4月より愛知工業大学工学部電気学科教授。

365日途絶えぬ花に囲まれ、クラシック音楽を聴きながら、中国古典と史書と戦記物に興じ、アルコールに弱いのにボルドーワインを愛する。

目次

第1章 有機ELってなに?
1 有機ELの発見と実用化への歴史「有機単結晶の発明」
2 有機ELのしくみと特徴「薄膜と多層と機能分離」
3 3原色を一番早く実現したのは有機EL「普及は自動車から始まった」
4 無機ELの発光のしくみ「添加する金属化合物によって発光色が違う」
5 半導体LEDの発光のしくみ「キャリア再結合で電磁波や熱を放出」

第2章 有機ELはどうして光るの?
6 基本原理─励起と失活─「いろいろな種類の「ルミネセンス」」
7 価電子帯? HOMO? 酸化電位?「学問分野で呼び名が異なる」
8 半導体とエネルギーダイアグラム「有機材料のエネルギー関係がわかる」
9 蛍光とりん光の違い「すぐ消える光とまだ見える光」
10 有機ELの発光原理「キャリア再結合には電子1個と正孔1個が必要」
11 なぜ電流が流れる?「電流はキャリア密度と移動度の積で決まる」
12 電極からのキャリア注入「界面でのエネルギーバンドの変化」
13 結合力と有機分子間のキャリア移動「電子が分子間を移動する」
14 移動度の測定のしかた「キャリア移動度の測定法は4つある」
15 空間電荷制限電流とは?「キャリアの移動度がキャリア注入を律速する」
16 有機半導体と導電性高分子「結合の重なりで導電性が現れる」
17 有機材料のp型とn型とは「有機材料のp型、n型はキャリアの流しやすさ」
18 光吸収と発光「吸収を見れば発光が見える!?」
19 評価方法はどうするの?「電気物理量、光学物理量の測定」
20 輝度・照度「光に関する単位」
21 発光の効率を示す外部量子効率「素子の効率を示すパラメータ」
22 発光効率に大きく影響するPL量子効率「発光のポテンシャルを示す」
23 光取出効率はどの程度ある?「光はまっすぐには出ない」
24 光の干渉とは?「陰極金属ミラーの影響」
25 色と光の関係「光の見え方」

第3章 有機ELはどんな種類・材料があるの?
26 役割によって材料が異なる「それぞれ得意な性質を利用する」
27 発光材料からの分けかた「分子量・発光形態から分ける」
28 低分子発光材料にはどんなものがあるの?「蛍光材料とりん光材料」
29 エネルギー遷移とキャリアトラップ「フェルスター機構とデクスター機構」
30 導電性が必要な高分子発光材料「共役系と非共役系の高分子」
31 早くから研究されたりん光材料「励起子生成効率100%」
32 蛍光材料なのに励起子生成効率100%?「熱活性型遅延蛍光」
33 よく利用されるキャリア輸送材料「正孔輸送と電子輸送」
34 キャリア注入材料「階段を登るか、壁をはい登るか」
35 正孔リッチを防ぐキァリア阻止材料「キャリアバランスの改善に有効」
36 光を取り出す透明電極「電子が流れるのに透明?」
37 陰極金属と仕事関数「低仕事関数の金属の取り扱い」
38 コロンブスの卵、マルチフォトンデバイス「交流駆動の有機ELも」

第4章 有機ELはどうやって作るの?
39 膜厚の制御が容易な真空蒸着法「真空中で物質を基板上に堆積」
40 進化する真空蒸着「蒸着源は点から線へ」
41 クラスタからインライン蒸着機へ「タクトタイムを減らすライン生産方式」
42 2種類の材料を同時に蒸着「共蒸着(色素ドープ)法 」
43 透明電極の形成とスパッタ法「スパッタ法による薄膜形成」
44 溶液から薄膜を作るキャスト法「塗布法で薄膜を作る」
45 インクジェット法による有機EL素子作成「材料にむだがない」
46 印刷法による有機EL素子作成「凸版印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷で成功」
47 大面積作成にレーザ転写法「大面積、低コストが要求される微細加工に」
48 素子の劣化を防ぐ封止と乾燥剤「有機ELは水と酸素が苦手」
49 ディスプレイにはRGBが必要「4つあるRGBの表現方式」
50 光の取り出し方向と素子構造「画期的なトップエミッション」

第5章 照明光源としての有機EL
51 身の回りの照明光源「照明光源の歴史」
52 白色光源にするメカニズム「加法混色と減法混色」
53 光のパラメーターと照明のパラメーター「ディスプレイと照明のちがい」
54 点でもなく、管でもなく、平面で光る「有機EL照明の長所」
55 次世代光源のライバルはLED「有機ELとの比較」
56 有機EL照明パネルへの期待「広がる有機EL照明」

第6章 有機ELの可能性と技術の比較
57 有機ELと電子写真(コピー)「正孔輸送材料は感光体材料から始まった」
58 有機ELと太陽電池「電気-光変換と光電変換」
59 有機ELとトランジスタ「有機ELは有機トランジスタで駆動」
60 発光トランジスタ「有機ELにトランジスタを組み込む」
61 有機レーザは実現可能?「大電流を流すことができるか?」
62 暮らしの中の有機EL「有機ELの特長を生かし切る」
63 軽量とフレキシブル「「軽い」と「曲がる」は用途が違う!?」
64 極薄の壁掛けTVが可能になる「狭い部屋を広く利用」
65 ユビキタスディスプレイ「ウェラブルディスプレイの実現」
66 高効率への挑戦「素子の長寿命化が鍵」
67 長寿命化への挑戦「安定性は材料がキーに」
68 自動車と有機EL「表示と照明での有用性」


【コラム】
美しい映像を最高のデバイスで
有機ELとエネルギーの単位
有機ELと材料の価格
有機ELデバイスの作成ポイント
有機EL照明パネルの勝敗を占うポイント
有機EL技術の明日

参考文献
索引

はじめに

 かつて利用されていた有機材料の電気的な機能性のほとんどは受動的な(パッシブな)機能すなわち電気絶縁性でした。もちろん構造物としては、プラスチック用品が身の回りにあふれかえるほどですが、電気やエレクトロニクスという分野はなかなか難しかったのです。初めて利用された能動的な(アクティブな)機能材料はレジストではないでしょうか?現在の半導体産業を支えているフォトリソグラフィー技術の根幹となっている材料です。レジストとは感光材料で、光が照射された部分と未照射の部分を利用してパターンを刻み込む際に利用されます。しかしながら、これは最終製品の中には何も残らないものです。レジストが利用されるようになった頃、もう1つの機能材料が製品内に取り込まれる形で徐々に普及してきました。それが電子写真の感光体ドラムです。有機感光体が開発されるまでは、セレンなどの有毒な無機材料が利用されていましたが、材料の改良と共に現在ではほぼ100%有機材料がドラムに利用されています。しかし、これとて完全にアクティブな機能とは言い難いものでした。というのは光の照射に合わせて材料の導電性が変わるだけで、積極的に機能を利用するというものではなかったからです。
 有機デバイスとして、液晶は大画面ディスプレイで確固たる地位を占めています。液晶の制御には電圧は必要ですが、電流を流して利用するものではありません。そうした中、真にアクティブな電子機能を持ったデバイスとして、1997年に有機ELが商品化されたわけです。
 積層型の有機EL素子が発表されたのが1987年で、もうすぐ30年になろうとしています。その間、日本の研究者は常に世界のトップで、多くの提案や技術を開発してきました。有機ELの実用化も世界のトップを走ってきたわけですが、現在の市場は必ずしも日本にとって順風満帆ではありません。いろいろな至難を何とか乗り越えてきた企業も現在はアップアップの状態です。ディスプレイ利用の前に立ちはだかったのが、前述した液晶です。液晶ディスプレイは有機ELばかりではなく、表面伝導型電子放出ディスプレイなどの開発を中止させ、プラズマディスプレイの製造も断念させるほど強力な存在です。そうした中でも、小型ディスプレイの生産があり、大型ディスプレイでも製品化されている有機ELのポテンシャルの高さは、やはりすばらしいと言えるでしょう。2015年1月にジャパンディスプレイ(JDI)、ソニーとパナソニックを中心にJOLEDが立ち上がりますので、日本の有機ELに期待したいと思います。
 照明用途も日本企業が先行しています。しかしながら、先行しすぎてパナソニック出光OLEDのように一旦営業を停止するようなこともありましたが、コニカミノルタ社が有機EL照明用のプラントを実現させるなど今後の展開が期待されます。同様にLumiotec、東芝、三菱化学、カネカにもがんばって頂きたいところです。
 今回の改訂版では、照明に関する項目を新たに加えました。LEDが新照明技術としてノーベル物理学賞の対象となりましたが、有機ELすなわちOLEDも次世代光源として期待されています。
 最後に本書をまとめるに当たり、写真やグラフなどをご提供いただいた関係者の皆様に御礼申し上げます。限られた文言での記述ゆえ、説明が足りなかったところもありますが、ご意見があればお聞かせください。また、、日刊工業新聞社の三沢薫氏を始めとする関係者の皆様に感謝いたします。

平成27年1月
愛知工業大学工学部電気工学専攻 森 竜雄

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